大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2011年10月25日

179-衆-法務委員会-2号 平成23年10月25日

○大口委員 おはようございます。
平岡大臣とは法務委員会で、私どもその当時は与党でございまして、平岡野党筆頭理事のために最大限協力をさせていただきました。今度は逆になったわけでございますけれども、この法務委員会の運営につきましても、野党の、この委員会、また時間の要求については最大限御協力いただきたい、こういうふうに思っておるところでございます。
さて、まず、大臣がかわるたびに、私ども、この取り調べの録音、録画、可視化についてお伺いをさせていただいております。
平岡大臣、このことについても記者会見等でも積極的に発言をされております。目指すべきところは全過程であり全事件だ、こういうふうに九月二日、初登庁の記者会見でおっしゃっております。そしてまた、これは産経新聞の九月十五日付に出ておりました。そこで、「冤罪の可能性をできるだけなくすという意味において、全事件、全過程の実施が理想。その上で、こういうものは外すべきだという形で、消去法で減らしていく考え方が望ましい。できるだけ早く実現したい」、こういうふうに述べておられます。
この取り調べの可視化についての大臣のお考え、そして現在試行している裁判員裁判対象事件をそれ以外の事件に拡大することについてお伺いしたいと思います。
ちなみに、私ども、知的障害によりコミュニケーション能力の問題がある被疑者の取り調べの録音、録画については、これは九月二十日付で、十月一日から取り調べの全過程を含む広範囲な録音、録画を行うなど、さまざまな試行を実施する、全庁でやる、これは評価をしたいと思います。
では、よろしくお願いします。

○平岡国務大臣 この法務委員会での審議は、私も本当に国会議員としての活動の中で大きなウエートを占めていた委員会でございますので、ぜひ積極的な議論をしていくということに協力したいというふうに思いますけれども、基本的には、委員会の運営ということでございますので、委員会の理事会等で運営についてはまずお決めいただくのが筋ではないかなというふうには思います。
その上で、今委員御指摘の取り調べの可視化の問題についてでありますけれども、私が記者会見あるいはインタビューに答えた気持ちというものは、まさに大口委員が紹介していただいたものということでございます。
ただ、この問題についても、今までの法務省の中での検討、あるいは現在は法制審議会にもかかっているという状況にある中で、着実に進めていこうということが法務省で行われているということでございますので、私としても、その作業というものをしっかりとやっていただく、スピード感を持ってやっていただくということが大事だというふうに思っておりますので、ぜひ法制審議会においても、あるいは検察当局においても、そういう気持ちを持って取り組んでいただきたいというふうに思います。
試行の拡大という点についてもちょっとお話がございましたけれども、これまでも江田前法務大臣のときにも、委員が御指摘になった知的障害によるコミュニケーション能力に問題がある被疑者についての拡大ということもやってまいりましたけれども、裁判員制度対象事件についても、自白事件だけじゃなくて、否認事件等も含めてその対象範囲を拡大するというようなこともしてきているというふうに承知をしているところでございます。
この検証というのは、一年後をめどとしてその結果が公表されるということを目標としておるところでございますので、その状況を見ながら的確に判断していってほしいというふうに思っているところでございます。

○大口委員 新聞記事や記者会見では、かなり明確に消去法だというような形でおっしゃったのですけれども、委員会で全然、抽象的なことに終始されている。これは国会軽視じゃないですか。やはりもっと明確に、産経新聞の記事のとおりだとおっしゃっていただきたいと思います。

○平岡国務大臣 そこは私の気持ちを申し上げたことで、その気持ちは変わっているわけではございません。
ただ、今も答弁申し上げたように、今現在、法務省の中で、あるいは法制審議会の中でずっと積み重ねでやってきているという事実関係というものも、これは尊重しなければいけないというふうに思っています。ただ、その事実関係を踏まえてどういう結論を出していくのかというときには、私が申し上げたような考え方をぜひ尊重してやっていただきたいというふうに思っています。

○大口委員 消去法という考え方を尊重してもらいたいという答弁があったと思います。
法制審議会で議論されていても、大臣は大臣として発言されればいいんですよ。それを採用するかどうかは法制審議会の委員が考えることでありますから、積極的にこの委員会で発言をしていただきたい、こういうふうに思います。
次に、少年事件については、もう少年法の改正で大臣とはいろいろやらせていただきました。検察の在り方検討会議の提言でも、「少年を被疑者とする事件についても、事案に応じて、検察の運用により、被疑者取調べの録音・録画の試行の対象とするべきであるとの意見もあり、今後の課題として、少年事件における成人の刑事事件との手続の相違等をも踏まえつつ、検討されることが望ましい。」こういうふうになっているわけであります。
これについて平岡大臣は、平成十九年三月二十八日に、少年事件の取り調べの可視化について、当委員会の少年法改正の質疑で発言されています。
その発言内容は、「少年に対する取り調べの問題として指摘されている話としては、二〇〇〇年にフランスの刑事訴訟法の改正では、少年に対する取り調べをビデオ録画するということが法制化されているようであります」飛びまして、「とりわけ少年についてもこの必要性というのは高いのではないか。」「少年の場合には、いろいろと大人に誘導されて、あるいは大人の言うことを聞かなければいけないという、そっちに迎合するという意識、そういうものが一般的にあるというふうに言われているわけでありますから、そういう必要性が高いのではないかというふうに思うんです。」と。少年に対する取り調べの可視化をすべきという発言であります。
ぜひ、少年を被疑者とする刑事事件も可視化の試行の対象に加えるべきではないか、全過程を含めてそういう形にすべきではないかと思いますが、いかがでございますか。

