大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2010年4月20日

174-衆-法務委員会-8号 平成22年04月20日

○大口委員 公明党の大口善徳でございます。
最後、聞かせていただきますが、かなり論点、同じようなことが聞かれております。ただ、私も公明党の代表として聞くべきところは聞いていかなければなりませんので、重複になるかもしれませんが、よろしくお願いしたいと思います。
我が党も、法務部会で公訴時効に関する検討をいろいろさせていただきました。ヒアリングも、それこそ二〇〇九年の一月十六日から、もちろん、法務省からもそうでありますが、あすの会、全国犯罪被害者の会あるいは宙の会の方々、きょうは傍聴に小林代表幹事も来ておられましたが、あるいは全国交通事故遺族の会の方からもヒアリングをさせていただきました。また日本弁護士連合会から等々、お話を聞かせていただいたわけでございます。
そういう中で、殺人罪で平成十一年から平成二十年までの公訴時効完成数が五百八、こういうことでございますので、被害者の方が本当に悔しい思いをされている。私どもは、被害者の会の方々から本当に切実な声を聞かせていただきました。そして、被害者の会の方々も冤罪なんというのは望んでいない、とにかく真犯人を捕まえてもらいたいんだと。ですから、冤罪が発生するというようなことを我々は望んでいないんだ、こういうお話もお伺いしたわけでございます。
そういう状況の中で、東京八王子市内のスーパーにおける強盗殺人事件、女性三名の射殺、これが本年七月三十日に時効完成する。こういう状況の中で今回の法案というものが、それこそ、ある意味では、前政権から継続して精力的になされてこういう法案になった。そういう点では、私ども、これは参議院で先議であったわけでありますが、法案に賛成をさせていただいた、こういうことでございます。
そこでまず、千葉大臣は、本法律案の提案理由説明において、被害者の遺族の方々を中心として、人を死亡させた犯罪について公訴時効の見直しを求める声が高まっている、また、国民の間でも、人の生命を奪った犯罪については、より長期間にわたって刑事責任を追及すべきとの意識が共有されてきた、こういう事情を挙げておられます。
そこで、遺族の方々の声というものを具体的に大臣としてどのように把握、認識をされたのか、また、同じく国民の意識というものをどのように把握、認識されたのか、お伺いさせていただきたいとともに、それ以外に公訴時効見直しを必要とする事情、立法事実、こういうものについて具体的にどのようなものがあって確認されたのか、お伺いしたいと思います。

○千葉国務大臣 公訴時効のあり方について、とりわけ被害者遺族の方々の御意見、これは例えば、被害者団体の皆さんからのヒアリングなど、法務省内の勉強会あるいは法制審議会などでも聞いていただいているということでございます。私も、直接いろいろな形で、この間、御意見を聞かせていただいてまいりました。また、そういう団体の方ばかりではなくて、法務省に対する要望や陳情、こういう形でも、国民の皆さんあるいは被害を受けられた皆さんからの声が寄せられているということもございます。
国民の方々の意識につきましては、先ほど申し上げましたような世論調査とか、それから意見募集、あるいはまた報道機関などでのいろいろな調査もあると私も承知しておりますので、そういう中で、国民の意識というものを大体把握できてきているのではないかというふうに思っております。
また、国民の意識以外に見直しを必要とするほかの事情でございますけれども、殺人事件などについて、犯人が明らかになったのに公訴時効の完成により処罰し得ない事態が現に生じている、こういうことが本当にそのままにされていていいのか。
それから、民事上の損害賠償訴訟などにおいて、特段の事情があるときには、殺人の不法行為による損害賠償請求権に関する除斥期間の効果、これについても生じないものとされるなどの見直しというか、そういう扱いがされている、こういう事情もございます。そういう意味では、公訴時効についてもやはり見直しが必要なのではないか。
それから、犯罪被害者等基本法が制定されまして、そういう中でも、被害者等の尊厳にふさわしい処遇、こういうことが求められている、こういう背景もございます。
こういうことを踏まえながら、今回の改正ということを御提起させていただいたということでございます。

