大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2006年10月25日

165-衆-法務委員会-4号 平成18年10月25日

○大口委員 公明党の大口善徳でございます。
本日から、八十年ぶりの信託法の全面改正案を審議することになりました。信託銀行等が取り扱う信託財産の総額は五百兆円を超え、信託の我が国の経済活動における重要性は極めて高く、また、障害者、高齢者、被扶養者の福祉のためにも有力なツールとなるものであります。今回の改正は信託制度の活用範囲を飛躍的に増大させるものであり、大変意義のあるものである、こう考えます。
今回提案されております信託法案あるいは整備法案等の目的は信託の多様な発展を促進することであり、その際に最も大切なのはユーザーの視点であると考えます。信託という制度を利用する者の立場から見て利用しやすく、魅力あるものとすることが、結局、信託を普及させる最善の方途ではないかと思うわけでございます。
信託法案では、このような観点からどのような改正を行おうとしているのか、法務大臣に見解をお伺いしたいと思います。

○長勢国務大臣 今委員お話しのとおり、信託法、八十年ぶりの改正ということになります。
信託という仕組みはそれほど普及しなかったんですけれども、近年に至りまして、いろいろな金融商品として活用されております。例えば貸付信託あるいは年金信託、証券投資信託というように、多くの形で利用が普及してまいりました。
さらに、新たな形態での信託というやり方を活用して資産流動化、財産を現金化するというやり方ですけれども、こういうことのための信託。あるいは、お話にもありましたように、障害者ですとかお年寄りの方々のためにこういうものを利用したいといったようなニーズがふえてまいりましたので、こういうことを受けて、信託銀行あるいは事業会社を初めとする経済界からは、もっと使いやすいものにしてほしいとか、もっと活用できるような仕組み、新たな信託制度を創設してもらいたいとか、高齢者や障害者等の生活を支援する、あるいは確保する、こういう目的での活用ができるようなものにしてもらいたいといったような指摘がなされてきておるところでございます。
今回の信託法案、これらのいろいろな要望というものを精査いたしまして、信託制度というものを、その利用者である委託者あるいは受益者、受託者の目から見て、より合理的で利用しやすいものにするということから改正をしようとするものでございます。
例えば、企業といいますか、商事的な分野におきましては、一つは、受託者と受益者の利益とが相反する行為の禁止について、今までは厳密に禁止をしてまいりましたが、一定の要件のもとでこれを緩和しないと使いにくい、もちろん厳密な要件はつくるわけですが、ということにするとか、あるいは受託者が第三者に信託事務の処理を委託する、管理をするときにみずからやらなくてもいいものもあるわけでありますので、そういう場合を拡大するとか、あるいは第三者の選任監督上の受託者の義務についても規定を整備する。
三番目にも、受益者の意思決定について、今までは全員一致という形になっていましたが、これを多数決によらないといろいろやりにくいことも出てきておりますので、多数決によることを許容することとしますとともに、受益者集会の手続等及び反対者の受益権取得請求権の規定などを整備する。
四番目として、受益権の流通性を強化するというために、受益証券を発行する受益証券発行信託を創設する。こういう形で流通性が強化をされる、現金化しやすいということになりますが、こういうふうに体制を整備する。
あるいは、受託者が信託財産のためにした行為によって生じた権利や信託事務の処理について生じた権利等についての債務を履行すべき責任を信託財産のみをもって負担する信託、いわゆる限定責任信託と言っておりますが、こういう制度を創設するとか、あるいは、今までは委託者と受託者は別ということになっていましたが、委託者が、自分がみずから受託者になるということによって行う自己信託という制度を新たに設ける。これは、特に障害者とか高齢者のために、自分の財産をきちんと使いたいということに活用しやすくなっておりますが、こういうようなことによって、今回、皆さんが利用しやすい、活用しやすい、また間違いのない制度に抜本的につくり直そうという趣旨のものでございます。

