大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2011年3月9日

177-衆-法務委員会-2号 平成23年03月09日

○大口委員 公明党の大口でございます。
大臣、就任おめでとうございます。そして、大臣には、法律家でございますから、やはり法律家としての見識をしっかり答弁していただきたい、こう思っておりますので、よろしくお願いいたします。
さて、最高検は、昨年十二月の二十四日、「いわゆる厚労省元局長無罪事件における捜査・公判活動の問題点等について」という検証報告を出されました。しかし、私、この検証報告を読ませていただきましたけれども、非常に問題点がある。そして、このことは、今、検察の在り方検討会議、ここでも委員から厳しい評価が出ているわけであります。
例えば検面調書、この特信性を否定した件についての記述ですけれども、五人の特信性は肯定され、三人のは否定された、こうなっているんですが、実際、四十三通のうち三十四通が否定されているんですね。やはりそれは記述にあらわれているんですね、最高検の今回の問題についての気持ちが。非常に私は問題だなと思うわけであります。
そしてまた、客観的事実と異なる内容の調書が膨大、これは一定の設計図に基づいたのではないか。そしてまた、特信性が否定の取り調べが横行している、見立てに沿ったものではないか、こういうことも指摘。あるいは但木さん、元検事総長も、検察あるいは検察の特捜部というものが抱えている、あるいは伏在している危険性みたいなものがある、こういう点が不十分であったのではないか。そして江川さんが、被害者から出発した検証でなければならない、だからやはりこういうものはだめだ、こういうふうに言っているわけでございますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

○江田国務大臣 最高検の検証結果は、これは最高検が独自の立場で検証して報告書を出したものでございます。
この報告書、検証結果自体については私もいろいろな思いはございますが、しかし、やはり検察は独立して全体を動かしていっているわけで、その中で、最高検というものが、その時々、最高検が自分のところで所管をしている検察全体の状況を踏まえながら検察全体を信頼回復のために前へ進めていこう、そういう立場でこういう検証結果をまとめたものであって、私が法務大臣として、確かに検察をいろいろな意味で指揮監督する立場にはございますが、この件について指揮権を行使してということはちょっと控えて、検察、最高検の判断と、そして最高検の指揮によって検察内部を信頼回復のためにまとめていっていただきたいという思いで今これを見守っているところでございます。
なお、この検証結果が検察の在り方検討会議において俎上にのせられて、今委員御指摘のようないろいろな議論があったことはそのとおりでございます。そうした議論は、私も、これは重要な議論だと思っております。

○大口委員 大臣、ですから、在り方検討会議の委員の皆さんが、こういう厳しい評価をしているわけですよ。それに対して、大臣として指揮権を発動するということではなくて、大臣としてどう考えておられるのかということをお伺いしたいんです。

○江田国務大臣 これは、それも含めて今、検察の在り方検討会議で、この月末をめどに一定の検討の結果を出していただくということになっておりまして、そこへ今託しているということでございます。私自身が、この検証結果について法務大臣という立場でコメントするのはとりあえずは控えておこう、検討会議の中でいろいろ議論していただこうと思っております。

○大口委員 とりあえずは控えておくということですから、行く行くはちゃんと発言するということでよろしいですね、大臣。

○江田国務大臣 検討会議の中でそういう議論が出てきて、恐らくこれをさらに乗り越えるようなお答えが出てくるものと期待しております。

○大口委員 特に、村木さん、これは長期勾留、百六十四日間ですよ、勾留されているわけでありますね。この事件の、実際に取り調べを受けた被告人本人、あるいは弁護人からヒアリングを一切受けていない。これは検証として私は無理であり不十分であると。伊藤前次長検事も、話を聞くことを考えると昨年十二月二十四日に言っているわけでありますし、また、笠間検事総長も、ことしの二月二十八日、言われてみると確かに村木さんはいろいろなことを経験された御本人だから、村木さんから聞いてみる手はあった、こういうふうに言っているわけであります。
大臣として、やはり村木さんから聞くということは、これは被害者からの検証ということで大事ではないかと思うんですよね。ここは問題であるということを指摘してください。

