大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2011年6月15日

177-衆-法務委員会-16号 平成23年06月15日

○大口委員 公明党の大口でございます。
まず、今回の法案につきまして、私どもは賛成をしたいと思っておりますし、また、これはもっと早く提出すべきではなかったのかな、こう思っております。
東日本大震災から三カ月以上経過をいたしました。六月十三日時点でも、死者一万五千四百二十四名、また行方不明が七千九百三十一名、相続というのが非常に多く開始をしている、こういう状況でございます。
そういう点で、やはり相続財産の調査をすることは困難ですし、また、家庭裁判所で伸長の手続をするということも困難でございますし、そういう点では、十分な熟慮期間、これが必要だ。そういうことで、一律延長をする今回の法案について、私どもは賛成したいと思っておるところでございます。
ただ、本法案につきまして、六月七日、参議院法務委員会で、大臣は非常に慎重な答弁をされて、立法府でお願いしたい、こういうことでございました。これは民事基本法でございますから、本来、閣法で提出すべきではなかったのかなと。こういう未曾有の非常時でございますから、やはり法務省が保守的であってはいけないんですよ。この六月十一日を徒過したということは、これは法務大臣にも私は責任があると思うんですね。なぜ閣法として提出をされなかったのか、お伺いしたいと思います。

○江田国務大臣 大口委員の今のおしかりを真摯に受けとめたいと思います。
ただ、民法が相続熟慮期間、こういう制度を置いております概要というのは今提出者の方から御説明があったとおりでございますが、これは、相続による効果の帰属の不確定な状態が続くと、結果として他の相続人や利害関係人の利害を害したり、あるいは法律関係の早期安定についての公共的要請に反したりするおそれがあるということで、三カ月と。
しかし、御指摘のようないろいろな困難な事態が生ずる、とりわけ今回は東日本大震災という状況があって、そのような場合には利害関係人の請求によって、家庭裁判所においてこの期間を伸長できるということにしておりまして、早期安定等の要請と、個別の事案において不当な結論にならないような要請と、その二つの間の調整として個別の対応ということを考えているわけで、自動的に熟慮期間を延長するということには、他の相続人や利害関係人の利害を害するおそれがあるんじゃないかという懸念もございます。
特に委員おっしゃる民事基本法でございますから、基本法を預かる法務省としては、これはやはり慎重な検討をさせてもらいたいということで、もちろん、立法府においてそうした立法府としての慎重な検討の上に立法をされることについて法務省として異議を唱えるということではございませんが、法務省、つまり内閣提出法案とはしなかったということでございまして、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

○大口委員 全く理解できないんですよね。これはやはり閣法として出すべきだということを、我が党の参議院の木庭委員も六月七日の委員会でも主張したわけでございます。もう三カ月たっているわけですから、慎重に検討するといっても、もう十分時間はあったわけですよ。六月十一日というのは一つの大きなメルクマールであったわけですから、それに向かって法務大臣がリーダーシップを発揮しないで、法務省の役人体質にべったりの状況になっているということで、私は反省していただきたいと思うんです。
ですから、閣法で提出できなかった理由にはならない。やはり六月十一日を目指して、慎重に検討しつつも閣法で出すべきだったと思いますが、いかがですか。

○江田国務大臣 御指摘を重く受けとめておきたいと思います。

○大口委員 こういうことを繰り返さないでいただきたいと思います。(発言する者あり)

○奥田委員長 御静粛に。

○大口委員 次に、今回の法案につきましては、相続人が被災者である場合を適用対象とした。被相続人が被災者である場合、あるいは相続財産が被災地にある場合は適用されない、この理由についてが一点。
また、二点目に、この東日本大震災に際し災害救助法が適用された市町村の区域に発災日に住所を有していた者とありますが、この住所を有していた者の住所、これは民法二十二条による住所、住所の知れない場合には、民法二十三条により、居所を有していれば住民登録の有無を問わないと解してよいのか。この二点、お伺いします。