○大口委員 公訴時効制度の趣旨との関係でございますけれども、公訴時効制度の趣旨は、もう何回も答弁されていますが、一般的に、時間の経過によって、有罪、無罪の証拠が散逸する、時間の経過によって、被害者及び社会の処罰感情が希薄化する、一定期間訴追されていないという事実を尊重する、こういうことでありますが、今回の法律案で、人を死亡させた犯罪のうち死刑に当たる罪については公訴時効を廃止する、こういうことでございますので、こういう類型の犯罪については、今述べました公訴時効の趣旨が妥当しない、すなわち、一、証拠散逸の問題がクリアされる、二、処罰感情も希薄化しない、三、事実状態を尊重する必要はないということで廃止にしたと理解してよろしいでしょうか。

○千葉国務大臣 御指摘がございました証拠散逸の問題、それから処罰感情の希薄化、あるいは事実状態を尊重する必要もないということでございますけれども、ゼロになるということではないというふうに思います。ただ、それだけの重い犯罪、これについてはやはり必ず処罰をする、逃げ得を許さないんだという処罰の必要性、それに比較して、事実状態の安定を尊重する、こういうことを比較すると条件が弱くなる、そういうことであろうというふうに思います。
この趣旨が全くなくなるということではありませんけれども、比較考量すると、大変その法的安定という部分は弱まるということが言えるのではないかというふうに思います。

○大口委員 証拠の散逸の問題は、これは比較考量の問題なんですか。

○千葉国務大臣 証拠の散逸については、近時、証拠の収集、あるいはまたDNA型鑑定のかなりの進歩、こういうこともございますので、そういう意味では、時間が経過をすることによって証拠の散逸ということもかなりクリアできるようになっているのではないかというふうに思われます。
ただ、証拠というのはそれだけではございませんので、やはり全く証拠の散逸ということがゼロになるということではございませんけれども、証拠の散逸についても、科学的な捜査や、あるいは今のようなDNA型鑑定、こういうものの進展によりましてかなりこれをクリアできる、こういう条件は少しずつ強まっているというふうに言えると思います。

○大口委員 これも聞かれているわけでありますけれども、民主党のインデックス二〇〇九、政策集において、「公訴時効のあり方については、法定刑に死刑が含まれる重罪事案のうち特に犯情悪質な事案について、検察官の請求によって裁判所が公訴時効の中断を認める制度」を提案していますと。
このインデックスを読ませていただきますと、やはり公訴時効の問題については、当時の民主党さんは相当慎重であった。そして、「法定刑に死刑が含まれる重罪事案のうち特に犯情悪質な事案」ということで、かなり対象も絞られて、そして事案ごとにこの中断を求められていた。そういうことで、このインデックスを作成された当時の民主党さんの党内、大臣も含めて相当慎重であったのではないかな、こう思うわけです。
そういうことからいたしますと、公訴時効の廃止ということに踏み切ったことは、かなり左からどんと右に、まあ右から左でもいいんですが、相当大移動をされたのではないかな。ですから、党内においてもいろいろ議論もあったし、また参議院における民主党の議員の先生方も、かなり慎重論も交えながら質問をされていた、こういうふうに思います。
そこで、このことについて、かなり大きな政策転換をされたことについて御説明をいただきたいと思います。

