大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2008年5月27日

169-衆-法務委員会-13号 平成20年05月27日

○大口委員 公明党の大口でございます。
いよいよ少年法改正の審議が始まりました。
昨日、あすの会の岡村代表を初め、今、それこそ早川先生からも御紹介のありました鈴木八恵子様、最愛の息子さんを本当に残虐な方法で亡くされた、そういう思いのつづられた手紙も読ませていただきました。あるいは、茨城県の岡崎様からも、最愛の息子さんの件について、本当に切々とした文面をいただきました。
平成十六年に成立した犯罪被害者等基本法三条一項には、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」こう規定されております。この基本理念に基づき、平成十七年十二月、犯罪被害者等基本計画が策定され、昨年、刑事裁判への被害者参加制度の関連法案が成立いたしたわけであります。これにつきましては、ことしの十二月からスタートするわけでございますけれども、被害者国選の充実、報酬等も含めて、しっかり仕事をしていただくこともやっていかなきゃいけない、こう思っております。
そして、本当に最後に残された大きなテーマとして、今回、少年事件の被害者等に、一つは少年審判事件の傍聴を認める、二に記録の閲覧、謄写の範囲を拡大し、要件を緩和するなどを柱とする少年法改正案が提出され、事件の真相を知りたいとする被害者等の要望にこたえることになったことは、被害者等の個人の尊厳を確立するため極めて重要であり、この法案の提出を高く評価させていただきたいと私は思います。そして、与野党協議し、何としても今国会で成立させていきたい、こういう思いでおります。
法務大臣におかれましては、この法案の成立へ向けての思いをわかっていただきたいと思います。

○鳩山国務大臣 今、大口先生から、具体的な会のお話とかお手紙の話とか承りました。
先ほど私は、寝屋川コンビニ事件の話をして、御両親とお会いをして、もう言葉を失う思いだったと申しました。その前に、例の海の中道の事件、これは危険運転致死が適用されなくて七年半という判決だということで、いわば飲酒関係で運転をして交通事故で亡くなられた方々の御遺族が大勢お見えになったときも、何とお答えしたらいいのかわからない気持ちでありました。
つまり、やはり一番重視しなければいけないのは被害者あるいは御遺族のことだということを、我々は今、痛切に思いを改めなければならないと思っています。そのことが、大口先生が今いきさつとしてお話しされました犯罪被害者等基本法の制定であり、それにのっとって基本計画ができて、今回の少年法の改正にまで至っているわけでございます。
例えば、役所の書いた答弁書に、多くの被害者等にとって、その被害から回復して平穏な生活に戻るためには、依然としてさまざまな困難があることが指摘されています、こういう文章があるんです。これは文章としては悪い文章ではないが、しかし、亡くなったり、あるいはもう立ち上がれないような大けが、後遺症が残った場合は、どういう手を尽くしたって、被害から回復して平穏な生活に戻るということは遺族の方にとっても絶対あり得ないことなんですね。
そう考えると、できる限り被害者や御遺族に温かくという思いでこれから公明党の先生方とともに歩んでいきたいと思いますし、民主党、自民党あるいは野党の皆さんとも一緒に歩んでいきたいと思います。とにかく少年法の部分でまずこれは成立させていただきたい、こうお願いをいたします。

○大口委員 今回の少年法改正の最も大きな柱は、被害者等による少年審判の傍聴の規定を新設するということであります。この傍聴規定が新設される理由は、事件の真相を知りたい、審判の具体的状況を知りたいという被害者等の心情が尊重されるべきである、また被害者等の立ち直りに資する上、少年審判に対する被害者等を初めとする国民の信頼を一層確保することにつながる、こういうことが挙げられております。
また、犯罪被害者の方やその支援者の方からも、この規定の新設について、被害者等の心情は少年審判の場合と成人の刑事裁判の場合とで異なるところはない、被害者等の傍聴によって少年がうそを言うことができなくなり適正な事実認定にも資するなどといった理由で、強くこの傍聴制度の新設を求められておるわけであります。
一部被害者の中に、被害者の二次被害が心配される、こういうことから反対される方もいらっしゃることも事実でありますけれども、こうした中で、少年法第一条の少年の健全育成の理念のもと、少年審判は原則非公開となっているわけですが、その例外としてこの少年審判の傍聴規定の新設に当たって、法制審でどのような議論がなされているかについてお伺いしたいと思います。

