大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2013年4月19日

183-衆-法務委員会-9号 平成25年04月19日

○大口委員 公明党の大口でございます。
各参考人には、大変有意義な御意見、また体験談をお話しいただきまして、ありがとうございます。
各皆様のお話を聞いておりますと、DV被害者の方、虐待を受けている被害者の方、そういう方々の本当に不安な、また命に及ぶ危険、恐怖におののいておる、そういうような状況も学ばせていただきました。
一方、渡辺参考人のお話、要するに、子を連れ去られたことによる苦しみ、そしてまた家庭の全てを破壊されてしまったことに対する怒り、さらにそれが司法に対する不信につながっている、こういう側面もお伺いさせていただきましたし、そういう連れ去られた父親だけじゃなくて母親も多くいらっしゃる、こういうこともお伺いしたわけでございます。
そういうさまざまな現実の問題の中で、国境をまたぐ、監護権を侵害する不法の連れ去り、不法の留置、これについて国際的なルールを決めてやっていく。そのことがまた連れ去りの防止にもつながりますし、そして、例えばアメリカにおいては、一時里帰りということもこの条約に入っていないために認められない、こういうような声も聞くわけでございます。
そこで、国内実施法を見ますと、一条に、「子の利益に資する」ということが目的に書いてあるわけです。要するに、「我が国における中央当局を指定し、その権限等を定めるとともに、子をその常居所を有していた国に迅速に返還するために必要な裁判手続等を定め、もって子の利益に資することを目的とする。」こういうふうに書いてあるわけです。
一方、子の返還拒否事由ということで、二十八条の返還拒否事由の中に、二十八条の一項では子の利益のことを書いております。一項の一号には子が新たな環境に適応しているかどうかということが入っておりますし、そしてまた、今も御指摘がありましたように、一項の四号の子の心身に害悪を及ぼすということについての重大な危険等が拒否事由の判断になっております。あるいは、一項五号におきましては、子の意見を考慮するということ、そしてさらに返還されることを拒んでいる場合についても返還拒否事由となっていること。そして、二十八条の二項で、子が虐待を受けている、暴力等を受けるおそれでありますとか、DVに関して子の心理的外傷ということが触れられていたりするわけであります。そして、執行につきましても、このことについて配慮が、心身への影響に対する配慮がなされておるわけでございます。
そこで、まず高橋参考人に、こういうハーグ条約そして国内実施法の目的、そして、その返還拒否事由においての子の利益ということで、子の最大の利益ということについてどういう形で今回工夫されたのか、これをお伺いしたいと思います。
そしてまた、長谷川参考人におかれましては、迅速な裁判ということと子の返還の利益を十分審議するということの関係性、これがどうなのか。そして、棚瀬参考人にも同じ問いをお伺いしたいと思います。

○高橋参考人 先ほど、棚瀬教授が非常に的確に御説明くださいましたが、この条約は、違法な連れ去りに対する暫定的な救済を目的としているわけです。違法に連れ去った以上、もとの国に一回戻してください、そういうことなんですね。戻された国で改めて、子供の成長のためにどういう形の親子関係を築くのがいいのか、親同士あるいは裁判所を交えて判断してくださいと。違法に連れ去ってそのまま違法状態を固定すること、それを否定するというのがこの条約、そして私どもが要綱案をつくりました国内実施法の目的でございます。
棚瀬教授が強調されましたように、子供にとって父親と暮らすのがいいのか母親と暮らせばいいのかという最終判断を今回の実施法でするのではありません。違法な状態の原状回復なんですね。しかしながら、原状回復をすること自体が、もとの国に戻すことが子供にとってよくないことがあり得る。典型例は、先ほど来出ている、残された親がDVであったりとか、あるいは薬物中毒やアルコール依存症であったりとか、そういうことがあるときには子供をもとに戻すこと自体が子供にとって危険である、こういうことで法律案はできているわけでございます。
棚瀬教授が御指摘のように、返還拒否事由の方が広い、帰さないことの方が広いというように一見条約からは見えるかもしれませんが、これは各国の判例を、読み方が棚瀬教授と私と違うのかもしれませんが、それを見ますと、これぐらいまでは条約の解釈としてグローバルに、俯瞰的に行われていることだろうと考えて、こういうような要綱案を作成したわけでございます。
委員御指摘のように、子供の利益は帰すときにも十分配慮いたしますし、先ほど申しましたように、強制執行の場合でも、子供の目の前で執行官が物理力を用いてというようなことはしないというような形で十分に配慮しているわけでございます。
民事執行法の原則から申しますと、これは執行不能、強制執行できないことをふやすのかもしれません。私どもは民事執行法も専門にしておりますので、その観点からは若干のちゅうちょはあるわけでございますが、子供の利益、子供のためという観点からは、これもやむを得ないものだと考えております。
あとは、この法律の趣旨をよく裁判所なり執行官なり弁護士なりが会得して、その事件その事件で最もよい解決をみんなが知恵を出し合ってつくっていくことだというふうに思っております。
以上でございます。