○江田国務大臣 最高検が独自の立場でやられた検証のプロセスですから、これは最高検の判断にまずはゆだねたいと思っております。
村木さんの無罪判決や、あるいは大阪地検での証拠隠滅、犯人隠避事件、こうしたものを踏まえて、検察当局でいろいろな原因を追求し、問題点を明らかにしたわけでありまして、その検察の立場でヒアリングを行うことは必ずしも必要ないと認めて行わなかったものだと思うんです。
ただし、今の検察の在り方検討会議においては、村木さんあるいはその他の皆さんにも来ていただいて、そしてお話を伺い、本当に皆、真剣な質疑応答を村木さんその他の方とやっておられるということを私は報告を受けておりますので、検察、最高検が村木さんに聞かなかったこと自体は、これは検察、最高検の判断と受けとめる以外にないと思っております。

○大口委員 笠間現検事総長も、やはり聞いてみる手はあった、こう言っているわけですよ。大臣、なぜそこまで最高検に遠慮しなきゃいけないんですか。そんなことで指導できるんですか。

○江田国務大臣 笠間検事総長がそう言われているとおり、それは、最高検としても村木さんから聞くという方法はあったのだろうと思います。だけれども、それも含めて、それは検事総長がそういう反省をされるなら、それはそれで、私は、検事総長が一つの態度を示されているということであって、全体に検察をどういうふうに信頼回復させていくかという場合に、一つの参考になる検事総長の発言だと受けとめるほかありません。
とりあえずは最高検で、とにかく信頼するからやってみろ、こう言っているわけで、その信頼にこたえているかこたえていないか、笠間検事総長がそういう反省をされたということだと思います。

○大口委員 そのほか、今回、共犯者とされている倉沢氏、上村氏、一切ヒアリングがなかったと。この二人の検面調書もすべて却下されているということで、ここら辺についても問題があったと思うわけでございます。いずれにしましても、最高検の検証については極めて不十分である、こういうふうに考えております。
ですから、補充の検証ということを大臣は考えておられますか。反省しているわけですから、今の検事総長は。

○江田国務大臣 最高検に、この検証結果では不十分だからさらに補充せよと指揮するかということですよね。
とりあえず、今はそういうことは考えておりません。この結果を検討会議で十分たたいてもらうということで進めたいと思っております。

○大口委員 では、検討会議、そしてこれからの法務省も、可視化の勉強会等々もありますから、そこでしっかり大臣の考えを明確にしていただく。そのときには、最高検の検証についても、批判的な立場であるのであれば、それは明確にしていただきたい、こういうふうに思います。
この笠間検事総長、二月二十八日の日本記者クラブの会見で、今回の再発防止策として、高検に特捜係検事を置き、総括補佐検察官を置いて主任検察官に対してチェックもしていくと。不良成績者を充てることができずと。こういう人たちにはですね。きちっと意見の言える人でなければならないと。そのような新たなポストができ、現在の体制を維持できるか。これは、東京、大阪、名古屋の各特捜部体制を維持できるか、やっていく中でいろいろ吟味していこうと考えている、のっけから現体制を維持すると言っているものではない、フレキシブルに検討していかなきゃいけないと考えている。こういうふうに述べていますが、これは、この三特捜体制というものの維持に対しては、見直していくということでよろしいですか。

○江田国務大臣 笠間検事総長の二月二十八日の日本記者クラブ主催の記者会見で、高検に特別捜査係の検事を置き、主任検事に総括補佐検察官をつける、そういうようなことも考えていると。これにはもちろん優秀な人材を充てなければならないので、そうすると、全体に資源というものは限られているわけですから、それを、そういう配分をすると、全体がそのまま維持できるかどうかというものは、これは検討しなきゃいけなくなる。そこで柔軟に考える必要があるということは言ったと聞いております。
しかし、今の、東京、大阪、名古屋の三特捜体制、これを二つにするとか、そういうように変容させるということまでを視野に入れているものだというようには理解をしておりません。ただ、特捜三つを二つの体制にすることも、検討会議の中で議論の俎上には上がっていると聞いております。そこはいずれにしてもまだ結論が出ている話ではありませんし、何かの結論に向けての目標が定まっているわけでもありません。

