大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2007年10月31日

168-衆-法務委員会-3号 平成19年10月31日

○大口委員 公明党の大口でございます。
鳩山大臣、御就任おめでとうございます。今、福田内閣で最もその発言が注目されている大臣なんだ、こう思っておりまして、ますます頑張っていただきたいと思います。ただし、発言には慎重な面もよろしくお願いしたいと思います。
それでは、まず裁判員制度についてお伺いをさせていただきたいと思います。
二〇〇九年五月までに実施されます裁判員制度でございますが、この裁判員制度を導入することによりまして、審理のあり方が変わっていくということが学者あるいは裁判官から言われております。従来の刑事裁判については、精密司法と評している。それは、被疑者の取り調べを中心とする徹底した捜査と、これを前提とする緻密な公判審理を特徴とするものであるわけでございます。
これにつきまして、東大の名誉教授は、平野龍一教授、お亡くなりになりましたが、この裁判員制度導入の決まる以前に参審制の採用を提案して、核心司法へ転換を呼びかけておられます。その論文を引用いたします。
現在のように、記録を自宅に持ち帰って読むというようなことはできなくなるであろう。公判廷での朗読だけから心証をとるようにするほかはない。そのためには捜査記録も、要を得た、そして事件の核心を突いた短いものにする必要があるであろう。それは、ひいては、取調べのやり方、身柄拘束の長さにも影響を及ぼすかもしれない。また公判での証人尋問、反対尋問も、精密なものではなく、核心的なものになるかもしれない。それは「ラフ・ジャスティス」ではない。あえていうならば「核心司法」である。
こういう平野先生の論文がございます。
これにつきまして、また、裁判官もいろいろな論文を出されております。虎井寧夫氏、元福岡高裁の部総括判事、今は千葉簡易裁判所判事でありますが、
いかに精密にできている調書であっても、それが究極的に審理の及びにくい捜査の密室で作られているということには納得いかないものが残ることは私にも理解できるところである。私は、国民の司法参加を得て、職人芸的な調書(書斎)型裁判から、国民の理解しやすい公判中心の裁判に引き戻すことは、その象徴的概念ともいえる直接主義、口頭主義を梃子にして、指摘される我が国の裁判制度の歪みを正すという意味で、それ自体有意義なことと考えている。しかし、刑事裁判のあり方は、被告人の人権、被害者の権利ひいては社会秩序に大きく関わる以上、裁判員制度においても、ラフな裁判が許されるものではなく、とくに有罪か無罪かの肝心な事実認定においては精密さを失ってはならないというのが大方の法曹の考えであろう。
また、これは龍岡資晃元福岡高裁長官でありますが、
裁判員に分かりやすい、迅速な審理という観点からは、これまでのような精密司法的審理は極めて困難であろう。いわゆる「核心司法」にシフトすることが必要であり、事件の核心的部分に審理を集中させ、基本的な構成要件事実さえ確実に認定できればよく、犯行の手段方法なども、細部についてまで一々認定できなくても、大まかな認定で足りるとすべき場合が多くなろう。
さらに、
これまでの「調書裁判」と批判されるような、供述調書主体の証拠調べは相当ではなく、書証については、必要最小限のもの、あるいは証人尋問等を補うようなものに限っていくなど、発想の転換が必要であろう。
こういうように、有力な裁判官が論文を書いておるわけでございます。
そこで、最高裁に、裁判員制度によって、従来の審理のあり方が、また証拠調べのあり方がどのように変わっていくのかということについて、お考えをお伺いしたいと思います。公判前整理手続に乗って、めり張りのある争点の明確化をしてやるわけであります。そして、そういう中で集中審理を行うわけですね。これは最大何日間ぐらいを予定しているのかもあわせてお伺いしたいと思います。

