大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2021年4月23日

204-衆-法務委員会-6号 令和03年03月23日

○大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 所有者不明土地問題は、山野目参考人も指摘されていますように、東日本大震災の復旧復興の整備事業推進の妨げになったことから、本格的な見直しの議論が始まったわけでございます。

 そして、この問題が大きな経済的損失をもたらすものであり、二〇四〇年にはその損失が推計で約三千百億円、累計では約六兆円にも膨らむおそれがあることを憂慮し、我が党も、二〇一七年の十一月に、私が座長となりまして所有者不明土地問題等対策プロジェクトチームを立ち上げ、課題に向けて対応してきた次第でございます。

 この問題の解決のため、平成三十年には所有者不明土地利用円滑化等措置法、令和元年には表題部所有者不明土地の登記・管理適正化法、戸籍法改正案が相次いで成立しました。

 また、同年、デジタル手続法も成立し、私が当時、野田聖子元総務大臣に働きかけをし、その後、総務省とも協議を重ねて、同法一部施行に伴う住民基本台帳法施行令等の一部改正政令で、所有者不明土地の所有者の探索のための重要な資料である住民票、そして戸籍の付票等の除票の保存期間を五年から百五十年に延長する措置も講じられました。

 そのほか、私が以前から法務省民事局に提案していたもので、本店移転をした会社が所有する不動産について、その住所の変更登記が申請されていないことを奇貨として、同一商号、同一本店の別の会社による不正な登記の成り済ましがなされることを防ぐため、今般の法改正案に、会社法人等番号を登記事項に追加する旨の見直しが提案されています。

 そして、昨年の、これは三十年ぶりの土地基本法の改正で、土地所有者等の責務として、登記等権利関係、また、その土地の境界が明確になるよう努めることが規定されております。

 さらに、今般の両法律案の提出という流れの中で、所有者不明土地の発生予防と利用の円滑化という両面から総合的な対策を講じようとしており、民事基本法制を多角的に見直し、これまで政府によって順次進められてきた所有者不明土地対策の一つの到達点となるものであり、重要な節目であります。上川大臣も一貫してこの問題に取り組んでいただき、こういう時点を迎えたわけで、感慨深いものがございます。

 そこで、まず、不動産登記法等の一部改正についてお伺いをしたいと思います。

 所有者不明土地問題が発生する最大の要因は、相続登記の申請がなされていないことと言われています。実際に、国土交通省の地籍調査によれば、所有者不明土地であるものが二二・二%、その発生原因の主なものが相続登記の未了で、六五・五%であった。

 今般の改正では、この主な発生原因である、相続登記の申請がなされないことを解消するため、相続登記の申請を義務化し、これは新法七十六条の二第一項、そしてそれに違反した場合には過料を科する、同法の第百六十四条第一項としていますが、この新不動産登記法七十六条の二は、相続人が自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内の登記申請を義務づけています。

 同条の第一項、第二項を併せて読むと、ここでの登記は、遺産分割の協議などが成立していない場合には法定相続分での相続登記の義務づけをしていると理解し得ます。

 このように、相続登記と一口に言っても、遺産分割を経てする移転登記や、法定相続分での相続人の一人でも申請が可能な移転登記もあれば、新たに設けられる相続人申告登記もあります。また、遺産分割が成立したというケースについては、当然ながら、遺産分割の内容を踏まえた登記がなされることが、所有者不明土地問題を真に解決するという観点からは重要であります。

 どのようなケースでどのような登記義務が課されるのかを類型的に説明していただきたく、法務省の見解を問います。

○小出政府参考人 お答えいたします。

 まず、前提といたしまして、不動産の所有権の登記名義人に相続の開始があった場合における実体的な権利関係について御説明させていただきます。

 まず、法定相続分の割合に応じた相続人らによる共有状態が生じまして、その後、例えば、その不動産を相続人のうちの一人が単独で相続する旨の遺産分割協議が成立した場合には、相続開始時に遡ってその相続人のみが不動産の所有権を取得することになります。

 また、被相続人が遺言を作成しており、これにより不動産を取得する者があらかじめ定められているケースもございますが、この場合には、遺言において不動産を取得することとされた者が相続の開始時から不動産の所有権を取得することとなります。