○大口委員 また、最高検の今回の再発防止策の中で、十二あるわけですが、九番目に、公正な検察権行使についての指導の徹底の対策として、公正な検察権行使に関する基本的な原理ないし心構えについて、これまで、特にこれを取りまとめ、明示したことはなかったわけでありますが、今回のような重大な事案の発生を踏まえ、最高検において、二十三年、本年の二月上旬をめどにその案を作成し、二月十六日に開催する全国長官会同において、これについて議論を深めるなどした上、これを取りまとめて公表する、こうなっているわけですが、この案というのはもう既に作成されているんでしょうか。そして、その内容はどういうものなのか。いまだに公表されていませんが、いつ公表されるのか。お伺いしたいと思います。

○江田国務大臣 これは、御指摘のとおり、本年の二月中旬に開催されました検察長官会同において議論はされた、そして、今はその議論を深めている段階であって、まだ結論に至っていない、したがって、公表はまだされていないというように承知をしております。
今後ですが、最高検において、現在、検察の在り方検討会議においても検察官の倫理について議論がなされておりまして、この推移をも踏まえつつ、議論の経過を取りまとめて公表するものだというように理解をしております。

○大口委員 最高検として検証した結果、こういうものを発表する、こういうふうに言っているわけですから、検察の在り方検討会議は検察の在り方検討会議としての試案があるとおっしゃっていましたよね、大臣。やはり最高検としては、きちっとけじめをつけるためにも、これを出すべきじゃないですか。これは、在り方検討会議の結論の後となりますと、三月が終わって四月以降になりますよ。それでいいんですか。

○江田国務大臣 これは、したがって、検察の在り方検討会議で、検察官の倫理について、べからず集にするのか、こうしろというのにするのか、法三章風にするのか、ずっと長く書くのかなどということを今議論している最中でございまして、そういう議論も踏まえながら最高検の方で結果を取りまとめて公表する、そういう最高検の立場で今いるというように承知をしておりまして、それを、いやいや、最高検は長官会同の議論をさらに深めて早く出しなさいという、そういう直接的な指揮をする必要があるとは思っておりません。

○大口委員 十二項目を発表して、今どんどん出しているわけですよね。これについて、なぜおくれているのかちょっと理解ができない。最高検としてきちっと出すべきものを出す、その上で在り方検討会議でまた変えればいいだけのことであって、そこは一番肝心なところでしょう、ここが。最高検としてしっかり考え方を出すべきだと私は思いますけれどもね。
それでは次に、この最高検の報告書で、取り調べの録音、録画の試行を開始するということで、二月二十三日に試行指針が発表され、三月十八日にそれが実施されるということでございます。
これについては、特捜部の独自捜査事件で、拘束中の被疑者の事件の取り調べを対象として、取り調べの持つ真相解明機能を損なわない範囲内で、相当と認められる部分を検察官が選択して録音、録画を行う、被疑者が拒否した場合等は行われない。
現場の検察官にその判断を丸投げしている、こういう批判があるわけでありますが、現場の検察官にその判断を全面的にゆだねる問題についてはどう考えておられますか。

○江田国務大臣 現場の検察官の判断にゆだねておりまして、そのことについて批判があるということは承知をしております。
ただ、先日も私は検察長官会同にお集まりの皆さんにも申し上げたんですが、とにかく、検察の信頼がここまで地に落ちているときに、検察官の皆さんも、これはなかなかのみにくいな、あるいは痛い痛いというような、そういうところまでやらなかったら検察の信頼は回復できないということを申し上げて、また、笠間検事総長もその会同で、今は苦い薬を飲まなきゃいけないということを言ったということでございまして、私も、検察が、最高検、笠間総長を中心に、検察全体の信頼回復のために一生懸命に取り組もうとしておるということを信頼しているわけであります。
ただ、今までの検察のやり方、これをまずは踏まえながら、そこに、大変だということを察していかなきゃいけないわけですから、そうした検察の全体像というものをよくわかっている最高検の方で、今はここまでやってみよう、そして、検察の現場の裁量にゆだねているけれども、その裁量はかなりしっかりした裁量の判断をしなさいよ、こういうことで最高検が現場を指揮してくれるものと思っております。

