大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

1994年10月25日

131-衆-法務委員会-2号 平成06年10月25日

○大口委員 改革の大口でございます。
今回の裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案につきましては、賛成でございます。一日も早い支給をと考えているものでございますが、一点だけお伺いいたします。
昨年、改定アップ率が一・七から二・二%であり、司法修習生は最も高い二・二%でありました。今回、改定アップ率が一・一から一・四%ですが、司法修習生についてどうなっているか、予定をお聞かせいただきたいと思います。

○堀籠最高裁判所長官代理者 司法修習生の給与につきましては、最高裁判所規則で定めるということになっておりまして、現在所要の改正作業を進めているところでございます。
本年の改定率は、約一・三%となる予定でございます。判事補の方が改定率が高くなっている部分がございますが、これは本年の人事院勧告が中堅層の改善に重点を置いたものとなっているためでございます。

○大口委員 それでは、最近、週刊誌等のマスコミ報道や、週刊誌等を引用した国会質問によって、目に余る私人の名誉、プライバシーを害する人権侵害が行われております。そこで、この問題につきまして議論をしてまいりたいと思います。
本年十月十一日の衆議院予算委員会において、自民党の委員が、週刊新潮のコピーを示しながら、特定の交通事故につきまして言及しております。委員の発言を引用いたします。
まあ、ちょっと書き方、過激すぎると思いますけれどもね、これね。週刊新潮。「大石寺僧侶を衝突死させた創価学会幹部」。こういう書き方をしているんですね。私ども調べましたところ、七月二十一日、今年のです。六時十分、北海道大滝村国道二七六号線、トラックと乗用車が衝突、日蓮正宗、室蘭ですね、深妙寺の大橋住職が死亡されております。相手の車に乗られた、トラックに乗られている方は、名前を伏します。創価学会員のようであります。これはですね、あの、交通事故だろうと思いますんで、よく分かんないんです、正直いってと発言しております。さらに同委員は、だれがどういう目的で作成したかわからない怪文書ともいうべき号外を引き合いに出して、本件交通事故があたかも特定の宗教団体を背景としたものであるかのような印象を与える質問を行っております。
本件につきまして、十月十一日の予算委員会で、警察庁の田中交通局長が委員の質問に対して交通事故の態様について答弁をされております。その答弁によりますと、「左カーブの国道上で、普通
乗用車が右側車線にはみ出し、対向してきた普通貨物車と衝突、普通乗用車を運転していた男性が亡くなった事故でございます」、このように答弁をしているわけでございます。
ところで、警察庁にお伺いをしたいのですが、この右側車線にはみ出すこと、これは「車両は、道路の中央から左の部分」、道路の中央または中央線から「左の部分を通行しなければならない。」と道路交通法十七条四項に規定されております。また、道交法十八条一項におきましては、車両は道路の左側に寄って通行しなければならない、こう規定されております。この規定との関係で、右側車線にはみ出すことはこの両規定に違反するのである、私はそう考えますが、いかがでしょうか。

○篠原説明員 お答えいたします。
道路交通法第十七条第四項では「車両は、道路の中央から左の部分を通行しなければならない。」と規定されておりまして、法律で定めております場合を除きまして、右側車線にはみ出して通行すればこの規定の違反となるわけでございますが、現在、事故原因につきましては捜査中でございます。

○大口委員 ここで、東京地裁の民事交通訴訟研究会でつくられております「民事交通訴訟における過失相殺率等の認定基準」、これがございます。この基準は、東京地方裁判所の民事第二十七部、民事交通部というところでございますが、そこの所属の裁判官が、昭和四十五年一月ころから、それまで発表されております過失相殺に関する基準を詳細に検討し、民事交通部の部内資料として残されておる全判例を調査の対象として、それまでの実務で行われておる慣行なども参考にして、綿密な議論を重ねて作成され、その後、この基準が順次改訂され、現在、一九九一年金訂版、最新のものがこれでございます。この基準は、私も弁護士をやっておりましたので、民事交通事件に携わる法律実務家にとって最も権威のある手引となっております。
この本の七十ページに、「左側部分通行は、運転者にとって信号表示に従うのと並ぶ最も基本的な規範であるから、左側部分通行の車両とセンターオーバーした対向車両とが接触した場合には、原則として、センターオーバーした車両の一方的過失によるものと考えられる。」こういう記述がございます。最高裁判所、この点確認をしたいと思います。

