大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

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2007年6月15日

166-衆-財務金融委員会法務委員…-1号 平成19年06月15日

○大口委員 公明党の大口でございます。
電子記録債権法につきましてお伺いをさせていただきたいと思います。
先ほど、電子記録債権制度の創設の背景、立法事実についてお話をいただきました。そこで、この電子記録債権制度の創設によって、経済的にどのような活用がされていくのか。特に中小企業にとりましては、これを使い勝手のよいもの、そして安価で安心できる、そういうものにしてもらいたい、こういう要請が強いわけでございます。やはり中小企業がこれを活用できるということは経済的なインパクトも大きいわけでございまして、そのあたりにつきまして金融担当大臣にお伺いしたいと思います。

○山本国務大臣 現在、事業者の手形残高については、先ほど民事局長がお答え申し上げましたように、平成二年で七十二兆が、平成十七年になりますと三十一兆。しかし、事業者の平成十七年の売掛金は二百一兆円でございまして、いわば決済に手形がもはや使われない時代が来たというわけでございます。それにかわる新しい決済システム、そして能率のいい、信用性の高いものということが当然中小企業の取引等の活力となるわけでございます。
電子記録債権は、手形、売り掛け債権、貸付債権など、さまざまな金銭債権につきまして、その流動化に活用されることが想定されていることは御承知のとおりでございます。特に手形の代替や売り掛け債権の流動化、これは中小企業者の資金調達環境の整備の上で大変重要だというように認識しております。金融庁といたしましては、より多くの中小企業に利用されるよう環境整備に努めてまいりたいというように考えるところでございます。

○大口委員 この制度を見ますと、流通性の確保ということでは手形法と非常に類似した形になっております。善意取得の規定、人的抗弁の切断、そして支払いの免責等々でございます。ただ、この流通性を制限する規定も置かれております。また、消費者保護という観点からの規定もあります。また、任意的記載事項、こういうものも認められておりまして、そういう点で手形法とこの電子記録債権制度とは違いがあるわけでございます。その点につきまして法務当局からお伺いしたいと思います。

○寺田政府参考人 御指摘のとおり、電子記録債権の特色といいますのは、特に手形に対する特色でございますけれども、流通はいたすものの、そのあり方というのは非常に多様なものが考えられるわけでございます。指名債権がベースにはなっておりますけれども、それから切り離された独立の債権。しかし、どうしてもさまざまな取引の実情というものを反映した債権のあり方というのがあり得るわけでございます。電子媒体でございますと、手形とは異なりまして、いろいろな記載というのも比較的自由にできる、そういう環境のもとに置かれますので、むしろそういう多様な債権というのをここで記録の世界に取り込んでいこうというのが非常に大きな趣旨でございます。
そこで、今委員も御指摘になりました人的抗弁あるいは善意取得の問題でございますけれども、今申し上げました多様な用途というのを前提にいたしますと、流通を高めるという意味ではこのようないわば流通保護の規定が必要でございますけれども、他方、こういうものを必要としないような債権もこの制度には乗っけていこうということでございますので、そういった趣旨で、消費者保護のような側面も取り込んだ制度のあり方を組み立てていこう、手形におきましても指図禁止手形というのがございますけれども、それをより広範に、そういう多様性というのを認めていこう、そういう趣旨でございます。
電子記録債権の譲渡記録を制限するということも同時に認めることにいたしておりますが、これも同様の趣旨でございまして、原則的には多くの機関というのは譲渡を自由にするという方向に向かうと思いますけれども、そうでないものをここで必ずしも制限する必要はないということで、こういうものも電子の世界に取り込める、そういう制度の仕組みをとっているわけでございます。

○大口委員 手形の場合は手形交換制度というのがあり、また支払いを怠った場合は不渡りという形で銀行取引停止処分というものがあるわけですね。そこで、ネッティングあるいは取引停止処分というような制度の仕組みを今回の電子記録債権制度においては考えておられるのか、これは金融庁にお伺いしたいと思います。

○山本国務大臣 手形交換制度は、銀行取引停止処分によりまして不適格な参加者を排除することで手形の円滑な流通の確保をする民間のルールでございます。電子記録債権に関しまして、手形交換制度と類似の民間ルールを導入することにつきましては、民間のニーズ等を踏まえ、電子記録債権の実践的な活用方法をにらみながら、利点、問題点のバランスに配慮した十分な検討が必要であろうというように考えております。
金融庁といたしましては、実務者と十分意思疎通を図りながら、こうした民間ルールの策定につきまして適切に今後対応してまいりたいと考えるところでございます。

○大口委員 次に、民法の契約理論との関係でお伺いをしたいと思います。
電子記録債権の発生、譲渡等につきましては、本来であれば当事者の申し込みに対して承諾という当事者間の契約があって、そして記録機関に対する請求というような手続的なものがある、民法の一般の理論からすればそういうふうに考えるわけです。ところが、今回の法制度におきましては、当事者間の申込者に対する受託、こういう当事者間の契約というものは要らない、とにかく電子債権記録機関に対する請求は、義務者と権利者双方からあれば、それで電子記録債権というのは発生し、譲渡し、また保証あるいは質権の設定等ができる、こういうことになっているわけです。
民法の契約理論と今回の制度の設計との関係性、いろいろ法制審議会でも議論があったと思いますが、整理して、なぜこのようにしたのか、極端な場合は義務者だけの請求でもいいという考えもあったようでございますけれども、今回こういう制度設計にしたということの理由についてお伺いしたいと思います。

