大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2009年4月24日

171-衆-法務委員会-7号 平成21年04月24日

○大口委員 公明党の大口でございます。
それでは、早速質問をさせていただきたいと思います。
今回の改正案は、法務大臣が我が国に在留する外国人の在留管理に必要な最新の情報を一元的に正確かつ継続的に把握する制度というものを構築しているわけでございます。この制度の構築によって把握した正確な情報を、不法滞在者、不法就労者対策を含め、入管行政に有効に活用することによって、入管行政に対する国民の信頼が高まるということが期待できます。と同時に、適法に在留する外国人が、より安定的で活動しやすくなるための諸方策を講じることができるようになる。
今回の改正法案は、このように、新たな在留管理制度を導入して情報の把握と活用を的確に行えるようにすると同時に、適法に在留する外国人の利便性の向上のための措置を講じておるということで、私どもは積極的にこの意義を評価したい、こういうふうに考えておる次第であります。
そういう中で、日弁連等が、この新たな在留管理制度の導入についていろいろと懸念を示しております。
例えば、国が外国人の生活の細部に立ち入って個人の生活を監視することを許し、外国人が犯罪の温床となっているのではないかという偏見や差別を助長するおそれがある、また、プライバシー権ないし自己情報コントロール権の保障、外国人の差別的取り扱いの禁止等の観点からの問題点を含むものであるところ、なぜ、平穏に我が国に在留する者も含めた外国人の在留管理を強化しなければならないか、立法の必要性を基礎づける個別具体的な立法事実の有無が厳格に検討されなきゃいけない、こういうような懸念も示されているところでございます。
このような懸念に対してどのようにお答えされるのか、法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

○森国務大臣 今まさに、この法案の趣旨とねらいをまことに的確に御説明をいただきました。
ちょっと繰り返しになるかもしれませんが、新たな在留管理制度は、我が国に中長期に在留する外国人を対象として、法務大臣が在留管理に必要な情報を継続的に把握する制度の構築を図ろうとするものであります。これを前提に、適法に在留する外国人の方については、在留期間の上限の伸長や再入国許可の見直しなどの緩和措置を通じて、その利便性が向上することとなります。
また、新たな在留管理制度においては、法務大臣が取得、保有する外国人の情報は、その在留資格に応じて真に必要な範囲に限定されることとなります。
例えば、現行の外国人登録法では、一部の例外を除き、在留資格のいかんにかかわらず、二十項目の登録事項を定め、このうち十四項目について外国人に変更届けの義務を課しておりますが、今回の改正ではこうした取り扱いを改めまして、各在留資格に共通した外国人本人の届け出義務を、氏名、生年月日、性別、国籍と住居地の五項目の基本事項に限定をしております。
また、所属機関や身分関係等の情報については、外国人の在留資格に応じ必要な範囲内で届け出させること、世帯に関する情報は、外国人に係る住民基本台帳制度の保有情報とし、入管法上は届け出義務を課さないとすることなど、必要な情報に限定するための措置を講じているところでございます。
このようなことから、新たな在留管理制度において、今触れられました御懸念のような問題はないと考えております。

○大口委員 次に、今回の入管法等の改正によって外国人登録法が廃止される、これを入管法に集約し、在留管理に必要な情報を一元的に把握する制度を構築することによって、外国人登録法が廃止されるということになるわけですね。これによって、市区町村において各種行政サービスを提供するなどの際に、外国人の方々の居住関係を正確に把握するための制度が必要だ、こういう観点から、昨年度に、外国人台帳制度に関する懇談会、これが開催されたわけであります。
この懇談会では外国人の有識者からもヒアリングを行っているわけでありまして、例えば、その中で、外国人にとって、行政にとっても手続の一本化、合理化が望ましい、あるいは、通称名についてもいろいろ御意見がありました。開示のあり方について、住民基本台帳と同様のものが望ましいとか、閲覧制度の導入により、新たな差別が生じないようにする必要がある、あるいは、未来志向、共生時代、人権尊重の観点から、日本人と外国人が差別なく共生できる近未来の日本を見据えた未来志向の制度を目指してほしい、こういう御意見が出たわけであります。
こうした御意見を踏まえて、今回、この御意見が住民基本台帳法にどのように反映されているのかについてお伺いしたいと思います。