○大口委員 今、大臣から非常に丁寧な御説明がございました。信託といっても、実際上さまざまなものがあるわけです。投資家や企業がその資産を運用するといったこれまでのこと、あるいは資産の流動化を初めとした資金調達、あるいは受益権の証券化、こういうことのために信託を利用する、それから非営業的な信託、こういうものまでさまざまあるわけであります。このような信託のタイプの違いに応じて、例えば営業信託と非営業信託とでは、受託者の監督の必要性なども異なると思われるわけです。
信託の関係法律としては信託法、信託業法などがあるわけでございますけれども、両者はどのような関係にあって、信託法はどのような役割なのか、法務省の見解をお伺いしたいと思います。

○寺田政府参考人 今お話がございましたとおり、信託に関しましては、大きく信託法と信託業法という二つの法律がございます。これはともに大正十一年、一九二二年に制定されたものでございまして、今日までいわば並走してきているわけでございますが、理念的な関係から申しますと、まず信託法というのが民法の特別法としてございます。これは、当事者の権利義務関係を基本的に決めるということでございまして、それがたとえ事業に用いられるものであれ、あるいは高齢者の養護その他の民事的な色彩を持った目的に用いられるものであれ、いずれも適用になるものであります。したがって、監督する場面でも、現行の信託法ではかなり大幅に裁判所がこれを監督するということで、行政庁の関与は排除されております。ただし、公益目的の信託につきましては、別途、公益目的の信託という形で一番最後に信託法に規定が置かれているわけでございます。
これに対しまして信託業法は、事業としてこの信託を行う者について、その監督を行政的に行うということを基本としているわけでございまして、一定の権利義務が決まりましたとしても、その上でさらに、業者に対しましては、これを、より厳しい制約を課するというようなことが現に信託業法の中では幾つか見られるわけでございます。
今回も、信託法については相当、先ほど大臣の方から御説明申し上げましたように、いろいろなタイプの目的に応じました新たな法律関係というのが信託法にはできますけれども、逆に、それに沿ってこれを業として行う者についての制約を設けるということで信託業法にも新たな手当てがされている、こういう関係に立つわけでございます。

○大口委員 それでは、各項目についてお伺いしたいと思います。
まず、今回の信託法案では、受託者の義務に関して合理化を行うこととしていますが、この義務の合理化は、受託者のためではなく、委託者や受益者の利便や経済的利益を促進する、そういう改正でなければならない、こう思っております。
まず忠実義務についてでありますが、これについて、形式的には利益相反に当たる行為であっても、例えば信託契約に当該行為を許容する定めがある場合や受益者が承認を与えた場合には、例外的にそのような形式的利益相反行為を許容するとしています。しかし、信託がされれば受託者と受益者との間には信認関係が築かれるという信託の本質に照らすと、受益者の承認については、受益者が利益状況等を十分理解した上で承認することを要求すべきである、こう考えます。この点が一点。
それと、善管注意義務についてでありますが、受託者は善良な管理者の注意をもって信託事務を処理しなければならないという現行の趣旨は重要でありますが、他方で、私的自治の観点から、その注意義務の水準、内容を個別的に変更可能とすることは私も必要であると思います。一方で、このような注意義務の軽減が全面的に許容されるべきではないようにも思われるところでございます。
そういう点で、今、忠実義務そして善管注意義務について、信託法においてこれらの点についてどのように整備されているのか、お伺いしたいと思います。

○水野副大臣 先生御指摘のとおり、今回の信託法案におきましては、受託者の忠実義務の内容を見直しておりまして、受益者の承認を得ることによって受託者がいわゆる利益相反行為を行うことも可能になっております。
ただ、もっとも、単に受益者から承認を受ければよいというふうにしたのでは、受益者が承認するか否かの判断をするのに必要な情報を知らせることのないままに受託者がその判断を受益者に迫るといったような、そういう懸念があり得るというのも、委員のおっしゃられるとおりだというふうに思います。
そうやって十分な情報を与えないままというのでは、受益者のために忠実に信託事務を遂行すべきだという受託者の地位にもとるものですから、今回の信託法案では、単に承認を得ればいいというのではなくて、法文上も「重要な事実を開示して」という文言を入れておりますし、いわば、医療なんかの言葉で使われる言葉でいえばインフォームド・コンセントとか、そういうものがあって初めて、そういうものが開示されて受益者の承認を得る必要があるというものとしております。
あと、後段の方で先生が御指摘された善管注意義務の方の話でございますけれども、このお話に関しても、要するに、何でもかんでも注意義務を引き下げればいいというものじゃないんじゃないかという御指摘だと思うんですけれども、この部分に関しても、信託というのは民事的な法律行為ですので、私的自治の原則が妥当いたします。したがって、その内容や程度を加重あるいは軽減することが許されるのは原則ではございますけれども、他方で、受益者の保護が必要な信託についてまで義務の軽減を認めると弊害も予想されることもございます。
このような観点から、今回の信託法案では、信託行為の定めによって受託者の善管注意義務の程度を加重あるいは軽減することを原則としては認めつつも、例外として、受益者が多数の投資家に転々流通することを予定したような受益証券発行信託、こうしたものについては義務の軽減を一切許さないというようなことにしてございます。