○千葉国務大臣 今、大きな政策転換という御評価でございますが、民主党政策インデックス、これに掲げられた考え方について、すべてその議論の経過というのを私もかかわっていたわけではございませんけれども、いろいろな議論が展開をされたということは事実だったというふうに承知をしております。
やはり、公訴時効を廃止するという御意見もなかったわけではありませんし、しかし、捜査の負担ですね、そういうことをどうしたらいいのか。あるいは、確かに証拠の散逸などによって防御権が弱くなるのではないか、こういう懸念、こういうことも含めて、公訴時効の見直しは必要なんだけれども、その辺をどのようにクリアしようかということなぞを踏まえて、一つの問題取りまとめをしてきたのではないかというふうに承知をいたしております。そういう意味では、公訴時効を見直すということにおいては、共通な土台にのっとって議論をしてきたということでございます。
そういう中で、改めて法制審議会などに、いろいろな考え方、これも全部網羅して、ゼロから議論をしていただくということなどを御提起させていただいて、結論を得て、諮問の答申をいただいて、法案に取りまとめさせていただいたということでございますので、公訴時効を何とか見直して、多くの皆さんの処罰感情、あるいは逃げ得を許さないということにこたえていこうと。しかし、その反面での幾つかの懸念ということもしっかりと、運用やあるいはこれからの捜査のあり方、こういうことを踏まえて、きちっとそれもクリアをできるようにしていこうという基本的な考え方に立っております。

○大口委員 昨年の七月の段階ですから、もうすべての論点がある程度わかっておりました。その上でこれは判断をされたと思うんですね。違うところといえば、法制審議会の議論が入った、そのことがかなり影響されたのかなという感じもいたします。
次に、これも公訴時効の見直しと対象範囲の問題でございます。
これについて、今回こういう形の整理をされたわけでありますけれども、今後、これについていろいろな国民の声や被害者の声等を聞いて、将来また見直す可能性があるのかどうか、そこをまずお伺いしたいと思います。

○千葉国務大臣 今回は、一つの基準を設けて、少なくとも命を奪う、そして死刑に該当するような重い、そういう基準に基づいて、多くの皆さんのニーズにこたえていこう、意識にこたえていこうということでございます。これは、これで固まってしまって、未来永劫全くこれから先がないということではないと私は感じております。
特に、御指摘をいただいておりますのは、多分こういう問題ではないかと思われますけれども、例えば、性犯罪であるとか、ここまでいかなくても、強姦致死とか、こういう問題などについて、やはり何らかの対処をしなくていいのか、こういう意見などももう既にいただいているわけでございまして、どういう形でまた検討していくかということはございますけれども、今回のでもう全部終わりということではないというふうに私も理解をいたしております。

○大口委員 そういう点では、今後この委員会でさらにいろいろと議論をさせていただいて、次に展開できるような形にしていきたいと思っています。
特に、死刑に当たる罪のみを廃止の対象としているわけですが、無期刑に当たる罪も相当悪質でありますし、また、人を死亡させるという結果が出る場合は、これはやはり死刑だけにこだわらず、無期刑に当たるものについても対象とすべきだ、こういう意見もあったと思うんですが、今回死刑に限った理由をお伺いしたいと思います。

○千葉国務大臣 これも繰り返しになってしまうかと思いますけれども、公訴時効を廃止するということでございますので、要請されるほど重い、当罰性が高い、やはりこういう基準をとるべきではないかということでございます。
そういう意味で、人を死亡させた、しかも、最も重い死刑に当たる刑罰が科せられる、こういう法定刑が定められているというものにまずは基準をとらせていただくというのがまず第一歩ということではないかということで、今回はこのような基準で公訴時効を廃止させていただくという選択をいたしました。

○大口委員 ただ、結果的加重犯、強盗致死、これにつきましても時効が廃止されているわけですね。これもやはり廃止の対象にすべきだ、こういう考え方があると思うんですね。それに対して、強姦致死、集団強姦等致死、それから強制わいせつ致死罪、こういうものについても、やはり死という結果を及ぼすものでありますし、まさしく女性の人格を根底的に破壊する行為なわけでありまして、こういうものについては、やはり廃止としても、これは国民の皆さんの感情からしましても、あるいはまた被害者の方にとってみれば、これはもう本当に一生、ある意味では、被害者の遺族の方、そういう形で亡くなったことに対する傷というものを一生負うわけであります。
そういう点で、大臣は当罰性ということをおっしゃいましたが、当罰性ということに置けば、こういう性犯罪で死亡させた罪についても廃止すべきだ、私はこういうふうに思いますが、いかがですか。