○久元政府参考人 今回、住民基本台帳法の一部を改正する法律案を提出させていただいておりますけれども、この改正は、外国人住民についても住民基本台帳法の適用対象に加えまして、住民票を作成して住民行政の基礎とするものでございます。
この法律案の改正に当たりましては、今委員から御指摘いただきましたように、学識経験者また自治体の実務担当者から成る懇談会を設置いたしまして、いろいろと御意見をお伺いしながら立案をさせていただきました。
今回の改正によりまして、市町村におきましては、日本人と同様に外国人についても住民として正確な情報を把握して住民行政の基礎とする、そして各種行政サービスの適切な提供が利用できるようになるわけでございます。また、外国人住民にとりましては、住所変更等に伴う複数の行政サービスに係る届け出がワンストップ化される。そして、外国人と日本人とで構成される一つの世帯につきましても、世帯全員の住民票の記載事項証明書等が交付できるようになる。
こういった外国人住民の利便の増進が図られることになりますけれども、こういうような点につきましては、この懇談会で出されました外国人の有識者の方々の御意見を踏まえて、これを反映させる改正として準備をさせていただいたということでございます。

○大口委員 次に、平成十五年の十二月に政府の犯罪対策閣僚会議が作成した、犯罪に強い社会の実現のための行動計画、これによって、当時約二十五万人程度と推計されていた我が国の不法滞在者を今後五年間で半減させるということで、平成十六年から不法滞在者半減の五カ年計画を開始したわけであります。結果は、本当に入管当局等のあるいは警察等の御努力もありまして、平成十六年一月一日現在約二十二万人であった不法残留者が平成二十一年一月一日現在では十一万三千七十二人になるということで、ほぼこの計画が達成されたと言えます。これは高く評価すべきことだと思います。
先日、東京入管局に視察に行かせていただきまして、最近の不法滞在の手口は小口化、分散化しており摘発しづらくなっているというようなことでありますとか、いろいろ巧妙になっている、あるいはブローカーも介在している、こういうことで、事実、摘発方面隊による摘発件数及び摘発の人数は、平成十八年、約五千八百件、一万人であったわけですが、これが平成二十年には七千八百件、件数はふえたわけですが、人数は九千六百人ということで、摘発人数がわずかながら減少傾向にあるということでございます。
平成二十年十二月に策定された行動計画二〇〇八におきましては、「社会の変化に伴う新たな不安要因も発生する中で、国民の体感治安は依然として改善していない。」こうしているわけであります。
このような中で、現行の入管法による外国人の在留管理には、在留期間の途中における事情の変更を十分に把握できないということで、いわゆる点の管理の問題があった。こういう批判に対処するために、今回、法務大臣が一元的に必要な最新の情報を継続的に把握するということで、これも各委員からもお話ありましたように、言うなれば線の管理とするために本法案が提出されたものと理解しているわけでございます。
政策というのは、やはり目標が必要である、こういうふうに考えます。この法律案によりまして、在留カードのこと、あるいは事実調査のこと、それからバイオメトリックスの導入等も平成十八年にあったわけでありますが、こういうふうに新しい在留管理制度が構築されることによって、外国人の在留情報の管理をより適切にされるということがあります。そういうことで、この不法滞在者半減五カ年計画に続く、不法滞在者の減少に向けた計画を策定する必要があるのではないかな、こう考えるわけです。
政府は、平成十五年の計画では、五年間で半減させる、こういう目標を掲げているわけでありますが、平成二十年の計画では削減目標を掲げなかったわけであります。今後、不法滞在者はどれぐらいの期間でどれぐらい人数を減少させていくおつもりなのか、そして、こういう計画も、本法が公布後三年以内には施行されるということもありますし、またバイオメトリックスの効果も出ておりますので、具体的に策定して国民の皆さんにその目標を示していくことが、また不法滞在者対策を推進させていくためにも大事なことだ、こういうふうに考えておりますが、法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