○大口委員 また、受益者の権利行使についてお伺いしたいと思うんですが、信託は受益者に利益を帰属させるために使われる制度であります。信託法案では、この受益者の権利は十分か、特に、受益者が受託者を監督するための各種の権利が適切に確保され、かつ適切に行使できるようになっているかが重要であると思います。
また、受託者の義務を合理化するのであれば、さらにこのバランスをとるべく受益者の権利行使を充実させるべきと思われますが、このような観点から、今回の改正法案ではどのような規定を設けているのか、お伺いしたいと思います。

○奥野大臣政務官 新しい信託法案では、信託について、当事者の私的な自治にゆだねられるような範囲が非常に多くなっているわけでありますが、一方でやはり、御指摘のとおり、受益者のための財産管理制度としての信頼性を失ってはならぬ、そういうことを考えるわけでありまして、受益者の権利行使をより実効的、機動的なものにするための措置を講じております。
具体的には三つ新しく制定しているわけでありますが、法令または信託行為の定めに違反するような行為があった場合、受益者がこれを差しとめられる権利をつくっていること。また二つ目には、複数の受益者による意思決定に関して特段の措置を講じようということで、受益者が多数あった場合に、機動的な意思決定を可能にするため、信託行為の定めを置くことによって受益者が多数決をもって意思決定をすることができるんだ、こういうのが二つ目であります。それから三つ目が、受益者が未成年者や高齢者である場合、なかなかチェックができない、そういう方の場合に、みずからが受託者を十分に監視することができない場合には、受益者にかわって受託者を監視、監督する信託監督人というものを弁護士とか公認会計士の中から選べるというような制度を新たにつくっているわけであります。

○大口委員 次に、新たな類型の信託についてお伺いしたいと思います。
自己信託あるいは信託宣言ということについて、今回の信託法案では委託者がみずから受託者となる自己信託を制度化しているわけです。その利点として、委託者兼受託者が破産しても、信託財産は債権者から隔離されるということがあります。その効果として、自己の破産リスクを気にすることなく親が子の養育費を確保したり障害者の生活をサポートできる、また、信託財産から得られる将来の利益、例えばビルの賃貸料、特許使用料等を証券化して販売することによって資金調達が行えることになります。
その一方で、問題点としては、債権者の財産隠匿のために利用されるのではないかというのが一点。そして、その悪用を防ぐために、今回の改正法案では、公正証書作成の義務づけや詐害信託の取り消し、あるいは信託監督人等の第三者による委託者兼受託者の監視といった対策が施されていますが、これがどれほど実効性があるのか。そして、この法案の附則の二項の自己信託に関する一年の経過措置の趣旨についてどうなのか。これらの諸点について、法務省のお考えをお伺いしたいと思います。

