大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2013年4月4日

183-衆-本会議-14号 平成25年04月04日

○大口善徳君 公明党の大口善徳でございます。
私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約、いわゆるハーグ条約、及び、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律案、いわゆる条約実施法案について質問いたします。(拍手)
まず、本条約及びその実施法案の必要性についてお伺いします。
厚生労働省の統計によると、過去十年間の平均で、国際結婚は年間約三万六千五百件、国際離婚も年間約一万七千二百件弱で、国際離婚におきましては、平成四年の七千七百十六件から平成二十三年の一万七千八百三十二件と、この二十年間で約二・三倍と大きく増加しております。このような国際離婚の増加に伴い、子の監護の問題は、国際的にも大きく取り上げられております。
本条約の締約国は八十九カ国に及び、G8では日本だけが未締結となっており、欧米を初めとする条約締約国が、我が国に対し、日本への子の連れ去りがあった場合、子の監護権の侵害問題の解決が困難になっているとして、我が国に早期の締結を求めています。
そして、締約国の裁判所において、離婚した日本人親が子を連れて我が国に一時帰国することが、本条約の未締結を理由に許可されない事態が生じているほか、我が国においても、外国人親が日本から条約締約国に子を連れ去っても、日本人親は何らの手段も与えられない現状です。
しかし、日本の場合、外国人親の児童虐待やドメスティック・バイオレンス、いわゆるDVから子やみずからを守るために子とともに帰国する事例が多数あり、子がもとの居住国に戻されることにより、邦人の保護や子の利益に対する懸念があり、ハーグ条約を締結することに慎重な意見もあります。
このような懸念が指摘されているハーグ条約を締約する必要性、それが子の最善の利益を確保することにつながるのか、締約しなかった場合の問題点はどのようなものであるのか、外務大臣にお伺いいたします。
次に、中央当局についてお伺いいたします。
実施法案では、我が国の中央当局を外務大臣としております。中央当局は、条約締約国の中央当局との連絡調整のほか、日本国内においても、本国に連れ去られた子の所在の特定や、連れ去ってしまった親からの任意の返還のための協議のあっせん等、重要な業務を課されております。日本に連れ去られた子は北海道から沖縄まで全国各地に散在する可能性があり、中央当局に課せられたこれらの重要な業務を実施するに当たり、外務省はどのような組織、人員で対応していく予定なのか、外務大臣の見解をお伺いします。
また、本条約に基づく返還の対象となる子は十六歳未満であり、子の福祉に十分配慮した対応が求められ、子の福祉に精通した専門家の配置が必要と思われますほか、DVや児童虐待などの支援業務に携わっている人材の配置も不可欠と思われます。中央当局の体制整備に当たっては、そうした専門家の方々の配置も予定されているのか、あわせて、外務大臣にお伺いいたします。
次に、中央当局からの子の所在等に関する情報の提供の求め等についてお伺いします。
DV被害者が、加害者から子やみずからを守るために民間シェルターに身を寄せることがあり、民間シェルターは、DV被害者を一時的に受け入れ、その自立を支援しています。そこでは、加害者からの追及をかわすために、保護した被害者はもちろんのこと、団体そのものの情報についても厳重に秘匿されております。
実施法案では、中央当局である外務大臣は、子の返還援助申請がなされた場合、申請に係る子やその子と同居している者の氏名、住所等を特定するため、国や地方の行政機関等のほか、政令で定める者に対し、氏名、住所等に関する情報の提供を求めることができるとされていますが、もし、情報の秘匿が前提となっている民間シェルターに情報提供を求めることになりますと、DV被害者との信頼関係を大きく損なわせるおそれも出てきます。
したがって、中央当局が民間シェルターに情報提供を求める必要が生じた場合であっても、配偶者暴力相談支援センターや民間シェルターのネットワーク団体を通じて間接的に情報提供を求めるなど、できる限り、直接民間シェルターに情報提供を求めることがないように特段の配慮をする必要があると思いますが、外務大臣の見解をお伺いします。