○平岡国務大臣 今委員御指摘の意見は、私も一度質問したことがございますし、検察の在り方検討会議においても、一部の委員の中から出されているというふうに承知しております。まさに、その意見というものについてもしっかりと検討してほしいというふうに私は思っています。
ただ、少年事件の取り扱いと一般の刑事事件の取り扱いというものが違っているということも事実でありますので、その辺の違いをどう評価するのかという問題はあろうかというふうに思いますけれども、現在、検察当局においていろいろな取り調べの録音、録画を行っているものについて言えば、特に少年の場合を排除してやっているということではなくて、少年であったとしても、それが裁判員裁判対象事件であるとか、特捜部の独自捜査事件であるとか、あるいは知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者等に係る事件であるとか、そういうものに少年が含まれている場合でも、当然対象になるということでございます。そういう意味では、ある程度の経験というものが生まれて、また検証できるのではないかというふうにも思っております。
いずれにしても、法制審議会においては、いかなる事件を対象事件とするかを含めて取り調べの可視化の具体的な制度設計については審議をされるということになっておりますので、我々としても、私としても、そういう場面で少年事件の取り扱いについてどう考えるのか、むしろ取り上げるべき方向で検討すべきではないかということについては、私なりの考え方としてメッセージを発していきたいというふうに思います。

○小林委員長 なお、携帯電話等は音が出ないように気をつけてください。

○大口委員 大臣、何のために法務大臣になったのか。やはり、これまでの主張を実現するためですから、リーダーシップを発揮していただかなきゃいけないですね。ちょっと歯切れが悪いですよ。いつも歯切れがよかった平岡大臣が、どうなっているんですか、きょうの答弁は。そう思いますね。
次に、これも産経新聞の九月十五日のインタビュー記事で、新たな捜査手法の導入が可視化実現の前提条件ではない、可視化すると司法取引やおとり捜査をしないと社会の安定が保てないという議論があるが、必ずしもそうかなと思う、こう発言されています。
江田前法務大臣も、新たな捜査手法とセットでなければ可視化は導入できないという立場に立っていないと答弁しているわけでありますが、今、法制審議会特別部会でこの件については議論されています。そして、警察庁出身の委員もいらっしゃいます。この件について御答弁いただきたいと思います。

○平岡国務大臣 現在、法制審議会に諮問している中身といいますか、審議していただきたい事項ということで伝えられています内容は、取り調べ及び供述調書に過度に依存した捜査、公判のあり方の見直し、そして、被疑者の取り調べ状況を録音、録画の方法により記録する制度の導入という形で諮問がされているわけでございます。
委員の御指摘の、新たな捜査手法の導入が必ずしも可視化実現の前提条件となるものではないと私も考えておりますけれども、法制審議会においては、時代に即した新たな刑事司法制度のあり方を構築するためにどのようなものが必要になってくるかについて、幅広い視点から十分な調査審議を尽くしていただくということが必要であるというふうに思っています。
特に、今、警察庁、国家公安委員会の方でこういう問題についても取り組んでいるというふうにも聞いておりますので、そちらの方の検討状況というものもしっかりと踏まえなければいけないというふうに思いますけれども、繰り返しになりますけれども、新たな捜査手法の導入が必ずしも可視化実現の前提条件となるものではないというふうに私は考えております。

○大口委員 次に、少し前、交際している女性が交際相手の男性のスマートフォンにアプリをインストールしますと、GPSによる位置情報などが交際している女性に送信されるというカレログというアプリが話題になっております。GPSによる位置情報というのはピンポイントなんですね。これが他人に知られることについての国民の関心が高まっているということでございます。
本年八月二日から三十一日まで、電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン及び解説の改正案に対する意見募集がなされました。ここで、このガイドラインの二十六条に新たに三項を付加して、当該位置情報が取得されていることを利用者が知ることができるときであって、裁判官の発付した令状に従うときに限り、電気通信事業者がGPSによる位置情報を取得することを認めるもので、そのようにして取得した情報は捜査機関に提供されることが予定されているようだが、まだこれについては改正はされていないようでございます。
従来、携帯電話については、携帯電話会社が保有する基地局による位置情報というものがありました。それを捜査当局が、裁判官が発する検証許可状によって取得してきた。従来の基地局による位置情報は、都市部で半径約五百メートルの範囲にその携帯電話があるということしかわからないということに対して、GPSによる位置情報というのは、多少の誤差はありますけれども、ほぼピンポイントでその携帯電話の場所を特定できるということのようであります。
この意見募集は大臣が総務副大臣の当時になされたものであって、その内容について十分御存じと思うわけです。
今回、このガイドラインの改正をすることになったわけでありますが、携帯電話のGPS機能を利用して、GPSによる位置情報を捜査機関が裁判官の発する令状によって取得することができるようにするための改正であると考えてよろしいでしょうか。