○大野政府参考人 この問題は法制審議会の少年法部会で議論されたわけでありますけれども、刑事法学者、法曹実務家等が出席いたしまして、被害者等による少年審判の傍聴に積極的な立場それから慎重な立場の双方から御意見が述べられ、大変熱心で濃密な議論がなされたわけであります。
そして、この議論の過程で問題になりましたのが、少年審判傍聴に慎重な立場から、少年が萎縮してみずからの心情を述べにくくなったり、あるいはプライバシーに関する事項を取り上げにくくなったりして少年審判の機能を害するのではないかという指摘がございましたし、また先ほど委員の方からも御指摘のありました、事件から間もない時期に傍聴を行うことによって被害者等に逆に二次被害が生じるのではないかというような懸念も表明されたわけであります。
しかし、審判の機能を害するのではないかという点につきましては、少年と被害者との関係はさまざまでありまして、常に少年が萎縮したりプライバシーにかかわる事項を取り上げることができなくなるものではありませんし、また現在考えられております案は、裁判所による適正な処遇選択や少年の反省を深める妨げにならないように、裁判所が少年の年齢や心身の状態等を考慮してきめ細かく相当性を判断することとしているということで、審判の機能を害することにはならないだろうという意見が多数を占めたわけであります。
また、二次被害の関係につきましても、傍聴により被害者等がどのような感情を抱くか、これは個々の事件によって異なる上、仮に傷つくおそれがあったとしても、なお傍聴をぜひしたいと希望される被害者等もおられるわけでありまして、傍聴を一切認めないとすることはやはり適当でないというのが意見の多数でございました。
こうした議論を経まして、法制審議会は最終的に、今回法案として提出しているような被害者等による少年審判傍聴を認める法整備をするのが相当であるという答申をしたものでございます。
〔早川委員長代理退席、委員長着席〕

○大口委員 この傍聴制度と少年の健全な育成という少年法の目的の両方を調和させていくということで、家庭裁判所が傍聴の相当性を判断するときの考慮事情として、少年の年齢及び心身の状態、事件の性質、審判の状況その他の事情を挙げておる、そして少年法第一条は少年の健全な育成を期することを目的として掲げているわけでありますけれども、改正案もこの少年法の目的を前提として被害者や遺族の方々の傍聴を認める、こういうことでありますので、どのような要件や方法で認めていくことが適当なのか、こういうことをいろいろ考えた末、提案されたものということを承ったわけであります。
少年法の目的と新たに設けられた傍聴制度との関係についてもう少し説明していただくとともに、この傍聴の判断基準として、少年の健全育成に照らし相当と認めるときと明記をすべきではないか、こういう意見もあるわけでございますけれども、この点についてお伺いしたいと思います。

○大野政府参考人 お答えいたします。
本法律案では、裁判所による適正な処遇選択や少年の反省を深める妨げにならないように、裁判所において傍聴を認めるか否かについて、法律案に列記されておりますように、少年の年齢や心身の状態等の事情を考慮してきめ細かく判断することとしておりますし、また必要に応じ被害者等に退席してもらうこともできるわけでございます。したがって、少年審判の傍聴は、審判への支障が生じない範囲で認めるものでありますので、少年法の目的と抵触することはないと考えております。
ここで、御指摘の、例えば少年の健全育成に照らしというような文言を明記すべきであるという御意見もございますけれども、本法律案は、裁判所が行う相当性の判断において、少年法一条に規定する少年の健全な育成を期するという法律の目的を考慮することは当然のことであるというように考えまして、したがって、このような文言を規定する必要性は必ずしもないのではないかということで、あえてこのような案文になっているわけでございます。

○大口委員 また、今回の改正案については、十四歳未満の触法少年に係る事件も被害者等による少年審判の傍聴制度の対象とされておる。その理由として、一、被害者等の心情は、加害者が犯罪少年か触法少年かで特段異なるわけではない、二、触法少年については、刑事裁判になる可能性がないため、少年審判が傍聴可能な唯一の機会と言えるなどと説明をされているわけであります。
しかしながら、触法少年には、年少であることによる脆弱性の問題が存在し、傍聴による萎縮の可能性が一般的、類型的に高いため、犯罪少年と比べて特別な配慮を必要とすることは確かであります。
昨年、通常国会における少年法等一部改正案の審議においても、低年齢の少年が、精神的に未成熟で可塑性に富むこと、被暗示性が強いこと等を理由に、触法少年の少年院送致の年齢を、十四歳未満で下限のなかったところを、おおむね十二歳以上とする与党修正を、私もかかわらせていただきましたが、行いました。同様な理由で、触法少年に係る事件は被害者等による傍聴の対象から除外すべきであるという意見も少なからず存在すると思っております。
こうした中で、政府は、触法少年に係る事件も傍聴を認めることについて、裁判所がきめ細かく傍聴の許否について判断を行うことや、必要に応じて傍聴している被害者に退席してもらうことなどにより適切に対応することが可能である、こういう説明をされていることも承知しております。
もちろん、被害者の側の権利利益を尊重することは当然でございます。この改正法案には、裁判所は、少年の年齢、心身の状態、事件の性質、審判の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは、傍聴することを許すことができるとしております。
そこで、お尋ねしたいことは、今回、裁判所が相当と認めるときの考慮事情である少年の年齢については、犯罪少年か触法少年かというのは私は重要な判断要素になると考えますけれども、そのような考えでいいのか。また、触法少年に係る事件で例えば小学生の場合、傍聴の可否についてどうなるのか、大臣にお伺いしたいと思います。