さらに、子らの所在等の情報収集に関しては、内閣府男女共同参画局及び民間シェルターのネットワーク団体の代表も交え、情報収集のためのガイドラインを作成することも必要と考えますが、外務大臣の御所見をお伺いいたします。
また、裁判手続が開始されても、裁判所は、中央当局から得た日本にいる親子の住所等の情報を開示せず、裁判記録に含まれるその他の情報についても、子の利益や当事者等の私生活の平穏を害するおそれがある場合は開示しないこととし、さらに、裁判所における記録の閲覧等の手続の運用面においても、子を連れ帰った親がDV被害を受けたと疑われる事案については、国内DV事案の記録の取り扱いと同様に、親子の所在の記録が外部に漏れないように配慮すべきと考えますが、法務大臣の御所見をお伺いします。
次に、子の返還申し立て事件の裁判管轄についてお伺いいたします。
実施法案では、子の返還申し立て事件の裁判管轄を東京家庭裁判所及び大阪家庭裁判所の二庁のみに限定しております。この裁判管轄は、子の住所地等により決定されることになり、子が北海道にいる場合は東京家裁に、沖縄にいる場合は大阪家裁に裁判管轄があるとされ、子を含め関係者が裁判所に出廷する際は、経済的、時間的に負担を強いることになると思われます。
管轄裁判所を東京家裁及び大阪家裁の二庁に限定した理由と、当事者の負担を軽減する方策について、法務大臣の見解をお伺いします。
次に、子の返還拒否事由についてお伺いします。
子の返還拒否事由の一つである実施法第二十八条一項四号には、「常居所地国に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること」とありますが、連れ去った日本人親がもとの居住国に入国できない、逮捕、刑事訴追のおそれがある、もとの居住国への帰国後の生計維持が困難等の事情がある場合、また、連れ去った日本人親が、過去のDVのために、もとの居住国に戻るとPTSDの精神症状が出て、子が耐えがたい状況に置かれると認められる場合などは、同第二十八条二項の重要な考慮要素として、返還拒否事由に該当することになるのか、法務大臣にお伺いします。
さらに、子の返還手続の裁判において、日本に帰った親が、DV被害等の有無を立証するため、中央当局を通じて、在外公館におけるDV相談内容の記録、外国の病院の診断書、外国の警察の相談記録等を入手できるようにし、また、家庭裁判所による職権調査等が積極的になされるべきと考えますが、外務大臣、法務大臣の見解をお伺いします。
次に、在外公館における体制整備についてお伺いします。
在外公館においては、DVや虐待を受けた邦人や子の相談に適切に対応していくこと、DV等の相談内容を記録保存しておくことが非常に重要であり、現地の支援団体とも連携するなどして、在外邦人の支援体制を構築しておくべきであると考えます。
また、子をもとの居住地に返還することになれば、その国の裁判所で監護権に関する裁判が行われることになりますが、現地の弁護士をあっせんしたり、支援制度や支援機関を紹介するなどの援助も必要になってくると考えます。
また、邦人保護の観点から、DV被害等のため緊急に帰国する必要があると認められる邦人に対しては、パスポートの発給などの帰国支援を行うべきであると考えます。
このように、ハーグ条約締結に向けた準備の中でも、在外公館の支援体制の構築は大変重要だと考えますが、外務大臣の御所見をお答えください。
次に、家庭裁判所の審理における援助についてお伺いします。
DV等を原因として、やむを得ず日本へ子を連れ帰ってきたような場合には、外国人親から家庭裁判所に子の返還申し立てがなされた場合、子を連れ帰った日本人親が家庭裁判所の審理に臨むに当たり、弁護士を依頼する費用や外国の書面を翻訳する費用が工面できないこともあろうかと思います。
我が国では、法テラスによる民事法律扶助制度により、弁護士費用等の一時立てかえが可能ですが、ハーグ条約案件の特殊性による翻訳費用の高額化について、現行の上限を撤廃し、適切な対応をすべきと考えますが、法務大臣の具体的な対策をお伺いいたします。
次に、子の返還の代替執行についてお伺いします。
実施法案において、子の返還を命ずる決定の具体的な執行方法として、間接強制を前置していますが、実際に子が返還されない場合には、代替執行を行わざるを得ません。
