大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2007年5月23日

166-衆-法務委員会-19号 平成19年05月23日

○大口委員 公明党の大口でございます。
犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について、質疑をしてまいりたいと思います。
我が国における犯罪被害者施策は、新宿西口バス放火事件を契機に、昭和五十五年の犯罪被害者等給付法の制定によって始まり、平成十二年には犯罪被害者保護二法が制定され、同十六年十二月には、犯罪被害者等の強い声を受けて、議員立法により犯罪被害者等基本法が制定され、平成十七年十二月、犯罪被害者等基本計画が閣議決定され、これにより、省庁横断的な犯罪被害者等のための施策が着実に進み、これまで行われてきた犯罪被害者等への支援について、国が配慮するものから、被害者自身が有する尊厳が尊重され、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利として位置づけられたのであります。
捜査や公訴提起は、公の秩序維持のために行うものであって、被害者のために行うものではないという平成二年二月の最高裁判決の刑訴法の考え方から見れば、画期的な転換であるとも考えております。
我が党は、これまで一貫して、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るため、被害者団体の方々を初め、現場の御意見を直接伺いながら、施策の実現に積極的に取り組んでまいりました。この基本計画の策定についても取り組んできたわけでございます。本法律案の柱である犯罪被害者等の刑事手続参加制度に関して、我々は、マニフェストにもこの制度の創設を掲げており、このたびの法案提出に当たり、感慨深く受けとめております。
これまでの犯罪被害者支援の歴史を踏まえ、犯罪被害者等基本計画に明記されているように、捜査や刑事裁判等に対し、事件の当事者として、事件の真相を知りたい、善悪と責任を明らかにしてもらいたい、自己の、あるいは家族の名誉を回復してほしい等の犯罪被害者等の方々の思いを考えると、本法律案が成立すればこれまでの取り組みが一段と進むことになり、その意義は大きいと考えるわけでございますけれども、このような点についてどうお考えか、法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

○長勢国務大臣 今お話しのとおり、かねてから大口先生を初め、被害者の権利利益の保護に大変御尽力をされてこられたことに対しまして、敬意を表するものでございます。
今お話しのとおりでありまして、本法律案は、議員立法によりほぼ全会一致で平成十六年にできました犯罪被害者等基本法、それに基づいて平成十七年に犯罪被害者等基本計画が策定されて、それを受けて、被害者参加の制度や損害賠償命令の制度を設けることなどを内容とする法律案でございます。
今回、この被害者参加の制度を設けることにより、被害者の方々が刑事裁判に適切に関与することができるようになりますので、被害者の方々の名誉の回復や被害からの立ち直りにも資するものであると考えております。
また、刑事裁判が被害者の方々の心情や意見をも十分に踏まえた上でなされることがより明確となり、刑事司法に対する被害者を初めとする国民の信頼を一層確保するとともに、適正な科刑の実現にも資することになるものと考えております。
このように、本法律案は、被害者の方々の権利利益の保護を一層図る上で非常に重要な意義を有するものと考えております。

○大口委員 ドイツやフランスなどでも犯罪被害者が刑事裁判に直接関与することのできる制度があるわけでございますけれども、こういうドイツやフランスの運用の状況についてお伺いしたいと思います。

○小津政府参考人 お答え申し上げます。
諸外国における制度の運用状況につきましては、必ずしもその詳細を承知しているわけではございませんが、まずお尋ねのドイツにおきましては、強姦、傷害、監禁等の一定の犯罪の被害者や違法行為により死亡した者の遺族等について公訴参加が認められておりまして、二〇〇五年には一万件を超える事件について公訴参加が行われていると承知しております。
フランスにおきましては、被害者は、私訴原告人となった場合、当事者として刑事裁判に関与することが認められておりまして、具体的な統計は見当たらないのでございますが、多くの事件において私訴原告人が刑事裁判に関与しているものと承知しております。