○平岡国務大臣 何のための改正かという点については、当時は警察庁と総務省との間でやりとりされていた話なのでちょっと定かな記憶はないわけでありますけれども、そのときの私が受けた説明は、現在の刑事訴訟法に基づいてもできる話だという法解釈というものがあって、その上でどういうふうに運用していくということが望まれるのか、必要なのかというような視点で議論をさせていただいたという経緯がありました。
委員が御指摘ありましたように、今回のこのガイドラインの改正では、裁判官が発付した令状に従うということに加えて、利用者が知ることができるという要件が加わっているということでありますけれども、まさに、全く本人が知らないままにそういった情報がとられるということについて、私が個人的にというか総務副大臣として、それは非常に問題があるということなので、この要件をやはり加えなければいけないんじゃないかというような指摘に基づいてこのガイドラインがつくられ、そしてパブリックコメントに付されたというふうに記憶をしておるところでございます。

○大口委員 きょうは松崎総務副大臣にも来ていただきました。
今回の二十六条の三項で、当該位置情報が取得されることを利用者が知ることができるときであって、裁判官の発した令状に従うときに限り、当該位置情報を取得するものとする、こうなっているわけでありますけれども、この当該位置情報が取得されることを利用者が知ることができるときであってという要件について、現在は、携帯電話の仕様では、携帯電話会社がGPSによる位置情報を取得する際には、携帯電話の端末の画面にその旨表示がされることになっている、そういうことを指していると考えられます。
将来、携帯電話の仕様が変更されて、GPSによる位置情報が取得される際に、携帯電話の端末の画面にその旨表示がされないような仕様に変更になったような場合は、この要件を満たさないということで、検証の許可状があってもこの携帯電話はGPSによる位置情報を取得することはできなくなる、こういうふうに考えてよろしいですか。

○松崎副大臣 おはようございます。副大臣の松崎でございます。
大口先生にお答えをいたします。
今回のガイドラインの改正では、電気通信事業者が捜査機関からの要請によりGPS位置情報を取得する場合において、裁判官が発付した令状に従うときという要件とともに、利用者が知ることができるという要件も規定をしております。これは、位置情報がプライバシー保護の観点から非常に重要なものである、そしてまた、その利用に当たっては端末の所有者が認識できるようにする必要があると考えられるためであります。
現在の仕組みにおいては、GPS位置情報を取得する際にはその旨の表示がなされております。今後、仮に携帯電話の仕様の変更等により表示がされなくなる場合があれば、今回の改正が利用者が知ることができるときを要件としている趣旨にかんがみまして、別途検討を要するものと認識をしております。
以上であります。

○大口委員 では、副大臣、御退席ください。
法務大臣、刑事訴訟法上問題がないということでございますけれども、この点につきまして、日弁連は、ことしの八月二十六日の意見書の中で、公道上の位置だけでなく、被疑者の私有地の中や、被疑者が現に居住する建物の中にいたとしても、その位置情報が克明に明らかになるという点では、憲法十三条、三十五条、国際人権規約十七条が保障するプライバシーを侵害するものである。
GPSによる位置情報を取得するための要件としては、刑訴法二百十八条一項の一般的な要件に従うことになるけれども、これは余りにも無限定である、捜査機関によってGPSによる位置情報が容易に取得されて監視されてしまうようなことになれば、市民のプライバシーが侵害されるという重大な事態が発生するおそれが否定できないということで、そのような事態となることを防止するために、GPSによる位置探索のための検証につき、被疑事件の重大性、その携帯電話の所持者が被疑事件を犯したことを疑うに足りる相当な理由の存在、GPSの位置情報を取得しなければ捜査の目的が達成できないという補充性、実施後に本人に告知されるべきことなど、この捜査手法の濫用の歯どめとなるべき要件について、ちゃんと国会において国民的議論をして慎重に検討された上で、刑事訴訟法上、新たな強制処分として明確に規定される必要があるのではないか。
GPSによる位置探索とその情報の携帯電話会社からの捜査機関への提供という新たな捜査手法の導入というのは、総務省のガイドラインや解説の改正だけではやるべきじゃない。
こういう趣旨のことを言っているわけでございますが、この点について、大臣は、新たな捜査手法だということで、GPSによる位置情報の取得について、一般の検証の要件としてより厳格な要件を定める刑事訴訟法の改正についてどう考えるのか、お伺いしたいと思います。

○平岡国務大臣 刑事訴訟法の二百十八条の解釈として今回のケースをちょっと当てはめてみますと、携帯電話端末から携帯電話会社のコンピューターシステムにもたらされる当該位置情報を五官の作用により認識するものということであって、その性質は現行法、刑事訴訟法第二百十八条の検証に当たるということなので、裁判官の発する検証許可状により行うことができるというふうに私も説明は受けております。
ただ、しかしながら、委員が御指摘のように、この問題について言えば、いろいろな問題があることも事実だというふうに私は思います。
例えていいのかどうかわかりませんけれども、通信傍受の法律がございますけれども、その通信傍受についても、あの法律ができる前には裁判官の令状があれば実施できるんだというような考え方もあったというふうに聞いております。ただ、やはり事の重要性にかんがみれば、別途の法律をしっかりと手当てする、その過程の中で国民的な議論をするという過程を経て成立したのが通信傍受法だというふうに思います。まさにそれと似たような話として、こういう位置情報を自分が知らないときに取得するというような事態に至るときには、もっとしっかりと国民的な議論が行われてしかるべきではないかというふうに私は思います。
そういう意味で、刑事訴訟法の改正なりあるいは新たな立法なりということの必要性については、やはり慎重に議論をしていってほしいというふうに思っています。