実施法案においては、「執行官は、」「子に対して威力を用いることはできない。子以外の者に対して威力を用いることが子の心身に有害な影響を及ぼすおそれがある場合においては、当該子以外の者についても、同様とする」と規定されております。
しかしながら、実際において、親から子を引き離すことになりますので、子が大変大きな精神的ショックを受けるおそれがあると思われます。代替執行を行う際には、慎重の上にも慎重な対応が不可欠と思いますが、代替執行を行う際の子に対する配慮をどう講じるのか、ガイドラインの作成も含め検討すべきと考えますが、法務大臣の御所見をお伺いします。
次に、面会交流における連れ去りの防止についてお伺いします。
日本にいる子に対する面会交流申請がなされた場合、面会申請を行った親が、面会の際に、子を日本国外へ連れ去ってしまうおそれが全くないとは言えません。子の返還申し立て事件については、家庭裁判所に事件が係属している間は、家庭裁判所による出国禁止命令により、子の連れ去りを防ぐ対策が講じられております。面会交流の際にも、子の連れ去りを防ぐ何らかの対策が必要であると考えますが、外務大臣の見解をお伺いいたします。
次に、ハーグ条約の適用関係についてお伺いします。
ハーグ条約は、「この条約が当該締約国について効力を生じた後に行われた不法な連れ去り又は留置についてのみ適用する」としておりますので、効力発生前に生じた不法な連れ去りや留置は対象とならず、実施法案にもその旨が明記されています。
そこで、条約適用の有無を判断するため、特に不法な留置の起算点が問題となりますが、これにつき、法務大臣の見解をお示ししていただきたいと思います。
次に、運用実態の把握についてお伺いいたします。
ハーグ条約を締結した際には、何よりも子の権利利益の保護が第一に考えられるべきもので、中央当局は、子の権利利益の保護が図られているかを監視しておく必要があります。また、実施法案施行後、定期的に運用実態を調査、検証し、その内容を公表し、国会に報告することが必要だと考えますが、外務大臣の御所見をお伺いします。
最後に、条約の受諾書の寄託の時期についてお伺いします。
ハーグ条約は、受諾書等の寄託後の三カ月目の月の初日に効力が生じることとされております。条約締結に対しては、早期締結を求める意見もありますが、関係者に対する制度の周知を十分に行うとともに、中央当局及び在外公館における体制整備には万全を期しておくべきと考えます。
今国会において条約が承認された場合、体制整備を整える準備期間をどれくらい確保して受諾書を寄託されるのか、外務大臣にお伺いいたします。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣岸田文雄君登壇〕

○国務大臣(岸田文雄君) 大口議員からは、私に九問御質問いただきました。
まず、ハーグ条約の締結の必要性についてお尋ねがありました。
我が国のハーグ条約締結の意義は、国際的なルールに基づく子の不法な連れ去り問題の解決、さらなる子の連れ去り事案の未然防止、国境を越えて所在する親子の面会交流の機会の確保といった点にあると考えております。
国境を越えた不法な子の連れ去りが子に悪影響を及ぼし得るとの認識のもと、本条約は、子の利益を最重要に考えて問題の解決を図るものであり、本条約の締結は、子の最善の利益の確保につながるものと考えます。
本条約を締結しない状態が継続することは、我が国国民にとっての大きな不利益であるとともに、国際社会における我が国の姿勢も問われかねません。我が国国民も当事者となっている子の不法な連れ去り問題に待ったなしで取り組むために、条約の早期締結が極めて重要と考えております。
中央当局の組織や人員に関するお尋ねがありました。
中央当局は、外務省及び法務省から人材を適切に配置するほか、専門家としてソーシャルワーカー及び弁護士を中央当局の職員として採用し、全体として、発足当初は十名程度の体制で取り組む考えです。
また、DVや児童虐待などの支援業務にかかわる人材を対象として、公募を行うことも検討しております。
中央当局が民間シェルターに子の所在に係る情報の提供を求める際の配慮の必要性についてお尋ねがありました。
DV被害者を受け入れている個別の民間シェルターに対し、中央当局が直接、子の所在に係る情報提供を求めることについては、極めて強い懸念があると理解しております。また、DV加害者に被害者の所在を知られることのないよう、情報管理に十分配慮する必要があります。
