大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2008年4月22日

169-衆-法務委員会-10号 平成20年04月22日

○大口委員 公明党の大口でございます。
本日は、山下参考人、筒井参考人、柄澤参考人、今尾参考人、坂参考人、各参考人の先生方、本当に御苦労さまでございます。
まず、山下参考人にお伺いをしたいと思いますけれども、山下参考人が「アクチュアリージャーナル」というところで、保険法の改革の基本的な視点ということで、保険契約者の保護、将来的な視野で考えること、契約法と監督法の守備範囲をどう見るか、そしてモラルリスクにばかり目を向けないということ、この四点を論文で発表されておられます。
今、各生保、損保等が支払い漏れあるいは不適切な不払い、それは説明義務ということもありますし、いろいろ管理が不適切であったというようなこともあったと思うんですが、こういう不払い問題という視点が保険法改革との関係でどうであったのかということをお伺いしたいと思います。

○山下参考人 ありがとうございます。
「アクチュアリージャーナル」という雑誌に私書きましたのは、保険法の改正が始まるちょうど直前ぐらいの時期で、日本の保険契約に関する民事基本法として、これからの将来に十分耐え得るものをつくっていく、そのときに契約者の保護というのを十分図った内容にして、諸外国の保険契約法と遜色のないものにする必要があるというのを申し上げたところでございます。
そうやって審議が始まりまして、その過程で、ちょうど御指摘のような不払い問題、その他の保険に関する消費者問題というのが発生いたしました。
正直申しまして、例えば先ほどから御質問いただいております保険金の支払い時期の問題などは、従来、私も長年保険法の立法の試案をつくったりというような研究をしていたのですが、そこではそれほど大きい問題ではないのかなと思ったのですが、こういう現在の状況が生じまして非常に大きな議論を巻き起こした、そういうことがございました。
そのほかにも、先ほど来御質問の中にも出てまいります未成年者の保険の問題とか、従来の消費者問題では余り取り上げられてこなかった問題というのが非常に意見がたくさん出まして、そのうち、保険法で規律するのが適切な事項についてはそれを盛り込み、技術的に難しい事項については、これから保険業法に基づく監督、共済の監督、そういうあたりを通じて実現していくというふうなところでございました。
それぞれの守備範囲ごとに、現在生じている深刻な問題について対応できる方向に向かっているのではないかというふうに私個人は思っておる次第でございます。

○大口委員 その中で、今回、何といいましても告知義務の問題が非常に重要な改正であろう、こう思っています。自発的な申告義務から、質問応答義務ということになったわけであります。
ただ、この点につきまして、危険に関する重要な事実について、質問応答義務になるということによって、例えば保険者の質問項目が細かくなったり、あるいは近親者の病歴なども、必ずしも重要とは思われないような事項についてまで告知を求めるとか、告知義務違反を問われる懸念があるようなことがありますので、告知事項の範囲をある程度法文上明確にすべきという意見もあったと思うわけでございます。
こういう告知事項の範囲を定めることについてどうお考えであったのかということを山下教授にお伺いしたいのと、告知義務違反について、契約者の重大な過失があった場合でも、保険者を全部免責としないで、保険金の減額にとどめるといういわゆるプロラタ主義の考え方もあったと思いますが、結論的にはオール・オア・ナッシング主義が採用されました。このプロラタ主義を主張している意見も多かったと思いますけれども、この点についてお伺いしたいと思います。

○山下参考人 まず、告知義務の対象となる重要な事実、事項というのを具体的に法定すべきではないかという御質問でございますが、これまた先ほどの履行期の問題と同じで、保険契約というのは非常に多様なものがございまして、また、それぞれの保険契約ごとに保険会社がどういう要素に着目して危険の選択を行うかということが、それぞれ別の契約ごとに違った考慮が必要になるわけでございます。
そういうことで、法律の規定といたしましては、保険法の四条にございますような一般的な重要性の基準というのを決めざるを得ない。これは、諸外国の保険契約法でも大体、契約法の規律としてはこういうことにならざるを得ないのかなと思っております。
あと、具体的にどういうことまで告知を求めるかというあたりになると、また保険業法の監督とか自主規制あたりで適切な対応がされる必要があるのではないかと思っております。例えば告知書の記載事項なども、かねてよりいろいろな自主的なガイドラインをつくるとかそういう形で、余り告知事項が拡散しないようになっていると思っております。
それから、告知義務違反があった場合の効果について、御指摘のオール・オア・ナッシング、告知義務違反が成立すると保険金がゼロ、そういう原則とプロラタ主義、故意ではない、重過失の違反があった程度である、こういう場合には保険金を減額して一部払う、そういう原則、外国では二つの立法の仕方がございます。
私個人もプロラタ主義というのはこの際検討してはどうかということを考えたわけでございますが、法制審議会の部会では、これは非常にわかりにくいと。少しでももらえるとなるとやはり告知義務違反を誘発するのではないか、そういう事業者側の懸念とともに、消費者側から見ても、では、どれだけもらえるか、その基準は非常に決め方が難しいというようなことがあって、日弁連の方ではプロラタを御支持になっているかもしれませんが、消費者サイドでもまだこれはちょっと、にわかに賛成できないという御意見もあるということを総合的に勘案しまして、今回は見送りをしたものでございます。