○今井最高裁判所長官代理者 今御指摘のありました文献の当該箇所でございますが、そのような記述があるということはそのとおりでございます。

○大口委員 本件の北海道大滝村の交通事故とよく似た事案がございます。昭和五十七年十一月二十九日、宇都宮地判の、判例でございます。貨物自動車が、センターラインをオーバーして進行してきた自動二輪車と衝突した事故であります。
この判決では、対向車の側の注意義務につきまして、センターラインを設けられている道路においては、対向車が自己の側に進出して走行することまでも予見すべき注意義務はない、このように判示しております。この判例について確認したいのですが、裁判所、よろしく。

○今井最高裁判所長官代理者 今お話のございましたのは、宇都宮地方裁判所の昭和五十七年十一月二十九日の判決であろうかと思います。
この事件は、貨物自動車が、センターラインをオーバーしてきました自動二輪車に衝突されてけがをした、それで車が大破したわけでありますが、その者がこの自動二輪車の運転手、この方は亡くなられたわけでありますが、その人の相続人でありましょうか、この人に対して損害賠償を求めたという事例でございます。
この判決文によりますと、この事案におきましては、自動二輪車の運転手に対しまして過失を認めまして、それでこの被害者といいますか、この原告については無過失だということで判断をされ、損害賠償を認容した、こういう判決がされておるところでございます。

○大口委員 本件の大滝村の事故におきましては、私が調査いたしましたところ、トラックを運転した人は右足、左ひざ、腰の打撲、首の外傷を受け、その所有するトラックが大破するなどの被害を受けました。
この被害弁償につきましては、これも調査いたしましたところ、死亡した僧侶の乗用車に掛けてあった任意保険で処理されております。保険会社は、死亡した僧侶に一〇〇%責任があるとして、車両の破損による損害や治療にかかる費用等もトラックを運転した人に支払われております。
したがって、本件交通事故は、センターラインを超えた相手方に一方的な過失がある。トラックを運転した人は本件事故で負傷し、その所有するトラックは廃車のやむなきに至っています。そういう点では、加害者というよりむしろ被害者であると私は思うわけでございます。
ところが、週刊新潮の九月一日号の見出しを見ますと、「大石寺僧侶を衝突死させた創価学会幹部」、こういうセンセーショナルな大見出し、これは一般の読者に、学会幹部であるトラックを運転した人がそのトラックを衝突させるように仕向けて大石寺僧侶を死亡させた加害者であるかのごとく、非常にそういう強く印象づけた断定的な表現になっておるわけでございます。
また、この大見出しは、記事中に使用されるだけではなくて、朝日、毎日、読売等の全国紙、それからこのトラックを運転していた人の地元紙である北海道新聞等の全国の主要な地方紙にも、平成六年八月二十五日から二十七日の朝刊に掲載された週刊新潮の広告においてもトップ見出しで大々的に掲載されているわけでございます。また、二千万人が見るといいます電車等の週刊誌の中づり広告にもセンセーショナルにこの見出しが宣伝されている、こういうことでございます。
ここで、このトラックを運転した人の我が党の石田委員長にあてた手紙がございます。御本人の了解を得ておりますので、ここで紹介いたします。
私にとって、事故にあったこと自体、大変ショックな出来事でした。それを、僧侶を「衝突死させた」とされ、「殺したのは私」ということにされたのです。「週刊新潮」の記事によって、私と私の家族が、どれほど傷付いたか、どこに、この怒りをぶつけたらいいのか、私も家族も、その憤りを忘れられる日は一日もありません。このように切々と訴えております。
ですから、私は、この週刊誌等の報道と人権侵害との、本当に法務委員会の我々が真剣に考えていかなければいけない、そう思っておるわけでございます。
そこで、十月十七日の参議院の予算委員会で事実確認をされましたが、このトラックを運転した人が新潮社を相手に、今札幌地方裁判所の苫小牧支部におきまして損害賠償と謝罪広告を掲載せよという訴訟を提起しております。そこで、法務局といたしまして、本件のようなマスコミによる私人の名誉棄損につきまして人権侵犯事件として立件できないのか、見解をお伺いしたいと思います。

○筧政府委員 私ども、一般論といたしましては、誤った内容のマスコミの報道によって私人に対する人権が侵害されたという場合には、法務省の人権擁護機関としては、人権侵犯事件として調査し、適切に処理するということにいたしております。これはかって、写真週刊誌でございましたけれども、週刊誌の報道を人権侵犯事件として取り上げて人権侵犯処理規程に基づく処置をしたということもあったわけでございます。
しかしながら、本件のような報道記事という事案に関しましては、一方において、報道の自由にかかわるという問題でもございますので、公的機関がこの問題について直接関与するよりは、まずその報道の主体であるところのマスコミが自主的に取り組んで解決されるということが望ましいのであるというふうに考えております。