○大口委員 本法律案の柱は、被害者等が刑事裁判に参加する制度の導入であるわけでございます。今大臣からもその意義についてお話があったわけでございますけれども、本制度は、事件の当事者である犯罪被害者等が直接刑事手続に参加するところに犯罪被害者等の権利利益の回復にとって重要な意義があるとの認識から、その導入を求める声が多く寄せられていたわけであります。
また、被告事件について、公判廷に出席して直接意見を述べ、証人尋問、被告人質問等をすることができることにより、犯罪被害者等の生の声を刑事裁判に反映させることができ、刑事司法は犯罪被害者等のためにも存在することを明確にしたものであると賛同の声が寄せられているわけであります。
椎橋隆幸中央大学教授が、毎日新聞の本年三月二十四日付で述べておられることを紹介します。事件の当事者である被害者等が事件の推移に関心を持ち、直接関与したいという気持ちは尊重すべきであり、適切な手続への関与が被害者等の名誉の回復や立ち直りに資すると言える、さらに、事件の利害関係者の意見をより反映した刑事裁判となり国民の信頼が増し、場合によっては被害者等の意見を直接聞くことにより被告の反省が深まり、その更生に資することもあり得る、こう述べておられるわけでございます。
他方、犯罪被害者等によって感情的な訴訟活動がなされると、公平で公正な裁判を阻害することになるのではないかとの懸念も寄せられております。この点についてどのようにお考えか、法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

○長勢国務大臣 裁判が感情的な形で混乱するということはあってはならないことだと思います。
現在の刑事訴訟におきましても、被害者の方々が証人として証言することがあるわけでありますが、また、希望する場合には、処罰感情などの心情を中心とする意見を法廷で陳述することも認められておるわけでありますが、そのような際に、いたずらに感情的な言動がなされたり、訴訟手続に混乱が生じているわけではないというふうに承知をしております。
その上で、今回、被害者参加の制度を設けるわけでございますので、そこにおいては、万が一にもそういう感情的といったような弊害が生ずることがないようにしなければなりません。
そこで、例えば、被害者参加人は、被告人質問等を行おうとする場合には、あらかじめその内容を明らかにした上で、検察官を経由して申し出なければならないこととしているなど、被害者参加人がいたずらに感情的な訴訟活動を行うことがないよう、検察官があらかじめ適切に対処することができる仕組みとするなどのさまざまな措置を講じているわけでございまして、本制度のもとで被害者の方々が刑事裁判へ参加することを認めたからといって、いたずらに感情的な訴訟活動が行われて混乱するおそれはないものというふうに考えております。

○大口委員 本制度の施行は、これが成立すれば、平成二十一年に始まる裁判員制度の導入の約半年前になると伺っております。裁判員制度は、国民が刑事裁判において裁判官とともに審理に参加する制度でありますが、裁判員が審理をする刑事裁判に犯罪被害者等が参加する場合、被害者等による感情的な質問や意見の陳述が裁判員の心証形成に多大な影響を及ぼすのではないか、裁判員は客観的な証拠と被害者の主張とを峻別できないのではないか、こういう懸念があると聞いておりますが、この点について法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

○長勢国務大臣 感情的な質問や陳述が行えないようにするので、そういうおそれはないというふうに今申し上げたとおりでございます。
裁判員制度は、広く国民の感覚を裁判の内容に反映させることにより、司法に対する国民の理解や支持を深めるために導入されるものでありますし、裁判員の感覚を刑事裁判に適切に反映させることこそが適正な裁判の実現につながるものと考えております。
そして、被害者参加人等のする証人や被告人に対する質問自体や被害者参加人等による事実または法律の適用についての意見の陳述というものはいずれも証拠とはならないものですが、このような証拠とはならない質問や意見の陳述等と証拠とを峻別して裁判を行うべきことについては、お話しのとおりでありまして、評議等の場で裁判官が裁判員に十分説明して理解していただく、こういうことによって審理、判断の適正を確保することができるというふうに考えております。
そういう次第でございますので、被害者参加制度を設けたからといって裁判員に不当な影響を及ぼすということにはならないというふうに考えております。