○大口委員 それで、この試行については、裁判員裁判対象事件で行われている一部取り調べの録音、録画よりも範囲が広い、自白の任意性に加え、信用性等についても証明することを目的とすると。ですから、弁解録取段階といいますか、あるいは否認から自白に転ずる場面も録音、録画される、こういうように解釈しておりますが、その点がどうか。
もう一つ。ただ、いずれにしましても、これは、身柄の被疑者のみに限定しており、任意での聴取は対象とされていないという点で不十分との指摘があるわけです。村木さんの事件では、問題になったのは、被疑者だけでなく参考人とされる人たちで、参考人の中に、逮捕されずに任意で取り調べを受けて、村木さんが事件に関与したという虚偽供述をされた人も多数いるわけですね。そういうことで、この最高検の指針では、やはり村木さんの事件を防ぐということはできないのではないかと思いますが、この二点、お伺いします。
〔委員長退席、滝委員長代理着席〕

○江田国務大臣 今のこの最高検が出している指針で、村木さんのようなケースの録音、録画がなされるということにならないというのは、御指摘のような懸念はあると思います。弁解録取書の段階から全部録音、録画するのかとか、あるいは否認から自供に変わっていく、その過程も全部とるのかとか、これらも含めて当面はその検察官の判断にゆだねて、しかし、そこは、自分自身がやりやすいようにやるというのではなくて、検察の信頼を回復するためにやってみなさいという趣旨で検察の判断にゆだねているわけだから、具体的な裁量については、その趣旨を十分体して判断してくれということだと思っております。
それから、身柄事件だけで任意のものについては入っていないことは確かでありますが、やはり問題になってくるのは、村木さんの参考人のようなケースもあるかと思いますが、身柄事件がとにかく今一番争点になりやすいので、身柄事件を対象にとりあえず試行していこうということで、この点もまずスタートを切ったということだと理解しております。

○大口委員 村木さんは、在り方検討会議の中で、ヒアリングでこうおっしゃっているんですね。
二つ疑問が残る。一つは、私が全くかかわっていないにもかかわらず、どうしてたくさんの検事さんによって、たくさんの私がかかわったという調書がつくられたのかという疑問であります。検察が組織として、チームとして、そういうことを実際に行ってしまった。それは何なのかということでございます。
フロッピーの改ざんは確かにショックでしたが、私は、改ざん自体はそんなに怖さを感じませんでした。一人の変な検事さんがいて変なことをしてしまったということで、あってはいけないことですが、それよりも、たくさんの検事さん、副検事さん、まじめな方もたくさんいらっしゃるはずだろう、そういう人たちがチームでそういうたくさんの調書をつくったということが、私としては大変恐怖に感じました。
もう一つは、私がこの犯罪にかかわった、あるいは犯罪の首謀者であったと、責任者であったというストーリーを検察がつくり、それを維持されたのか。何でだったんだろうという疑問が結局最後に残った、こういうふうにおっしゃっているわけですね。
そういうことで、大臣も今、参考人については対象にならないということとか、村木さんの事件については、最高検の再発防止策では、これは対応できないんだとはっきりお認めになられました。ですけれども、村木さんの事件を防ぐために検証したわけですから、それが結局は、大臣が今認められましたように、十分ではないということについて、どう考えられるのですか。

○江田国務大臣 身柄事件で、身柄拘束されていない関係者の取り調べについて、そこまで録音、録画をするということについては、それぞれのまさに検察官の判断によると思いますが、そこの部分は、また別個の再発防止策を着実に実行することにより、再発防止を図ることは可能だと思います。
今、総じて、身柄をとられている被疑者の供述過程のことを私どもは主として問題にしておりまして、身柄をとられていない参考人のところまで録音、録画というのを及ぼすことができるかどうか、これも検討対象ではありますが、なかなか難しい。
村木さんについて、今指摘されましたようなことを述べられたというのは、非常に重要でありまして、特捜が、みずから頭に描いたストーリーに合わせるように、いろいろな捜査上の工夫をして、村木さんも、みんながこう言っているのに、あなた一人違うというのは、あなたが記憶喪失しているんじゃないかと言われると、どうも私が記憶喪失になっちゃったのか、そんなように思うような恐怖を感じたというので、本当に捜査というものの怖さをよく村木さんが指摘されたと思っております。