○寺田政府参考人 今御指摘のありました自己信託、これは、信託を設定する方法といたしまして一番多く用いられるのは当事者の合意、契約によるものでありますけれども、そのほかに、遺言とこの信託宣言が今回新たに認められるということで、従来の二つに加えましてさらに一つ、三つ方法ができた。その最後の三つ目の方法によるものであります。
これにつきましては、新しい方法ではありますが、信託の先進国であります英米法でもこういうものは認められておりますし、理念的にまず申し上げますと、信託といいますと、私どもはどうしても委託者が受託者に財産を譲渡するということを考えるわけでございますけれども、信託全体の理念から申しますと、委託者というものの比重というのは、信託が行われた後はそれほど大きいものではない。つまり、どちらかといいますと、委託者はもう財産はそこで処分してしまうのに近い形になるわけで、後は受託者と受益者の関係が非常に重要になるわけであります。そういう意味では、この自己信託というのも決して信託の制度として違和感のある制度ではないということをまず申し上げたいと思います。
次に、ただ、これはどうしても、財産隠し等に利用されるのではないかという声が、この点について非常に、利用しやすくなって結構な信託法の改正だけれども、ここはどうも問題があるのではないかという御指摘が非常にこれまでも見られたわけであります。
ただ、財産隠しというのも、なかなか考え方が難しいところでございます。まず、普通の意味での財産隠しということになりますと、これはいわば委託者兼受託者になるわけでありますけれども、その人の手元に財産がそのまま、形式的にはその人の所有のまま置かれるわけでありますから、別に、財産を隠すのであればもっと巧妙な方法というのは幾らでもあるわけであります。しかし、おっしゃる趣旨は、今大口委員がおっしゃったように、この場合の財産隠しの批判の意味でございますが、これは多分、債権者を害する、つまり、あたかも外形的には前と同じような所有形態にありながら、行ってみたらそれはもう受益者のための拘束がかかっている、こういう状態になる、そのこと自体を御批判になっておられるんだと思います。
これにつきましても、これを審議いたしました法制審議会での法律専門家の御議論では三つほど意見がございまして、一つは、これはやはり問題だ、同じように債権者を害するおそれがあるという御意見。しかし、これは、第三者に譲渡される、受益者の拘束がかかるという意味では普通の財産譲渡とちっとも変わらない、したがって特に普通の詐害行為の取り消し以上に債権者の保護を考える必要はないのではないかという御意見。
三つ目に、理屈の上ではそのとおりではあるけれども、ただ、現実問題として、やはり少し気持ちが悪いと。特に、同じような所有形態になっているわけですから、もとの委託者の債権者にとっては、もう少し何らかの救済手段が与えられてしかるべきだ、こういう三つの意見があったわけでございまして、この法案では、三つ目の意見に最後収れんしたということになるわけでございます。
すなわち、自己信託を設定する場合に、それを明らかにさせるために公正証書によることを要求いたしておりますけれども、それだけでなく、裁判所によって詐害行為の取り消しがされるという一般原則に対しまして、裁判所によって詐害行為の取り消しがされるという公式の手続を踏まなくても、この場合には、すなわち自己信託の設定の場合には、委託者の債権者が信託財産に対して詐害行為の要件があれば直接強制執行ができるという簡便な権利の救済策というのを設けているわけでございます。二十三条の第二項に当たるわけであります。
したがいまして、そのおそれというのは、事実上の問題といたしましては、確かに気持ちが悪いというところはございますが、救済策としては相当思い切ったものがとられているということは言えようと思います。
それからさらに、よほどよくない形で財産譲渡が行われた、これはどうも許しがたい形で自己信託が行われているといった場合には、裁判所が法務大臣あるいは委託者の債権者等の利害関係人の申し立てによって信託を終了させてしまうというような道もあるわけでございます。
このようなことから、財産隠しに利用されるというのも、基本的にはこの手当てはされていると私どもは考えて提出をさせていただいているわけでございます。
二番目に、信託の監督人の選任という手段がございます。
これは、先ほども出ましたが、受益者が十分な決定ができるような状況にない場合に、これにかわって受益者の権利を行使する、こういう立場にある者として新たに設けたわけでございますけれども、この中には、裁判所に対する受託者の解任の申し立て権、それから、権限違反行為を受託者がした場合に、その取り消しをする権限、日ごろから信託事務の処理についての報告を求める権利、帳簿の閲覧権等、非常に広範な権限が認められているわけでございます。最後は任務違反があれば差しとめをする権利まであるわけでありまして、監督人による監督というのも一つの大きな保護の手段だということは言えようかと思います。
最後に、では、なぜ自己信託については施行を通常の施行日よりさらに一年おくらせたのかと。
この点は、信託法案の附則の第二項によるところでありますけれども、今申しましたようないろいろな御批判もありますが、とりわけ自己信託については、やはり税金がどういうふうにかかるのか、あるいは会計原則の適用はどういうふうになるのかというようなことが、なかなか難しいところが確かにあるわけでございます。したがいまして、普通の施行よりもさらにそれについてはより慎重な検討が必要だということで、一年をさらに延期しているわけでございます。
もちろん、新しい制度でございますので、周知徹底を図る必要があるわけでございます。そういう、税金がどうなるのか、あるいは会計はどうなのかということを含めて、つけ加わりました一年の間に十分な措置をとりたい、このように考えているところでございます。

