大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2013年5月9日

183-衆-憲法審査会-8号 平成25年05月09日

○大口委員 公明党の大口善徳でございます。
憲法は、国家権力を制約し、国民の権利、自由を守るものであります。これは立憲主義と言われておりまして、この点は、憲法を考えるに当たって基本とすべきものと私は考えます。
憲法九十六条に定める憲法改正手続を緩和することは、それだけ憲法を改正しやすくする、すなわち、現行憲法に比べて硬性の度合いが低くなるということであります。そうすると、憲法の中身を改正しようとするとき、その時々の多数派の都合によって憲法改正がなされるおそれが現行憲法よりも大きくなるのではないか、ともすれば、国家権力に対する制約が緩くなり、国民の権利、自由が侵害される事態にもつながりかねないのではないか、そう考えるわけでございます。そしてまた、政権がかわるたびに、国民投票があるとはいえ、憲法が変わることになり、もろもろの混乱を招くのではないか、こう思うわけであります。
諸外国におきましても、アメリカ、スペイン、韓国、ドイツ、フランス、スロバキア等、三分の二ないしは五分の三となっておる硬性憲法でございます。代議制民主主義ということを考えてみますと、やはり国会の発議要件というものが大切である、こう考えます。
そこで、その発議要件を緩和すべきということでございますけれども、私が懸念を持っているのは、国会の発議要件を過半数に引き下げた場合、国会での議論が熟しないままに国会の発議がなされ、国民投票が行われることにならないか、そうすると、いざ国民投票ということになったときには、国民の間でも議論が十分行われないまま国民投票が行われてしまうのではないかということでございます。
憲法改正は国家の基本にかかわる極めて重要な問題で、それゆえ、国会での合意形成に誠意を尽くすことは非常に重要です。国会において幅広いコンセンサスを得る、そのために国会でしっかりと議論を行うという観点からは、国会の発議要件が過半数より重いということは合理性があり、また、代議制民主主義ということからいっても大事であると考えます。
国会でしっかりとした議論が行われ、国会での合意形成のプロセスが国民に示されることで、国民の間でも憲法改正に関する議論が十分に行われ、憲法改正案に対する国民の理解が深まることになるのではないかと考えます。そうすることで、憲法改正について国民のコンセンサスを得ることができるのではないでしょうか。
要するに、九十六条が国会の発議要件を過半数より重くしていることは、熟議を介して合意が構築される、そのプロセスを要求することに重要な意義があると考えます。そのプロセスにおいて、熟議を介して異なる意見を持つ者を説得し、合意に到達する努力を行うこと、これを九十六条は要求しているのだと考えます。
また、昨今、まず最初に改正すべきは九十六条であるという九十六条先行改正については、慎重であるべきというのが我が党の大勢でございます。
これまで、衆議院の憲法調査会や憲法特別委員会での議論でも、まず九十六条から改正すべきという意見はほとんどなかったと思います。そしてまた、主要国の憲法改正を見ても、憲法改正手続だけを改正したという事例はなかったのではないかと思います。この二点については橘部長にお伺いしたいと思います。
九十六条の改正手続規定を改めるにしても、単に各党の合意が得られやすいからというだけではなく、なぜそれが必要なのか、何のために手続規定を改正するのかについて十分に国会で議論し、国民に理解をいただく必要があると思います。
最近の世論調査を見ましても、憲法改正手続の先行改正については、賛成と反対が大体拮抗します。やや反対の方が多いという状況でございます。また、最近のNHKの調査によりましても、賛成二六、反対二四で、どちらとも言えないが四七%でございます。
これはやはり、憲法改正手続だけを改正するということについてはわかりにくい、中身を、どこを、なぜ、どのように改正するかということと一緒に議論しないと、なかなか理解は得られないのではないか。そのあらわれとして、四七%の方がどちらとも言えないという答えを出しているのではないかと思います。
以上でございます。
質問二点についてお願いしたいと思います。

○橘法制局参事 大口先生、御質問ありがとうございました。二問、御質問を頂戴したかと存じます。
まず第一は、衆議院憲法調査会での先生方の御議論の中で、九十六条先行改正論のような御主張がどの程度御議論されたのかということであったかと存じます。
記憶で大変恐縮ですが、私の記憶ですと、憲法調査会発足当初の二〇〇〇年九月に、きょうも来ておられます中山太郎先生を団長として、超党派の先生方とともに欧州各国の憲法事情の調査に参った際、イタリアを訪問しまして、「ローマ人の物語」で有名な、イタリア在住の作家塩野七生先生と懇談したことを記憶に思い出します。塩野先生が、まずは憲法九十六条を変えてみてはどうですかとおっしゃったのが、恐らく衆議院憲法調査会での御議論の中でのこのような先行改正論の最初のものであったかと存じます。
ただ、その後の憲法調査会での御議論では、改正要件の緩和やその具体的な方策につきまして、先ほど御紹介申し上げたAの1、2、3とか、あとは、武正先生の御発言にもございましたように、衆議院では三分の二、参議院では過半数といった、事項ごとに区別する変更の仕方を含めて、かなり詳細な議論がなされたと記憶しておりますけれども、ただ、当時は、九十六条のみの先行改正について特に議論されたということはなかったように記憶しております。九十六条先行改正論は、むしろ最近の憲法論議の一つの傾向なのではないかなと拝察いたしておるところです。
あともう一つの御質問は、諸外国の憲法改正事例におきまして、改正手続のみを改正した例があるのかといったことでございます。
先ほどの平沢勝栄先生の御発言と若干重複いたしますが、先生方の御議論に供するために、少し中身に立ち入って御紹介申し上げさせていただきたいと思います。
諸外国の憲法改正において、憲法改正手続条項を改正した事例としては、例えば、平沢先生から先ほど御教示いただきましたように、一九五三年にデンマーク憲法が大規模改正されて現行憲法が生まれたわけですが、その際、有権者総数の四五%という最低投票率の要件が厳し過ぎるということでこれを四〇%に改正した事例とか、一九六一年の軍事クーデターで制定された韓国の第三共和制憲法において、それまで国会の三分の二以上の議決のみで行われてきた憲法改正について、国民投票を導入するといったような改正強化の方向での憲法改正手続の改正などが見られますし、また、同種の事例は、フランス、インドネシアなどの新憲法制定や大規模改正でも見られるところかと存じます。
ただ、これは、大幅改正とか全面改正の際に改正手続の条項も改正されたという事例でありますので、先生の御下問とは少し違っているのかもしれません。
先生の御下問に一番近いと思われるのが、これまた平沢先生に先ほど教えていただきましたように、一九七四年のオーストラリアの憲法改正です。
そこでは、憲法改正手続の中に、過半数の州の賛成を得なければならないとされていたものが、六州でございますので、六州のうち四州では厳し過ぎるというので、これを二分の一、三つの州以上の賛成で足りるというふうに改正要件を緩和しようとした事例であったようです。
ただ、これも、正確に言えば、これだけの改正ではなく、もう一つ、小さな改正条項と一緒に改正がなされた。ただ、主要な改正はこの改正手続の緩和であったようでありますけれども。これは、平沢先生御紹介のとおり、この改正案に賛成した州は一州のみで、この改正提案は否決されたという事例が、手元の資料で、網羅的な調査ではありませんが、ございましたので、御紹介申し上げました。
以上です。

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