○大口委員 今、ガイドライン及び解説の改正はまだ実際には発動されていないわけですけれども、今の大臣の意見というものはしっかり総務大臣にもお示しいただきたい、こういうふうに思います。
次に、検察改革についてお伺いしたいと思います。
一連の大阪地検特捜部の証拠改ざん事件がございました。それで、いろいろと検察も、また法務省も大臣以下対応されているわけであります。
そういう中で、九月二十八日に最高検が、これはようやくですよ、ようやく、十項目から成る基本規程「検察の理念」、これを制定したわけであります。
これは、その前に、三月三十一日の検察の在り方検討会議の提言で、九項目にわたってこの趣旨が書かれているわけです。この検察の在り方検討会議では、基本規程の中核的な事項及びこの具体化としての九項目は、主体が、「検察官の使命は、」とか「検察官は、」ということで、検察官が主語になっているわけです。
当然、私ども、この「検察の理念」についても、主体を明確にすべきであるな、こういうふうに考えていたわけでありますけれども、今回のこの十項目の遵守事項を含めたものについて、この「検察の理念」では、検察の職員が規程の検討主体になっていて、検察官という文言が全くない。それぞれの項目には主語もない。人を守るべき主体は検察官の職員全体であるのか、一般の公務員以上に高い倫理性、廉潔性が求められる検察官個々人なのか、不明確ではないかと思うわけです。
また、この検察の在り方検討会議の提言では、「検察官は、被告人の利益に十分配慮し、法令の定め・判例とそれらの趣旨に従い、誠実に証拠を開示するべきであることなどを盛り込むことが考えられる。」ということで、証拠を開示すべきことが書かれているわけですが、「検察の理念」では、この検察官の手持ち証拠の開示について触れられていない。今回の証拠の扱いが、偽造されたフロッピーディスク等の問題があったわけでございますし、この証拠の開示について触れられていないのはなぜなのか、お伺いしたいと思います。

○平岡国務大臣 幾つか御質問をいただきましたけれども、まず、「検察の理念」の中で検察の職員が規程の検討対象になっているという点についてでありますけれども、検察官が検察の業務において中心的役割を果たすということは、まさに委員が御指摘のとおりでありますけれども、当然、検察権の適正な行使を行うに当たっては、検察官はもとより、検察事務官もその重要な役割を担っているということでございますし、検察官と検察事務官が一体となって改革に取り組むべきであるということで、検察の職員全体としたということだというふうに承知しております。
しかしながら、検察の職員として最も主体的かつ中心的に行動しなければならない検察官がこの「検察の理念」の精神を忠実に実践していくことは当然であるというふうに考えているところでございますので、御理解を賜りたいというふうに思います。
なお、この点については、検察の在り方検討会議の提言の中でも、主体は検察官だけでなく検察事務官を含める趣旨で検察とすべきという意見が相当数あったというような経緯もあったということでございます。
それから、次に御質問のあった検察官の手持ち証拠の開示について触れられていないという点についてですけれども、実は私も、最初にこの「検察の理念」の案といいますか、これから検察庁としてこれを決めていこうというときに見せていただきました。そのときに、委員が持たれた疑問とまさに同じような疑問を持ちましたので、その点についてもどう考えるべきなのかということについて説明を求め、そして私なりに整理をさせていただいたということでございます。
この「検察の理念」について言えば、先ほどもちょっとありましたように、検察官の個別の訴訟行為について具体的な行為規範を定めたものではありませんけれども、証拠開示については、被疑者と弁護人との関係に配慮し、法令の定めに従って証拠開示を行うことを含む趣旨で、法令を遵守しという言葉、文言、公正誠実に職務を行うという文言、裁判官及び弁護人の果たすべき役割を十分理解しつつという文言、あるいは職責を果たすという文言の中で、証拠開示を含む弁護人への対応等が適切なものとなるようにする趣旨が盛り込まれているものであるというふうに理解がされているということでございます。
また、適切な証拠開示への対応の前提となる消極証拠を含む十分な証拠の収集、把握という事柄もこの理念の中に盛り込まれていることでありまして、総合的に言えば、手持ち証拠の開示についてもそういう規定の中で対応されているというふうに理解しているところでございます。

○大口委員 大臣も、これは抜けているな、こう思われているわけですよね。
やはり証拠の開示というのは、これまでの立法等によってできるだけやっていると検察は言うわけですが、弁護士の皆さんに聞いてみると、皆、不十分であると。これから、供述調書に頼らない捜査、そして、裁判員裁判制度等もあって、公判による供述も重視する、そして客観的な証拠をしっかり重視していく、こういうことでありますので、そういうところがないがしろにされていたから、今回、こういう不祥事が生じたわけであります。
そういう点では、この証拠の開示というのは極めて重要であって、このことは、証拠の扱いも含めて大事にしていかなきゃいけないことではないかな。そういう点で、追加して入れるべきではないかと思いますが、いかがですか。