○寺田政府参考人 おっしゃるとおり、この制度を仕組む上では、民法の契約理論との調整というのは一つの重要なポイントでございました。言ってみれば、民法の原則にのっとれば当事者間の合意、契約がなければ債権というのは発生しない、そういう契約理論でございますし、他方、それを要求いたしますと非常に不便で手続が煩瑣になるということがございますので、この間をどう調整するかということでございます。
法制審議会でも、それを別に契約上の合意というのを必要とするという意見としないという意見と分かれておりましたし、それぞれの中にも債務者の立場をどう見るか、債権者の立場をどう見るか、いろいろ意見が分かれておりましたが、非常に錯綜したために、中間的な試案を作成いたしました際は、いずれの案も御提示していわばパブリックコメントにかけたわけでございます。
その場合に、結果はいずれの意見にもそれぞれ賛成がございまして、これは先ほど申しましたような便宜と原理というのをどう調整するかというそれぞれのお立場によるというように思われます。
その後、審議を続けましたが、その折り合い点といたしまして、結局、両方の意思表示は必要だけれども、それは記録機関に対する意思表示がそれぞれ必要で、それが合致すれば記録債権というものが発生する、そういう構成にしようということにまとまったわけでございます。
民法の原則からいたしますと、当事者双方の意思表示というのはどうしても必要かなというのが最終的な結論でございましたし、ただしそれを別個とするまでもなく、結局のところ、登録機関を介してそれぞれの合意ができたと解すればそれほど契約理論との乖離というのも大きくない、こういうところから中間的な考え方にまとまった、こういう経緯があるわけでございます。

○大口委員 次に、これは主務大臣が一定の財産的基盤のある株式会社に対して電子債権記録機関の指定を行う、こういうことでございます。ただ、この電子債権記録機関というのは社会の公器でありまして、秘密の保持、情報セキュリティー、本人認証、こういうことでやはり厳格な管理体制というものが必要になってくるわけですね。
そこで、この指定に際して、どの程度のセキュリティーレベルを求めるのか。FISCの指針等、いろいろ参考にされるんでしょうけれども、それこそペンタゴンレベルなのか、それともインターネットバンキングの最先端レベルなのか、どういうレベルが要求されるのか。そして、業務執行体制についてはどのように体制が整ったならば指定できるのか、これについて金融担当大臣にお伺いしたいと思います。

○山本国務大臣 電子記録債権は、記録原簿によりまして権利の内容や帰属が定まるわけでございます。このため、記録機関は、セキュリティー水準の確保に努めることが大変重要でございます。不正アクセスやウイルスを検知、遮断するためのファイアウオールの設置、システムダウン時のバックアップ体制の構築、記録機関内部での情報管理体制の整備、適切な本人確認の体制整備等々の対応を図っていただくことが必要でございます。
また、そのほかの業務遂行の視点から申し上げれば、例えば、債務者の二重払い防止等のために、職権による支払い等の記録が確実に行えるような金融機関との連携体制の構築が必要でございますし、法令等の遵守のための内部管理の責任者を配置するなど、適切な人的構成の確保といった体制が整備されていないとならないわけでございます。
これらにつきましては、記録機関の指定申請時に業務規程等の審査を通じまして的確にチェックするとともに、業務開始後におきましても日常の検査監督を通じて適切にフォローしていくというような制度にしておるところでございます。

○大口委員 利便性だとかコストの面等も踏まえながらいろいろと検討されていくと思いますが、どうかそのあたりについてはしっかりと基準をつくっていただきたいと思います。
次に、ハッキング等によって不実の電子記録がなされた場合や権限のない者の請求に基づいて電子記録がされた場合に、電子債権記録機関が損害賠償責任を負うわけでございます。それにつきまして、不法行為の原則を変えて、過失のないことを機関が証明しなきゃいけない、証明責任の転換を図ったわけでございますけれども、その趣旨、理由について法務大臣からお伺いしたいと思います。

○長勢国務大臣 まず、今おっしゃったようなハッキングなどによって電子記録が改ざんされる、あるいは何らの請求もないのに電子記録がされるというような場合、また、機関によるミスのために本来とは違う記録がされるというような場合には、電子記録を真実の内容に訂正する義務を電子債権記録機関に負わせております。
また、このような不実の電子記録がされたことによって損害を受けた者にとっては、身に覚えのない電子記録がされた原因を把握することさえ困難でありますし、そもそも機関は記録原簿を適切に管理する責任を負っておるわけでありますので、より厳格な責任を負うべき立場にあります。
そこで、不実の電子記録がされた場合には、電子債権記録機関は、過失のないことをみずから証明しない限り、損害賠償の責任を免れないということにいたしております。
他人に成り済まして電子記録の請求がされた場合や代理権のない者によって請求がされた場合においても、電子債権記録機関に厳格な損害賠償責任を負わせるということにしております。この場合にも、電子債権記録機関は、電子記録の請求が適法にされているかどうかについて適正に確認した上で電子記録を行う業務を担っているのでありますから、電子債権記録機関の側に過失がないことをみずから証明しない限り、損害賠償責任は免れないということにしております。
このように、より重い責任を機関に負わせることで、この制度そのものの信頼が損なわれることのないように法制上も配慮しておるところでございます。

○大口委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

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