○大口委員 それでは、在り方検討会議の議論についてお伺いしたいと思います。可視化についてお伺いいたします。
千葉座長が、三月三日の第十一回の検察の在り方検討会議で、これまでの議論を整理すると、適正手続等の観点から、取り調べの可視化は有用であり、拡大していくべきとの点は、大方のところで異論はなかった、他方、取り調べの可視化により、取り調べの持つ真相解明機能が害されるとの懸念があるという点でも認識が一致したと。この発言に対しては異論が出たようでありますが。
この二つのバランスをとって、可視化に向けた考えられるプロセスをまとめると、一、直ちに取り調べの全過程の録音、録画を実現すべきとするもの、二、試行等を可能な限り積極的に行うなどして、可視化が取り調べの真相解明機能に与える影響を吟味しながら、その具体的なあり方を検討すべきとするもの、三、可視化を実現するのであれば、取り調べ以外の方法により、証拠収集を可能にするための捜査手法等を導入する法改正を同時に実現することが不可欠とするもの、そして、可視化のみならず、過度に調書等に依存する捜査、公判構造全体の転換を行うべきものに分けられると思う、このような整理を踏まえて議論していただきたい、こういうふうに千葉座長がおっしゃっているわけであります。
大臣は、可視化についてはこの一番から三番ですが、どの立場を法律家として、個人で結構です、お考えでしょうか。

○江田国務大臣 これは今、検討会議でまさに議論をしていただいている最中でございまして、三月三日の千葉座長のこういうまとめといいますか、進行、これをしっかり見ていきたいと思っております。
私自身がどの立場といって、これは今、検討会議で検討していただいている最中ですから、しっかりこういう、いろいろな立場のものを議論してほしいということでございまして、それから、四はすべてに係ることですが、一から三の、一をとれば、直ちにというのと試行というのとは、これは両立はしないかもしれませんが、三のところは、新捜査手法を入れることと可視化のこととは、これは一緒でなきゃならぬということではないので、しかし、セットという議論もなくはないので、その辺のことを十分、いよいよもう三月も半ばですから、これからラストスパートをかけていただきたいと思っております。

○大口委員 先ほどの平沢委員の質問に対して、可視化をまず実現する、新たな捜査手法と同時セットじゃない、こういうふうに答弁されたわけですね。だから、大臣のお考えは、この三番は、要するに、同時実現ということはとらない、こういうふうにお伺いしたんですが、それは違うんですか。

○江田国務大臣 私どもは、その新たな捜査手法というものはある、そういう検討もそれは排除するものではない、しかし、それとセットでなければ可視化が導入できないという立場には立っていないということでございまして、そこは、新たな捜査手法は捜査手法としてそれは議論すればいいけれども、今我々がやっているのはそこのことではなくて、可視化の議論をしているんだと思っておりまして、可視化をやって、そしてしばらく進んでみて、どうも可視化でやはりこういう新たな捜査手法がどうしてもそれは必要になってくるというようなことが起きるかもしれません。それはそのときにまた考える。その検討を排除することではないけれども、今は可視化のことを議論したいと思っております。

○大口委員 そうしますと、千葉座長が整理した、要するに一番か二番であって、三番はとらないということを今はっきり御答弁になったわけであります。それはそれで確認させていただきます。
そこで、大臣のおっしゃるこの可視化というものは、これはどういうものなのか。全過程の可視化ということなのか、もちろん事件の対象はいろいろあると思いますが、全過程の可視化を目指すのか、あるいは一部の可視化でよしとするのか、これはどうなんでしょうか。民主党のマニフェストとの関係も含めて、お伺いしたいと思います。

○江田国務大臣 全面的な可視化という言い方もあるわけですが、全面的ということになれば、全事件と全過程と両方この対象になるわけですが、今、全事件といっても、これはもう千差万別、さまざまですから、現実的ではないだろう。そうすると、やはり事件というのは一定程度絞っていかなきゃいけない。全過程というと、これまた何が全過程ですかということもいろいろ議論がありまして、それらを含めて、今、鋭意検討を検討会議において、あるいは省内でも進めているというところで、さらに最高検による試行もありますし、これらを一生懸命に検討しているところと御理解ください。