○大口委員 自発的申告主義から質問応答義務に変更したということで、これが契約者に過度の負担にならないように、やはり危険における重要な事項ということについてわかりやすく、そしてまた後で問題が起きないようにやっていかなきゃいけない。そういう点では、生保また損保、そして共済の各業界の方々、いろいろと検討されておると思います。
そこで、この決定につきまして、生保と損保からお伺いしたいと思います。簡単にお願いします。

○筒井参考人 お答えいたします。
法案の御趣旨も踏まえまして、今後、告知書の見直しを検討していく必要があろうかというふうに考えております。
先生から今御指摘ございましたように、とにかくお客様に過度の負担を課してはいけないというところが重要だと思っています。質問応答義務に変更されたからといっていたずらに質問をふやすということではなくて、正しく告知いただけるように、一つ一つの質問がわかりやすいものになっているかどうかということについて、あくまでお客様の視点に立つことが重要であると考えております。そういう視点から取り組んでまいりたいと考えております。

○柄澤参考人 例えば、自動車保険の場合ですと、自動車の用途であるとか車種、登録番号、使用目的などの情報、さらに被保険者の氏名、年齢などの情報を申込書の中に告知事項として既に御記入いただいております。
これらは保険料を決めるために必要な事項でございますが、保険法が改正されたからといって、これらの事項が特にふえるわけではございませんので、お客様に大きな御負担をお願いすることはないというふうに考えております。そう努めるべきだというふうに考えております。むしろ、申込書の中におきまして、この部分に、これは重要な告知事項なので正しく記載してくださいとわかりやすく問いかけをする必要があるというふうに考えております。
先生の御指摘の趣旨を踏まえて取り組んでまいりたい、御理解をお願いしたいと思います。

○大口委員 あと、新聞では大変話題になったことがございますが、現物給付について。
生命保険契約あるいは傷害疾病定額保険契約については、こういう現物給付ということによって、高齢化社会において、例えば介護サービスの提供とかあるいは老人ホームへの入居権を付与するというものを考えたらどうかと。これを保険法で規定しないということになりますと、こういうような給付を定める契約に保険法が直接適用されないということで逆に無規制になって、かえって消費者の保護の観点からよろしくない、こういう御指摘もあったわけでございます。
これにつきまして、山下教授にお伺いしたいと思います。

○山下参考人 生命保険契約あるいは傷害疾病定額保険契約の一種として現物給付を行う保険というのを認めるかどうか、これも大論争になった点でございます。
例えば、何十年先かに老人ホームへ入る権利というふうなものを定型化して販売するのですが、これは技術的に非常に難しい面があって、本当に売っている保険会社が何十年か先にそういう老人ホームを実際に提供できるのか、そのためにはどういう監督をすればいいのか、当然これを考えなくてはいけないわけでございます。
保険業法の方で、こういうサービスを提供するような保険についてどういうふうな監督をしたらいいのか、これから非常にインフレが起きた場合どうするかとか、そういう非常に難しい問題があって、少なくとも現在は解決策が見出されていない。そういうこともあって、業法的にはこれを直ちに認めるのは無理である。
ただ、そうであっても、保険法の方で高齢化社会を見据えてこういう契約類型を認めておくことは有意義なことではないかというのが一方の意見でございますが、保険法というのは、先ほど来申し上げておりますように、契約内容を非常に一般化した形で規定いたしますので、こういう現物給付の契約ならいいです、こういうのはだめです、そういうきめの細かい規定ぶりがなかなか難しい。
そういうことになると、仮に、生命保険として現物給付を行うのも可能というふうに一言で書いてしまいますと、むしろ、それが契約法上可能であれば、それはだれがやってもいいんだろう。保険業法で監督されればそれでもいいのかもしれませんが、それはないということです。
そうすると、何もないものが突然行えるようになるというアナウンス効果、悪質な事業者などにこういう事業に目を向けるアナウンス効果があるということが懸念されまして、業法の整備が将来考えられるまではこういう給付の保険というものを見送る、契約法上も見送る、こういう決定をしたわけでございます。

○大口委員 最後、未成年の死亡保険につきまして、日弁連がいろいろ意見をおっしゃっておられます。これは業法の問題、監督法の問題でもあるかもしれませんが、問題点について御指摘があればと思います。

○坂参考人 ありがとうございます。
この問題は、やはり未成年の保護をどう図っていくか、そういう観点からの議論と、保険についてもそういうニーズがあるではないかという意見がございまして、このバランスをどうとっていくかという問題かというふうに考えております。
ただ、このニーズということは、いろいろお話をお伺いしておりますと、どうも死亡保険に対するニーズということではなくて、傷害保険あるいは疾病保険、こういったものに対するニーズであるように思われます。そういった保障をきちんとしていく、そういった商品開発も含めてやっていくということが求められているのかもしれませんが、未成年者の死亡保険については、どうもニーズというものはそんなに高くないのではないか。
そうしますと、逆に、いろいろな子供をめぐる状況、子供に対するいろいろな事件が多発しておりますし、金融審でも指摘されておりますように、未成年者に対してはモラルハザードが起きやすいということはやはり否定できないと思います。したがって各国においてもいろいろな規制がされているわけで、こういった観点から、やはり未成年の死亡保険については、しかるべき対処といいますか規制といいますか、そういったものをやっていく必要があるのではないかというふうに考えているところであります。

○大口委員 時間が参りました。ありがとうございました。

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