これらを踏まえ、子の所在に係る情報については、まずは各都道府県に配置されている配偶者暴力相談支援センターに対して提供を求め、同センターを通じて得られない場合には、民間シェルターに提供を求めることを検討します。
さらに、民間シェルターに対し情報提供を求めることが必要になった場合でも、民間シェルターのネットワーク団体から必要な協力が得られることを前提として、直接民間シェルターに対してではなく、当該ネットワーク団体を通じて、かかる情報提供を求めることを検討します。
このような協力が得られるよう当該ネットワーク団体に働きかけるとともに、実際の運用に関し、関係省庁、機関等と協議を進めていく考えです。
子の所在に係る情報収集のためのガイドラインの作成についてお尋ねがありました。
中央当局がどのように子の所在に係る情報提供の求めを行うかについて、条約実施法案第五条第一項に基づき、求める情報及びその手続を法令で定めることとしています。
さらに、実際の運用方法については、必要に応じ関係各府省庁と協議し、ガイドラインを作成し、その運用が適切に行われるように準備をしてまいります。その際には、御指摘の内閣府及び民間シェルターのネットワーク団体も含め、各種支援団体とも連携していきたいと考えております。
次に、子の返還手続の裁判におけるドメスティック・バイオレンス被害の立証に関する資料の入手についてお尋ねがありました。
条約上、望ましい場合には、中央当局間で子の社会的背景に関する情報を交換することが規定されています。これを踏まえ、条約実施法案においては、裁判所が、子の返還に関する審理を行うに当たり、例えば、子がもともと居住していた国におけるDVの実態について調査することが必要と判断すれば、中央当局である外務大臣に、当該国におけるDVの実態について調査を嘱託することが可能となっています。
また、在外公館は、海外に在留する日本人のDV被害者から相談を受けた場合、その相談内容を記録、保管します。この記録は、希望があれば相談された御本人に提供可能であり、また、求めがあれば裁判所にも提出可能です。
ハーグ条約の締結に向けて、在外公館の支援体制構築の重要性についてお尋ねがありました。
国境を越えた不法な子の連れ去りを行う在留邦人は、家庭内暴力や夫婦間問題等に関し、現地で適当な相談機関、救済措置がないことを訴える例が多いため、ハーグ条約締結に向け、邦人からの家族問題に関する相談について適切に対応できるようにすることが重要です。
在外公館では、これら相談に対して、任国の保護・救済制度を説明し、弁護士や福祉専門家、シェルターの紹介を行うなど、解決に向けた支援を行っていきます。また、家族問題について相談を受けた際には、相談記録を作成し、相談者本人が希望する場合には当該相談記録を提供します。
さらに、DV被害等のケースにおいて、現地の官憲の保護やシェルターが有効に機能せず、邦人の生命や身体に差し迫った危険が及ぶといった状況下においては、邦人保護の観点から、その緊急性に鑑み渡航文書を発給する必要があると認められる場合には、帰国のための渡航書を発給することが適当であると考えています。
なお、外務省は、ハーグ条約締約国に所在する我が方在外公館の領事担当者を対象として、ハーグ条約に関する研修を累次にわたって実施してきています。ハーグ条約を締結すれば、これらの支援措置が一層重要なものとなってきますので、さらなる支援体制の強化に努めてまいります。
次に、面会交流における連れ去り防止のための対策に関するお尋ねがありました。
中央当局は、安全な面会交流実現のため、仲介を行う機関を紹介し、第三者の入った形で安全な面会交流が実現するよう支援をいたします。
特に、面会交流の際、子の連れ去りが強く懸念される場合には、そのような状況を踏まえ、適切な形で面会交流が実現するよう、関係機関と協力の上、可能な限り当事者の懸念の払拭に努めます。
また、面会交流の実現の方法等につき、当事者の意思に沿った形での実現を最重視し、懸念に十分に配慮するよう慎重に対応していきます。
条約実施法案施行後の運用実態の調査、検証及びその内容の国会への報告についてお尋ねがありました。
政府として、条約実施法施行後も、連れ去り事案の実態を調査、検証していく所存であります。また、国会における審議の結果として、実態の調査、検証について国会へ報告が求められる場合には、政府としてこれを誠実に実施していく所存です。
最後に、条約の受諾書の寄託時期に関するお尋ねがありました。