 今申し上げたことを前提に、今般の不動産登記法の見直しによって、どのような形で相続登記の申請義務が課されるかということについて申し上げますと、まず、所有権の登記名義人について相続が開始した場合、各相続人は、相続により法定相続分の割合に応じて所有権を取得することとなるため、法定相続分での相続登記の申請義務を負うことになります。そして、この登記申請義務につきましては、相続人申告登記の申出をすることによって履行することが可能でございます。

 次に、この法定相続分での相続登記が実際にされた後に遺産分割があった場合には、その遺産分割によって法定相続分を超えて所有権を取得した者は、遺産分割の日から三年以内に遺産分割の内容を踏まえた登記申請をする義務を負うことになります。相続人申告登記がされた後に遺産分割があったケースについても、遺産分割によって所有権を取得した者は、同様の登記申請をする義務を負うこととされます。

 また、遺言が作成されていた場合には、遺言により不動産を取得すると定められた者は、所有権を取得したことを知った日から三年以内にその旨の所有権の移転の登記の申請をする義務を負うことになります。そして、この登記申請義務については、相続人申告登記の申出をすることによっても履行することが可能となっています。

○大口委員 次に、新不動産登記法の七十六条の三の第一項で新たに設ける相続人申告登記が、通常の相続登記より簡易に行うことができるものである一方、権利関係を公示するものでないといった違いもあります。

 このような整理は、法律家としては十分に理解をすることができるんですが、新たな登記であるため、その登記を初めて見た一般の方々からすると、申告相続人として登記事項証明書に記載されている者をその不動産の真実の所有者と誤認するのではないかという懸念もあり得ます。こうした懸念に対して、どのような対策を検討しているのか、法務当局に問います。

 また、申出人の手続的な負担を軽減するために、申出の際の添付書面は相続人であることが証明できる最低限のものとしてもらいたいと考えていますが、具体的にどのような書面を添付することを考えているのか、また、数次相続が発生している場合はどうなのか、法務当局の見解を問います。

○小出政府参考人 お答え申し上げます。

 相続人申告登記、これは相続による権利移転を公示するものではなく、所有権の登記名義人に相続が発生したこと及び当該登記名義人の法定相続人と見られる者を報告的に公示するにとどまるものでございます。委員御指摘のとおりでございます。

 このように、相続人申告登記は、その公示する内容面において従来の相続登記とは異なるところがありますため、相続人申告登記の有する意味内容等については国民に分かりやすいものとなるようにする必要がございます。具体的には、相続人申告登記はあくまでも相続人の地位にある者を公示するにすぎず、申告をした相続人が最終的に不動産の所有者とならない可能性があることが読み取りやすいように、例えば登記事項証明書の表記に工夫を凝らすことなどを実務上検討してまいりたいと思っております。

 また、相続人申告登記の添付書面でございますけれども、これは、相続の発生や法定相続人と見られる者を報告的に公示するにとどまり、相続人による権利移転を公示するものではございませんので、その申出に当たっての添付書面としては、申出をする相続人が被相続人の相続人であることが分かる当該相続人の戸籍謄本を提出することで足り、通常の相続登記の申請の場合のように、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍の除籍簿あるいは戸籍の謄本を提出するまでの必要はないものとすることを想定しているところでございます。

 また、数次相続が発生している場合の相続人申告登記でございますけれども、数次相続が発生している場合にもこの相続人申告登記の申出をすることは可能でございまして、相続人申告登記をした相続人について更に相続が開始した場合にも、その相続人は相続人申告登記の申出をすることができるものと整理しているところでございます。

○大口委員 次に、相続登記の申請を義務づけることは重要でありますが、その履行がなされるようにするためには、手続面での配慮に加えて、費用面での負担軽減も重要であります。前回の参考人質疑でも、各参考人からその旨の意見が述べられていました。

 現在は、相続登記をするためには不動産の固定資産税評価額の千分の四の登録免許税を納付する必要がありますが、所有者不明土地を解消してしっかりとした国土管理を進めていくために相続登記の申請を義務づけるという政策目的に照らせば、その負担はできるだけ抑える配慮も必要ではないかと思います。