○千葉国務大臣 先ほど申し上げましたように、当罰性の高いものということで、その高いということを何をもってはかるか、基準にするかということ、今回は死刑という法定刑があるということをもって、その当罰性の高さという一つのメルクマールにさせていただいたということでございます。
ただ、委員が御指摘の性犯罪、とりわけ強姦致死罪等による被害というのは、本当に心の殺人と言われるくらいの大変な重い被害であろう、これは私も本当に心痛く感じているところでございます。
そういう意味で、ただ、例えば強盗致死は、強盗殺人という故意も含まれるということになります。強姦致死の場合には、重い結果について故意のない場合に適用される。仮に、重い結果である死について故意がある場合には、殺人罪との観念的競合になりますので、こちらで公訴時効の適用が排除される、こういうことは現在でもできるかというふうには思っております。
ただ、いずれにしても、性犯罪ということについては、この公訴時効のみならず、さまざまな部分で今の制度とか救済が非常に弱い、その被害について軽く扱われているのではないかという御指摘があることは、もう本当に私も承知をいたしております。そういう意味では、公訴時効ということに限らず、やはり、この性犯罪に対する、おっしゃった、法定刑そのものの重さがこれでいいのかとか、あるいは救済の方法はどうすべきかということも含めて、私はぜひ検討をしなければいけない課題だというふうに認識しております。

○大口委員 これも課題になると思いますけれども、殺人未遂事件においても、死亡という結果は生じなかったけれども、例えば植物状態になられる方、それからもう本当に重篤な後遺障害が残っておられる方、こういう方々は、被害者本人、家族の処罰感情は日々これは大きくなっていくのではないかな、こういうふうに思うわけであります。そういう点で、この重篤な後遺障害についても、もちろん、線引き等があって、どこまでがどうなのかという問題はあると思うんですけれども、今後の課題としてこれは考えていかなきゃいけない、こう思います。
また、ひき逃げにつきましても、何回もいろいろな委員から御指摘がありました。毎日新聞の二十一年九月二十七日の報道によりますと、死亡ひき逃げ事件というのが平成十一年から十五年まで千五百十六件あった。それで、時効成立が、これは五年後になるわけですけれども、平成十六年から二十年で百五十一、時効成立していた。一〇%時効が成立していまして、これは殺人の二・五倍の時効成立の割合だ、こういうことが報道されているわけでございます。こういう死亡ひき逃げ事件というのは一つの類型だと思います。
大臣は、自動車運転過失致死罪あるいは危険運転致死罪、これが延長されたから、これまでよりは改善されたのではないか、こうおっしゃることございますけれども、救護義務違反という卑劣な、悪質な故意を伴うものについては、やはりこれも延長等について検討すべきではないかな、こういうふうに指摘をしておきたいと思います。
さて、時効が進行中の事件の取り扱いにつきまして、いわゆる遡及適用の可否、これもいろいろ議論がされております。大臣は、参議院で、いわゆる遡及適用の可否の問題について、憲法三十九条は、罪を犯した場合の刑罰に関して事前に告知し、行為者の予測可能性を保障する点にあるところ、公訴時効については、必ずしもこのようなことは直接かかわらないものであるし、しかも、一定期間逃げ切れば処罰されなくなるという犯人の期待は法的な保護に値しないため、憲法三十九条違反にはならない、こう答弁されています。
これは平成十六年の改正の際に、附則において「なお従前の例による。」ということで、この平成十六年のときはいわゆる遡及適用はしなかったわけでありますが、その理由として、公訴時効制度の趣旨について、実体法説の考え方も有力に主張されていることに加え、過去に行われた犯罪行為について、事後的に公訴時効を延長することが被告人に不利益であることを考慮した、こういう説明がなされているわけであります。
そういう点では、五年余りで、法適用の仕方について、説明の仕方がかなりがらっと変わっているのではないかな。このあたりについて御説明いただきたいと思います。

