大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2006年10月31日

165-衆-法務委員会-6号 平成18年10月31日

○大口委員 公明党の大口でございます。
きょうは、能見先生、小野先生、橋上先生、新井先生、本当に貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。全員にお伺いしたいところではございますけれども、時間の関係で一部の方にお話をお伺いさせていただきたい、こういうふうに考えております。
一つは、今、橋上先生の方から、自己信託、事業信託における会計上、開示上、監督上の懸念点、こういうものが提示されたわけでございます。これにつきましては、十月二十四日、ASBJ、企業会計基準委員会、ここで会計基準の明確化等をやっていくということでございますので、その御懸念も十分配慮した企業会計基準がこれから整備されていくんじゃないかな、そう思います。
そういう点で、一年半の期間、そしてその後、自己信託については一年経過措置があるわけであります。施行から一年は自己信託についてはまだ経過措置がある。そういう中で、これはしっかりと整備をしていく分野ではないかな、こういうふうに思っております。
そういう中で、能見先生にお伺いしたいと思います。
能見先生、自己信託について、だれが最も受託者としてふさわしいか、これを考えるとき自己信託というのは非常に大事だ、そしてそれが、要するに高齢者、障害者という福祉型、そしてまた事業の信託というものを組み合わせて活用できるんだ、こういうお話でございました。
そういう点で、この自己信託についての意義、これについては先送りをすべきではないかという新井先生のお話もあったわけでございますけれども、この有用性、意義、やはりこれは先送りすべきではない、こういう御見解を賜りたいと思います。
それと、目的信託につきまして、今公益法人改革が進められておりまして、法律も通ったわけでありますけれども、民間非営利の分野について今回大きな規制緩和もなされたわけでございます。そういう点で、公益法人改革と並んで目的信託をどうとらえていくか、そしてその有用性、またこれも先送りすべきではないということのお考えをお伺いしたいと思います。

○能見参考人 最初に自己信託についてでございますが、先ほど、自己信託が主として意義を持つであろう二つの場面をお話しいたしました。今おまとめいただきましたように、一つは、家族内あるいは親族内の信託というんでしょうか、身近の信託で、かつ、その受益者になる者について、どういう形で財産を運用したらいいかを一番よく知っている者、これは恐らく委託者ですが、これが財産管理をするというのが極めて自然である、また有用であるというタイプの自己信託でございます。
それからまた、さっきの事業の場合も、ある意味で共通する、委託者が一番よく知っている者を受託者にする、これがベースでございます。
私は、こういう自己信託というのは、確かにいろいろ懸念があるということはわかりますけれども、やはり早くこういう自己信託を皆様に使っていただいて、そして、その中からもし例えば会計上の問題点などがあれば、こういうものは会計の方で対応していただくというのがよろしいのではないかというふうに思います。
一点だけちょっとつけ加えさせていただきますと、この自己信託において、先ほど申し上げましたけれども、いつ自己信託が成立したかというのを明確にするということがまず第一である。これは、公正証書であるとか、あるいは受益者が委託者とは別にいるときに、その受益者に対する通知、確定日付のある通知などでもって明確にするというのが一つでございます。
もう一つは、成立は幾ら明確でも、実際に移転している財産、帳簿上移転したとされる財産に見合ったものがないと適当じゃない。これはまた会計の問題かもしれませんが、その点はきちんと、ちゃんと財産が移転している、帳簿に見合ったものが移転しているということを明確にする手段を講じていただければと思います。
目的信託。これは、私は、目的信託にはいろいろな利用がありますけれども、一つは、やはり公益信託のいわば周辺的な非営利の領域というものをカバーするものが目的信託であるというふうに理解しております。ちょうど法人の場合も同じで、公益法人というのは、恐らく概念は幾ら広げても余り広げられないのですが、その周辺には非営利の民間の活動の領域がたくさんありまして、例えば、会社が従業員のため、そういう意味で、自分の会社の従業員だけですから公益とはちょっと言いにくいと思いますが、そういう従業員のための運動施設だとか、施設を信託でもって管理するというのが一つの使い方でございます。
一般財団法人も非営利に広げられましたが、それと同じような活用がされるべきで、早く財団法人と信託がいわば競争して、その中からいいものが生まれてくることが望ましいのではないかと思います。

○大口委員 次に小野先生にお伺いしたいと思いますが、小野先生も論文で書いておられますけれども、福祉信託における弁護士及び弁護士会の取り組みについてということで、福祉信託の担い手として弁護士というものを積極的に活用すべきではないか、司法改革の理念からいってもそうすべきではないか、こういうお話がございました。そして、この御見解の中に、信託業法の適用があるのかないのか、非常に重大な論点で、私も委員会でもこれを質問させていただいたわけでございます。
その中で、営業信託というこの営業ということについて、信託の引き受けを業とする、こういうことでございまして、その中に、営利ということで、収支相償うという部分が、弁護士が報酬を得てやっている、本来の弁護士の業務に随伴する業務として信託というものの手法が必要だ、こういう場合についても、信託業法の営利目的、そして反復継続というものに該当するということになりますと、信託業法の適用がある。そうなってきますと、株式会社というもの、それから許可、そしてまた金融庁の監督、こういうことになりまして、弁護士が福祉信託における担い手として活用できないことになってしまう。
こういうことは、私どもにとっても、せっかく民事信託というものを拡大していこう、国民の福祉、超高齢社会において、信託業法の衆参の附帯決議にもありましたように、この部分を拡大していくという趣旨からすると、非常に懸念を持っております。
NPOでありますとか公益法人でありますとかあるいは弁護士等の専門家、こういう方々がやはり活躍していただかなきゃいけない、こういう点で先生と全く同意見でございますが、この信託業法の適用、非適用のことについて、これは法解釈論としても適用に当たらないんだ、適用されないんだというようなことがありましたら、あるいは、信託業法はやはり改正する中でこれを考えていくべきだということであれば、どういうふうに信託業法の改正をしていくべきなのかということをお伺いしたいと思います。
そして、能見先生にも、受託者の拡大ということをお述べになっておりますけれども、この関連でお話をお伺いしたいと思います。