○大口委員 今回の改正法案においては、事業信託というのがあります。事業を信託することが可能になったわけです。その効果として、企業は事業部門を丸ごと信託できる、企業本体の財務と切り離されるので、リスクが大きい事業に取り組みやすくなる、また、不振事業再生のツールとして利用できる。例えば、総合電機メーカーが、液晶TVの生産部門をその分野に強い他のメーカーに部門ごと信託することが可能になる。
その一方で、問題点として、自己信託を組み合わせて利用された場合、投資家の保護を図ることができないのではないか。例えば、企業は赤字の事業を信託宣言を使って切り離し、その事業の受益権を証券化し販売するケースが想定されるが、投資家の保護はどうか。また同様に、自己信託と併用された場合、コーポレートガバナンスを回避する手段になりかねないとの懸念があるが、どうか。また、事業信託によって会計処理上はどうなるのか、自己信託併用の場合どうなるのか、こういうことについて法務省、金融庁の見解をお伺いしたいと思います。

○寺田政府参考人 まず、私の方から、前段の御質問についてお答えをさせていただきます。
事業信託とおっしゃられたわけでございますけれども、今回よく、この改正案の中には事業信託が新たに認められるようになった、そういう内容だ、こうおっしゃるわけであります。しかし、事業信託というものを新たな類型として認めたものではございません。
ただ、従前も、財産を移転することに伴って、債務を引き受けるというような形で事業全体を信託に付することができることになるのかどうかという議論がございまして、それは一般的にはできるのではないかと解する方が多かったわけでございますけれども、その点がはっきりしないところがございました。そこで、今回は、資産の移転に伴いまして、債務もあわせて引き受けることもできるということを前文で規定したために、結果的に事業を信託にできるのではないか、こういう解釈がされているのだと思います。それは、今私が申し上げた限度では決して間違いではないところでございます。
ところで、今の、事業の一部を自己信託するということによって、いろいろな弊害があるのではないかということでございます。
しかしながら、まず、そもそも、自己信託をするために事業を譲渡することにおいてどういう手続が必要かということになりますと、事業の重要な一部を信託の対象にするということになりますと、これは株主総会の特別決議が必要になるわけであります。これは会社法自体による規律ということになります。また、同じく、事業の重要な一部に該当しなくても、その財産そのものが非常に重要なもの、例えば大きな不動産だというようなことになりますと、それは取締役会の決議が必要になるわけでございまして、そういう意味で、会社の内部でのコーポレートガバナンスは会社法自体によって保たれていると言ってもいいかと思います。
問題は、その後、今度、自己信託がされた後に一体きちっと事業に対する監督が行われるかどうかでありますけれども、その点は、今度は逆に、自己信託における受託者の義務というのは受益者の間で当然生じるわけでありまして、これは、善管注意義務、忠実義務等ございます。これはむしろ通常の信託の監督、権利関係に移行するわけでございまして、そこではまたそれなりの権限の行使がされるわけでありますから、この点でもまた問題はないというように考えております。
したがいまして、事業譲渡についてはいろいろ慎重に考えなきゃならないことはもちろんあるわけでございますけれども、法律上の手当てはされているというように私どもは考えております。

