大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2021年4月15日

204-衆-法務委員会-5号 令和03年03月19日

○大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 四人の参考人の先生方、本当に貴重な御意見を賜りまして、心から感謝を申し上げます。

 まず、山野目先生におかれましては、法制審の専門部会の部会長で御尽力されたとともに、二〇一八年の発言から一貫して精力的に所有者不明土地問題のことに御尽力いただきまして、今回、所有者不明土地の対策の各法案の中でも一つの到達点ともいうべき法案をこういう形で御提示を、法制審で出していただいた、心から感謝を申し上げたいと思います。そういう中で、今日の御説明で、体系的に分かりやすく理解することができまして、ありがとうございます。

 その中で、民法の二百三十九条二項がございます。これは、「所有者のない不動産は、国庫に帰属する。」とあるところでございますけれども、土地所有者が所有権を放棄して土地を所有者のないものとし、これを国庫に帰属させることができるかが民法上明らかでないことから、当初は、所有権放棄を一定要件の下で可能にする民法の改正ということも検討されていたと思います。今回、この民法の改正は見送られまして、相続土地国庫帰属制度ということで、土地を国庫に帰属させるということにされたということ、これは、所有者不明土地の発生予防という観点でこういう形にされたということは理解をしております。

 そこで、土地所有権の放棄は可能なのかという解釈問題が残されているところでございます。民法学者であられる先生に、このことについてお伺いしたいと思います。

○山野目参考人 大口議員におかれましては、本日御審議の法律案の主題である所有者不明土地問題はもちろんのこと、しかし、これに限られず、厚生労働副大臣をお務めでいらした折は成年後見制度について、また近時は、父母が離婚した子のための養育費の問題につきまして親しく御指導いただき、深く感謝を申し上げる次第でございます。

 仰せのとおり、所有者不明土地問題の解決を要請した重要な画期が二〇一一年の東日本大震災でありました。それから五年がたつ二〇一六年三月十三日、NHKの「日曜討論」に出演した南三陸町長は、土地の権利に関わる困難がなければ、あと二年は早く仮設住宅からの移転など復興の事業が進捗したに違いないというお話をしてくださいました。

 東北の冬は寒くございます。本当に寒くございます。被災した皆さんに幾とせもの冬を強いたことを思いますと、胸が締めつけられます。

 二〇一四年には、岩手県司法書士会の支援を得て、私が三陸を訪ねました。大槌町や山田町におきまして、不便な立地の仮設住宅を見た、その様子も見ました。もとより、あの東北に限られず、これから起こるかもしれない西日本や首都圏の大きな災害に際しても、土地政策、不動産登記制度に関わる人々の総力を尽くし、つらい思いをなさる方々をなくしていかなければなりません。そのためには、所有者不明土地の発生を防ぐことが望まれます。御審議をいただく相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案は、この観点の施策を盛り込むものにほかなりません。

 議員御指摘のとおり、法制審議会において、当初は民法において、土地の所有権の放棄というものの可否、その要件に係る規定を置くという構想を持っておりました。ところが、そのようにいたしますと、土地とともに動産や建物についても放棄の可否などを検討して規定を置くという話になってまいりますが、それらについて法律家の間に異論のない考察が熟しているかと申しますと、そうでもございません。そこで、端的に、立法事実として政策的要請のあるところを的確に捉え、個別法で処することとし、法的構成も、議員おっしゃられたように、放棄ということではなく、端的に国への帰属としてございます。

 確かに、御高察のとおり、その場合におきましても、民法の解釈として土地の所有権の放棄ができるかという論点が今後も残ります。改めて考えてみますと、国に帰属させる際の負担金の納付を回避する結果となるような放棄に限って申せば、そのような放棄を是認すべきではないと考えますし、その法的構成につきましては、従来の裁判例において見られたような権利濫用で考えることとしたり、あるいは近時の一部の学説が説くように公序良俗違反として捉えたり、いろいろ見方はあることであると思います。

 さらに、今般の法律案を御採択いただく際は、むしろ、所有物の処分は法令の制限内においてのみすることができると定める民法二百六条の趣旨の理解として、今般法律案が一つの重みを持ってくるという理解も生まれるかもしれません。実際の運用も、理論研究における課題も、いずれも今後が大切という側面がございます。

 引き続き御指導賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

○大口委員 先生は福島県御出身ということで、この法案も東日本大震災を契機として本格的な真剣な議論がされたということを存じております。よろしくまた御指導の方をお願いいたします。

 次に、日本司法書士連合会の今川会長、今川参考人にお願いします。

 法案では、所有者不明土地管理人や管理不全土地管理人などの新しい財産管理制度が幾つも提案されています。これをできるだけ利用しやすいものにしていくことは極めて重要な課題であります。

 司法書士の皆さんは、新たに司法書士法第一条に設けられました使命規定、登記等の法律事務の専門家として、国民の権利擁護や自由かつ公正な社会の形成に寄与するという使命規定がうたわれたわけでございます。専門的知見を持っておられ、また、財産管理の実績も持っておられる司法書士の皆さんに、どのように対応されるのかお伺いしたいと思います。