○階委員 大口委員にお答えいたします。
まず前段の、「自己のために相続の開始があったことを知ったもの」というふうに条文では書いておりますが、いわば相続人が被災者である場合のみを適用対象としているのはなぜかということでございます。
そもそも、民法上では、熟慮期間については伸長の申し立てというものもできるわけです。ですから、原則的には、伸長の申し立てができる人はそれによっていただく。しかしながら、被災地にいる相続人の方々、この方に対して、家庭裁判所に行って伸長の申し立てをしろというのは余りにも酷ではないか。そのような意味において、今回の適用対象は、相続人が被災者である場合というふうにしたわけであります。

○辻委員 災害救助法が適用された市町村の区域に発災日に住所を有していた者が対象であるということは、住民登録の有無とは直接は関係がありません。住所というのは、民法上、「各人の生活の本拠をその者の住所とする。」というふうになっておりますから、生活の事実上の中心である場所が住所でありまして、住民登録というのはそれを推定させる有力な資料ではありますけれども、それに限られるものではありません。
また、住所が知れない場合には、居所を住所とするというのが民法二十三条一項にありますので、これもまた住民登録とは関係ないということであります。

○大口委員 次に、本法案では、平成二十二年十二月の十一日以後に自己のために相続の開始を知ったものを対象としたわけであります。その理由。それから、熟慮期間の延長期間を平成二十三年十一月三十日までとした理由についてお伺いしたいと思います。特に、十一月三十日までというと、被災地の復興状況によっては、まだなかなか、熟慮期間を延ばしてほしいということが出てきた場合もあります。そういうことを踏まえてお答え願いたいと思います。

○階委員 今の二つの質問、大変重要な点でございます。
まず、二十二年十二月十一日以後とした理由でございますけれども、震災で亡くなった方に限らず、その前に亡くなった方についても、相続熟慮期間進行中に三月十一日を迎えた、このような熟慮期間進行中に震災の被害に遭われた相続人については、やはり震災で生活が混乱しているだろうということで、残りの熟慮期間の長い短いにかかわらず、一律に延長の対象とし、十一月三十日を期限としたものでございます。
もう一つ。その十一月三十日とした理由でございますけれども、私ども、政府・与党の一員としましては、政府の見解として、仮設住宅が大体お盆明けにはできるということで、八月末には多くの被災者にとって生活の安定が見込める。したがいまして、生活の安定がなされてから通常の熟慮期間であります三カ月間、これを見込みまして、八月末プラス三カ月ということで十一月末ということにいたしました。

○大口委員 次に、今回、本法案の附則の二項本文で、施行日前に相続の承認または放棄すべき期間の経過により単純承認とみなされた相続人について遡及適用するとしているわけです。そして、ただし書きがあるわけです。一般に、法令の遡及適用が許されるというのはどういう場合なのか。内閣法制局、お願いします。

○横畠政府参考人 お答えいたします。
法令の遡及適用とは、法令をその施行よりも前の、過去の時点にまでさかのぼり、過去の事象に対して適用することでありますが、これにより、既に発生しあるいは成立している状態に対して、当該法令が後から作用して法律関係が変更されることになります。
そもそも、憲法三十九条により禁止されているいわゆる事後法による処罰など刑罰法令の遡及適用は別論といたしまして、それ以外の一般の法令の遡及適用につきましては、先ほど申し述べたような事情がございますので、遡及の必要性を初めとして、遡及適用の対象や範囲が適正か、また、特に遡及適用によって何らかの不利益を受ける者がある場合には、その者の権利利益を不当に侵害するものではないかどうかなどを見きわめる必要があるものと考えております。

○大口委員 それで、本法案につきましては、被災者である相続人による相続放棄等の期間の延長を図るものでありますけれども、既に民法所定の三カ月という期間を経過している場合にもさかのぼって延長を認めるという点で、憲法上の問題があるのではないか、こういう指摘があるわけでございます。
特に、被相続人の債権者が相続を前提として相続人の固有の財産を差し押さえたり、あるいは、相続人からこの相続人の固有の財産を原資として弁済を受け取るような場合に、その相続放棄によって覆される場合の不利益についてどう考えるか、お答えを願いたいと思います。