 今後の登録免許税の減免策について法務大臣にお伺いします。

○上川国務大臣 所有者不明土地の発生予防の観点から、この相続登記等の申請を義務化するに当たりましては、この申請人の手続的な負担だけではなく、申請人の費用面での負担軽減を図るための方策を講ずることが必要である、このことにつきましては法務省としても同様の認識をしているところでございます。

 その上で、御指摘の登録免許税ということでございますが、令和三年度の与党税制改正大綱におきまして、登録免許税の在り方については、所有者不明土地問題の解決に向けて、相続発生時における登記申請の義務化等を含めました不動産登記法等の見直しの成案を踏まえ、令和四年度税制改正において必要な措置を検討することとされております。

 法務省といたしましては、今般の不動産登記法の見直しの成案が得られた場合には、相続登記等に係る費用面での負担軽減を図る観点から、引き続き、令和四年度税制改正に向けまして取組を進めてまいりたいと考えております。

○大口委員 税制改正におきましては、大臣を先頭に、私どもも応援をしていきたい、こう思っています。是非ともよろしくお願いします。

 先ほどの国土交通省の地籍調査によりますと、所有者不明土地の発生原因の三三・六%が、住所等の変更が登記に反映されていないことにあると言われています。

 今般の改正で、新不動産登記法第七十六条の五で、住所等の変更についても登記申請を義務化することとしていますが、その登記申請を義務づけるだけでは実効的なものにならないので、行政機関の情報連携をデジタル化で図り、積極的に登記の変更につなげていくことは、デジタル社会推進という観点からも大いに重要であると思います。

 今回、そのような観点から、住所等の変更登記の申請を義務化することへの負担軽減策として、職権による住所等の変更の登記の制度が設けられ、これは第七十六条の六、しっかり対応されているわけでありますが、住所等の変更登記に当たっての他の公的機関との情報連携の全体像について法務省にお伺いします。

○小出政府参考人 お答えいたします。

 今般の不動産登記法等の見直しでは、住所等の変更登記の申請を義務づけるとともに、その手続の簡素化、合理化を図る観点から、登記官が他の公的機関から所有権の登記名義人の住所等の異動情報を取得し、これを登記記録に反映させる仕組みを創設することとしております。

 この新たな仕組みでは、所有権の登記名義人が自然人である場合には住民基本台帳ネットワークシステムから、また、法人である場合には商業・法人登記のシステムから、それぞれ必要な情報を取得することを想定しております。この仕組みの具体的な運用につきましては、今後省令等において具体化していくことになりますが、現時点では次のようなことを想定しております。

 まず、自然人の場合には、所有権の登記名義人から、その氏名、住所のほか、生年月日等の情報を提供してもらい、これを検索キーとして法務局側で定期的に住基ネットに照会して情報の提供を受けることにより、住所等の変更の有無を確認します。

 他方で、法人の場合には、省内のシステム間連携による対応が可能でありますため、法人の住所等に変更が生じた場合には、不動産登記システム側からの定期的な照会を要さずに、商業・法人登記のシステムから不動産登記システムにその変更情報を通知することにより、住所等の変更があったことを把握することとしております。

 このような情報取得の仕組みに基づきまして住所等の変更の情報を取得した上で、登記官が職権的に住所等の変更の登記を行うことになるものでございます。

○大口委員 次に、職権的に転居の事実が不動産登記に公示されると、誰の目からも転居先が明らかになるということになる。しかし、例えば、DV被害に遭われている場合などにおいて、幾らデジタルでの情報連携を進めるといっても、登記官が住所等の変更登記を職権でしたことで、かえってDV被害者の住所が加害者に知るところとなるのは大変な問題であります。

 このようなことがないように、プライバシーの保護という観点も含めて慎重な対応も必要であり、同法七十六条の六ただし書では、自然人についてはその申出が必要ということで、配慮されていると思います。そして、特にDV被害者等の保護に関して、新不動産登記法百十九条の第六項を新設し、登記事項証明書に真実の住所を記載せず、これに代わるものを記載するという新たな取扱いを始めることにしており、時宜にかなったものと言えます。