○千葉国務大臣 十六年の改正の折でございますけれども、私が理解、承知をしているところでは、確かに実体法説の考え方もあり、この段階で公訴時効についての見直しを全体としてやるというところまでには至らなかったということだったようでございます。その折には、被害者の皆さん等からの声も、必ずしも提起をされておりませんでした。
その後、犯罪被害者救済の基本計画等々、そういうものを踏まえながら、やはり被害者の皆さんが、みずからの置かれた立場あるいは心情、こういうものを積極的に表明されるということも多くなってきたというふうに思いますし、考え方として実体法説が必ずしも強い説であるということでもないということで、今回については、被害者の皆さんあるいは国民の意識、それから、公訴時効については、その趣旨からいっても憲法に抵触をするものではない、こういう考え方で今回は見直しをすることになったという経過でございます。

○大口委員 法制審議会でもいろいろ法的な議論がなされたということも受けられてのことだと思います。また理論的な構築はしていかなきゃいけないと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
既に時効が完成した事件について、いわゆる遡及適用でございますけれども、これは、それこそ時効の完成が施行日の前か後かで、その事件についての時効が廃止されるかどうかといった結論が大きく異なってくるということで、既に時効が完成していた事件についていわゆる遡及適用を認めるかどうかというのは、極めて大きな問題でございます。
これについては、学説等においては遡及適用を認めることには否定的な見解が多数を占めている、こう言われておりますけれども、ただ、三十九条の解釈は、予測可能性、それから、犯人の期待は保護に値しないということであれば、理論上は、既に時効が完成した事件について遡及適用を認めないというところまでは三十九条からは導き出せないのではないかな、こう思います。
大臣は、四月六日の森まさこ参議院議員の質問に対して、「いったん処罰をすべき公訴権が消滅をしたという状況の中でそれを改めて時効を進行させるあるいは公訴時効をまた復活をするということは、先ほど申し上げましたように、憲法の三十九条等の趣旨からいってもいささか抵触をする、こういう私はやはり危惧があるのではないかというふうに思います。」こういうことなんです。
そこで、大臣の憲法三十九条の解釈を、今回の、既に時効が完成した事件についてのいわゆる遡及適用についてもう一度説明をしていただきたい、こう思っています。
そして、これは、公訴時効の完成によって、公訴権だけが消滅するのか、公訴権だけでなく刑罰権も消滅するのか、こういうことも理論的な問題があります。あわせてお答えください。

○千葉国務大臣 憲法三十九条の趣旨は、行為時に犯罪でなかったものを犯罪にする、あるいは行為時の刑罰をその後に重くする、こういうことを禁ずる、これが三十九条の基本的には趣旨であろうというふうに思っております。
そういう意味では、公訴時効そのものについては、公訴時効が今まだ継続をしている、時効が進行しているということについては、後から刑罰をつくるとか重くするということではございませんので、基本的には三十九条に違反するものではないというふうに私は理解をいたしております。
公訴時効が完成をするということになりますと、一たんやはり刑罰権が行使できなくなるという状態になるというふうに思われますので、そういう意味では、一たん刑罰権がなくなった、それをまた改めて刑罰を科すということになりますと、これは、これまで続いてきたものをそのまま継続させるということではなくて、また新たな刑罰を発生させる、刑罰権を発生させるというようなことになるのではないかというふうに解釈できますので、こういう意味では、公訴時効が完成した後にまたこれを復活するというのは、三十九条に抵触をするというおそれが大なのではないかというふうに私は理解をいたします。