○森国務大臣 今、大口委員から御指摘ありましたように、平成十五年の犯罪に強い社会の実現のための行動計画におきまして、五年間で不法滞在者を半減させようという数値目標が掲げられまして、結果的に、今お話あったとおり、おおむね半減を達成することができました。しかしながら、こうした施策によって不法残留者への対応が厳格化されたことに伴って、偽装婚だとか偽装留学など身分や活動目的を偽り、正規在留者を装い我が国で不法に就労するなど、偽装滞在者の問題が深刻化してきております。
そこで、平成二十年の同計画では、新たな在留管理制度をも活用して、これら偽装滞在という悪質事案への取り組みを強化することを目標にいたしておりますけれども、偽装滞在対策というのは、言うなれば数よりも質に重点を置く施策でありまして、今回については、数値目標は特に設定をしておりません。しかし、当然のことながら、まだ十一万人残っている不法残留者についても、引き続き着実な減少に努めてまいりたいと考えておりまして、このことは、新たな在留管理制度を円滑に導入するためにも極めて重要なことであろうというふうに思っております。

○大口委員 そういうことで、国民にわかりやすい目標をまたさらに示すということも、大臣、御検討いただきたい、こういうふうに思っております。
次に、適法に在留する外国人の利便性の向上ということで、在留期間の上限の伸長について、これは平成十九年六月に閣議決定された規制改革推進のための三カ年計画、ここにおいても、専門的、技術的分野の外国人の労働者については在留期間の上限を上げるべきであるとして、我が国に高度人材の外国人を在留しやすくするための政策も含まれていると考えるわけであります。そうであるならば、在留資格によっては、在留期間の上限は五年よりも長くてもよいのではないかなという考えも成り立つと思います。
今回、在留期間の上限を五年とした趣旨をお伺いしたいと思います。

○西川政府参考人 今回の改正によりまして、我が国に中長期間在留する外国人の情報を正確かつ継続的に把握することができるようになり、的確な在留管理を行うことが可能となるため、在留期間の上限を五年に伸長して、我が国に適法に在留する外国人の利便性の向上を図ることといたしました。
しかし、外国人の在留状況の変化等の可能性を考慮した場合、在留管理を適切に行うためには、少なくとも五年に一度は在留期間の更新を求めて、現在の在留状況の確認と在留継続の可否を判断することが必要と考え、この期間としたというものでございます。
ちなみに、なかなか各国の在留資格、在留期間の差というのは比較しづらい部分もあるのですが、可能な範囲で調べましたところ、アメリカ、英国等で高度人材と認められる専門的技術者等に与えられる資格というのは三年というのが多いという事情もございまして、この五年という期間が、特に他国と比較して短いということもないと思っております。

○大口委員 それからもう一つは、みなし再入国許可制度の新設でございます。これは、外国人の利便性を向上するという措置は、適法に在留する外国人の利便性を向上させる措置として非常に評価できるわけでございます。
この改正によって、適法に在留する外国人に対して、有効な旅券及び在留カードを所有する外国人は原則として一年以内の出国について再入国の許可を不要とする、そして特別永住者に対してはこれを二年以内とするということでございます。
このみなし再入国許可制度の新設など、在留外国人の利便性の向上を図ることは、これも世界的に競争の激しくなっている高度人材の受け入れについて、日本の競争力の強化にもつながっている。優秀な人材をより多く受け入れるためにも、もっと日本を世界に開かれた社会にしていかなければならない、こう思うわけであります。
このみなし再入国許可制度を新設するに至った経緯、理由をお聞かせいただきたいとともに、諸外国において、在留する外国人の再入国についてどのような制度が運用されているのかもお伺いしたいと思います。

○西川政府参考人 みなし再入国制度というのは、従前から、日本に長く在留する外国人の方等から、さまざまな方面からということですが、御要望を受けておりました。
今般、新たな在留管理制度が構築されて、在留管理をきちっとさせていただくということを前提に、みなし再入国制度の導入は可能ではないかというふうに考えまして、在留カードを所持している方、あるいは特別永住者の特別永住者証明書を持っている方については、あえて再入国許可を受けなくても、一定期間であれば同じ資格で戻ってこられるということで出国できるという制度を導入したというものでございます。
各国の制度についてはばらばらでございますが、把握している限りで申し上げますと、例えばアメリカと韓国につきましては、やはり長期に在留している方々につきましては、一年以内について、あえて何らかの許可を得なくても同じ資格で戻ってこられるという制度をとっているというふうに聞いておりますので、この制度も参考にさせていただいたということでございます。