○長谷川参考人 御質問ありがとうございます。
迅速な裁判で、条約上は六週間をめどにというふうな規定があることは私も存じておるのでありますけれども、実際の統計によりますと、返還命令が出されるまでの平均日数が百六十六日に対して、返還が拒否される事例では平均二百八十六日かかっているというふうに伺っております。
つまり、迅速に帰せばいいというたてつけにはなっていても、恐らく、返還される裁判というのは不法の判断がしやすい事例なんだろうと思うんですね。しかし、返還拒否する事例に長くかかっているということは、返還すると子供に重大な危険が及ぶのではないかという懸念があるから、それを丁寧に調べた結果、やはり帰せませんということになったんだと思うんですね。
監護権侵害だといっても、一概にそれを帰してよいのかどうかというのは、具体的な子供を前にしたときに、裁判所あるいは関係者たちはやはり悩むんだろうと思うんですね。その結果がこの日数の違いにあらわれているというふうに思います。
このハーグ条約が採択されてから、子どもの権利条約が九年後に採択されております。そこで、公式には初めて、子供が人権の主体である、子供の最善の利益の主体であるということが確認されたわけです。そういうものをあわせて考えてみますと、やはり、子供の重大な危険というものを考えるときに、子供が具体的に置かれた状況を無視して、子供の心身に有害な影響があるのかどうか、返還するときに耐えがたい状況に置かれるのかどうかということを決めるわけにはいかない。したがって、時間がかかるのだろうというふうに思います。
それから、もう一点。ハーグ条約で誤解される点ですが、原状回復のために子供を返還すると言われます。しかしながら、子供を返還しても原状が回復されるわけではありません。
条約をよく見るとわかるのですが、どこに返還するかということは、常居所地国には限られていません。つまり、第三国に帰されるかもしれないのです。それは、もちろん、子供とは関係のない国であることが多いと思います。それから、常居所地国に戻されたとしても、そこに連れ去った親が同行できるとは限りません。ですから、常居所地国でもともと両親がそろって平和に暮らしていた家庭というものが取り戻せるわけではないということを念頭に置いて考えられなければいけないというふうに思います。
そういう意味で、子供を迅速に原状回復させて、それからゆっくり判断するべきだというのは、実は、返還される子供の現実を余り正確に捉えていないことになるのではないかというふうに思います。
いずれにしましても、やはり返還される子供が最も重大な影響を受けるわけですから、その子供の視点とか利益というものを丁寧に判断するべきだというふうに思います。
どうもありがとうございました。