御指摘のとおり、関係者に対する制度の周知を十分に行うとともに、中央当局及び在外公館における体制整備等には万全を期す必要があると考えます。同時に、子の利益を保護するという見地から、同条約の早期締結を実現することが重要です。
今後の具体的な作業としては、外務省においては政令の制定及びガイドライン等の作成、最高裁においては最高裁判所規則の制定等、条約の実施に係る運用の細則を新たに定めることが必要となります。ハーグ条約の受諾書の寄託の時期については、これらの作業の進捗状況を踏まえつつ確定させることを想定しております。(拍手)
〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

○国務大臣(谷垣禎一君) 大口善徳議員にお答え申し上げます。
まず、親子の所在地等の情報が含まれる裁判記録の取り扱いについてお尋ねがありました。
本法律案は、家庭内暴力の被害を受けた者の住所等の情報については裁判記録の閲覧を制限することとしており、裁判記録から加害者である親に被害者である親子の所在地等の情報が漏れることがないよう、特段の配慮をしております。
次に、子の返還申し立て事件の管轄裁判所の集中及び当事者の負担軽減策についてお尋ねがありました。
子の返還申し立て事件を適切かつ迅速に処理するためには、事件処理に携わる裁判所等が、事例の集積を通じ、専門的知見やノウハウを獲得、蓄積する必要があります。
そのため、予想される事件数なども考慮して、管轄裁判所を東京家庭裁判所と大阪家庭裁判所の二庁に集中させることとしておりますが、同時に、電話会議システムの利用を可能とすること等によって、遠隔地に住む当事者の出頭の負担を軽減することができるよう配慮しております。
次に、子の返還拒否事由についてお尋ねがありました。
本法律案は、常居所地国に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすこと、そのほか、子を耐えがたい状況に置くこととなる重大な危険があることを子の返還拒否事由の一つとするとともに、その有無を判断するに当たっての重要な考慮事情を法文上明記しております。
子を連れ去った日本人親が常居所地国に入国できないことなど、御指摘の事情は、いずれもこの重要な考慮事情に当たり得るものと考えられますので、具体的事案において、これらの事情を総合勘案した結果、子を耐えがたい状況に置くこととなる重大な危険があると判断された場合には、裁判所は子の返還を拒否することになると考えております。
次に、家庭内暴力の被害等に関する裁判資料の収集についてお尋ねがありました。
子の返還の裁判手続においては、必要に応じて家庭裁判所が職権で裁判資料を収集することが想定されておりますので、国外において家庭内暴力の被害を受けた事実につきましても、中央当局を通じて、在外公館等に存在する資料の収集が適切に行われるものと考えております。
次に、民事法律扶助制度による翻訳費用の立てかえについてお尋ねがありました。
ハーグ条約案件の特殊性を考慮すれば、現在定められている立てかえ上限額の範囲内で対応することは困難であるとの御指摘もあるところでありますので、この点については、法律的な文書を相当量翻訳する必要があるなどのハーグ条約案件の特殊性をも踏まえて、関係機関との間の協議を進めてまいります。
次に、子の返還の代替執行を行う際の子に対する配慮についてお尋ねがありました。
本法律案は、代替執行の手続において、家庭裁判所が子の利益に照らして返還を実施するのに相当である者を指定し、執行官に子に対する威力の行使を禁止し、中央当局が立ち会い等の必要な協力をすることができることとするなど、子の利益のために細やかな配慮をしております。
また、裁判所においても子の利益に配慮した運用がされるよう、必要な検討が進められているものと承知しております。
最後に、不法な留置の起算点についてお尋ねがありました。
不法な留置とは、子が常居所地国に戻ることが妨げられており、これにより監護の権利が侵害されている状態を意味するものです。
例えば、一方の親が一定期間経過後に子を帰国させることを条件に子を連れて出国しながら、そのまま子を帰国させない場合には、その一定期間が経過した時点で、不法な留置が開始することになります。(拍手)
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