○渡辺(喜)副大臣 まず、投資家保護の問題でございますが、委員御指摘のように、会社が赤字の事業部門を自己信託を行った場合、どうやって投資家保護を図るのかという問題でございますが、自己信託におきましても、通常信託と同様、信託受益者が投資家となるわけでございます。信託法に従ってBS、PLの帳簿を作成し、これを受益者が閲覧をすること、また、信託業法によりまして信託財産状況報告書等を受益者に提示すること、こういったことから受益者は保護されると考えております。
したがって、会社が赤字の事業部門について自己信託を行うような場合でも、こうしたことから投資家保護は図られるものと考えております。
また、信託受益権を販売する場合でございますが、この受益権の内容に関する説明義務、書面交付義務など、投資家保護の観点から必要な信託業法上の規制が適用されることになります。
蛇足でございますが、金融商品取引法が成立をしております。今回の法整備と同日の施行が想定されます金融商品取引法では、受益権を有価証券とみなし、今はそうなっていないわけでございますが、その販売に係る業務を金融商品取引業として規制対象に取り込むこととしております。
また、会計基準でございますが、これは、会社が財産を信託した場合、信託受益権を第三者に売却をしないままみずから保有するか、あるいは第三者に売却をした場合どうなるか。当然のことでございますが、みずから保有する場合はオフバランス化は認められない、第三者に売却をした場合にはオフバランス化が認められるということでございまして、このことは、事業信託や自己信託についても同様でございます。
いずれにしましても、会計上の取り扱いの明確化につきましては、金融庁として、ASBJ、企業会計基準委員会の方に、会計基準の設定主体でございますので、事業信託や自己信託を含む信託に関する会計処理基準の明確化を要請しているところであります。昨日でございますが、信託に関する会計処理基準について今後検討を進めていくことをASBJの方で決定をしたと承知をいたしております。

○大口委員 このほか、限定責任信託あるいは目的信託等の類型もございます。
次に、平成十六年十一月十二日の衆議院の財務金融委員会で、信託業法案に対する附帯決議に、「政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。」として、「次期法改正に際しては、来るべき超高齢社会をより暮らしやすい社会とするため、高齢者や障害者の生活を支援する福祉型の信託等を含め、幅広く検討を行うこと。」とうたわれています。
高齢者や障害者等の財産管理について信託の仕組みを利用することを福祉型信託と呼んでおりますが、この福祉型信託の担い手としては、NPO、あるいは成年後見制度で大きな役割を担っています弁護士や司法書士が想定されるところであります。
ところで、信託法との関係では特別法に当たる信託業法において、営業として信託の引き受けを行えば、それは信託業として同法の規制の対象となり、内閣総理大臣の免許を受けることが求められる等の規制を受けることになります。この信託業法の規制が福祉型信託の利用促進、発展を妨げる側面があるのではないかとの懸念を私は持っております。信託業法の適用対象となることによって、参入資格は株式会社に限定され、また金融庁の監督下に置かれることになるわけです。果たして、NPOや弁護士、司法書士が福祉型信託の担い手となることができるのか、NPOや弁護士等が個々に行う福祉信託の設定が、信託業法で言うところの「信託の引受けを行う営業」に該当するのかしないのか、問題となっております。
そこで、四点まとめてお伺いします。
一つは、信託業法上の営業信託の概念はどのようなものか。
そして二番目に、信託業法上の受託者となれるのは株式会社に限定されると聞いておりますが、弁護士、司法書士あるいはNPO、弁護士法人、司法書士法人が信託を業として引き受けることができないということなのか。
そういう場合に、例えば福祉目的の信託について、NPOや弁護士や司法書士が受託者となるのはどのような場合許されるのか。
そして、福祉型信託をNPOや弁護士、司法書士が受託することを認め福祉型信託の担い手とすることは受益者の利益にもなるわけでございまして、高齢社会あるいは障害者の生活をサポートするといった問題を考えると、信託業法によるよりも、規制の対象となる営業信託の範囲や受託者となることの範囲についても検討する必要はあるのではないか。この点についてお伺いしたいと思います。

