大口よしの活動記録

アクション 日々の活動から

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2013年2月28日

山中伸弥博士の講話(要旨)

2月28日に衆議院内で行われたノーベル賞受賞者である山中伸弥博士の表祝行事のあとに行われた山中博士の講話の要旨を掲載します。

国会議員は、この国を支える仕事をされているが、我々科学者もまた国を支えているという自負をもって仕事をしている。日本は、国土が狭く、天然資源も限られており、科学者が生み出す科学技術に基づく知的財産が今後の日本を支えるひとつの柱になると考えている。私は、学生に対して、単に研究をするのみならず、国のために頑張るという気持ちを持って取り組んでほしいと話をしている。
平成24年度補正や平成25年度本予算において、iPS細胞研究について大きな支援をいただく方向で進められていることに対しお礼を申し上げるとともに、実用化に向けて頑張る所存である。
iPS細胞は、様々な技術の中のひとつであり、それ以上の優れた技術が出ていくことが今後の日本にとっては必須だと思う。
本日は、以下3つの事項についてお話ししたい。

第1に、日米における研究環境の差についてである。この10年間、私は日本と米国サンフランシスコで研究をしているが、研究環境の差を強く感じている。科学者に対するイメージや置かれている立場が日米で全く違う。日本では、研究者はつらい、あるいは、質実剛健というイメージがあり、臨床医学に進む人がほとんどで、基礎医学に進むと変人のような目で見られる。一方、米国では、臨床医学と同じ、あるいは、それ以上に研究者が尊敬されていることを肌で感じている。
研究施設に関し、日本では20~30年前の建物を耐震補強し、今後も2、30年使うこととしている。一方、米国等では、10年先を見据えたコンセプトで新たな研究施設がどんどんできている。例えば、米国カリフォルニア州では3000億円を州債で措置して研究施設がつくられている。また、再生医療や癌細胞の研究も1件当たり100億円程度の予算が投じられ研究が進められている。また、民間からの支援もある。こうしたことから、日本と米国等で4、50年の差が出てくることを懸念している。日米における研究環境の差をご理解願いいただきたい。
研究所のコンセプトについても、米国では壁(文字通りの壁)がないことが特徴だ。日本では、各教授が一国一城の主のように研究室を囲い、また、情報も出さずに横の研究室との交流もない状況だが、米国では、教授がガラス張りで並んでいて、常日頃から教授同士がディスカッションをしている。また、研究スペースが共有されていて、研究員同士も情報をシェアする、いわゆる「オープンラボ」となっている。

第2は、日米における研究支援者の方々の待遇についてである。昔と違い、科学技術が高度になり、1人の研究者が少人数のチームでできることは限られている。2000年、ヒトゲノム計画が完了し、1人の遺伝子配列が解読された。米国や英国等の多くのチームと巨額の資金を投じて、10年以上をかけて解読し、「第2のアポロ」と称されたものである。しかし今は、解読に1億円の機械が必要であるものの、より少ない資金で、10日間程度でできてしまうほど科学技術が進んでいる。ただし、研究で得られた膨大なデータをスーパーコンピュータで解析を行う必要がある。1人の研究者だけでは不可能であり、数学やコンピュータなどの知識を有した高度な技術者が、そして技術を応用するために知的財産や倫理の専門者も必要となっている。
私はいま、200名以上の研究者がいる研究所を、年間50億円の予算で運営しているが、CEO(最高経営責任者)の大切さを痛感している。私はこれまで経営のトレーニングを受けたこともないのに経営をする立場にある。一方、米国の研究所では、経営のプロを採用している。日本の大学には、教員と職員のポストしかなく、民間における経営のプロを採用することはほぼ不可能な状況にある。

最後に、大学における雇用の問題についてである。政府においては、10年単位の長期プロジェクトを検討していただいているが、有期雇用の扱いが課題だ。平成25年4月1日から施行される改正労働契約法では、有期雇用は5年までで、次の契約をする場合には無期(労働契約)としなければならないとされている。
大学にとっては、10年間プロジェクトならば10年間雇用する予算がつくが、5年間雇用した後、無期で雇用しなければならないとなると5年を超えて雇用することが難しくなってしまうため、優秀な人材が集まらないのではないかと危惧している。実際、問題になるのは5年後かもしれないが、何らかの対応が必要だ。
本日、国会内を見学させていただいた際、中央広間に4人目の銅像がないのは、政治が未完であることの象徴だというお話を伺った。これと同様、科学技術も未完である。次の世代が引き継ぎ改良していく必要があるので、長期の支援やご指導をよろしくお願いしたい。

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