 このような配慮は、登記簿の附属書類の閲覧においても全うされる必要があります。今般の改正では、同法の百二十一条第三項で、要件を利害関係から正当な理由に改めるとのことでありますが、この改正後において、DV被害者の提出した書面はどのように扱われるのか、また、戸籍などプライバシー性が高いと考えられる書面についてはどのように扱われるのか、法務当局にお伺いします。また、この正当な理由として、運用のみでDV被害者等の方の保護を行うに当たっては十分な配慮が必要であると考えますが、これについても法務省の見解を問います。

○小出政府参考人 お答えいたします。

 現行の不動産登記法におきましては、土地所在図等の図面以外の登記簿の附属書類につきましては、請求人が利害関係を有する部分に限って閲覧を請求することができるものとされておりますが、この利害関係が具体的にどのような範囲のものを指すかは、解釈上、必ずしも明らかではないところでございます。また、近時におきましては、プライバシーへの配慮の要請が強まり、登記簿の附属書類に含まれる各種書類についても、その性質、内容ごとに閲覧の可否を検討すべきものが増えてきております。

 そこで、今般の不動産登記法の見直しでは、登記簿の附属書類の閲覧につきましては、その閲覧の可否の基準を合理化いたしまして、利害関係との要件を正当な理由に改めることとしております。

 DV被害者等の提出した書面等の扱いでございますが、登記簿の附属書類のうち、DV被害者等の住所等の情報に係る部分につきましては、基本的に、正当な理由がないものとして本人以外の者による閲覧は認められないことになると考えられます。また、附属書類のうち、戸籍などのプライバシー性の高い情報につきましても、正当な理由の有無の判断に当たりましては慎重な検討がなされることになると考えられます。

 このように、今般の不動産登記法の見直し後におきましては、登記簿の附属書類の閲覧の可否の基準である正当な理由の有無を適切に判断することによりDV被害者等の保護が図られるものと認識しておりますが、委員の御指摘も踏まえまして、法務省としては、この点も含め、正当な理由の内容につきまして、できる限りこれを具体化、類型化して、通達等において明確化することを予定しており、これにより、適切な実務運用、これが安定的に行われるものと考えております。

○大口委員 しっかりお願いしたいと思います。

 また、相続登記の申請や所有権の登記名義人の住所等について変更がありその登記を怠った場合には、新不動産登記法の百六十四条で過料の制裁が科されているわけです。

 前回、参考人質疑で今川参考人からは、相続登記等を義務化し、過料の制裁が科されてはいるが、厳罰化を目的としたものではないとして、義務化の負担軽減策等をパッケージとして導入することを提案されています。そして、正当な理由があれば制裁は科されないとの意見が述べられています。

 私は、DV等被害者であることなどは正当な理由に十分なり得ると考えております。実際、登記官が判断することになり、省令、通達等でその運用がなされていくと考えますが、相続登記等を申請できなかった理由を丁寧に精査し、今般の義務化が制裁を科すものではなく相続登記の促進であるとの趣旨を十分に踏まえ、また、国民に分かりやすい運用をしてもらいたいと考えますが、法務大臣の見解をお伺いします。

○上川国務大臣 今般の不動産登記法の見直しにおきましては、相続登記や住所等の変更登記の申請を履行期間内に行わない場合であることに加えて、申請をしないことに正当な理由がないときに限り過料を科すとの規定を設けているところでございます。

 法務省といたしましては、相続登記の申請の義務の重要性は前提としつつも、委員御指摘のようなDV被害者等を含めまして、正当な理由があると判断することがあり得るケースにつきまして、制度の実施に当たりましては、正当な理由の具体的な類型について通達等において明確化するほか、裁判所における過料通知の手続も省令等に明確に規定する予定でございます。

 丁寧にその事情を酌むよう、運用におきましても国民に分かりやすい対応をしてまいりたいと考えております。

○大口委員 よろしくお願いしたいと思います。

 次に、これは参考人のときにも私も質問させていただきましたけれども、相続登記の申請の義務づけに関する規定で、これらの規定の施行日前に所有権の登記名義人について相続開始があった場合にも適用することとし、また、施行日又は自己のために相続開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に相続登記をしなければならないとされております。また、所有権の登記名義人の住所等について変更があった場合に関する経過措置についてもほぼ同様の措置が設けられております。