○棚瀬参考人 簡単にお答えさせていただきます。
子の利益というのは前文にもうたわれているんですが、原則はやはり子供を帰すこと、つまり連れ去りを防止することが子供の最善の利益だという点で世界が一致しているというのをまず念頭に置かなきゃいけない。
それから、もう一点は、子供の利益は何かということを個別具体的に判断することは避ける、これも世界が一致していることです。子の利益は何かということを考えてしまうと、あらゆることを考えなきゃいけない。そうなってきますと、とても迅速な返還はできなくなってくる。そして、時間との勝負の中では決定的に失われてしまう。
迅速な返還の際、もう一つ大切なことは、よくハーグ条約は国際私法、つまり管轄をめぐる規定であるというふうに言われますが、これもアメリカの判例等を見ますとよく書いてあるんですが、まさに常居所地国こそが最善の管轄であるという言い方をします。つまり、そこで子供と親とが生活していたわけですから、そして、もちろん、DVがあるならそこでもDVが起きたわけですから、まさにそこの場所で問題を解決するのが一番迅速にその問題の、しかも最良の解決が得られる。
ですから、よその、自分の都合のいい管轄のところに子供を持ってきて、さあ、やってくださいと。それで、相手はそれを追いかけてこなきゃいけない。実は、私、人身保護請求事件で、スペインから子供を連れ去られた事件で、父親は監護権まで持っていたんですが、母親が連れ去って、その事件で七カ月かかりました。お父さんは七カ月間スペインを離れました。そして、その間、何とか子供にだけ会わせてくださいと言ったんですが、たった三回、二時間が三回しか、七カ月、会えませんでした。
それが日本の裁判の現実であるとすると、やはり連れ去られた者が圧倒的に不利ですし、しかも、子供と過ごしたスペインでの情報は一切得られない。まして、スペインから証人を呼んでくることはできませんでした。そこをぜひ御理解いただきたいと思います。

○大口委員 それでは、大津さん、全国女性シェルターネットの責任者でいらっしゃいます。百のうちの六十の構成員だということでございまして、アメリカから逃げてこられた方々の状況、それと、所在地の調査について、直接民間シェルターをその調査の対象とすべきではないという御意見、それをお伺いしたいと思います。
あと、済みません、渡辺参考人には、離婚をするかどうかはこれは夫婦の問題、しかし、子供と接触をする、親子の関係というのは一生切れないものだと思うんです。そこら辺はやはり大事にしなきゃいけないと私も思っておりますけれども、それについてお伺いできればと思います。

○大津参考人 ありがとうございます。
全国女性シェルターネットは、各地にあります民間のシェルターで構成されております。そういう意味では、さまざまなDV被害者の方がそのシェルターに駆け込んでまいります。私がかかわりました外国籍の女性たちは、もう本当に三十五カ国以上の人たちが民間シェルターを訪ねております。その中には、アメリカから逃げ帰った人たちもおります。
私たちができることは、本当にその人の心の回復、子供たちの元気を取り戻すということで、一生懸命運営しております。ですから、民間シェルターがハーグ条約においてどういう形で協力ができるのかといいますと、運用面において参加することができるかと思いますし、もしガイドラインをつくられるときには、そのことにも参加させていただきたいというふうに思っております。
それでよろしいでしょうか。

○渡辺参考人 先生の方からいただいた件で、まさに私が述べたように、離婚というのは大人の勝手な事情でありまして、私の件も含めてですけれども、基本的には夫婦の話です。DVについても、私、決してそれは許してはならないと思いますけれども、厳密に言えばそれは夫婦の話であって、極端なケースでいえば、本当に物すごいとんでもないDVをする親であっても、子供に対しては物すごい優しい、子供は物すごい懐いているというケースもあります。
ですから、今、私は、多くの日本の中の議論が混乱していると思うのは、まるで子供が親の所有物であるかのような、親の利益、親の不利益イコール子供の利益、不利益と考えて議論している傾向が少しあるのではないかと思っております。
あくまでも大人の都合で、夫は嫌い、妻は嫌い、もう二度と顔を合わせたくないと思っても、子供はその両方が好きということは当然あるわけでして、それを無理やり、私が嫌いだからあなたも嫌いになりなさいというのは、子供の権利、子供の人権を明らかに侵害しているものだと思います。
そういう意味では、離婚というのは、不幸ながら、それはないにこしたことはないですけれども、そうなってしまうケース、それでも子供の利益を本当に考えて、子供にとってはとにかく両方の親から愛情を受けることが大切だ、それをこの国はきちんと保障する、制度ももちろんそうですし、裁判の運用も含めて、そういう形にぜひ変わっていっていただければというふうに思っております。
以上です。

○大口委員 どうもありがとうございました。

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