○大口委員 次に、冤罪防止の措置についてということでございますが、何十年もたってから突然逮捕される被疑者、被告人にとって、アリバイの証明、正当防衛、緊急避難の立証など、防御をすることが困難になる、その結果、冤罪が発生するおそれがある、こういうことで、日弁連等、この冤罪防止等について危惧が示されているところでございます。大臣からも可視化のこと、あるいは中井大臣はDNA鑑定のこと、しっかりやっていく、こうおっしゃっているわけでございます。
そこで、事件発生から何十年も経過して起訴された刑事事件の審理においては、証拠書類しか存在せず、証人などの人証が存在しない状態で裁判をしなければならない場合が多いのではないかと思うんですね。この場合は、例えば、証人がいても記憶が薄れていたり、証人が死亡してしまったときには、その者の供述調書等があったときは、刑事訴訟法第三百二十一条一項二号、三号により、その書面に証拠能力が認められる、さらに、実質的にその証明力が高いものとして取り扱われる可能性があるのではないか、こういう意見があるわけでございます。このような書面には被告人に有利な事情が何ら記載されていないため、しかも反対尋問の機会もない、被告人の防御に多大な困難をもたらすおそれがある、こういう指摘もあるわけであります。
法制審議会の専門部会において、裁判官の幹事から、慎重に審理する、こういう発言がされているわけでございますけれども、具体的にどのような審理をするということを意味するのか、最高裁に問います。簡潔に答えていただきたいと思います。検察は立証をどう工夫されるのか、お願いしたいと思います。

○植村最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、証人が死亡したり、記憶を喪失したような場合というのは、三百二十一条一項二号前段、それから三号の適用がございまして、供述調書そのものが証拠能力を持って法廷に出てくるということになると思います。一項二号前段と三号は若干要件が違うんですが、そこはちょっと飛ばしまして、いずれにしても反対尋問ができないということなので、反対尋問ができないというのは、その供述の信用性をチェックする機能が失われているということが大前提になります。
そこで、慎重に審理するということでございますが、いずれにしても反対尋問による吟味を経ておりませんので、有罪認定をするにつきましては、そのほかの証拠、具体的にどんなものがあるかというのは事件によって違うわけでございますが、どんな証拠があるのかを丁寧に見まして、それに、弁護人も当然反証されると思いますので、弁護人の反証の状況、これも総合して考えて、果たして検察官が合理的な疑いを超える立証を尽くしたと言えるかどうか、きちんと吟味する必要がある、こういう趣旨だろうというふうに思っております。

○千葉国務大臣 一般論とすれば、公訴の提起をした検察の方が確実な、完全な立証をしなければならないわけですので、そういう意味では、やはりきちっとした証拠とかあるいは裏づけ、こういうものを備えて立件をしなければならない。できるだけそういう運用といいましょうか、そういうことをすることになるのだろうというふうに思います。
そのほかにも、制度的には、証拠裁判主義とか自由心証主義、自白法則等々ございます。必ずしも検察官に有利だということではございませんけれども、やはり基本的には、できる限り自白といいますか供述調書に頼らない、そういう証拠をきちっとそろえる、こういうことが一番重要なことではないかというふうに思っております。
ぜひそういう姿勢で臨むべきだということを私もしっかりと強調しておきたいというふうに思っております。

○大口委員 中井大臣、お待たせしました。
こういうふうに公訴時効の廃止に伴って殺人事件などの捜査体制を見直す必要があると思うわけでありますけれども、その前提として、まず、現在の殺人事件などの捜査本部の体制がどのようなものになっているのかと。今後、公訴時効が廃止、延長された場合、警察の負担は大きくなります。初動捜査も極めて大事ですので、これにも力を入れていただかなきゃいけない。かつ、長期的な対応も必要である。限られた捜査資源をいかに有効に用いるか、そういう点でどのような捜査体制で臨むのかということをお聞かせ願いたいと思います。