○大口委員 犯罪被害者等に、被告人質問、それから証人尋問、求刑意見も含む広範な訴訟活動を容認することは、被害実態の解明に必要な資料の提供の役割を超えて、主体的にその応報感情に基づく処罰を求める地位に立たせることになり、理論的には国家刑罰権の一翼を担わせることになりはしないか、こういう指摘もありますが、この点についての法務大臣の御見解はいかがでございましょうか。

○長勢国務大臣 刑事訴訟法では、刑罰権を私人が行使するということは認めていないわけで、被告人の有罪、無罪を決定する権限は裁判所が有しております。また、公訴を提起する権限や提起された公訴に基づいて主張、立証を行う権限は検察官のみが有しておるわけでありますけれども、本法律案による被害者参加の制度は、これらの点を何ら変更するものではございません。
すなわち、本制度においては、被害者参加人等は、刑事裁判の審判の対象を設定することは許されておらないわけでありますし、公判請求権、訴因設定権、上訴権等は認められていませんし、このような権限に深くかかわる証拠調べ請求権も認められておりません。
なお、被害者参加人等は、被告人質問等の一定の訴訟活動を行うことが認められるものの、これらは一定の要件のもとで裁判所が相当と認めて許可した場合に限って行い得ることになるものでございます。
このように、被害者参加の制度は、現在の刑事訴訟法の基本的な構造を維持しつつ、これに抵触しない範囲内で被害者参加人等に一定の限定的な訴訟活動を行うことを認めるものでありますので、国家刑罰権の行使の一端を被害者に担わせるというものではないと考えます。

○大口委員 ドイツのように公判請求権、訴因設定権、証拠調べ請求権、上訴権等の訴訟当事者が持つ権利が本法律案で規定されなかったわけですが、これについては非常に要望もあるわけでありますが、これを認めなかった理由についてお伺いしたいと思います。

○小津政府参考人 まず、公判請求権につきましては、刑事訴訟法がいわゆる国家訴追主義を採用しておりますのは、公訴の提起が、法と証拠に基づき、客観的かつ公平に行われるようにするためであると考えられているところでございまして、その基本があるわけでございます。
また、平成十六年には、検察官による起訴、不起訴の判断に民意を反映させるための制度といたしまして、検察審査会の起訴議決に拘束力を認める制度が新設されまして、平成二十一年までにこの制度が実施されるということとなっておるわけでございます。
このような点を総合的に考えまして、この点を被害者の方に認めるのは相当ではないと考えられたところでございます。
次に、訴因の設定権につきましては、仮に被害者の方に認めるとなりますと、実際には公判請求権を認めるのと同様になるわけでございます。また、争点や審理の対象がふえることによりまして刑事裁判が複雑化することも考えられる、このようなことも加わりまして、これを認めるのは相当ではないと考えられました。
上訴権につきましては、被告人のほか、検察官にも上訴権が認められておりますが、その理由は、法と証拠に基づき、事実認定、法の適用、刑の量定等に関する原判決の誤りを是正するためであると考えられまして、公判請求権と同様に、客観的かつ公平に行われるべきものであると考えられるわけでございます。
最後に、証拠調べ請求権でございます。これは、被害者等の方に認めることといたしますと、検察官と被害者等との間に主張、立証の抵触が生じることにより、真実の発見が困難になるということでございます。また、その反面として、被告人側が利益を得るということになる場合もあろうかとも思います。また、検察官や弁護人が取り調べの必要があるとは考えていない証人等の取り調べが行われますことは、証人等の負担や迅速な裁判の要請との関係でも問題がある、このように考えられたことから、これを認めるのは相当でないということになったわけでございます。