○大口委員 そういう点では世界標準ということになったわけであります。さらに、特別永住の方々に対しては配慮という形で、私どももこれは要望してまいりました。そういう点でこれも評価をしたいと思います。
ただ、二十六条の二のみなし入国の中では、有効な旅券ということにつきましては、今、近江屋先生からも御指摘の、北朝鮮籍の方の問題があります。北朝鮮に行くという問題とそれ以外の国に行くという問題もあるわけでありますけれども、これについては、問題点として、きょうは指摘にとどめておきたいと思っております。
次に、本改正案では、特別永住に係る再入国の有効期限の上限を四年から六年に伸長する措置が講じられたわけでございます。
これは、平成十一年の入管法の改正時に、衆議院において、「特別永住者に対しては、その歴史的経緯等にかんがみ、再入国許可制度の在り方について検討するとともに、人権に配慮した適切な運用に努めること。」こういうことで附帯決議がついておりまして、参議院におきましても、「特別永住者に対しては、その在留資格が法定されるに至った歴史的経緯等を十分考慮し、再入国許可制度の在り方について検討するとともに、運用については、人権上適切な配慮をすること。」こういう附帯決議がついているわけであります。
そして、昨年四月二十四日、私あるいは神崎顧問も一緒に、民団の皆さんとともに、法務省、当時鳩山大臣をお訪ねいたしまして、民団から大臣に対して、特別永住者に係る再入国許可制度の適用免除というようなことも要望したわけでございます。そういうこともあって、今回いろいろと、有効期限の伸長でありますとか、みなし再入国許可制度というのができたのではないかなと思っているわけであります。
特別永住者は、日本で生まれ育ち、日本に生活の本拠を有していて、住民として納税義務を果たして、地域住民として善隣友好を深め、地域社会の一員として役割を担っておられますし、歴史的なそういう経緯もございます。そういうことで、外国籍を持つ者であるとはいえ、生活の本拠地である日本に再入国するための許可を受けることについては見直しをすべきではないか、こういう特別永住者の御意見というのもやはり十分考慮していただきたいと思うわけでございます。
このような意見を踏まえて、特別永住者に係る再入国の許可の見直しについて、法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。また、今回、期限をもっと長く、例えば十年などとせずに六年とした理由もお伺いしたいと思います。

○森国務大臣 今回の改正では、特別永住者について再入国許可制度そのものの適用を全面的に免除するまでには至っておりませんが、さまざまな方面からの御要望をも考慮した上で、有効な旅券及び特別永住者証明書を所持する特別永住者が二年以内に再入国する場合には、原則として再入国許可を要しないものといたしております。これは、特別永住者については、その歴史的経緯及び我が国における定着性を考慮し、中長期在留者よりもさらに要件を緩和したものです。
また、二年を超えて出国する場合には再入国許可を受けることが必要となりますが、その有効期限の上限を従来の四年から六年に延ばしまして、さらに、在外公館での延長制度も含めますと、最大七年の再入国による出国を可能としております。
ただ、特別永住者としての法的地位は我が国に在留するための法的地位ですので、今、七年じゃなくて十年ではどうかというふうなお話もあったわけでございますけれども、我が国との関係が希薄にならないように、七年に一度ぐらいは帰ってきてくださいよ、こういうことで、我が国への入国を求めるのが適当だと考えて、このようにしたところでございます。