○大口委員 次に、国会議員が国会質問によって他人の名誉、プライバシー等の人権を侵害する場合、政治的責任だとかあるいは道義上の責任、こ
れは当然負うことになるわけでございます。ところが、名誉棄損などの民事、刑事上の責任につきましては、憲法五十一条の免責特権によって問われないとするのが一般的な考えでございます。
これに対して京都大学の法学部の佐藤幸治教授は、その著書「憲法」の中で、
今日、会議における発言が、直ちにマス・メディアを通じて広く流布される状況の下に、例えば、議員の発言によって著しく名誉を毅損された一般の国民にとって、全く法的救済の途がないというのはいかがなものかという疑問もありえよう。つまり、この免責特権は絶対的なものか、あるいは、国民の基本的人権を侵害する場合において厳格な要件の下に例外が認められうるか、また、当該議員個人の法的責任問題とは別に、国として賠償責任を負うべきではないか、という問題があると指摘されております。
ここに札幌地裁の、平成元年(ワ)八一三号損害賠償請求事件の判決がございます。国会議員の議院で行った演説が私人の名誉、プライバシーを侵害するとして、国と発言者である国会議員が提訴された事案でございます。同判決によりますと、
憲法五十一条は、国会議員が議院で行った演説等に違法の点があっても、民事・刑事等の法的責任を負わない旨を規定したのみで、右違法がなくなる等の趣旨を含むものでないことは明らかである。したがって、憲法五十一条が妥当したとしても、そのことから当然に国家賠償法一条一項所定の「違法」がないことにはならない。また、議員である被告は、右発言にかかる事実関係を十分調査してその真実であることを確認したうえ右発言をすべき職務上の法的義務を負うと解するのが相当である。したがって、有事実が真実でなく虚偽であり、同被告がそのことを知っていた場合又は右事実関係の十分な調査をしないまま真実であるか否かの確認をせず有事実を真実であると軽言した場合等に職務上の法的義務に反する違法があるといえる。とあります。
最高裁判所に、こういう判決があることを確認します。

○今井最高裁判所長官代理者 今御指摘のありました札幌地裁の判決でございますが、そのような判決があったということは事実でございます。

○大口委員 この判決の論理に立って、国会議員が他人の名誉、プライバシーを侵害する違法な国会質問を行った場合、被害者は国家賠償法に基づき、国に対し、損害賠償請求訴訟を起こすことができます。しかし、一たん侵害された名誉やプライバシーを国家賠償によって十分回復できるかというと、これは不可能であると考えます。
私は、札幌地裁の判決も指摘しましたように、国会議員は、他人の名誉、プライバシーを侵害しないよう、議院における発言について注意すべき職務上の法的義務があると考えます。
さらに、国会も、国会議員が他人の名誉、プライバシーを害する発言を制止し、または取り消し、国会質問による人権侵害を未然に防止しなければならない責任があると考えます。
国会法百十九条には「各議院において、無礼の言を用い、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。」とあります。また、衆議院規則七十一条に「委員が」「議院の品位を傷つけるときは、委員長は、これを制止し、又は発言を取り消させる。」とあります。いわゆる不穏当発言の規定でございます。
国会質問にもおのずから制約があります。そこで、衆議院法制局にお伺いしたいのですが、国会議員が政治倫理あるいは行政上の責任のない私人の名誉、プライバシーを害する発言は、国会法百十九条に違反し、衆議院規則七十一条の不穏当発言として制止、取り消しができますか。

○早川法制局参事 国会法及び衆議院規則の一般的な解釈としてお答え申し上げます。
国会法百十九条が他人の私生活にわたる言論を禁止しておりますのは、個人のプライバシーを保護する趣旨であると考えられます。したがいまして、私人のプライバシーを害し、名誉を毀損する発言をすれば、同条に反するもの考えられます。
衆議院規則七十一条は、委員長が、国会法、衆議院規則等に違反する発言を制止し、または取り消させることを定めております。したがいまして、私人のプライバシーを害し、名誉を毅損する発言につきましては、委員長はこれを制止し、または取り消させることができることとなります。