 また、民法改正の部分ですけれども、同じ経過措置に関するものとして、民法等の一部を改正する法律案の附則第三条によれば、相続開始後十年が経過すれば、具体的相続分による遺産分割の利益を消滅させ、法定相続分で遺産分割をすることとする今般の見直しについて、施行の時点で既に相続が開始した場合についても適用され、相続開始から十年と施行時から五年のいずれか遅い時期までに遺産分割手続を取っておく必要があります。例えば、施行より五年以上前に相続が発生した場合では、施行時から五年以内に遺産分割の手続を取っておかないと遺産分割の利益が消滅するということでございます。

 これらの経過措置は、相続人にとっての激変緩和を図りつつ、相続登記や遺産分割の促進など政策的な目的を実現しようとするものと理解されますが、既に発生した全ての相続に適用され得るものであり、実務に与える影響が大きいことから、国民への周知徹底が不可欠であります。

 今川参考人も、現在相続登記未了の不動産は四百十万ヘクタールある、こういう指摘もされており、これらの経過措置を設けた理由及び国民への周知方法について法務省よりお伺いします。

○小出政府参考人 お答えいたします。

 相続登記や住所等の変更登記の申請義務に係る規定につきましては、既に発生している相続未登記あるいは住所変更未登記の不動産についてもその解消を図っていく必要性を否定することができないものですから、改正法の施行日前に相続の開始等があった場合においても適用することとされております。

 もっとも、施行日前に既に相続が開始した場合又は住所等の変更があった場合であっても、登記の申請に必要な期間を確保する観点から、少なくとも施行日から三年間又は二年間の猶予期間を置くこととしております。

 施行日前に相続の開始等があった場合であっても、相続人申告登記など、今般の不動産登記法の見直しにおいて講じられる各種の負担軽減策を活用することができるということがその前提でございます。

 また、御指摘のございました施行日前に相続が開始した遺産の分割についても、共有関係を適切に解消するため、遺産の分割を促すとともに、長期間が経過している場合には、法定相続分等の割合により簡明にその分割を行うことを可能とすべく、改正法を適用する必要がございます。

 他方、改正法の規定をそのまま適用し、施行と同時に具体的相続分による遺産分割を求める利益を失うなど、相続人に不測の損害が生ずることがないようにする必要もございます。

 そこで、改正案においては、相続人に不測の損害が生ずることがないよう、施行日前に生じた相続についても改正後の規定を適用することとしつつ、少なくとも施行日から五年間は具体的相続分による遺産分割の請求を求めることができるとして、猶予期間を設けているところでございます。

 相続登記等の申請の義務化につきましては、国民に新たな負担を課すものであるとともに、過料を伴う具体的な義務を設けるものでございますので、御指摘の経過措置の点も含めて、国民一般に対して十分な周知を図る必要があると考えております。また、その際には、関係機関や関係士業団体を含めた関係団体とも十分に連携を図ることとし、できるだけ効果的な周知方法を実施することができるよう検討を進めてまいりたいと考えております。

 また、遺産分割に係る見直しにつきましても、その重要性に鑑み、改正案が適切に施行されるよう、これについても効果的な周知活動を行うことを予定しております。

○大口委員 相続土地国庫帰属法案についてお伺いします。

 土地の国庫帰属に係る申請時の要件の一つである相続土地国庫帰属法案第二条第三項五号の、境界が明らかでない土地その他所有権の存否、帰属又は範囲について争いがないことというものがありますが、この土地の境界には、いわゆる公法上の境界を指す場合と、それから土地所有権の境界を指す場合、どちらなのかということについてまず問いたいと思います。

 そして、所有権の境界が明らかであるかどうかを確認するための資料として、例えば隣地共有者全員の承諾印と印鑑証明を添付した境界確認書の提出を求めたり測量図面の提出を求めたりすると、準備に多大な費用、労力を要し、申請者にとって大きな負担となるものと考えます。隣地共有者の一部の所在が分からないためにその確認書が得られない場合や、単に土地について測量図面が作成されていない場合を直ちに制度の対象外とすべきではない。