○今川参考人 今川でございます。お答えします。

 当連合会としましては、まず、新制度に関する会員研修の充実を図って、管理人の養成をしていきたいというふうに思っております。そして、新たな財産管理制度に的確に対応できるように組織的な対応をしたい。

 また、東日本大震災の復興の際に、公共事業の実施において、不在者財産管理人、相続財産管理人を選任しなければならない事例というのが少なくありませんでした。そのときに、復興庁と連携をしまして、司法書士の財産管理人候補者名簿を作成し、提出いたしております。この所有者不明土地管理人におきましても、例えば候補者名簿を裁判所に提出するなどの組織的な対応も今検討しているところでございます。

 以上です。

○大口委員 次に、今川参考人にお伺いしますけれども、この相続土地国庫帰属法案につきましては、同法の二条三項の各号、それから同法の第五条一項各号で様々な要件が必要とされております。この国庫帰属を認められるハードルが相当高いのではないかということで、所有者不明土地発生の防止という観点からどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。

○今川参考人 今川です。お答えします。

 確かに、御指摘のように、国庫帰属が広く認められるという制度ではないというふうに理解しています。これは国の管理コストであるとかモラルハザードの問題がありますので、やむを得ず様々な要件が設定されているということも理解しています。

 しかし、現場で相談を受ける中では、土地の所有権を手放したいという声は相当多くあります。山林や農村地域の田畑について管理が困難となった不動産について、国庫帰属を認めてほしいという要請はたくさんありますので、今後、この国庫帰属制度がどのように運用されていくのか、地方公共団体や他の関係機関と密に連携を取っていただいて、国民の皆様への負担感が少しでも軽減されるように、円滑な運営をしていただきたいと思います。

 それと、法案の中で、五年後に再度見直しを行うという見直し規定も入っておりますので、連合会としましては、実例を集めて検討して、また実のある提言をしていきたいというふうに思っております。

 以上です。

○大口委員 さらに、不動産登記制度の見直しの中で、相続登記の申請を相続人に義務づける提案がなされております。種々御説明もありました。所有者不明土地の発生を抑制する必要から、国民に負担をおかけするということも、これはやむを得ないと思いますが、その御負担が最小限となるように取組をしていくこと、コスト面でどのようなことが重要なのか、これをお伺いしたいのが一点。

 それから、相続登記の義務化に係る規定は、施行以前に開始した相続についても、三年という猶予期間を置きながらも適用される、こういう附則が設けられているわけであります。だから、施行日において既に相続登記未了となっているものも相続登記の義務化の対象となるわけで、法的なサポートを必要とする一般の方々も少なくないと思われます。司法書士会としてはどのように対応されるのかもお伺いしたい。

 もう一つ、経過措置に関する問題点として重要なのが、相続開始後十年の経過で具体的相続分による遺産分割の利益を消滅させるという今般の見直しについての附則です。新たなルールは施行の時点で既に相続が開始していたケースについても適用されますが、この場合、相続開始から十年と施行時から五年のいずれか遅い時期までに遺産分割手続を取っておく必要があります。したがって、例えば、施行より五年以上前に相続が発生したケースでは、施行時から五年以内に遺産分割の手続を取っておかないとその遺産分割の利益が消滅することになるということで、遺産分割の促進などの政策目的でこの規定が入ったわけでありますが、国民への影響は非常に大きいわけでございまして、この周知徹底が不可欠でございます。

 これらの経過措置についての周知に当たって、国民に身近な法律家である司法書士の皆さんの御協力が不可欠であると思います。この点、お伺いしたいと思います。

○今川参考人 まず、一つ目の軽減策についてですが、いろいろな軽減策をパッケージとして導入することがまず必要だと思われますが、我々司法書士の実務の観点から見ますと、まず登録免許税の軽減措置を是非お願いをしたいと思っております。現在、固定資産税評価額の千分の四が免許税になりますけれども、義務化された場合には、登録免許税の軽減や免除措置というのを是非導入していただきたいなというふうに思っております。

 それから経過措置ですけれども、確かに、現在、相続登記未了の不動産は四百十万ヘクタールあると言われております。その相続登記未了の案件にも、相続登記の義務化と、それから遺産分割協議の一部制限が適用されるというのは、これは非常に大きい問題であり、国民も不安を抱くと思います。

 したがって、我々は、先ほど申し上げましたとおり、相続登記相談センターを五十の司法書士会に設置しまして、きめ細やかに説明をするような体制を整えて、国民の皆様に混乱が生じることがないように、しっかりとサポートをさせていただきたいと思っております。

 なお、既に相続登記未了となっているものは、数次相続が発生しまして、相続人が数十人に上るということもざらにありますので、是非、過料制裁の運用については慎重かつ丁寧な取扱いをしていただきたいなというふうにお願いをしておきます。

 以上です。

○大口委員 まだまだお伺いしたいことはあるんです。吉原参考人は、本当に土地基本法から御説明いただいて、ゼロからのスタートということで、しっかりやっていかなきゃいけないと思いますし、また、石田参考人は、我が党のPTにも来ていただいて、ランドバンクのことでいろいろ御説明をいただきました。

 いずれにしましても、今日いただいた御意見をしっかりこれからの法案の審議に参考にさせていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。

 今日は本当にありがとうございました。


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