○鳩山国務大臣 結局は、家裁がきめ細かくさまざまな事情を判断して、当然年齢も考慮して、あるいは犯罪、触法少年の場合は犯罪と言うわけにはいかないでしょうが、事件の態様等あるいはその少年の状況等を細かく判断して、傍聴を認めるか認めないかは決めていくんだろうと思っております。
ただ、先生も話されておりますように、例えば殺人というような事件が起きたとすれば、その御遺族にとってみれば、十四歳未満の少年に刺されて殺された場合と、いわゆる非行少年というんでしょうか、罪となる十六歳だ、十八歳だ、あるいは大人に刺されて亡くなった場合と、被害者のお気持ちとしては何らそこに違いがない。したがって、事実を知りたい、あるいは加害者がどういうやりとりをしているかも知りたいというお気持ちには何の違いもないだろう、こう思うわけであります。
ただ、そういう中で、触法少年を含む低年齢の少年は精神の発育が不十分でありますから、その心情の安定への配慮というものはより一層されるものであろうというふうに考えるところでございます。したがって、それらを含めて裁判所が適切な運用をしてくれるものだろうと期待をいたしております。

○大口委員 次に、今回の傍聴の対象事件、これは故意の犯罪行為により被害者を死傷させた罪及び業務上過失致死傷等の罪の事件に限定しております。また、その中でも、被害者を傷害した場合については、生命に重大な危険を生じさせたときに限っているわけです。まず、この生命に重大な危険を生じさせたときの意義についてお尋ねしたいと思います。
生命に重大な危険を生じさせたときとは危篤状態などを指すと言われておりますけれども、どのような場合を指すのか、詳しく御答弁願いたいと思います。これが一点。
それと、生命に重大な危険を生じさせたときということでありますけれども、例えば寝たきりになったりするなどの介護を要する重篤な後遺症が生じた場合でも、被害者の方の生命に重大な危険が生じていなければ傍聴は認められないという指摘があります。被害者に重篤な後遺症が生じた場合に、生涯にわたってその療養看護、介護に当たる近親者の少年審判を傍聴する利益は尊重されるべきである、傍聴の対象に含めるべきである、こういう意見もあるわけであります。このような場合の傍聴を認めることが、また被害者等の個人の尊厳にふさわしい処遇として少年審判の傍聴制度を設ける趣旨に合致するとも考えられます。
このように、被害者に介護を要する重篤な後遺症が生じた場合であっても、生命に重大な危険が生じていなければ被害者や家族の傍聴を認めないという理由についてもお尋ねしたいと思います。

○大野政府参考人 本法案が少年審判の傍聴を認めることとしている、被害者が傷害された場合の生命に重大な危険を生じさせたときの趣旨でありますけれども、生命に重大な危険とは、医療措置を施しても被害者が死に至るような、被害者が死亡に至る蓋然性が極めて高い状態にあったことを意味しておりまして、危篤状態に陥った場合がその典型であります。そして、一たんそうした危険が生じれば、その後、そのような危険がなくなった場合にもこの要件は満たされることになるわけでございます。
他方、被害者に介護を要する重篤な後遺障害が生じた場合はどうかという点でございます。
立案の過程では、生命に重大な危険が生じなくても、身体機能に重大な障害が生じた場合にはなお傍聴を認めるべきではないのかというような意見もございました。
ただ、傷害により生じ得る身体機能の障害といたしましては、例えば手の指がなくなってしまった、あるいは下半身が不随になった等々、さまざまなものを考え得るわけでありまして、どのような機能障害が対象となるのか、どうも一義的に明確にするのが容易ではないということでありました。また、死亡した場合に準ずると言いがたい場合も含まれるように考えられたわけであります。
したがいまして、生命に重大な危険が生じていない場合には、後遺障害が残ったとしても傍聴を認めるというところは適切でないだろうということになったわけでございます。
ただ、これは個別の事案の判断ということになるわけでありますけれども、特に介護を要する重篤な後遺障害ということになりますと、例えば寝たきりになるほどの障害ということでありますと、生命に重大な危険を生じたというような場合も実際上は少なくないのではないかと考えられるわけでございます。