○大口委員 それから、一般永住者に係る再入国許可に関しましては、今回の改正では、永住者以外の中長期の在留者と特に差をつけていません。
永住者の在留資格の変更については、素行が善良であること、及び、独立の生計を営むに足りる資産または技能を有することの要件に適合し、かつその者の永住が日本国の利益に合すると認められるときに限って許可されるものであります。一般の在留資格の変更よりも厳格な基準が入管法で定められているわけです。
永住者の方々は、このような厳しい条件をクリアして、我が国の社会の一員として役割を担っています。本改正案では、適法に在留する外国人に係る再入国許可の有効期限の上限を三年から五年に伸長する措置を講じたわけでありますけれども、一般永住の方々については特別永住の方に準じて利便性を向上する措置を講ずることにしなかった理由をお伺いしたいと思います。

○西川政府参考人 特別永住者につきましては、その歴史的経緯及び我が国における定着性にかんがみ、その法的地位のより一層の安定化を図るため、平成三年に入管特例法が制定されております。そして、同法におきましては、再入国許可について定めた入管法第二十六条の規定を特別永住者に対して適用するに当たって、特別永住者の本邦における生活の安定に資するとのこの法律の趣旨を尊重すべきということが規定されているということでございます。
これらを踏まえまして、今回の法改正において再入国許可制度を見直すに当たり、特別永住者については、みなし再入国制度における長期出国制限の期間や再入国許可期間において中長期在留者よりも緩和するということにしたというものでございます。
これに対しまして、永住者につきましては、特別永住者の場合のような歴史的な経緯は存在いたしませんし、原則として入管法上の取り扱いとしては他の一般の外国人とそう異なるところはないということから、特別永住者と同様の取り扱いはしなかったということでございます。

○大口委員 私は、特別永住者、永住者、そしてそれ以外の中長期の滞在者というものをもう少しきめ細かく対応された方がよかったのかなという感じがいたします。
それから、今回は、所属機関の変更の届け、それから、在留カードの有効期間の更新申請の窓口、これが変わるわけでございます。
就労を目的とする在留資格や、留学、研修の在留資格をもって在留する外国人が勤務先、通学先等の所属機関を変更した場合に、法務大臣にその旨を届けなければならないとしています。在留カードの有効期間の更新については、原則として本人が地方入管局に出頭して、法務大臣に対して申請しなければならないことになっています。これについては、在留カードの有効期限が原則七年で、在留期間が無期限の永住者が最も大きな影響を受けるわけであります。
従来、外国人登録法では、外国人の勤務先等を変更した場合の登録変更や外国人登録証明書の切りかえの申請については、原則として、本人が市区町村役場に出頭するということになっているわけですけれども、今回の改正案によって、在留管理の一元化のために、届け出先や申請先が法務大臣となり、窓口が入管になります。しかし、市区町村役場よりも入管の方が届け出や申請をする外国人にとって遠い場合も多く、そのことによって外国人の利便性が低下することがあってはならない、こう思うわけであります。
そういう点で、外国人からの届け出や申請をしづらくすれば義務履行の確保の問題も出てくるわけでありますので、こういうことを考えますと、外国人の利便性、義務履行の確保の両面から、具体的にどのような取り組みを考えておられるのか、お伺いしたいと思います。

○西川政府参考人 まず、変更等の届け出申請のうち、新たな在留カードの交付を伴う氏名、国籍、生年月日、性別の変更の届け出につきましては、外国人の同一性の確認等のために入国管理局に出頭してもらう必要がございます。しかし、これらについては、そもそも変更する頻度が低いということに加えまして、例えば婚姻に伴って氏名や国籍を変更した場合には、同時に在留資格の変更申請が必要なことも多く、それらのときには当該申請に合わせて行うこともできることなどから、ほとんど負担の増加にはならないというふうに考えております。
次に、所属機関の変更や配偶者との離婚等について、外国人登録制度では一部の例外を除きまして在留資格の種別を問わず届け出義務が課されていましたが、新制度においてはこれを改め、前者については所属機関の存在が在留資格の基礎となっている者、後者については配偶者としての身分が在留資格の基礎となっている者に限ることとしており、外国人の負担を軽減しております。
また、これらの届け出先は地方入国管理局になりますが、その方法については、今後、インターネットや郵送など負担を軽減する措置を検討したいと考えております。
また、確かに、永住者の在留カードの更新施設については、それが七年に一回ということでございますけれども、その部分は市区町村から入国管理局ということになって若干負担が増すということは否定できないわけですけれども、例えば弁護士または行政書士等、申請の取り次ぎを認める者の範囲を広げるなどしておりまして、過度の負担増にはならないというふうに考えております。