○大口委員 被害者参加制度の対象でございますけれども、故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、強制わいせつ及び強姦の罪、業務上過失致死傷等の罪、自動車運転過失致死傷罪も成立して含まれることになるわけですけれども、逮捕及び監禁の罪並びに略取、誘拐及び人身売買の罪等に係る被告事件に限定されているのは、どういう理由でありますか。
また、財産犯を一律に対象犯罪から除外した理由、それこそ、老後の財産を一切だまされてとられてしまったというふうな方々もいらっしゃるわけでございますけれども、なぜか。
さらに、将来的には、犯罪被害者等が刑事裁判に参加できる対象犯罪が拡張されることも考えられるのか。この三点についてお伺いしたいと思います。

○小津政府参考人 犯罪被害者の方、それぞれの事件によっていろいろな被害を受けておられるわけでございます。その深刻さ等々、確かに、一律に罪種で考えられるかという問題があることは、私どもも承知しておるわけでございます。
ただ、制度として構築いたしますときに、どのような考え方で今回そのように区切ったかということについて御説明申し上げます。
被害者参加の制度は、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」という基本法が定める理念に基づくものでございます。個人の尊厳の根幹、これは何といいましても、人の生命身体、そして自由に害をこうむったということが最も根幹をなすものではないかと考えられまして、そのような事件の被害者の方々については広く対象とすることがその趣旨に合致するだろうと考えられました。
また、本制度に対する被害者の方々のニーズを判断いたしますためには、現行法上の意見陳述制度の運用状況が参考になると考えられるわけでございますが、当局において行った調査の結果によりますと、意見陳述の申し出を行った方の約七割が遺族の方々でございます。また、被害者が死傷した事件のほか、強姦、強制わいせつ、逮捕監禁など、被害者等が身体活動等の自由または性的自由に害をこうむった事案について、やはり意見陳述の申し出の比率が比較的高いということが明らかになりました。
そこで、本制度を設ける趣旨でございますとか被害者の方のニーズなどを総合的に考慮いたしまして、今申し上げましたような、本法律案の定めるところに限らせていただいたということでございます。
以上でございます。

○大口委員 今後、拡張されることも考えられるかということについては、今の段階ではちょっと答えられないということですね。
次に、法律案の三百十六条の三十三の一項で、裁判所は、相当と認めるときは、被害者等の被告事件の手続への参加を許すものとする、こう規定しているわけでありますが、それでは、相当と認められない場合というのはどういうものを想定しているのか、お伺いしたいと思います。

○小津政府参考人 被害者の方々から参加の申し出がありましたときに、裁判所は、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮して、相当と認めるときに参加を許すということでございます。
参加を許されない場合というのは、例えばどういうことが想定されるかということでございます。もちろん、個別の事情によるわけでございますが、例えば、暴力団の対立抗争の事件のように、被害者等が被告事件の手続に参加して訴訟活動を行うことを認めると法廷の秩序が乱されるようなおそれがある、こういう事件もあろうかと思います。あるいは、被告人と被害者の方がかねてから非常に険悪な間柄になっていて、いわば一触即発のような関係があるという場合もあるいはあるかもしれません。そのような、事件の内容あるいはその他もろもろの事情を考慮して、裁判所で判断されるということでございます。

○大口委員 ただ、これはせっかく認められた権利でありますので、被害者の権利を狭めるようなことがあってはいけないと思っておりますので、ここら辺はやはり被害者の権利を最大限認める方向で考えていただきたいと思います。
次に、被害者参加人は公判期日に出席することが認められているわけでありますが、具体的に法廷のどの席に座ることになるのか、それから、法廷のさく、バーの内側に座ることが想定されていると私は思っておりますけれども、例えば遺影等の持ち込みが許されることになるのか、お伺いしたいと思います。