○平岡国務大臣 先ほどのちょっと訂正ですけれども、検察官だけでなく検察事務官も含める趣旨で検察とすべきという意見、検察の在り方検討会議の中でというふうに申し上げましたけれども、これは検察庁の中での意見としてそういうものがあったということでございます。
今御質問があった件について言えば、証拠開示に関する法律上の制度がどうなっているかということをまず申し上げれば、刑訴法の中で、検察官請求証拠、類型証拠、主張関連証拠についての開示要件が定められておりまして、弁護人に不服があれば裁判所に裁定請求を行うことも可能な仕組みになっているということでございます。さらに、聞きますれば、実務上は検察官は法律の要件に該当しない場合でも柔軟に証拠開示に応じているということでございます。
そうした法律上の制度の中で証拠開示というものがしっかりと位置づけられているということでありますので、先ほどの私の説明の中にありましたように、法令を遵守していくあるいは職責を果たしていくということでこの証拠の問題についてもカバーがされているというふうに理解をしているところです。

○大口委員 納得できないですね。こういうところに本当にリーダーシップを発揮していただきたいと思うんですよ。そこが平岡大臣たるあれじゃないですか。これまでの人権派としての面目躍如をするところじゃないですか。ですから、全くどうなってしまったのかなと思うんですね。今、非常に歯切れの悪い、私が法務省から説明を受けたそのとおりのことを答弁されていますので、非常に残念でなりません。
次に、国選付添人制度の拡充でございます。
現行の国選付添人制度につきましては、少年事件について導入が、二〇〇七年十一月一日施行されました。これにつきましても、いろいろと法務委員会でも議論をさせていただいて、懐かしく思っているところであります。
私どもはその当時与党であったわけでございますけれども、そういう点では、これは私どもにも十分検討しなきゃならなかったという面はあったと思うんですが、対象事件の範囲が狭過ぎる。殺人、傷害致死、強盗罪等の重大事件で、かつ、家庭裁判所の裁量的な選任である。それから、検察官が関与する事件、被害者が傍聴する事件、こういうものになっていますので、非常に対象が狭いということで、選任数が、二〇〇九年、五百十六人、二〇一〇年、三百四十二人。少年鑑別所収容少年の二〇〇九年は四・六%、二〇一〇年は三・二%ということでございます。
そしてまた、二〇〇九年五月二十一日に被疑者国選弁護制度の対象事件が必要的弁護事件に拡大したわけであります。ところが、国選付添人制度の対象事件は拡大されなかったということで、被疑者段階では国選弁護人制度により弁護士の援助を受けられる少年の大多数が、家庭裁判所送致後、国選付添人制度による援助を受けられず、弁護士費用が負担できなくて弁護士付添人を選任できない事態に至っているわけでございます。
そういう点で、成人の刑事事件の被告人はほぼ一〇〇%に弁護士が選任されているのに比べますと、少年審判を受ける少年の弁護士付添人選任率は低いということで、二〇〇九年、四九・五%ですから、これは少年鑑別所に送致された少年についてでございますけれども、そのうちの弁護士付添人選任少年の割合でありますが、二〇〇九年、四九・五%、二〇一〇年、六二%という状況で、日弁連も、少年保護事件付添援助の制度、少年当番弁護士制度、これを実施しているわけでございます。
国選付添人制度の対象事件を少なくとも少年鑑別所での身柄拘束を受けたすべての少年に拡大する必要がある、こういうふうに考えます。平岡法務大臣は、これまで少年の権利の保障についてとても熱心に活動されておりまして、法務委員会でも少年法改正等で大変そういう点では強力に政策を推進された方でございますので、この国選付添人制度の対象事件を少なくとも少年鑑別所での身柄拘束を受けたすべての少年に拡大するということについて、前向きな答弁をお伺いしたいと思います。

○平岡国務大臣 大口委員が与党の時代にもいろいろ問題提起をされておられて、私が当時野党の一員として主張していたことにも御理解を示していただいていたということで、大変心強く思っております。
今の問題について言えば、私もこの法務省の中で、なぜここは抜けているのかということについての説明もしっかり受けました。制度的に矛盾はないんだと。確かにそうかもしれません。
ただ、私自身が思うのは、制度に矛盾はなくても、やはり実際の動きを見たときには、被疑者段階のときはついているけれども、そうでなくなったときになくなってしまうというのはやはり実務的にも問題があるんじゃないだろうか、この点についてはしっかりと検討してほしいということで、実はこれは予算を伴う話でございますので、そして法律改正を伴う話でございますので、ちょっと時間的にはすぐというわけにはいきませんけれども、そういう問題意識を持ってこれから法務省の中でしっかりと取り組んでいくように、リーダーシップというほどのことではないかもしれませんけれども、私なりの姿勢を示していきたいというふうに考えているところでございます。

○大口委員 来年の通常国会には法案を出されるんですか。

○平岡国務大臣 いや、それはちょっといろいろとありますので、まだ難しいというふうに思います。

○大口委員 そこで、せっかく前向きの答弁のようであったんですが、来年の通常国会に間に合うかどうか難しい、こうおっしゃっているわけですけれども、これは、やはり少年の人権がかかっていることですね。大臣がこの少年の人権について、本当に私ども、痛いほどそういう熱意を、大臣が野党時代、法務委員会の筆頭理事のときに感じておったわけであります。
ですから、この問題は、もちろん予算を伴うものでありますけれども、大臣のこれまでの少年の人権に対する姿勢からいきますと、やはりおくれればそれだけ少年の人権が今、日々ある意味では侵害をされているという部分もあるわけでありますから、これは待ったなしじゃないでしょうか。そこは、やはり平岡法務大臣が法務大臣となったときの、ここが変わった、こういうふうに迅速にされたということの私は大きなメルクマールになるんじゃないかな、こう思うわけですよ。
今、一年で法務大臣がころころかわるんですよ。だから、来年の通常国会で約束できないということになると、結局またどうなるかわからない。やはり今、大臣として就任された以上は、これについては絶対やるということをはっきり表明していただきたいと私は思うんです。いかがでございましょう。