○小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
裁判員裁判におきましては、法律の専門家でない一般の国民の方々に参加していただきます。そういうことですから、審理に長時間をかけることはできません。そこで、今委員御指摘のとおり、公判前整理手続において争点及び証拠を整理し、証拠調べを効率的に行うための審理計画を立て、その上で、連日的な開廷による集中審理を行うことになります。
また、一般の国民の方々には、これまでのように証拠書類を詳細に読み込んでいただくというようなことはできませんので、公判廷で、目で見て、耳で聞いて理解することができるようなわかりやすい審理に変えていく必要がございます。
このように、裁判員制度の導入によりまして、刑事裁判の審理は争点を中心とした迅速でわかりやすいものになって、犯罪事実及び量刑に重要な事実の存否といった事案の核心、先ほど委員も御指摘になられたと思いますが、そうした核心に焦点を当てたものに変わっていくと考えております。
それで、今私どもが、集中審理をするとどの程度になるだろうかということを見込んでおりますのは、おおよそ二割ぐらいの事件が二日以内で終えられるであろう、それから五割程度のものが三日以内。ですから、三日以内で終えられるものが約七割ぐらいと見込んでおります。あと、五日以内で終われるものは二割ぐらい。ですから、おおよそ九割ぐらいの事件は五日以内で審理が終えられるものと見込んでおります。

○大口委員 裁判員、集中審理でございますので、本当にそんなに長い期間を集中しては参加できないわけなんで、この裁判員制度を成功させるには、いかに短期間で充実したものにするかということでございます。
今、九割が五日以内ということでございますが、五日集中して一般の方が参加するというのは大変だと思うんですね。原則としては三日以内におさめるようにしないと、私は裁判員制度というのは成功しないと思います。そこら辺はよく考えていただきたいと思います。
そういう中で、今崎幸彦司法研修所教官、判事でございますが、この方が二〇〇五年に、司法研修所において二つの研究会、一つは、特別研究会ということで裁判員制度実務研究というもの、三十二名の地裁の裁判長、高裁陪席、それから刑事実務研究会というもの、これは三十三名で、大体、それにプラス地裁の陪席、この二つの研究会のコーディネーターをやっておられた。そして、共同研究「裁判員制度導入と刑事裁判」ということで、判例タイムズに論文を書かれております。ここに非常に重要なことが書かれているんですね。この実務がこういう方向に行くんだろう、こう思うわけです。そこには、
任意性が争われた場合については、刑訴規則百九十八条の四の趣旨にのっとって迅速かつ的確に立証してもらう必要があり、そのような立証がされない場合には、これまでのように水掛け論的な証拠調べにいたずらに時間を費やすべきでないという意見が大勢を占めた
こういうことでございます。ですから、水かけ論的な任意性についての議論はもうやらないということですね。そして、
少なくない数の研究員から、これまでの実務の在りようについて、任意性を比較的緩やかに認めた上で、信用性の観点からの吟味に力点を置いてきた面がないとはいえないという認識を前提に、裁判員制度の下でこのような運用を続けた場合には、裁判員が自白調書で心証をとってしまうおそれもあるから、今後は、任意性のレベルできちんと勝負をつけていく必要があるなどの指摘や、今後は、明らかに被告人の主張が排斥できる場合を除き、客観的な証拠が提示されない場合には、任意性に疑いがあるとして却下する場面が増えていくのではないか
ということで、任意性を厳しく見ていく。そういう点では、検面調書、員面調書は任意性に疑いがあるということで、どんどんこれが却下されていく、こういう事態が予想されるわけでございます。
この点につきまして、最高裁判所としてどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。

○小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
今委員御指摘のように、司法研修所の研究会などにおきまして、参加した裁判官の中から委員御指摘のような意見が述べられたということは、私どもも承知しております。
しかし、自白の任意性の判断のあり方は、個々の事件における裁判事項でございますので、最高裁の事務当局として、委員御指摘の論文中に引用された意見に対する見解を述べるということは差し控えさせていただきたいと思います。
ただ、いずれにいたしましても、現在、任意性の問題を含め、裁判員に時間的な負担をかけることなくわかりやすい刑事裁判を実現する、こういう観点から、全国の裁判所におきまして模擬裁判を繰り返し実施しているところでございまして、今後も、検察庁及び弁護士会と協力しながら検討を進めてまいりたいと考えております。