○大口委員 十月十一日のさきの自民党委員の発言は、みずからも認めているように、事実を十分調査せず、人の名誉を害する週刊誌のセンセーショナルな大見出しや怪文書ともいうべき号外を引用し、それを公共放送に乗せ、一般に流布させ、そして政治倫理あるいは行政上の責任のない庶民の名誉や人権を著しく侵害したものと解します。
私は、かかる自民党委員の予算委員会における発言は、国会法百十九条違反の疑いがあり、また衆議院規則七十一条の不穏当発言に該当するのではないか、こう考えておるわけです。
ここで、再度、トラックを運転した人の手紙を紹介いたします。
私を殺人者扱いした週刊誌の記事が、なんと国会の予算委員会の場で資料として、居並ぶ大臣や議員に配られ、そのまま読み上げられました。
NHKのテレビ中継で全国放送の最中に、私に関するデタラメな記事の内容が、一方的に国会でいかにも本当であるかのようにして紹介されました。
私は、怒りで体が震えました。こんなことが許されるのでしょうか。
これまで、まじめに働き、妻子を養って一生懸命生きてきました。人から後ろ指をさされるようなことは全くしていません。
何の罪もない私を、国会議員が、国会という厳粛な場で、殺人者呼ばわりするとは、一体、どういうことでしょうか。
これでは、近所の人たちから、国会で読み上げられるということは、きっと本当に、そうだったのかも知れないと思われても仕方ありません。週刊誌のコピーを振りかざしながら代議士が質問する様子がテレビを通じて全国に流れたことで、私だけではなく、妻や子供、また両親や親戚が大変つらい思いをしています。私は、このトラックを運転した人の悲痛な叫びというものを、私たち国会議員は真摯に受けとめなければならないと思います。
そこで、最後に、衆議院規則六十六条に「委員長はこ「議事を整理し、秩序を保持しこと委員長の一般的権限を規定しております。この規定の内容について、委員会において、委員等が発言の都合上、図表、地図、物品等の提示または掲示をしようとするときは、あらかじめ委員長の許可を受けることが衆議院委員会の先例になっております。
委員が委員長の許可を受けることなく録音テープを委員会で流すことは、衆議院規則六十六条に基づく先例に違反すると考えますが、いかがでございましょうか、衆議院法制局。

○早川法制局参事 先例によりますと、委員会において物品等の提示をしようとするときは委員長の許可を受けることとなっておりまして、録音テープもこれに含まれるのではないかというふうに思われます。

○大口委員 平成六年五月二十四日、衆議院予算委員会で、今現職の閣僚である議員が、テレビという公共電波を利用して、不特定の視聴者に対し、委員長の許可を受けることなく、民間人の発言が何者かによって盗みどりされた録音テープを流し、その発言を流布させようとしました。かかる行為は極めて不当であり、民間人の人権を著しく侵害し、委員会の秩序を甚だしく乱すものであって、衆議院規則六十六条に基づく先例に違反すると私は考えます。
以上、最近、週刊誌等のマスコミ報道や国会質問によって、目に余る名誉あるいはプライバシーの侵害が行われております。人権擁護の観点から、
この問題については、改革におきましても、報道と人権との観点から、これからもしっかりと議論をしてまいりたいと思います。
最後に、人権擁護を所掌する大臣であられる法務大臣に、マスコミ報道と人権、あるいは国会質問の乱用による一般国民の名誉、プライバシーの侵害について、御所見をお願いしたいと思います。

○前田国務大臣 先生今御指摘の、誤った内容のマスコミの報道に対する私人の人権侵害、こういう御質問でございますが、先ほど人権擁護局長が申し上げたとおりでございますが、一般論としては、私人に対する人権が侵害された場合は、法務省にございます人権擁護機関、ここで侵犯事件として調査をして適切に処理をいたしております。
しかし、今回特に、これは週刊誌という報道機関でございまして、報道の自由にかかわる、強いて言えば知る権利でございますとかいろいろございます。これらにかかわるものでございますので、公的機関、少しオーバーに申し上げれば国家機関が、権力が直接関与するということについては避けなければならない、まず第一義的にそのように考えておりまして、マスコミがまず自主的にお取り組みいただいて解決をしていただくことが望ましいであろう、かように考えております。
それから、国会内、先般の予算委員会のことをおっしゃっておられるわけでございますが、議院の中における議員の発言活動等についてでございますが、これは先ほど衆議院の事務当局からもお話が出ておりますが、院において自律的に御検討いただかなければならないことでございまして、法務大臣として院のことにつきまして意見を申し述べることは差し控えなければならない、かように考えております。

○大口委員 報道の自由、これは当然民主主義社会におきましては堅持していかなければならない、それは当然のことでございます。ただ、もう一つの人権としまして、名誉あるいはプライバシーというものがございます。特に、一般国民は反論権というのがございません。週刊誌に報道される、あるいは国会質問によってテレビ放映されて、それが社会に流布する。そういうときに、反論権のない一般国民はどうしていくのか、裁判によってしか、損害賠償請求によってしかこれが守れないというのであるならば、それは非常に不当なことである、そういうことを私は指摘したいと考えております。
そういうことで、また法務大臣にもこの点よろしくお願いしたいと思います。きょうはこれで終わります。

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