○大口委員 次に、被害者等から傍聴の申し出があった場合に、裁判所が少年や付添人からの意見を聴取することを傍聴許可の要件に加えるべきであるという意見もあるわけであります。少年審判には、裁判所がみずからの手続を主宰する職権主義的審問構造がとられておりますので、法的に必ず意見を聞かなければならないということは疑問があるということで、今回の改正案では、このような意見を聴取することは要件とされておりません。しかし、運用として、裁判所が傍聴を許可するに当たって、特に付添人の意見を聞くなどということは十分あり得ることであると考えます。
裁判所が被害者等の傍聴について少年や付添人の意見を聞くことは運用上の取り扱いとして望ましい場合もあると考えますが、この点についてお伺いします。

○大野政府参考人 委員から御指摘がありましたように、少年審判におきましては、いわゆる職権主義的な手続構造がとられておりまして、家庭裁判所が手続を主宰し、形式にとらわれず柔軟に審判運営を行うこととされていることなどから、この法案におきましては、傍聴の許否を判断するに当たりまして、付添人等の意見を必ず聞くこととはしていないわけであります。
ただ、裁判所の判断で付添人等の意見を聞くことはできますので、裁判所といたしましては、必要に応じて、付添人がいる場合にはその意見を聞くことになると考えております。

○大口委員 また、裁判所が被害者等の傍聴を許可する場合に、少年に付添人のないとき、例えば業務上過失致死傷等の罪では国選付添人というのはつかない場合が多いわけでありますけれども、そういう場合、裁判所が国費による弁護士付添人を選任すべきである、こういう意見についてはどうお考えでしょうか。

○大野政府参考人 この法律案で被害者側に認められますのは、少年審判の傍聴が可能になるということだけでありまして、傍聴によって少年の側で何か反証すべき事項が生じてくるというものではありません。また、裁判所による適正な処遇選択や少年の反省を深める妨げとならないよう、傍聴を認めるか否かにつきましては、裁判所が少年の年齢や心身の状態等を考慮してきめ細かく判断することにし、必要に応じ被害者等を退席させることもできると考えているわけであります。
したがいまして、そうした裁判所の判断、役割に照らしますと、国選付添人を付することとしなくても少年の権利利益の擁護を図ることは十分可能でありまして、今おっしゃった国選付添人を導入する必要というのは必ずしもないのではないかというふうに考えております。

○大口委員 今回、法文上、被害者等の少年審判の傍聴の方法として、モニター傍聴は認められていません。このモニター傍聴に関して、先日二十二日の本会議において、民主党の加藤理事の質疑に対して鳩山法務大臣は、法制審議会において、モニターによる傍聴であっても被害者等から見られているという点では少年に対する影響に大きな違いはないのではないかという指摘がなされ、多くの委員の賛同を得るには至らなかった、モニターで視聴することについてはある程度慎重でなければならない、例えばモニターという機械を使うと、それが失敗して広がってしまうことも恐れなければなりませんと答弁されたわけであります。
直接の傍聴に比べて少年審判に対する影響に大きな違いがないのであれば、なぜ、直接傍聴を認めて、モニター傍聴を認められなかったのでしょうか。狭い審判廷の中で被害者が少年と同じ部屋で顔を合わせることに精神的、身体的な負担を感じ、傍聴を断念せざるを得ない場合もあります。また、被害者が傍聴していることとモニターにより別室で見られていることとでは、少年の心理的負担に違いがあることもあると考えます。
例えば、刑事事件の場合では、性犯罪で、公判で被害者が証言をするときに、加害者のいる法廷に出ないでビデオリンクで、別室にて証言を行うことができることになっています。これは、被害者が加害者と顔を合わせたくないという心情に配慮して行われていることと思います。被害者に対する配慮という視点から考えれば、同様に、加害者である少年がいる審判廷でなく、別室でのモニター傍聴も選択肢の一つとして被害者等に認めるべきではないかと私は思うわけであります。
このモニター傍聴が今回認められなかった理由についてお答えをいただければと思いますし、モニター傍聴を導入する可能性について、大臣にお伺いしたいと思います。

○鳩山国務大臣 先般の本会議で、モニター傍聴についての御質問に対しては、私は、法制審議会においてモニター傍聴を認めるべきではないかという有力な意見もありましたが、結局、モニター傍聴を認めない形で法律ができていったというそのいきさつについてお話をしたわけでございます。その中身は、今大口先生が読み上げられたようなことだろうと思っております。
ただ、よく考えてみますと、今の大口先生の御意見はまことに十分に傾聴に値するものでございますので、これは今後のかなり優先的な検討課題として我々も勉強をし、考えていかなければならないことと思っております。

○大口委員 時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。どうか大臣、よろしくお願いいたします。

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