○大口委員 いずれにしましても、司法研修所、そこで法曹は学ぶわけですね。そこで学んだ人が裁判の現場に出ていき、また検察庁あるいは弁護士、弁護人となるわけでございまして、ここにおける研究の成果というのは、私は、実務に大きな影響を与える、こういうふうに考えておる次第でございます。それに対応した形で我々は考えていかなきゃいけないということでございます。
ここで、そういう裁判官から、裁判員制度の導入によって、取り調べの可視化ということについて、これをしなきゃいけないという非常に有力な意見が出ておりますので、御紹介したいと思います。
虎井寧夫氏、これは先ほど引用しましたが、この方が、
裁判員制度が創設され、審理の劇的な改革、審理期間の短縮の努力が求められている今日、捜査のあり方のみが従来どおりでよいということは考えられない。まして、そのために審理短縮が困難で、国民の代表である裁判員に大変な負担をかける事件があるとすれば、それは許されないことであろう。私は、被告人質問に長時間を費やされ、そのことも手伝って、審理が長期化している事件が数として決して少なくない現状を考えると、取調べの可視化が実現しない限りは、審理期間の大幅な短縮が困難な事件もあると考えている
こういう論文の記述でございます。
また、龍岡資晃元福岡高裁長官は、
被告人の供述については、これまで刑訴法三百二十二条、三百二十四条一項による採用に関して、供述の任意性の立証に相当の開廷数を要する事例が少なくなかったことに鑑みると、原則として被告人質問によるべきであろう。任意性の立証については、供述録取過程の可視化の論議を避けて通れないであろう。
こういうふうに論述しております。
さらに、吉丸眞元札幌高裁長官は、
公判の証拠調べにおいて、被告人に対する捜査段階の取調べの実態について捜査官の証言と被告人の供述が厳しく対立して水掛け論の様相を呈し、他に確実・有力な間接事実も乏しい場合、裁判員は取調べの実態について具体的・明確な心証をとるのに困難をきたすことが多いと思われる。また、その判断が個々の裁判員の主観に左右され、安定性を欠くおそれがある。このような事態を避けるためには、録音・録画記録制度を導入し、公判で自白の任意性及び信用性が争われたときは、問題の取調べを録取した録音・録画記録を法廷で取り調べ、裁判員が裁判官とともにこれを視聴して、取調べの実態について具体的・明確な心証を形成することができるようにする必要がある。これによって初めて、裁判員が自信をもって誤りなく自白の信用性を判断する体制が確立されるであろう。裁判員制度の実施に当たっては、裁判の素人である裁判員に分かりやすく、心証がとりやすいように証拠調べの方法を工夫する必要があり、これが運用でまかなえないときは、立法上の整備が要請されることになる。録音・録画記録制度の導入は、以上のような観点から立法上の整備が要請される最も重要かつ切実な課題であるといわなければならない。
さらに吉丸氏は、
裁判員制度の下で、このような広範かつ詳細な証拠調べを行い、例えば三十回、四十回もの公判期日を重ねることは、裁判員に過大な負担を課することになる。このような事態は、できる限りの手段を尽くして避けなければならない。前記のような事件においてこれを避けるためには、録音・録画記録制度を導入して、自白の信用性に関する争点を絞り、広範・詳細な証拠調べを抑止するほかはない。
同じく、
裁判員制度の下で自白の任意性及び信用性が争われた場合を想定し、その対策として録音・録画記録制度の導入の必要を論じたのであるが、それ以前の問題として、録音・録画記録制度の導入により、自白の任意性が争われる事件が著しく減少することが期待される。
さらに、大谷剛彦最高裁判所事務総長は、「論座」十月、十一月号の鼎談の中で、
現実に裁判員裁判の運営ということを考えた場合、自白の任意性は証拠能力の問題で訴訟手続事項ですから、裁判官の判断事項とも考えられますが、任意性の認められる自白調書は事実認定上、非常に重要な意義を持つので、裁判員の方にもその採否について意見を聞くという運用にならざるを得ないでしょう。自白の任意性の立証を裁判員が立ち会う公判廷でこれまでのように延々と続けるということは、裁判員にも耐え難い状況に成るので、検察官のほうで適切な立証方法を考えてもらいたいという強い願いがあります。そのなかで、取調べ状況の録音・録画、これがかなり有効で的確な立証手段として挙げられるということで、私どもとしても強い関心を持ったわけです。
ということで、相当、従来の最高裁の答弁等からして踏み込んだ発言をされております。
以上のように引用させていただきましたが、裁判官の、有力な裁判官が裁判員裁判との関係で取り調べの可視化を求めている、こういうことについて最高裁判所としてどう考えるか、お伺いしたいと思います。