 この制度が所有者不明土地の発生を予防するという機能を十全に果たすためには、申請者の負担も十分に考慮すべきであり、特に粗放的管理で足りる土地については、隣地との所有権の境界が明らかであるかどうかについての詳細な資料の提出までは求めない運用にすべきではないか。法務省の見解を問います。

○小出政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の境界が明らかでない土地とは、例えば、隣接する土地の境界を客観的に示すものがなく、隣接地所有者間で所有権の範囲等について争いがある土地などが該当するものと考えておりまして、ここでの境界は所有権の境界を指しているものと整理しております。

 所有権の境界が明らかでない土地を承認申請の対象から除外しているのは、土地の所有権の境界が不明確である場合、国庫帰属後において国がどの範囲に管理権限を有しているかが不明確となり、管理に支障を来すためでございます。

 境界が明らかでない土地をこの制度の対象から除外したのは、今申し上げましたとおり、国が管理をすべき土地の範囲を特定するためでございますので、現地において認識可能な程度の境界の特定は必要であると考えられるところですが、他方で、委員御指摘のとおり、申請者に対して所有権の境界が特定されていることについて詳細な資料の提出を求めた場合には、申請者の負担が重過ぎることになりかねません。また、どの程度の資料の提出を求めるかは、国庫帰属後に国が行う管理の態様等によっても異なるものと考えられます。

 境界が明らかでない土地等の認定の在り方につきましては、粗放的な管理で足りる土地の取扱いも含めまして、申請者の負担や国有財産管理の実務の観点も考慮し、今後、その具体的な運用について関係省庁と連携して検討してまいりたいと考えております。

○大口委員 ここは本当に大事ですので、よろしくお願いしたいと思います。

 それから、山下委員からも御指摘がありましたが、今回、共有関係、非常に抜本的な改正を行ったと思います。

 所有者不明土地の中には、相続登記の未了等により既に共有者が多数となったメガ共有地と呼ばれている土地も存在しており、相続登記の義務化だけでは不十分であるとして、今般の改正では民法の共有の規定も見直しています。このようなメガ共有地は共有者間の合意形成が難しく、土地の適正な管理、処分が困難であると言われており、実務からの解決のニーズも高いと聞いています。

 そこで、共有関係の解消をするための規定の整備、新民法案の二百五十八条、二百五十八条の二。二百六十二条の二、所在等不明共有者の持分の取得。二百六十二条の三、所在等不明共有者の持分の譲渡や、共有物の管理者制度を設けているわけでありますが、これらの規定を新設する趣旨及びその内容について法務大臣にお伺いします。

○上川国務大臣 共有状態が解消されないまま放置され、共有者が数十人、数百人に及ぶというケースにおきましては、共有者の所在等が不明なことが少なくなく、また、共有関係の円滑な解消、また共有物の適正な管理を図ることは極めて重要な課題であると考えております。

 改正案におきましては、共有関係を円滑に解消するという観点から、共有物分割訴訟に関するルールにつきまして、次の二点につきましての見直しを図っております。

 まず一点目でありますが、現行法におきましては、現物を分割する方法と競売によってその代金を分割する方法のみが規定をされているところでございます。今般は、本改正案におきましては、判例によって認められておりますいわゆる全面的価格賠償による分割の方法、これを明記をいたし、共有物分割訴訟でよるべきルール、これを明確化したところでございます。

 二点目として、現行法におきましては、地方裁判所等における共有物分割訴訟と家庭裁判所における遺産分割手続とで別個に分割手続を取らなければならない。こうしたケースにつきまして、一定の要件の下で、地方裁判所等における共有物分割訴訟で一括して解消することを可能にしたところでございます。

 また、共有物分割訴訟におきましては、共有者全員を当事者としなければならないなど手続の負担が重いことを踏まえまして、訴訟手続ではなく非訟手続の下で、共有者全員を当事者とすることなく、所在者等不明共有者の不動産の持分を適正な対価を支払った上で他の共有者が取得したり第三者に譲渡したりすることができる制度を創設しているところであります。

 さらに、共有者が多数であっても、あらかじめ管理者を選任し共有物の管理を管理者に委ねることができれば便宜でございます。共有物の適正な管理を図るということの趣旨から、改正案におきましては、共有物の管理者の規定を整備し、その選任の要件等のルールを明確にしているところでございます。