○中井国務大臣 いろいろと御心配を賜りまして、ありがとうございます。
おっしゃるとおり、公訴の期限というものが廃止されましたら、何十年と証拠を残していく、初動において本当にきちっと捜査をして証拠を集め、それを科学的に、時間の長さにかかわらずいつでも鑑定できる、こういう形で残していく体制、これが必要であろうかと考えております。
特に、こういう法案が出されるようになりました裏には、DNA鑑定に対する信頼というものが非常に大きくなってきた、このDNAの鑑定を何十年と保存し続けられる体制、既に、各県の科捜研にはマイナス八十度の冷凍庫で保存できる、そして、今回の予算で、千数百の警察署にマイナス二十度の温度で保管できる冷凍庫、こういったものを手配いたして、いろいろな長期化に備えていきたいと考えております。
また同時に、今回のこの法案を早期に成立させていただければ、先生先ほどお話ありました八王子のスーパー、これが時効ということがなくなりますので、早速にもう一度洗い直しをするなど、時効をクリアできるいろいろな事件について督促をしてまいりたい。
それから同時に、今までも捜査本部は、解決をしない限り捜査本部を解散するということはありません。これをどういう体制で持っていくか、そして何年に一度チェックしていくのかというようなことも議論を始めているところでございます。
またいろいろと御指導いただきますよう、お願いいたします。

○大口委員 今、DNA鑑定の件が出ましたので、では、そちらのお伺いをします。
参議院で、マイナス二十度で冷凍保管した場合、どれぐらいもつのか、要するに、鑑定試料を劣化させないで保管できるのかということに対して、大臣が、「世界中DNA鑑定というものが出てきて二十年という状況でありますから、それは実証されたかと言われれば、たかだか二十年のことでございます。 しかし、冷凍保存をしてやっていけば、半永久的にDNA鑑定というものは証拠として十分価値があると私どもは判断をいたしているところであります。」こういう答弁をされております。
これについて、科学的に答弁をしていただければなと思っています。

○中井国務大臣 血液等水分をたくさん含んでいるものについては、やはりマイナス八十度という温度で保存をしなきゃならない。しかし、昨今行っておりますDNA鑑定のように乾燥型のものにつきましては、マイナス二十度の保存で十分ではないかと考えておりますが、先生方の御指摘に伴いまして、現在、科警研において実験を行っているところでございます。この実験結果が出れば、また公表をして、御批判をいただいていきたいと思っております。

○大口委員 それで、法務省にちょっとお伺いをしたいんですけれども、殺人などの公訴時効が廃止される事件について、どの程度の期間が経過したら、検察として警察から事件の送致を受けるのか。また、そのように送検がなされた場合、検察としてその事件をどのように処分するのか。これまでは時効送致ということで不起訴処分にしていたわけですけれども、今度は新しい類型の不起訴処分とするのか、その場合は法改正が必要なのか、お伺いしたいと思います。

○千葉国務大臣 現在でも、犯罪の捜査をしたときには、刑事訴訟法の二百四十六条によりまして、「速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。」こう規定をされております。これに基づいて行われているわけですけれども、今回、公訴時効が廃止をされたということになりますと、一体どういうときにこの二百四十六条に該当するのかということになろうかというふうに思います。
個別具体的な証拠関係等にかかわりますので、なかなか一概に何年、こういうことにはならないというふうに思いますけれども、さはさりとて、では今度は、全く永久に事件送致ができないのかということになってしまいます。
やはり捜査というのは、基本的に公訴の提起あるいは遂行のために行われるわけですので、例えば、個別具体的に、捜査、公訴をやる意味がなくなってしまうというような事態になれば、これは、一たんこれで捜査が終了したということで送致を受けるということになるのだろうというふうに思います。例えば、長期化して、犯人が、普通の年齢から考えると死亡と認められるような、そういうときに至っているというようなときには、公訴提起の可能性がなくなったということになりますので、事件を送致していただいて、そして、基本的には不起訴処分という形で捜査を終結するということになるのではないかというふうに思います。
これをどういう形で、どういう時期に、それからどういう認定の仕方で事件を終局させるかということは、少し今後緻密に検討をしていく必要があるというふうに考えております。

○大口委員 時間が来ましたので、これで終わります。
ありがとうございました。

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