○小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
委員御指摘の論文にも触れられておりますけれども、これまでの刑事裁判におきましては、任意性の立証に長期間を要した事案もございました。
任意性に関しましては、個々の事件においてどのような立証を行うべきかについては第一義的には立証責任を負う検察官が判断すべき事柄と考えておりますけれども、刑事訴訟規則百九十八条の四では、「検察官は、被告人又は被告人以外の者の供述に関し、その取調べの状況を立証しようとするときは、できる限り、取調べの状況を記録した書面その他の取調べ状況に関する資料を用いるなどして、迅速かつ的確な立証に努めなければならない。」と規定されております。
こうしたことから、検察庁においても、裁判員裁判を念頭に置いて、検察官による被疑者取り調べのうち相当と判断した部分の録音、録画を試行しているものと承知しておりますけれども、このような取り調べの録音、録画は、任意性に関する有効な立証手段の一つと考えております。
裁判所といたしましては、裁判員制度の導入までに裁判員にわかりやすい刑事裁判を実現できるよう、検察庁、弁護士会とも協力しながら具体的な検証を進めているところであり、こうした観点から、取り調べの録音、録画に関する今後の運用に強い関心を持って注目しているところでございます。

○大口委員 大臣、今、現場の裁判官、しかも有力な裁判官のこういう論文を紹介させていただいたわけでございます。
最高検も、試案という中で、事案の核心と全体像というものをしっかりとやっていくということで、事案の全容ではなくて、核心的なものに集中して証拠調べ等をやっていこう、こういうことであります。裁判員制度によって、審理のあり方が、またはその証拠調べのあり方がかなり劇的に変わるわけですね。ですから、これは捜査機関としてもやはり公判を維持して、そして正義を実現するために、相当対応を変えていかなきゃいけない、こう思うわけでございますけれども、御意見をお伺いしたいと思います。

○鳩山国務大臣 大口先生と最高裁の専門家同士のやりとりで、とても私どもが入り込める状況ではないかなんと思って今聞いておったわけですが、大変難しい問題が提起されておられたようですね。
要するに、裁判員裁判というものにするということは、劇的な変化ですから、当然、その裁判のありようが変わるだけでなくて、警察から検察から、取り調べ、証拠、捜索、全部が変化していくんだろうと思います。そして、素人である裁判員の皆さんにわかってもらう、理解してもらう必要が何よりも大事でありますから、さまざまな工夫が要るんだろう、そう思います。
しかも、私は模擬裁判を見に行きましたけれども、三日間で終えるという案件で、その二日目なんですね。二日目の中間評議なども傍聴させていただいて、そして翌日、量刑まで含めて、有罪、無罪、判決を下すとなると、その後、評議を何回するのかはわかりませんが、十回も二十回もやるわけではない。とすると、その三日間の間に裁判員の皆さんが十分理解できる裁判でなければいけないと思うし、日本の今までの刑事裁判というのは、やはり自白というものに非常に頼ってきたというか、自白というものの重要性が高い裁判のあり方が続いてきたんだろう。それは、その自白の任意性というものがきちんとしていないと裁判員の方々は何とも判断のしようがない、こういう道筋だろうと思っております。
可視化の問題がしばしば議論になりますが、有効な形での可視化は大いに結構だとは思いますが、では、警察で逮捕されたときから全部可視化かといいますと、幾つかの、またさまざまな問題点が出てくる。やはり、プライバシーに触れるようなことができなくなる、黙秘してしまって何もしゃべらなくなるとか、いろいろなことがあると思いますので、この辺の問題点をどうやってクリアしていくかはこれからも、始まってしまう裁判員制度ですが、大いに研究しなければならないと思っております。