○大口委員 次に、今回創設した財産管理制度の各管理人の選任についてお伺いします。

 第百九十八回国会の司法書士法等の一部改正に対する当法務委員会の附帯決議で、三項に、空き家や所有者不明土地問題等の諸課題の解決に当たっては、司法書士及び土地家屋調査士の有する専門的知見や財産管理、境界確定についてのこれまでの実績に鑑み、その積極的な活用を図ることとされています。

 空き家や所有者不明土地問題等の諸課題に当たっては、司法書士の有する専門的知見や財産管理等についてのこれまでの実績に鑑み、その積極的な活用を図ることとされたわけであります。

 前回の参考人質疑において、今川参考人から、所有者不明土地利用円滑化等措置法に基づく法務局による長期相続登記未了の土地の解消作業では、全国の法務局の入札において、全て司法書士の団体が落札し、法定相続人の調査を実施していること、また、専門職の中で司法書士が最も多く成年後見人等に就任し、財産管理や遺産分割協議を遂行していること、司法書士が不在者財産管理人や相続財産管理人に就任し、所有者不明土地問題の発生を抑止するための業務を行っていると発言されました。また、所有者不明土地管理人についても、候補者名簿を裁判所に提出するなどの組織的な対応の検討に加えて、研修体制の充実を始めとして、取組を強化していく決意も示されたわけであります。

 今回の見直し後において、この共有持分の取得、譲渡、所有者不明の土地管理人等の新たな財産管理制度における司法書士の活用についてどのような対応をしていくのか、法務大臣の見解をお伺いします。

○上川国務大臣 財産管理制度の担い手として司法書士が果たすべき役割はますます重要になっており、御指摘の司法書士法改正の附帯決議におきましても、このような観点からされたものというふうに受け止めております。

 法務省としては、改正案が成立した場合には、所有者不明土地管理制度等の新たな財産管理制度の円滑な運用が図られるよう、積極的に努力していく所存でございます。

 どのような者を管理人として選任するかにつきましては、個別の事案に応じまして裁判所におきまして適切に判断されるものでありますが、所有者不明土地管理人の職務は不在者財産管理人などとも類似をするところがございます。これまでの実績からしても、司法書士の皆様も新制度における管理人の重要な給源であり、制度の円滑な運用を図るためにはその協力が必要不可欠なものというふうに認識をしております。

 また、委員御紹介いただきました先日の参考人質疑におきまして、日本司法書士会連合会におきまして、管理人の候補者を養成するための研修を実施するなど組織的対応をする予定であるとお聞きをしたところでございます。

 法務省といたしましては、御指摘の附帯決議の趣旨、また日本司法書士会連合会における取組も踏まえ、新たな財産管理制度の適正かつ円滑な運用が実現されるよう、関係機関と連携をし、必要な対応を図ってまいりたいというふうに考えております。

○大口委員 また、所有者不明土地管理命令の請求権者、これは、新民法案ですと二百六十四条の二第一項について、今回の所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法、所有者不明土地利用円滑化等措置法の一部の改正案、同三十八条二項で、適切な管理のため特に必要があると認めるときは国の行政機関の長や地方公共団体の長も請求できるとされていますが、一方、管理不全土地管理命令、新民法案第二百六十四条の九第一項については、所有者不明土地管理の制度とは異なり、市区町村が利害関係人でない場合はこの制度の請求権者になることができないことになっていますが、管理不全土地管理の制度について地方公共団体の長などを請求権者としなかったのはなぜなのか、法務省にお伺いしたいと思います。

○小出政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の所有者不明土地特措法は、所有者不明土地の利用の円滑化のための特別の措置を講ずるものでございまして、今回新設する所有者不明土地管理制度の申立て権者についての民法の特例規定を設けることは、同法の趣旨に合致するものと言えると考えられます。

 これに対しまして、管理不全土地管理制度は、不適切な土地の管理により権利利益が侵害されている者などの利害関係人の申立てにより、管理が不適当である土地の管理を可能とするものであり、所有者不明土地をその対象とするものではございません。