○渡辺(喜)副大臣 まず、信託業法上の営業信託の概念でございますが、営利の目的を持って反復継続して行うことと理解されております。その場合の営利の目的とは、少なくとも収支相補うことが予定されていると承知いたしております。
次に、受託者となれるのは株式会社だけじゃないか、弁護士さんや司法書士さんはどうなんだということでございますが、確かに、現行信託業法上は株式会社以外の者が信託会社となることは認められておりません。
福祉目的の信託について、弁護士、司法書士が信託の引き受けを行うのはどのような場合に許されるかということでございますが、信託業法上の取り扱いは、株式会社を設立した上で、通常の信託と同様にこうした信託の引き受けを行うことは可能でございます。
でも、それだけでは不十分じゃないか、こういう問題認識かと存じます。
平成十六年の十一月に行われました前回の信託業法の改正の際の衆議院、参議院財務金融委員会の附帯決議がございます。その附帯決議の中で検討事項の一つとして御指摘をいただいております。三年以内の検討の中で、今御指摘になられました高齢者や障害者の福祉のため、社会的信用を有する弁護士、司法書士などが福祉信託の引き受けを行うことができるようにすべきではないかという点についても必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

○大口委員 大変前向きな答弁をいただき、ありがとうございました。
あと、NPOについてちょっと言及していただきたいと思います。

○渡辺(喜)副大臣 NPOや公益法人についても認めるべきとの指摘がございまして、必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

○大口委員 次に、マンションと信託制度についてお伺いしたいと思います。
信託法の改正案に盛り込まれている自己信託をマンション管理組合の資金管理に活用したり、あるいはマンション一棟丸ごと信託財産とするなど、分譲マンション管理の分野において信託の活用が可能ではないか、こう考えられます。それぞれのメリットなども含めて、国土交通省としての考えをお伺いしたい。
それから、分譲マンションにおいて、各区分所有権を一の受託者に信託した場合、当該マンションの所有者は受託者のみとなります。一方、当該マンションの真の所有者は受益者たる居住者であり、その態様は明らかに区分所有物に類似している、このような信託建物において区分所有権は適用されないと解釈してよいのか。それと、居住用の分譲マンションの区分所有権を信託した場合において、受益者たる居住者が取得する信託受益権をマンション一室及び共有部分の利用権と解釈することは可能なのか、これについては法務省にお伺いしたいと思います。

○和泉政府参考人 お答え申し上げます。
まず、分譲マンション管理組合の財産でございます管理費や修繕積立金等の金銭を保全するために、信託の持つ倒産隔離機能を活用することが考えられるわけでございます。
例えば、管理費等が管理業者の口座へ一時管理されたとき、その間に管理業者が倒産した場合といったトラブルがあるわけでございますが、組合財産が信託財産とされておれば、きちっと保全されるということになるわけでございます。このような手法は、現行の信託法においても活用可能でございますが、マンション管理適正化法においては、管理業者による組合財産の管理について信託を想定していないといったことがございますので、現在、関連業界とも協力して検討を開始しているところでございます。また、自己信託が解禁されれば、信託コストの低減、あるいは手続の簡素化が図られ、利便性が向上するものと考えております。
次に、御指摘の分譲マンションの共有部分と専有部分を丸ごと信託するということが考えられます。分譲マンションの居住者の高齢化、あるいは分譲マンションの賃貸化が進む中で、管理組合がみずからではマンションの適切な維持管理のために十分な機能を果たせないということも想定されるわけでございまして、あらかじめマンションのすべての区分所有権及び共有部分の所有権を一の受託者に信託しておけば、受託者責任に基づきまして、マンションの適切な維持管理が図られるものと期待されます。
いずれにしましても、今や国民の約一割が居住する分譲マンションについて、長期にわたって適切に維持管理していくために、信託の活用を含めてどのような手法が一番適切か、しっかりと検討してまいりたいと考えております。

○寺田政府参考人 今おっしゃいましたようなマンションの区分所有権、敷地利用権の全体を一つの信託会社に信託するということになりますと、あたかも区分所有権が全体で一つの所有者になってしまいますので、区分所有権でなくなってしまうという御疑念が生ずるかもわかりませんが、区分所有法上は、そういうことであっても区分所有関係に影響を及ぼさないということでございます。
また、おっしゃるような形での信託が行われた場合の受益権というのは、これは実際の信託を見てみないとわかりませんが、概念的に申し上げますと、信託財産の利用権、信託契約終了後の区分所有権、敷地利用権の受領権、こういったものが受益権とみなされるのではないかなというように考えます。

○大口委員 以上で終わります。ありがとうございました。

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