○小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
まず、座る場所でございますが、具体的に被害者参加人の方にどこに座っていただくかは、裁判体の訴訟指揮の問題でございます。
ただ、法制審議会での議論を見ますと、例えば、被害者参加人が被告人に対して質問をするという制度については、質問が行われている間も検察官と被害者参加人が十分にコミュニケーションをとった上で、被害者参加人が質問の申し出をした事項について検察官がみずから質問をすることが適当であるとの結論に至った場合には、まずは検察官による質問の結果を見定めた上で、必要があれば再度申し出を行うことになるということであったと承知しております。
そうだといたしますと、被害者参加人には、検察官との間でそのようなコミュニケーションがとれるような位置に座っていただくということになると考えております。
それから、遺影の持ち込みの御質問でございますが、法制審議会の議論では、被害者が刑事裁判に参加する場合には、傍聴席で傍聴する場合とは異なりまして、被害者参加人として一定の立場で訴訟に関与するわけでございますので、バーの内側に遺影を持ち込むようなことについてもおのずから制約を受けるとの議論がなされたものと承知いたしております。
あくまで裁判体の訴訟指揮の問題でございますが、将来、被害者参加人からバーの中に遺影を持ち込みたいとの要望があった場合には、このような法制審議会における議論も踏まえて、適切に判断されるものと考えております。

○大口委員 これは三百十六条の三十四の四項でありますが、裁判所は、相当でないと認めるときは、公判期日への出席を許さないことができる、こういう規定がございますが、これはどのような場合を想定されておりますか。

○小津政府参考人 これは、被害者参加が許された場合に、特定の公判期日についてだけ出席を許さない、こういうことでございますけれども、もちろんこれも個別の案件によりますけれども、例えば、被害者参加人が後に証人として出廷することが予定されている場合に、その証言の信用性を確保するために、そのことに関するほかの証人の尋問が実施されている間は公判期日に出席することが相当でないと判断されることがあるかもしれません。
あるいは、多数の被害者参加人の方が、ある期日に皆さん全員が出席したいということで、これはできるだけ調整していただくわけでございますけれども、なかなか調整がつかない、他方で法廷の広さ等には限りがあるということで、これはその期日では相当ではないということもあるいはあるかもしれないというふうなことを念頭に置いております。

○大口委員 特に御説明の後段の部分、これはやはり、裁判所の設備の問題もあるわけですけれども、できるだけ権利が認められるように、整備をよろしくお願いしたいなと思っております。
次に、ことしの五月十七日、衆議院本会議で横山北斗議員から、公判前整理手続や期日間整理手続に被害者参加人が参加できるのかという質問がありました。これに対して、公判前整理手続や期日間整理手続は、基本的には、法律の専門家である裁判官、検察官及び弁護人による率直な意見交換を通じて争点を整理し、審理計画を策定する場であり、公判前整理手続等への被害者の方々の出席を認める制度とはいたしておりません、こういう答弁であったわけですね。
それでは、例えば、被害者参加人から委託を受けた法律の専門家である弁護士、今の理由であれば、こういう人は、法律的な専門家でありますので、参加できるのではないかな、こう思うわけでございます。
いずれにしましても、もう少し詳しく、犯罪被害者の方が参加できない理由は何なのか、そして、委託を受けた弁護士はどうなのかについてお伺いしたいと思います。