○大口委員 今、大臣から重要な御発言がございました。検察庁においても、この裁判員制度の導入に向けてしっかり検討すべきことは山ほどある、本当にそう思っております。
特に、検察庁として、裁判員制度下において、自白調書の任意性が争われた場合の取り扱いについてどうなのかということをお伺いしたいんです。
今、今崎幸彦さんの論文の中に、やはり任意性が争われた場合、水かけ論的な証拠調べにはいたずらに時間を費やすべきでない、これが裁判官の大勢だったということですね。そして、任意性のレベルできちんと勝負をつけていく必要がある、そして、明らかに被告人の主張が排斥できる場合を除いて、客観的な証拠が提示されない場合には、任意性に疑いがあるとして却下する場合がふえてくる、こういうことが論文に書いてあるわけですね。
そういうことを踏まえまして、ちょっとお伺いしたいと思います。

○大野政府参考人 ただいま御指摘がありましたように、検察当局におきましても、裁判員裁判において、自白の任意性の立証というのは大変重要な問題であるというように考えております。
そこで、まず、既に施行されております公判前整理手続、これを十分に活用していく必要があるだろうというふうに考えております。ここで、従来に比べまして飛躍的に証拠開示が拡充されているわけでありますけれども、そうしたことを通じて、争点を明確化し、迅速かつ的確な公判審理が実現される、これは自白の任意性についても同様でございます。
したがいまして、検察当局におきましても、まず積極的にこの手続を活用し、その習熟に努めているというように承知しております。
それから、捜査官は、身柄拘束中の被疑者、被告人の取り調べを行った場合に、取り調べ状況等報告書というものを作成することにしておりまして、これによりまして、取り調べの客観的な状況が明らかにされております。
さらに、先ほど来御指摘のございました検察当局におきます取り調べ、検察官の取り調べの録音、録画の試行ということがございます。
この関係につきまして若干申し上げますと、検察当局におきましては、現在、裁判員裁判対象事件につきまして、被告人の自白の任意性を効果的、効率的に立証するのに必要性が認められる事件について、取り調べの機能を損なわない範囲内で相当と判断された部分の録音、録画の試行を行っております。この試行は昨年の七月に開始されまして、当初は東京地検で開始いたしましたけれども、その後、ほかの検察庁に拡大しておりまして、本年九月末までには七十五件に達しているというふうに聞いております。
こうしたいろいろな取り組みを通じまして、自白の任意性の効果的立証の検討を進めてまいりたい、このように考えております。

○大口委員 そういう試行をされて、その中で、ことしの十月十日、東京地方裁判所では、DVDが証拠採用された事件について、全体で十分余りの間、被告人が自白した理由、心境などを簡潔に述べているものを撮影したものにすぎず、自白に転じる経緯を撮影したものではない、検察官の調書の任意性についての有用な証拠として過大視できず、警察官の証言の信用性を支える資料にとどまると判断して、その証拠価値を認めない判断がなされたわけでございます。
そういうことで、可視化というものについては、部分的なものではなくて、全過程において録音、録画するということをこれから真剣に考えなきゃいけないんじゃないか、こういうことを問題提起しておきます。
次に、警察庁、今までいろいろ、私と大臣あるいは最高裁とのやりとり、検察庁のやりとりを聞いておられたと思います。そういうことで、警察庁として、取り調べの録音、録画をするつもりがないのか。それから、警察庁は、取り調べの可視化が実現している諸外国の調査を実施している、こういうふうに聞いておりますけれども、その調査を実施した結果、どのように受けとめているのかということをお伺いしたいと思います。
とにかく、任意性を却下、否定されて、員面調書、せっかく警察が調べたものが証拠として採用されないということがこれから頻繁に出てくる可能性があるわけですから、しっかりここは警察庁、お考えをお伺いしたいと思います。