○小野参考人 貴重な御意見、ありがとうございます。
まさしく、弁護士会といたしましてもこの点をずっと議論しておりまして、やはり制度的に明確にしていただきたいという意味におきまして、信託業法上明らかにしていただきたい、かように思います。
それは、信託業という定義全部を変えるという意味ではございませんでして、本来信託業が前提としているいわゆる営業信託とは全然異なる類型の弁護士による受託行為がたまたまその単一な概念に当てはまってしまうという問題でございますから、その辺につきましては例外的措置ということで明確にしていただきたいと思いますし、なおかつ、法制上、例外ということで規定されますと、時折ある論点でございますが、それまでは違法だったんじゃないか、こういうふうに言う方もおりますけれども、そうではなくて、現行においても解釈論上有効であって、その有効性を法文上明確にし、それによって福祉信託を推進するのである、こういうような視点でございます。何とぞよろしくお願いいたします。
弁護士以外の、例えばNPO法人等と先生おっしゃいましたけれども、確かに、善良な受託者となるべき方というのは他にいるかもしれません。弁護士がやるというのは、決して弁護士または弁護士会におけるみずからの領域の問題ではございませんでして、法律紛争が非常に秘められている問題であるというところにございます。
したがいまして、その法的紛争というものが全くないような民事信託であれば他の担い手ということも考えていいかと思いますけれども、弁護士の場合は、御承知いただいていますように、懲戒制度という極めて重たい制度がございまして、ましてや、依頼者の財産を預かるということでございますから、弁護士会といたしましてもその点につきましては極めて慎重に取り扱う、私どもは慎重に対応を考えるということでございまして、弁護士以外までの拡大ということになりますと、その点につきましてどういう制度的なたてつけが必要かどうかということが、また違う議論になると思います。

○能見参考人 では、受託者の拡大という観点から簡単に意見を述べさせていただきます。
私は、公益信託の領域というのは非常に重要だと思っているわけですが、実は、公益信託、いろいろな理由はあるんですけれども、現在、信託銀行は必ずしも公益信託の受託に積極的ではございません。そういう意味では、公益信託というのは先細りになっているという認識をしております。
これを打開するにはいろいろな方法がありますけれども、一つ重要なのは、やはり公益信託の担い手というものを広げるということでして、これは公益法人ですとかいろいろなところが考えられると思いますが、とりあえず今すぐ思いつくのは、公益法人などが公益信託を受託するという道を開いたらどうかというふうに思います。
その際に問題になるのはやはり業法の関係で、公益信託を反復的に受託するということがもしありますと、その受託者は業としてこれをやったことになるのかどうかということなんですが、これは私の個人的な意見ですけれども、業というのは、ただ反復ではなくて、やはり収支相伴うというんでしょうか、やはりそれによって利益を上げるというのが業であって、公益信託をもし公益法人が受託する場合には、それで利益を上げるというわけでは恐らくないので、これは業としてというふうに見ない方がいいのではないかというふうに思います。
それからもう一つ、仮に業としてということになりますと、信託業法が全般的にかぶってくることになると思いますが、果たして公益信託の領域にすべてかぶるのがいいのかどうか。信託業法というのは本来、受益者保護のためのものだと思いますが、公益信託も広い意味では受益者がおりますけれども、投資ファンドなどの投資信託の受益者などとは違った社会一般が受益者というもので、これを信託業法で規制しようとするのは本来ちょっと理念が違う。公益信託の領域は、もし何か必要であれば、やはり別な法制が望ましいのではないかというふうに思います。

○大口委員 済みません。もう一つ、弁護士が福祉信託をやることについてもお聞かせください。

○能見参考人 この点につきましては、小野参考人と私は基本的に同じ意見を持っております。
福祉信託というのはもちろん公正に行われなくてはいけないというのは第一でございますが、同時に、やはり高齢者などが関与しておりますので、恐らく非常に紛争も多いのではないか。そういう中で、弁護士が福祉信託を受託できるということは、その紛争処理も同時に解決できるという能力を持っておりますので、極めて適切な受託者ではないかというふうに思います。

○大口委員 あと、投資家の保護につきまして、私も委員会で質問させていただいたんですが、この点につきまして、小野参考人からちょっと御意見をいただきたいと思います。

○小野参考人 先ほどちょっと時間の関係で割愛させていただいた点でございますが、投資家保護につきましては、これは受益権の販売ということが伴います。そういたしますと、信託法だけではなくて、信託業法、それから昨今成立いたしました金融商品取引法におきまして、信託受益権、このすべてがみなし有価証券ということで指定されておりまして、金融商品取引法上の投資家保護が図られるというような制度的なたてつけとなっております。
したがいまして、信託受益権になったからといって、それが問題であるという議論は全く観念しがたいといいますか、ある意味では法制度がより整う、まして、今般の信託法の改正によりまして、信託受託者の義務ということがより明確化されまして、また受益者の権利ということもより明確化される、とりわけ補償請求権というものもなくなるということですね。今回の信託法改正というものは、投資家保護にとって極めて資するものと考えております。

○大口委員 まだまだお伺いしたいことがたくさんあったわけでございますけれども、時間が来ましたので、これで終わります。本当にきょうはありがとうございました。

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