○平岡国務大臣 私が来年の通常国会は難しいなと思ったのは、まさに委員が言われたように、予算を伴うものであるということでありますけれども、もう一つの背景としては、弁護士会の方で、すべてがカバーできているとは私も申し上げませんけれども、かなりの程度カバーできているというような事実関係の問題、これを含めて私なりにいつごろになるだろうかということを考えさせていただいたということでございます。
できる限り前広にというか、私なりにスピード感を持ってできるように努力してまいりたいというふうに思います。

○大口委員 これは、弁護士会も十億ぐらい負担をしているわけですが、本来国がやるべきことですよ。よくお考えになっていただきたいと思います。
それから、法曹養成制度のあり方につきましては、階議員からも質問がございました。司法制度改革推進計画において、平成二十二年ごろに司法試験の合格者数を年間三千人程度とすることを目指すこととされたということであるわけでございます。
これについては、本当に今いろいろな問題が提起をされているわけですね。法曹の質の低下が取りざたされ、法曹有資格者の就職難という問題が生じているということから、この法曹人口の増加目標の見直し、つまり、司法試験の合格者数を減らすべきだ、こういう意見もあるわけです。
他方では、法曹の増員の見直しを行うことは、国民があまねく司法サービスを受けられるようにするという司法制度改革の目標を放棄することであり、懸命に勉学に励んでいる全国の法科大学院生を裏切り、現場に無用の混乱をもたらし、多様な人材が法曹の道を選ぼうとする意欲を減殺するものである、こういう指摘もあるわけでございます。
いずれにしましても、法曹の質もまた量も適正に保たれるような状況が望ましいと思うわけでありますけれども、やはり今その新たな法曹制度全体が悪循環に陥りつつある、こういう指摘もされているということでございます。原因がどこにあるのか、そしてどのように対処をするつもりであるのか。これは閣議決定で三千人と決まっているわけでありますけれども、フォーラムにその議論をゆだねるということではなくて、ゆだねていることではあるけれども、大臣としての基本的なお考えをお伺いしたいと思います。

○平岡国務大臣 まさに、大口委員が御指摘になったような問題点が指摘されているということだと私も承知しております。
今お話がありました法曹養成に関するフォーラムでも、そういう問題意識を持って検討を進めていただいているというふうに思いますし、既に昨年の七月に、法務省、文部科学省合同で開催いたしました法曹養成制度に関する検討ワーキングチームにおいても、いろいろな問題点が指摘をされているということでございます。
その問題点が発生している原因は何なのかということを、これは私たちも法務省内でもいろいろと議論をしているところでございます。
ある意味では個人的な意見にすぎない段階かもしれませんけれども、私自身は、やはり、当時司法制度改革をやろうとしていたときに予定していた法曹に対するニーズというものがなかなかふえてこないというところが一番の問題の根幹ではないだろうかという意見を出しました。
そうしたら、また別の方は、いや、そうではなくて、やはり、法曹資格を持った人の処遇といいますか待遇というものが余りにもよ過ぎて、みんなが使おうとしない、使えないというところにまた根源があるんじゃないかというような意見もありました。
事さように、根源にさかのぼっていくと、本当にどこにたどり着くのか、またぐるぐる回ってしまうんじゃないか、そういう点もあろうかというふうに思います。
そういう法曹のニーズが高まっていないこと、そして、そのためにせっかく法曹資格を得ても仕事が十分にない、それを見たら法曹になるということについて意欲を失ってしまう、そのことによって今度は優秀な人が来ない、そのことによってまた合格者が減ってくる。いろいろなことが絡み合って発生している問題だろうというふうに思いますので、やはり総合的にこの点については、今現在はフォーラムで検討していただいておりますけれども、そういう場を通じてしっかりと原因そして対応策についても議論していただきたいと思いますし、我々もその場には法務副大臣あるいは関係する各省庁の副大臣、大臣政務官というものも参加しておりますので、しっかりと問題提起、そして検討していただきたいというふうに思っています。