○大口委員 私、二〇〇九年の十一月十七日、この法務委員会で、千葉当時大臣に、今は在り方検討会議の座長でありますが、この件について質問をいたしました。それに対して、千葉当時の大臣は、マニフェスト、これは二〇〇九年ですね、ちょうど二〇〇九年の衆議院選挙の後、間もないころです。民主党のマニフェストでは明確に全面的な可視化ということを申し上げております、こういうふうにおっしゃっているんですね。ですから、全面的に可視化ということで、全事件、全過程ということなわけでありますが、こういうふうに当時の大臣は民主党のマニフェストを明確におっしゃっているわけです。
そうすると、民主党のマニフェストを変更されたということでございますか。
〔滝委員長代理退席、委員長着席〕

○江田国務大臣 民主党のマニフェストの記載は、ここへ私が持っておるのですと、「取り調べの可視化で冤罪を防止する」、「政策目的」としては、自白の任意性をめぐる裁判の長期化を防止すること、そして、自白強要による冤罪を防止すること、そして「具体策」として、ビデオ録画等により取り調べ過程を可視化する、こういう書き方でございまして、インデックスの方に、「取り調べの可視化、証拠開示徹底による冤罪防止」、「警察、検察等での被疑者取り調べの全過程についてビデオ録画等による可視化を図り、公正で透明性の高い刑事司法への改革を行います。」というような記載がございます。
これは、全過程といっても、ここで全過程とさっと書いておりますが、しかし、捜査というのは、本当に端緒から始まって、ずっと長い過程があるわけですから、全過程というのは、極力、捜査の検証というものを後できっちりできるようにして、そして冤罪を防止したり、あるいは裁判の長期化を防いでいったり、あるいは人権の侵害を防いだり、そういうことをしようということで、その政策目的との兼ね合いで具体的にどういう制度設計をするかということを今検討しているわけで、マニフェストで言っていることがだんだん進化してきているんだと私は理解しております。

○大口委員 マニフェストで言っていることは進化していると。まあ言いようですね。
ただ、本当に民主党さん、野党時代は二回も無条件で可視化の法案を出しておられるし、また、民主党の議員さんの中でも、これは全面、全過程の可視化だとおっしゃっているわけでございます。だから、民主党のマニフェストというのはどこでどうつくられたのか、民主党の方が皆、納得してつくられたのかわからないように私は受けとめました。千葉大臣はもう全面的な可視化ということをこの法務委員会でおっしゃっているわけですよ。それと今の大臣の答弁は明らかに違うわけです。ですから、大臣になった方でもマニフェストのこの解釈は違うということがよくわかりました。
次に、知的障害者の取り調べの全面可視化は直ちに運用で実施すべきだ、こういうふうな意見が在り方検討会議で相次ぎました。そしてまた、知的障害者の取り調べについて、福祉関係者や心理関係者の立ち会いを認めるべき、こういう意見も出ております。
ここについて、宇都宮事件もございました、あるいは貝塚放火事件もございました。もうこれは直ちに知的障害者の取り調べについては全面可視化を運用でやるべきだ、そして福祉関係者、心理関係者の立ち会いを認めるべきだ、こういうふうに考えますが、いかがでございましょうか。

○江田国務大臣 検察の在り方検討会議で、委員から知的障害者の取り調べに関し、運用によって全過程録音、録画を実施すべきであるという意見が相次いだということは承知をしております。
これは、二〇〇九年の政権交代後に省内につくった勉強会が去年の六月に中間取りまとめを行いまして、その中でも、こういう知的障害者についての録音、録画、可視化については特出しをして、これについては特に検討しようというようにしていますので、私どもは、運用によって即座に、直ちにということにはなかなかなりませんが、知的障害がある人についての捜査のあり方というものはそれとして、きっちりしたものをつくっていかなきゃいけないと思っております。

○大口委員 法務省の勉強会をつくって、一昨年の十月ですよね。何をのろのろしているんですか。特出しで、中間報告を取りまとめをしたといって、そういうことではだめなんじゃないですか。在り方検討会議で直ちに運用でもってでも実施すべきだ、こうおっしゃっているのだから、それをすぐ受けとめてやるべきじゃないでしょうか。

○江田国務大臣 スローペースじゃないかというおしかりがあるのはよくわかっておりまして、私もスピード感を持ってやろうということを言っておりますが。
しかし、例えば国の内外の状況を調べるというのは、ことしの六月をめどにその内外の調査結果が上がってくるということでずっと進んでいますので、それをもっと早められないかと検討してみたのですが、なかなかやはり、そう急がせても簡単にはいかないので、ここはスピード感を持ってやりますが、しかし、何かあすにも変わるというふうにはなかなかいかないというところはひとつ御理解をいただきたいと思います。