 このような管理不全土地管理制度につきまして、権利利益を侵害されるなどの利害関係の有無に関係なく地方公共団体に申立て権を付与することは、現行の所有者不明土地特措法で定められた目的の範囲を超えており、その是非につきましては、同法の趣旨、目的や、同法における管理不全土地対策の位置づけも踏まえ、国土管理の観点から、別途検討すべき課題と整理されたところでございます。

 そこで、今回の改正法附則では、所有者不明土地特措法において、地方公共団体の長等に管理不全土地管理命令の申立て権を付与する旨の特例規定は今回は設けなかったわけでございますが、この点につきましては引き続き検討されるものと理解しております。

○大口委員 住民が利害関係人として請求した場合は、手続上の負担、手数料や予納金を払わなきゃいけないとか、様々な負担があるわけですね。これに対して、自治体の首長が申し立てる場合には、住民がその負担をする必要がなくなるわけでありますし、首長が申し立てるニーズはあると思うんですね。そういう管理不全の土地等について、そのまま放置しておくということは、自治体においてもいろいろな不都合が生じるわけです。

 国交省には、行政的な観点から、管理不全土地の対策を推進するためにも、所有者不明土地円滑化等特措法の施行後三年経過の見直しがありますので、自治体の首長への管理制度の申立て権の付与も含めて検討する必要があると考えますが、国交省の見解をお伺いします。

○吉田政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省といたしましては、管理不全土地は、周辺に悪影響を及ぼすだけでなく、最終的に所有者不明土地となってしまうおそれもありますことから、管理不全土地の対策は重要であり、地域の良好な環境の確保等の観点から、地方公共団体を始め、行政の役割に対する期待は大きいものがあると考えているところでございます。

 このため、委員からもお話ございました所有者不明法につきまして、来年度に施行後三年経過の見直しの時期となりますことから、その一環として、法務省など関係省庁とも連携しつつ、また、地方自治体の意見などもお聞きしながら、管理不全土地対策につきまして様々な観点から検討を進めて、令和四年に必要な制度見直しを目指すこととしているところでございまして、本年二月二十四日に開催されました所有者不明土地等対策の関係閣僚会議におきましてもその旨を御報告させていただいたところでございます。

 今後、委員から御指摘のございました管理不全土地管理命令を請求する主体として地方公共団体を追加することを含めまして、地域のニーズを踏まえた管理不全土地対策を検討してまいりたいと考えているところでございます。

○大口委員 しっかり法務省と連携してやっていただきたいと思います。非常に今大変な問題になっているわけですから、スピーディーにやっていただきたいと思うんですね。

 最後でありますが、他の土地へのライフラインの設備設置権が明文化されたことによって、私道等に導管を設置する際に不当な承諾料を求められるという事態を防止する効果が期待されます。このようなライフラインの設備設置権の明文化、新民法案二百十三条の二、二百十三条の三の趣旨について、期待される効果を発揮するには積極的な周知が必要であると考えます。この点について、法務省の考え、具体的な周知方法についてお伺いします。

○小出政府参考人 お答えいたします。

 現行法の下では、解釈上、他の土地に導管や導線等の設備を設置したり、他人が所有する設備を設置したりしなければ各種ライフラインを引き込むことができない土地の所有者には、他の土地にその引込みのための設備を設置等する権利があると考えられております。しかし、明文の規定がないため、実務上支障を来しているとの指摘がございます。

 そこで、御指摘のとおり、改正案では、現行法上の解釈を踏まえつつ、各種ライフラインを引き込むことができない土地の所有者には他の土地等にその引込みのための設備の設置等をする権利があることを明確化することとしております。

 この改正案は国民にとって身近な事項についてのルールを定めるものでございまして、その趣旨及び内容については、ライフラインの整備を行う事業者や地方公共団体も含め、幅広く周知をすることが重要であると認識しております。

 具体的な周知方法については今後検討してまいりますが、例えば説明会の開催やパンフレットの配布、また法務省、法務局のホームページを活用した広報など国民に直接周知する取組のほか、法律実務家やライフラインに関わる各種関係機関と連携して国民への周知を図る取組をしていくことも想定しております。

 いずれにしても、法務省としては、改正案が適切に施行されるよう効果的な周知活動を行ってまいる所存でございます。

○大口委員 動画の活用も考えてください。

 以上で終わります。ありがとうございました。

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