○大口委員 そのほか、ことしから予備試験が始まった。予備試験と、それから新しい法曹養成制度の法科大学院を中核としたプロセスとしての法曹養成の理念との関係がどうなのか。
あるいは、司法試験の回数制限の見直し、階議員からもありましたけれども、三振制。これも、七、八割合格という時代であったわけですが、二三・五%ですね。ですから、このあたりも見直しを図っていかなきゃならない。
法科大学院につきましても、ことしの、二十三年度の二三・五%の合格率ということでありますけれども、七十四の法科大学院のうち、修了者の合格率が一けたの法科大学院が二十七、ゼロの法科大学院も一つあるということでございますので、本当に法科大学院のあり方、また受験の方に偏っている、こういうこともありますので、法曹養成についてはさまざまな見直しをしていかなければならない、こう思うわけでございます。
そういう点で、今、法曹養成に関するフォーラムで議論されているんですが、八月三十一日、法曹養成に関するフォーラムの第一次取りまとめを行ったわけであります。司法修習生の経済的支援について、貸与制を基本とした上で、十分な資力を有しない者に対する負担軽減措置として、最長五年の返還猶予期間を設ける等の措置が提案されたわけであります。
この給費制から貸与制への移行に対しては、多くの法曹志望者が法科大学院在学時に多額の借金を負っている現状にあることからも、法科大学院生への経済的支援の充実がなされることなく司法修習生への給費制が廃止されるならば経済的な事情から法曹志望者がさらに減少する、こういう指摘もあるわけでございます。
本年五月にこのフォーラムの開催が決定されて八月末に第一次取りまとめと、極めて短期間で検討がされ、法曹養成制度全体の、今いろいろ申し上げましたが、その議論が不十分なまま給費制を打ち切り、貸与制とする結論を出すというのは、非常に性急な話ではないかなと私は思うわけでございます。
まず、法曹養成制度の本質的な課題、すなわち法科大学院制度のあり方、そして司法試験合格率、法曹有資格者の社会進出が進んでいない現状、それに対する対策、法曹養成全般の抜本的な検証、検討が必要である。それを真剣に議論していただくということがまず最初だろう。どうも議論が、貸与制か給費制かというところで第一次取りまとめが行われていることをおかしいなと思うわけですが、大臣の御所見をお願いいたします。

○平岡国務大臣 今の給費制、貸与制の議論が本来の議論とは逆になっているんじゃないかという御指摘でございましたけれども、この点については、これは委員も御案内のとおりでございますけれども、昨年の十一月の二十四日、先ほど私も触れましたけれども、衆議院の法務委員会の決議というのが出ております。
二項目に分かれていますけれども、一項目めが修習資金の問題ということで、これは、そのときでいえば翌年の十月末ということですけれども、現在でいえばことしの十月末までに「個々の司法修習終了者の経済的な状況等を勘案した措置の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。」というのがあり、二項目めに「法曹の養成に関する制度の在り方全体について速やかに検討を加え、その結果に基づいて順次必要な措置を講ずること。」こういうふうになっています。
まさに、政府の方ではこの御要請に基づいて検討してきたということでございます。五月になってしまったのは東日本大震災の影響等もあったというふうに聞いておりますけれども、非常に短期間になってしまったということ、それはある意味ではそういう御指摘もあろうかとは思いますけれども、先ほど申し上げた法務委員会の決議というものを我々としてもできる限り尊重して取り組んだ結果として、今回、給費制の問題についての考え方を、この第一次取りまとめに基づいて、政府としては法案を提出したいというふうに考えてきているところでございます。
そのときの経緯からいえば、給費制を打ち切るという表現を委員が使われましたけれども、こう言ってはなんですけれども、司法制度改革をやったときに既に給費制を貸与制に変えていくということが法律的にも成り立っており、その施行が既に去年来ていたということで、一時それをストップして、一年間の検討期間というもので、先ほど申し上げたように、個々の司法修習終了者の経済的な状況等を勘案した措置のあり方ということを踏まえて検討しようということだったというふうに考えております。
ただ、そうはいいましても、委員が御指摘になっている話、つまり、法曹養成全体の問題をしっかりと議論しなければいけないという問題については、私も共通の認識を持っているところでございます。現在、その問題については、法曹の養成に関するフォーラムをしっかりと運用する中で検討していっていただきたいというふうに思っておりますので、フォーラムに法務省含めて関係する省庁も参加するとともに、有識者の皆さん方の御意見もしっかりと賜ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

○大口委員 東日本大震災、三・一一だったわけですが、本来、昨年こういう法務委員会等の附帯決議が決まったわけでありますから、それから直ちに本当は発足すべきだったんですよ。だから、本当に意図的なものを感じます。
それはそれとしまして、次に、第百七十七通常国会で、三・一一の東日本大震災の被災された方々の生活再建策の一つとして、被災者生活再建支援金それから災害弔慰金、災害障害見舞金、義援金、これが差し押さえ禁止になったわけでございます。
それで、この趣旨からいきますと、今二重ローンで苦しんでおられる方々がいらっしゃるわけです。そして、今住宅ローンを抱えた方について個人向けの私的整理ガイドライン、全銀協がそういうガイドラインを策定して、運営委員会が設置されて、そこへ持ち込むことによって、これは国も十億七千万円をかけて、派遣の弁護士等は国が持つという形でやっているわけでございます。そういう中で、手持ちの財産をどこまで確保できるのかということが問題になっておりまして、それで、破産手続とパラレルに考えているわけであります。
そういう点で、この私的整理ガイドラインの利用件数が非常に低迷している、千件以上の照会があったけれども三十二件しか申し出がないということで、最近私ども、被災地の岩手県弁護士会、仙台弁護士会の弁護士さんたちと意見交換しました。その中で、地震保険などの生活再建に必要な資産が処分される可能性があるということが指摘されているわけです。
この地震保険の保険金について、被災者の生活再建のために必要とするお金であるということだと思うんですが、破産手続の場合、支援金、弔慰金、見舞金、義援金と同様の扱いとすべきではないか。自由財産として認められる明確な基準というものがないと、どこまで手持ちとして手元に置いておけるのかがわからないと破産の申し立てもできない、あるいは個人向けの私的整理ガイドラインの申し出もできないということになっております。最高裁の見解をお伺いしたいと思います。