○大口委員 だから、スピード感を持ってやるというのは、いつまでにやるんですか。

○江田国務大臣 ですから、省内の勉強会を、六月をめどに結論を出して、そして、その後なるべく速やかにということを言っておりまして、まだ何月までにとかいうようなことは決めておりませんが、今、国の内外の調査などと並行して省内での検討も進めていますので、六月にそうした勉強会の結論が出た後、なるべく早くやっていきたいと思っております。

○大口委員 これまで、六月までの勉強会を続け、その後早い時期に具体案を取りまとめる、こう答えておられたんですが、そうすると六月に具体案を出すということですね。

○江田国務大臣 六月にこの勉強会の結論をいただいて、いろいろな内外の調査の結論をいただいて、それを受けて具体案をまとめていくということです。

○大口委員 全然スピード感を持っていないじゃないですか。これまでの大臣と同じ答弁じゃないですか。それでいいんですか。

○江田国務大臣 私としてはスピード感を持ってやろうということで、これまでは六月の内外の調査結果を見て、それからなるべく早くと言っていたんですが、それを見てということは見るんですが、しかし、同時並行で省内での検討も進めていこうということで今取り組んでいるところです。

○大口委員 検討は勉強会でやっているわけですよ。ちょっと今の説明では全然わかりません、スピード感が出た。
貝塚放火事件は、これはもう本当に大変な事件で、昨年一月逮捕されて十カ月半勾留の末、結局、公判で自白の信用性を立証、有罪に導くことは困難ということで、これは公判前整理手続の中で、誘導による自白が行われた疑いがあるわけですけれども、十一月二十六日に公訴取り消し請求の結果、公訴棄却決定ということになっているわけですよ。
宇都宮事件、これは二〇〇四年八月。こういうことが現実に刻々と起こっているわけですから。それに対して、今の大臣の危機感というか、今回のこの検察の不祥事を一体大臣はどういうふうに考えておられるのか。在り方検討会議が直ちにこれは運用でもやるべきだ、こういう声に対して真摯にこたえていないと私は思いますが、いかがですか。

○江田国務大臣 おしかりは真摯に受けとめたいと思います。

○大口委員 だから、真摯に受けとめて何をするかが大臣の仕事でしょう。

○江田国務大臣 これはしかし、やはり全体の、検察すべての人にこういう理解をしていただいて、そして可視化へと乗り出していかなきゃいけないので、そこはやはり一歩一歩ということはあるので、しかし、一歩一歩を、一歩、一歩ではなくて、もうちょっと一歩一歩一歩とやりたいということでやっているわけで、ぜひ御理解ください。

○大口委員 どうも法律家らしからぬ表現を使われました。
平沢委員のときにも、この勉強会でできることはどんどんやっていく、こう答弁もしているわけですよ。だから、そのできることの一つじゃないかということです。
あと、大臣は、参議院の法務委員会で、少年の取り調べの可視化が緊急課題だということを十八年十月二十六日におっしゃっています。また、十九年五月十五日には、触法少年の事情聴取にも可視化が必要と述べています。こういうふうに、少年の取り調べの可視化というものについて、緊急課題ということで進めていくべきだ、こうおっしゃっているわけですが、この点についてはいかがでございましょうか。

○江田国務大臣 参議院の法務委員会でそういう質問をしたのは事実でございます。

○大口委員 ですから、どうされますかということです。

○江田国務大臣 これも含めて検討いたします。(発言する者あり)

○大口委員 今政治主導という声がありましたが、本当に、今、この四十五分間、大臣の答弁をお伺いしまして、政治主導ということがどうも感じられない。大臣は法律家ですし、よく司法制度改革等に取り組んでおられた方ですから、参議院の議長までやられた方ですから、もし、そのことの批判をプラスに変えるのであれば、江田大臣は、役人をきちっと指導して、政治主導で、この大変な検察の不祥事に対して、見事その信頼を回復した、そういうことをやはりやるべきじゃないかなと。まだきょうの答弁ではそこまで至っていないかなと、私がそんなことを言うのはおこがましいかもしれませんが、そういう感想を述べて、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。

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