○辻委員 不遡及というのは原則であって、遡及というのは例外的であるということでありますけれども、憲法二十九条で財産権の保障がうたわれていて、その観点で問題点があるのではないかという御指摘だと思いますが、財産権の保障も絶対的なものではなくて、合理的な範囲内で制約されるというふうに考えられると思います。
ですから、この問題については、遡及を認める必要性と、それによって奪われる憲法二十九条の保障の、一方の必要性がどの程度であったのかということの比較考量で判断をすべき問題だろうというふうに思うわけであります。
熟慮期間の徒過によって被相続人の債務を相続するということは、いわば予期せぬ不利益をこうむる事態が多数想定されるということでありますけれども、債権者はもともと、貸借関係に入った場合に、被相続人の財産を念頭に置いて取引関係に入ったものでありますから、相続といういわば予期せぬ偶然の事情によって新たな弁済が余分に期待できるということになったとしても、その期待権というのはさほど高いものとは評価できないと言っていいのではないかと思います。
一方で、相続人の財産による弁済。当初の債権者の期待は、それはそれで確保されているわけでありますから、それの比較考量。特に、今回のような未曾有の大震災という事態の中で、熟慮期間を十分に保障されないということ、そこを何とか救済しなければいけないという必要性が大きく上回るものであろうというふうに考えるものであります。そういう意味で、受忍範囲の問題であろうというふうに思います。
しかし、相続人が本法施行前に相続財産の処分をしており、遡及適用されると原状回復が必要となるケースや、本法施行前に単純承認をするなど債権者の期待がそれなりに特に高まっている場合は不利益遡及の対象外ということでありますから、その点はしっかり調整をした上で立法しているというふうに考えております。

○大口委員 法務大臣も、この利害関係人の利害を害したりということをおっしゃっているわけですから、今同じ問いについて法務大臣としてお答え願いたいと思います。
あと、基準が明確でないと現場は困ります。そこら辺もお願いいたします。

○江田国務大臣 今提出者の方から御答弁がありましたが、法律関係の安定ということに懸念が生ずるんじゃないかということと、もう一つは、この困難な状況の中で救済をしなきゃいけないんじゃないかという利益と、これをどういうふうに考量するかということであって、これはもう立法府の方の政策判断であると考えております。
具体的な場合にどうかということについて、特に不明確になるということはないと思っております。

○大口委員 次に、熟慮期間経過後、本法案の施行前に、熟慮期間経過のため相続放棄することができないと思い、そのことを表示して単純承認に相当する行為をした。例えば、無限に被相続人の権利義務を承継する意思で、被相続人の債務について支払いの意思表示をしたり、あるいは相続人の固有の財産を原資として、そこから弁済したような場合、これは民法九十五条の要素の錯誤による無効の主張ができるのか。そして、仮に無効となった場合、本法案の附則二項の適用をどう考えるのか、お伺いしたいと思います。

○江田国務大臣 本法律案のような法律が制定された場合に、これができるということについて錯誤があったということが問題になるわけで、これは一定の相続についての意思表示をした場合に、その意思表示をするについての動機の錯誤に当たる場合があり得るということでございますが、動機の錯誤については、動機が表示されて法律行為の内容になっておれば、これは錯誤無効を主張することができるとされているわけでありますが、個別の事案における相続人の認識であるとか、あるいは法律行為が行われた際のいろいろな事実関係に応じてそこは変わってくるので、最終的には裁判所によって判断されるべきものであると思っております。

○辻委員 最終的にはやはり裁判所の判断によって決まるということでありますが、当該法律行為をしたときの事実関係の認識や法的判断については誤りがないということから、錯誤無効だという蓋然性は低いものだというふうに思いますけれども、仮に錯誤無効だというふうになった場合には、熟慮期間は十一月三十日となるというふうに考えていいと思います。

○大口委員 この相続放棄につきましては、やはり周知徹底を皆さんにしていただかなきゃいけないと思います。私どもは二重ローン問題で、党の座長をやっておるわけでございますけれども、今回の法案が成立をした場合、やはり周知徹底が必要だと思います。
政府として、早く、わかりやすく、正確な広報をお願いしたいと思いますが、大臣のお考えをお伺いします。

○江田国務大臣 これは、法務省としては、成立した場合には最大限の措置を講じて周知をしてまいります。

○大口委員 ありがとうございました。以上で終わります。

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