○小津政府参考人 公判前整理手続や期日間整理手続に、被害者参加人も、その委託を受けた弁護士も参加できないという理由につきましては、委員御指摘のように、既に大臣から答弁させていただいたことが一つの基本的な理由でございます。
繰り返しになりますが、その手続は、基本的には、法律の専門家である裁判官、検察官、弁護人が率直な意見交換をする、それを通じて審理計画を策定する場でございますから、被害者の方々が基本的に法律の専門家ではないということはございますけれども、それでは、その委託を受けた弁護士さんがその場にいるということが、そういう意味での率直な意見交換という観点からしてどうであろうかということもあるように思われます。
それから、公判前整理手続に出席いたしますと、そこで検察官や被告人、弁護人の主張、それから、取り調べ請求予定の証拠そのものがその場で明らかにされることがあるわけでございます。そのようないろいろな情報に接するということが、仮にその後、被害者参加人の方が証人として証言するということになった場合、その信用性という問題も出てきはしないか、このような観点もあろうかと思います。
そういうようなこともございまして、これらの手続には出席できないということにしたわけでございますが、他方、被害者参加人の方々から要望がある場合には、検察官が公判前整理手続等の状況や内容についても十分に説明をして、把握していただくことが適当ではないかと考えられております。
ちなみに、こうした点も考慮いたしまして、検察におきましては、公判前整理手続、既に若干のケースについてやっておりますので、被害者の方々に対してもあらかじめいろいろと説明を行うなどの取り組みを始めているものと承知しております。

○大口委員 次に、三百十六条の三十六の証人尋問についてお伺いをいたします。
被害者参加人による証人尋問の対象となる事項を、犯罪事実に関するものを除く情状に関する事項、これは示談や謝罪の状況等だと聞いておりますが、これについて、証人の供述の証明力を争うために必要な事項に限定した趣旨は何でしょうか。

○小津政府参考人 被害者参加人の方に証人尋問を認めるといたしましても、犯罪事実に関する検察官の主張、立証と矛盾するような内容が行われて真相の解明が困難となったり、被害者自身の証言の信用性が損なわれることになってはいけないということがございまして、やはりそのような観点からしますと、犯罪事実に関係しない情状に関する事項について尋問を限らせていただくというのが相当ではないかということでございます。
また、証人の方の負担という点から考えましても、これを過度に重いものにしないようにする必要があるわけでございますが、証人が既に行った証言をいわば弾劾する事項について尋問を認めるということに限ることによって、その負担が過度に重いものになることを避けることができるのではないか、また、被害者の方々、さまざまな御要望はございますけれども、多くは、いわゆる情状証人の証言について納得できないので、自分の口からそれを弾劾したいという御意見が強いのではないかというふうにも認識しておるところでございまして、このような考え方でこの制度を立案いたしました。

○大口委員 三百十六条の三十七の被告人質問についてお伺いしたいと思いますけれども、この法律の規定による意見の陳述をするために必要があると認める場合としているわけですが、この趣旨は何なのか。
そして、法制審の刑事法部会で、被告人質問が認められる要件が厳し過ぎるのではないか、こういう指摘があるわけですが、その点についての見解。例えば、意見陳述のためというだけではなく、真相を究明するため、公訴事実を確かめたいという部分もあるし、名誉回復など、犯罪被害者等の尊厳を守りたいのでぜひとも聞いておきたい、こういう場合もあると思うんですね。これらの点についてお伺いしたいと思います。

○小津政府参考人 まず、意見の陳述をするために必要があると認める場合という要件を設定いたしましたのは、どのような理由で被告人に質問するかということを、この新しい制度の手続の中で位置づけをはっきりさせた上で被告人に質問していただくということが相当ではないかと考えたわけでございます。
今回の改正案の中には、現行法におきます意見陳述に加えまして、事実または法律の適用についての意見の陳述も別途行うことが認められるようになったわけでございますので、事実関係について確かめたいということにつきましては、今回、そのような点についても意見陳述ができるようになりますので、そのような質問をすることも可能になるということでございまして、これを考えますと、これが厳し過ぎる要件であるということにはならないのではないかと考えたわけでございます。

○大口委員 次に、三百十六条の三十七でありますけれども、被害者参加人による被告人質問について、質問事項を明らかにして検察官に申し出をし、検察官は、意見を付して裁判所に通知するものとしたわけですが、その趣旨は何なのか。
被害者参加人による被告人質問の申し出があった場合において、検察官が申し出があった事項のすべてについてみずから質問をした場合には、被害者等はみずから被告人質問をすることが一切許されないことになるのか、また、被害者参加人による証人尋問の申し出があった場合も同様の扱いになるのか、被害者参加人が結果として被告人質問や証人尋問ができなかった場合、検察官はどういうふうに対応するのかについてお伺いしたいと思います。