○大口委員 次に、特別永住者の証明書の常時携帯義務について、私もお伺いをさせていただきたいと思います。
今回の入管法等の一部を改正する等の法律案では、あるいは特例法案で、特別永住者に対しては、現行の外国人登録法に基づく外国人登録証明書にかわって特別永住者証明書の常時携帯義務を課すことになるわけです。
この特別永住者の常時携帯義務については、平成十一年の指紋押捺制度の廃止などを定めた外国人登録法の一部を改正する法律案の審議においても、衆参の法務委員会で同様の附帯決議が付されている。平成十一年の八月十三日の衆議院法務委員会で付された附帯決議を紹介いたしますと、「外国人登録証明書の常時携帯義務の必要性、合理性について十分な検証を行い、同制度の抜本的な見直しを検討すること。とりわけ特別永住者に対しては、その歴史的経緯等が十分考慮されなければならない。」こういうふうになっているわけで、参議院も同様の附帯決議がなされておる。
立法府の附帯決議というのは非常に重いものであるわけでございまして、これらの附帯決議を踏まえて、外国人登録証明書の常時携帯義務、とりわけ特別永住者に対する義務の必要性、合理性についての検証が行われたのか、また、行われたのであれば、その内容について具体的に法務大臣にお伺いしたいと思います。

○森国務大臣 このたびの法律案の提出に当たっては、今委員から御指摘のあった附帯決議を踏まえて、在留カード及び特別永住者証明書の携帯義務の必要性等について検討を行ってまいりました。
まず、在留カードの携帯義務についてですが、我が国に入国、在留する外国人の数は、附帯決議がなされた平成十一年以降著しく増加をしておりまして、またその国籍も多様化しております。また、不法滞在者半減五カ年計画により、全体としての数は減少しているものの、我が国には依然として多くの不法滞在者が在留しており、外国人の身分関係等を即時的に把握する必要性は以前にも増して高まっているものと考えております。
そして、特別永住者証明書の携帯義務についてでございますが、現在の我が国を取り巻く環境等に照らし、さらには、同証明書を偽造して特別永住者に成り済ます危険性があるなど、現段階ではなお、身分関係等の即時把握の必要性は否定できないと考えているところでございます。

○大口委員 これにつきまして、私どもも本年二月の二十五日に、私そして神崎委員初め、我が党の法務部会のメンバーと民団で、森法務大臣のところにもお伺いさせていただきまして、新たな外国人の在留管理制度の導入に対する要望書という中で、特別永住者に対しては、歴史的な経緯を配慮して、特別永住者証明書の常時携帯義務から除外をするように、こういう要望をしたところでございます。
現行の制度と同じく、特別永住者にこの証明書の常時携帯義務が維持されたわけでありますけれども、このことについて、外国人である、それから成り済ましということを考えると、即時に居住関係、身分関係を把握しなきゃいけない、こういうことでありますけれども、それだけの理由では本当に私は不十分である、こういうふうに思うわけであります。
そこで、これは特別永住者の証明書の常時携帯義務違反について、これは現行と同じく、十万以下の行政罰、過料に処する、こういうふうにしているわけですね。特別永住者の常時携帯義務違反については、平成十一年の外登法の審議において、二十万円以下の罰金、これは刑事罰、ただ、十万円以下の過料、行政罰ということで修正されたわけですね。そして、附帯決議で「刑事罰の対象から除外された趣旨も踏まえ、いやしくも濫用にわたることのないように努めること。」こういうことになっているわけであります。
そこで、本年二月二十五日に民団の方々と一緒に法務大臣のところへ御要望いたしたときに、運用面において、従前と同様に十分な配慮をしたいとお答えをしていただきました。そして、本法律成立後も、特別永住者のこの証明書の携帯義務違反については、弾力的に運用したい、こういうことも言っていただいたわけでございます。
そこで、近年、特別永住者が外国人登録証明書の義務違反で過料に処せられた事案があるのか、あるとしたら何件ぐらいなのかということをお伺いしたいと思います。