○永野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
地震保険契約の保険金請求権につきましては、性質上の差し押さえ禁止債権に当たらないというふうに考えられておりますので、今般の立法によりまして差し押さえ禁止債権とされました弔慰金、義援金等とはやはり倒産手続の中で扱いを異にするという側面はあろうかと思います。
ただ、被災地の裁判所におきましては、今回の震災が被災者の生活基盤に対して甚大な影響を及ぼしているということ、それから破産者の個別事情を十分踏まえた上で、この地震保険の保険金につきましても、自由財産の拡張の運用について適切な対応をしているというふうに伺っております。
基準等につきまして委員から御指摘のあったところでございますが、地震保険の給付金、これを自由財産の拡張においてどのように取り扱うかという問題につきましては、保険金が居住用建物に対するものであるかどうか、あるいは生活用動産に対するものであるかどうかといった点のみならず、やはり給付金の多寡でありますとか、あるいは破産者の震災被害の状況、それから現在の生活状況、また今後の生活見通しといったような個別の事情に応じた判断が求められるところでございますので、やはり一般的な基準を策定するということがなかなか困難な性格のものであるということは御理解いただきたいと思います。
もっとも、被災地の裁判所におきましては、既に地震保険金についての取り扱いが問題となる事例も出てきておりますので、こういった事例の積み重ねと、それから、被災地におきましても運用事例の紹介に努めておりますので、こういったことを私的整理ガイドラインの運用においても御参考にしていただけるのではないかというふうに考えております。

○大口委員 ですから、それをちゃんと、ある程度算定できるように、事例研究の結果、算定できるようにしたいんですよ。そうしないと、手元にどれだけ残るかわからないと申し立てができない可能性があるので、それを言っているんです。
最高裁、検討してください、それは。どうですか。

○永野最高裁判所長官代理者 非常に個別的な事例、事案ごとの判断になりますので、なかなか一般的な基準の策定というのは難しいだろうと思っています。そういう意味では、被災地の裁判所におきまして、今どんどん個別の事例が出てきておりますから、そういったものの事例の紹介をしていくというような形でこういう運用の参考にしていただくというような形が最もふさわしい形ではないかというふうに考えております。

○大口委員 では、ホームページでそれを紹介してください。どうですか。

○永野最高裁判所長官代理者 ホームページという形がどうかというのはあると思いますけれども、既に被災地の裁判所におきまして、損害保険の取り扱いについての一般的な考え方等について雑誌等に紹介したりしていることがございます。そういう意味では、個別事例といいましても、やはりこれは非訟事件でございますので、非公開であるという前提のもとでの話になってまいりますので、どのような形が適切かは別といたしまして、こういう、せっかく被災地の方で集積されております事例が何らかの形で、そういう活用に資するような形で使っていただけるというふうなことは考えてまいりたいと思っております。

○大口委員 あと、今回、成年後見制度の支援信託の導入というのが始まりました。この後見制度支援信託というのは、被後見人の財産のうち、日常的な支払いをするのに十分な金銭は預貯金として後見人が管理し、日々の生活に必要な支払いを柔軟に行うようにした上で、通常使用しない部分を信託銀行に信託するという仕組みであるわけであります。
これについて、けさもNHKで報道されていました。親族後見人等による不祥事がどの程度あるのかということについては、十八億六千万円。これは、最近十カ月、昨年六月から本年三月で十八億六千万円。百八十四件のうち、百八十二件が親族の後見人だということであります。
それで、こういう後見制度の支援信託を導入することは私も理解をしているわけでありますけれども、やはり親族後見人の不祥事を防止するためには、成年後見制度をつかさどる家庭裁判所におけるしっかりとした後見人の選任と教育、そして充実した後見監督を行うことが第一義的に重要である、それが本来の責務である、こう考えるわけであります。
国民のための司法制度、サービスの充実という観点から、この十年で大幅に増加している後見申し立て数に対応できる家庭裁判所の体制づくりを早急にすべきである、こう思いますが、いかがでございましょうか。

○豊澤最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、成年後見関係事件の開始の申し立て件数は、ここ十年、制度開始以来、非常な勢いで増加してきております。
裁判所におきましては、これまでも、例えば東京や大阪といった大規模の庁におきまして、成年後見関係事件の適正、迅速な処理を行うことを目的として、後見事件を専門的に取り扱う後見センターというものを設置するなど、各家庭裁判所の実情に応じた体制面の整備に努めてきております。
また、家事事件への対応を充実強化するため、成年後見の事件におきまして、裁判官の命を受けて書類の点検を行ったり手続案内を行ったりする裁判所書記官を相当数増員するといった人的体制の整備も図ってきているところでございます。
裁判所といたしましては、今後とも増加する成年後見事件等に適切に対応することができるよう、事件処理体制の整備、家庭裁判所の人的体制の強化に努めてまいりたいというふうに考えております。
以上でございます。

○大口委員 しっかり家庭裁判所、最高裁、対応していただきたいと思います。
時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。

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