○米田政府参考人 裁判員裁判の実施もだんだん迫ってきておりまして、警察といたしましても、いわば法律の専門家でない、一般国民の方にわかりやすい立証という点で、本年の八月にも犯罪捜査規範を改正いたしまして、供述調書の作成をわかりやすくするとか、あるいは、任意性は、被疑者に供述調書を単に読み聞かせるだけでなくて、閲覧してもらって、そして、すべてのページに指印を押すとか、さまざまな取り組みは進めております。
そういう中で、検察庁が録音、録画の試行をされているということでございますが、これは先ほど法務省の刑事局長からも御答弁がありましたように、そういう公判廷で供述の信用性が争われるであろうというような見込みのあるような事件で、そして、取り調べの機能を損なわない範囲で、有効な場面というか、必要な場面ということなんでしょうが、そういう三つの要件で行われているわけでございます。
警察の捜査につきましては、それが一番最初の段階でございますので、なかなか事件の全体像も見えない、捜査の道筋もそれからいろいろ変わっていくという中でのことでございますので、これはやはり、検察と同じようなことを今すぐせよということはなかなか難しい面があろうかと思います。
ただ、司法制度改革の中で、やはりわかりやすい立証が重要であるということは私どもも認識しておりまして、このたび、十月四日からでございますが、刑事手続の在り方等に関する協議会、いわゆる法曹三者協議会、これに私ども参加をいたしまして、新たな時代における捜査手続のあり方について議論をしていくということにしております。
検察の試行の結果も見守りつつ、そういう議論を深めてまいりたいと思っております。

○大口委員 本当に警察庁はよく考えてください。警察段階で否認して、また自白してというような調書は使えるのかどうか、こういう問題なんですから、しっかり検討してみてください。
それから、冤罪事件についてちょっとお伺いしたいと思います。
氷見事件あるいは志布志事件がございました。これは大変ゆゆしき問題でございます。最高検察庁は、平成十九年八月に、これにつきまして、いわゆる氷見事件及び志布志事件における捜査・公判活動の問題点等についての報告書を出しました。これは、いまだかつてないことで、やはり最高検察庁、そのことについて、これからしっかりこういうことがないようにしていこうということ、踏み込みは不十分であったけれども報告書を出されたということでございます。
そこで、警察庁において、例えば本年五月、漆間巌警察庁長官が全国刑事部長会議において、このことについて訓示をしたり、あるいは通達を全国の警察本部に出したと聞いておりますけれども、警察庁にお伺いするのは、このような訓示や通達だけではなく、例えば最高検察庁が行ったような、両事件の捜査のあり方を検証し、報告書を作成すべきではないか、その場合、最高検ではなされなかった、外部の有識者等を入れて徹底的な検証を行うべきではないか、このことを私は警察庁に考えをお伺いしたいと思います。
こういうことを二度と起こさないためには、これぐらいやらなきゃだめですよ。そのことをお伺いしたいと思います。

○米田政府参考人 確かに委員の御指摘のように、これはやはり二度と起こしてはならないということでございます。
それで、最高検の検証結果というのがことしの八月に出されまして、数カ月間の綿密な検証を経て出されたと思いますが、警察庁の最大の問題関心は、あの二つの判決を受けまして、ともかく緊急に、警察は大きな組織でございますので、これを全国に徹底して、二度と起こさないように緊急の対策を講じるということでございます。
そこで、もちろんあの判決の内容は精査し、分析をいたしまして、そして、先ほど御指摘がありました緊急通達を出し、そして、全国に刑事局の幹部を派遣して、それでその施策を徹底してまいったということでございます。
現在まで、そういうように緊急の対策の浸透を図るというところが今の段階でございます。今後、さらに強力な対策をとっていかなければならないと考えておりまして、当然、その過程で、さらに突っ込んだ検証もしなければならないというように考えております。

○大口委員 必ず報告書を出すということだけ言ってください。

○米田政府参考人 そういう検証の結果ということで、まとめて報告書を出すかどうかということにつきましては、現在のところ、これはちょっとお答えはできません。
ただ、一生懸命検証してまいりたいと思っております。

○大口委員 以上で終わります。

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