○森国務大臣 特別永住者の常時携帯義務の罰則が過料となった平成十二年四月一日以降、過料を適用するため裁判所に通知を行った例はございません。もっとも、これは特別永住者の歴史的経緯や我が国への定着性に配慮した謙抑的な運用がなされた結果であると承知をいたしております。
我が国を取り巻く環境等を考慮すれば、現段階ではなお、特別永住者の身分関係等を即時的に把握することができるようにするため、過料の規定を存続させる必要があると考えております。

○大口委員 そういうことで、こういう行政罰、過料というものを設けても、実際は、弾力的な運用ということで、携帯されない場合においても問題がない、こういうふうに特別永住者の方も受けとめておられるわけであります。
そういうことで、成り済ましを防ぐために、即時に身分関係や居住関係を把握する、こういう必要があるからということが、果たして本当に実効性があるのかと私は思うわけです。
この際、立法府の附帯決議というものを尊重していただいて、私は、十万円以下の過料という罰則を存続する必要性はないのではないかというふうに考えておるわけでありますが、改めて、法務大臣、御答弁をお願いします。

○森国務大臣 先ほども近江屋議員に御答弁申し上げたところでございますけれども、私どもとしては、社会秩序あるいは治安、それから不法滞在者の抑止、こういったことに責任を持つ立場としては、最善の案と思って提出をさせていただきました。
また、弾力的な運用ということをこの間確かに申し上げましたけれども、この場でこれ以上のことを申し上げるのは御容赦をいただきたいと思います。
なお、いずれにしても、私どもは最善と思っておりますけれども、これから先は、国会での真摯な御議論を待ちたいというふうに思っております。

○大口委員 それでは、あと、もう時間もございませんので、今回、在留資格を、留学及び就学を一本化するということになったわけであります。これは、福田前総理の施政方針演説で、留学生三十万人計画ということで、二〇二〇年を目途に留学生の受け入れ三十万人を目指す、高度人材受け入れとも連携させながら優秀な留学生を戦略的に獲得していくとおっしゃっていたわけであります。
そういう点では、世界で競争が非常に激しくなってくる中で、高度人材の受け入れというのが大事であります。より多くの優秀な留学生を積極的に受け入れるということが非常に重要であります。
本改正案によって、留学生等の負担の軽減が図られております。実際、どのくらいの方が就学から留学への在留資格の変更をされているのか。現行制度において、留学の在留期間を二年または一年とし、在留期間の更新が必要とされるようになっている理由をお聞かせください。そして、新しい留学の在留期間はどのくらいの期間に設定するのか。これは期限が上限五年ですから、それについても具体的にお話しいただければと思います。

○西川政府参考人 お答え申し上げます。
まず、在留資格「就学」から在留資格「留学」への変更許可人数は、平成二十年におきましては、一年間で約二万人となっております。
また、現行の在留資格「留学」の在留期間については、留学生の教育機関における在籍状況や在留状況を定期的に確認して、留学生に対する適切な在留管理を図る観点から、入管法施行規則において二年または一年とされているところでございます。
改正後の在留資格「留学」の在留期間については、新たな在留管理制度、これが導入されるに伴いまして、同制度において、教育機関における在籍管理の徹底が期待されるということになります。
在留資格「留学」及び在留資格「就学」の不法残留者数、これが減少しているということなども踏まえまして、留学生が安定的に勉学できるよう、適切に在籍管理を行っている教育機関に在籍する留学生に対しては、在留期間を伸長するということが適当であるというふうに考えており、具体的な在留期間としては、例えば大学の在籍期間である四年の在留期間を新設することなどを検討しております。
なお、本年一月に、法務大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会が取りまとめた留学生及び就学生の受入れに関する提言におきましても、在留資格「留学」の在留期間を伸長することが適当であるというふうにされているところでございます。

○大口委員 時間が参りましたので、これで終了します。
ありがとうございました。

大口よしのりについて
大口よしのりについて
活動記録
活動記録
政策・実績
政策・実績
リンク集
リンク集

▲このページの先頭へ