○小津政府参考人 被告人質問につきましても、証人尋問につきましても、あらかじめ検察官の方に言っていただくということでございますけれども、これは、どのような内容について質問をするかということを明らかにしていただくことによりまして、法律上許されないような質問がなされるおそれはないだろうかとか、その他いろいろな点で支障が生じないか、また、検察官が、自分でやった方がいろいろな意味で適切かどうかということをまず判断し、また、参加人の方の申し出を伝える場合にも、適切な意見を裁判所に言うことができるというふうに考えるわけでございます。
もちろん、あらかじめと申しますのは、その前日にということなどに限っているわけではございませんので、その場で必要が生じた場合には検察官に話をしていただいて打ち合わせをし、その打ち合わせがちょっと時間がかかるということであれば、本当にしばらくの間、ちょっと休廷してくださいということもあり得るかもしれませんけれども、いずれにしましても、そのことで被害者の方に過度の不都合にはならないと思っております。
確かに、この制度上、被害者の方が聞きたいということについて聞いてみたら、結局、検察官が、では全部私がやりますよということになることはあり得ると思います。ただ、その例に至る過程で検察官が十分被害者の方とお話をして、納得をしていただいて、そういうふうになると思います。検察官がやってもいいけれども、ここはやはり心情等を考えればこの方にやっていただいた方がいいという場合には、やっていただくことになるのかなとも思いますので、そこは検察官が被害者と十分にコミュニケーションをとって運用していくということで解決していきたいと思っています。

○大口委員 今の点は、権利として認められているわけですので、やはり検察官も十分被害者の権利というものを尊重していただきたいなと思っております。
次に、被害者参加人等の弁論としての意見陳述は、これは三百十六条の三十八でありますが、訴因として特定された事実の範囲内で許されるということでありますが、例えば業務上過失致死、自動車運転過失致死罪の被告事件について、危険運転致死という罪名の異なる意見を述べることは許されないという理解でよいのか、また、傷害致死罪で起訴された事件において、この事件は殺人と同等であるとの意見を述べることはどうか、お伺いしたいと思います。

○小津政府参考人 これは、訴因として特定された事実の範囲内ということでございますので、いわば法律論として、これは業過ではなくて危険運転致死傷罪だということを述べられることは許されないということになるわけでございます。
ただ、委員御指摘の、例えば傷害致死について、自分としては殺人と同じようなものだ、そのような趣旨のことを述べられるのが、そういう気持ちであるという心情を述べておられるのか、法律的な、訴因を超えた意見を言っておられるのかということについて、その場で裁判所で判断されることになるのかなと思うわけでございます。

○大口委員 被害者参加制度は、被害者から委託を受けた弁護士も刑事裁判に参加できることになっているわけですが、経済的余裕のない被害者は、公費で委託できなければ弁護士を依頼できず、被害者が一人で公判期日に出席しなければならないために、この制度が利用されにくくなると予想されるわけでございます。犯罪被害者の方々から、参加したくても心の傷を負っていて参加できない、次々と進む審理についていけるのか、みずからの立ち居振る舞いが裁判員の判断を左右してしまい、望む判決が得られなくなるのではないか、こういう不安の声も上がっているわけであります。
公費による支援弁護士の制度、公的弁護人制度の準備状況はどうなっているのか。現在、ドイツ、イタリア、スウェーデンのように、一定の基準を設け、国費により被害者へ弁護士をつける制度を導入している国もあります。内閣府を中心に、経済的支援に関する検討会を設け、議論が行われていると伺っていますが、諸外国の事例を含めて、どのような検討を行っているのか、検討状況と見解をお伺いしたいと思います。
また、被害者参加制度を真に被害者の権利利益の保護のための制度とするためには、公的弁護人制度の創設が重要であると私は考えております。そういう点で、法務大臣の見解もお伺いしたいと思います。簡潔にお願いします。

○荒木政府参考人 お答えを申し上げます。
昨年の四月、基本計画に基づきまして、被害者の方あるいは有識者、関係省庁から成ります経済的支援に関する検討会を設置いたしまして、御指摘の公的弁護人制度の導入の是非につきましても検討を進めてまいりました。
来月、中間取りまとめを行いまして、国民からの意見募集を行いました上で最終取りまとめを行いたいと考えておりますけれども、その中で、公的弁護人制度の導入の是非につきましては、犯罪被害者等が刑事裁判に参加する制度、ただいま議論になっておりますこの制度に伴う公費による弁護士選任について、関連法案の国会審議状況等を注視しつつ、制度導入に向けて検討を行うべきであるとの取りまとめを行う方向で議論がなされているところでございます。

○長勢国務大臣 被害者の方々に対して弁護士によって必要な法的支援が行われるということは、大変重要なことであると考えております。そういう意味で、御指摘のような、公費で支援を行うという制度を設けることについては、そういう要望も強いというふうに伺っておるところでございますが、今説明がありましたように、現在、検討会で検討中でございますので、法務省としても、その検討結果を踏まえて適切に対処してまいりたいと考えております。

○大口委員 もう一つの柱である、損害賠償請求に関して刑事手続の成果を利用する附帯私訴の制度、これも非常に画期的な制度であり、今回、法律案に盛り込まれておるわけでございます。そしてまた、対象となる犯罪が限定されておりますので、この附帯私訴についてもいろいろ課題があるわけでございます。
いろいろなことを考えますと、裁判員制度の法律について三年の見直し規定がありましたが、私は、この法律についても三年の見直し規定を設けるべきだと考えますが、大臣の御見解をお伺いします。

○長勢国務大臣 私どもとしましては、できる限り早くこの法律案を成立させていただきたいとお願いしておりますし、成立して施行になった場合には、その運用には万全を期してまいりたいと考えておるわけでございますけれども、お尋ねの点につきましては、国会で今御論議中でございますが、その御意思を尊重してまいりたいというふうに考えております。

○大口委員 これは内閣府にお伺いしますけれども、犯罪被害者等給付金について、昨年度は、遺族給付金の被害者一人当たりの支給額の平均は約四百二十五万円、障害給付金は同約二百六十万円で、最高支給額は遺族給付金の約一千五百万円であったと聞いております。若年層の重度後遺障害者や扶養者が多い遺族には手厚く支給すべきである、こういう声もあるわけですね。
支給額の上限を自賠責保険と同等程度まで引き上げよう、こういう構想もあるようでありますが、支給額の引き上げを含めた犯罪被害給付制度の拡充についてお伺いしたいと思います。

○荒木政府参考人 お答えを申し上げます。
先ほど申し上げました経済的支援に関する検討会におきまして、被害者に対する給付水準の引き上げにつきまして、それをメーンに、かなり長い時間協議を行ってきております。
その中で、委員御指摘がございましたように、現在、給付金の最高限度額、遺族の場合が一千五百万円余り、それから重度障害者の場合が一千八百万円余りとなっておりますけれども、これを、自賠責の上限であります、遺族については三千万円、それから重度障害者については四千万円にできるだけ近づけよう、それに伴いまして、最低額についても引き上げを図ろうということで議論が進められております。
また、御指摘のありましたように、収入の少ない若い人が重度障害を負った場合は、現在の仕組みではどうしても非常に低額になってしまいますので、これをできるだけ配慮できるようにしよう、さらには、扶養の多い、子供さんの多い御遺族に対しては、これについてもできるだけの配慮をしようということで取りまとめを行っているところでございます。

○大口委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

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