大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2007年4月27日

166-衆-法務委員会-14号 平成19年04月27日

○大口委員 公明党の大口でございます。
きょうは、瀬川先生、森本先生、海渡先生、近藤先生、四人の先生方、貴重なお時間を賜って、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。時間も十五分ということでございますので、早速質問をさせていただきたいと思います。
まず、瀬川参考人でございます。
更生保護というのが社会内の治安のとりでだ、こういうお話もいただきました。今回、再犯の防止ということが明記されたわけでありますけれども、やはり改善更生と再犯の防止というのをバランスよく考えていかなきゃいけない、私も本当にそのとおりだ、こういうふうに思っております。有識者会議の報告書、私もその方向でこれからこの更生保護というものを改革していかなきゃいけない、そう思います。
その中で、先生から見られて、この有識者会議におけるものと比較して、今回の法案についてどう思われるか。私は、方向性としては賛成ということで評価していただいたと思うんですが、やはりそれが実際に機能するか、この更生保護が機能する更生保護になるのか、ここが一番大事なことだと思うんですね。その点を含めてお話をいただきたいと思います。

○瀬川参考人 大変重要な問題、御質問だと思います。
私は、有識者会議の方向でこの法案がつくられているということはそのとおりだというふうに考えておりますけれども、先ほど言いましたように、完全にパーフェクトかというとそうではございませんし、また、いろいろ重要な問題が残っているというふうに考えております。
一番大きな問題で、私が先ほど言わなかった問題が一つある。それは、海渡参考人が言われましたけれども、仮釈放の問題でありまして、この点は今回の法案の中にはそれほど盛り込まれていないというふうにおっしゃっていました。これは、刑法改正に絡むところがあります。刑法に仮釈放の規定がありますので、そこで申請権があるとかないとかいうことは議論されるべき問題だと思いまして、私は先ほど余り申し上げませんでした。ただ、仮釈放の手続についてはかなり公正な手続にする必要があるというふうに考えております。
委員会の人選もそうでありますし、それからもう一つは、仮釈放というのは受刑者にとっては最大の関心事でありますので、その点が不許可になった場合に、理由をきっちり受刑者に伝えるとか、そういう努力、あるいは仮釈放について、改善更生をうたっているわけですから、本人の自助努力といいますか、どうしたら自分は仮釈放になれるのかということを努力目標という形で伝える、そういう感じの仮釈放の手続が組まれたらどうかというふうに思います。
刑法改正に絡みますけれども、この法案でできるところは、仮釈放の公正化ということをぜひやっていただきたいというふうに考えております。この点は、有識者会議ではかなり盛り込みましたし、ぜひお願いしたいところでございます。
それからもう一つは、監獄法の改正と比較して、個人的な意見ですけれども、これは第三者評価という形で有識者会議の報告に書いてありますけれども、監獄法では視察委員会というのが設けられたわけでありますけれども、これが完全に機能していると思いますし、また、昔、代用監獄と言われた問題についても、留置施設についても視察委員会が設けられたということは極めて歴史的な転換であった。我が国の刑事司法にとって、これは透明化ということが出されましたけれども、透明化という点は極めて大きな変革点だったというふうに思うんですね。
私は、社会内処遇というのは更生保護の中でも透明化というのがもっと必要じゃないかというふうに考えております。したがって、例えば、先ほど言いました仮釈放についても、どんどん基準を明確化して、国民に知らしむべきですし、それから受刑者にもちゃんと伝えるべきだというふうに考えておりますし、また、保護観察の運用とかということに関しましても透明化を図るべきだというふうに考えています。
つまり、ありていに言えば、更生保護の視察委員会をつくってもいいぐらいの問題じゃないかというふうに考えております。この点は非常に費用がかかるといいますか、特に最近では一つの組織をつくるというのは大変大きな問題ではあるんですけれども、そこは工夫次第で幾らでもできるんじゃないかというふうに考えておりまして、そういう社会内で行われていることを社会内の人が知らないというのはおかしいわけですから、社会にいる人が社会内処遇でやられていることを十分知り得るような体制をつくるべきだ。そういう点では、私は、言葉はともかくとしまして、更生保護の世界でも視察委員会というものは設けるべきだというふうに考えております。
そのほかたくさんありますけれども、時間がございませんので。

○大口委員 そこで、海渡参考人にお伺いしたいんです。
やはり、仮釈放というものを積極的に、適切に進めていくということが非常に大事だと思うんですね。できれば、仮釈放させて社会内処遇にスムーズに行くということが理想的です。もちろん、近藤参考人からはエリートだというお話もありましたけれども、本当に、そういう社会内処遇に向けて積極的に活用する、そのためにもいろいろ透明化していくことも必要だと思います。
そこで、すべての受刑者を仮釈放の対象に、こういうお話でございましたけれども、一方、それに対して国民の理解も必要だと思うんですね。要するに、仮釈放中、保護観察中に重大再犯をしてしまった、こういうこととの関係について国民の理解をどうやって得ていくのか、お伺いしたいと思います。

○海渡参考人 貴重な御質問、ありがとうございます。
仮釈放を態度のよい受刑者に対する恩典であるというふうに考えると、そういう恩典を与えられたのにもかかわらず、また再犯をしてしまったということで、社会的な非難が起きる形になると思うんですね。
先ほどの近藤さんの話と僕の話もつながるんですけれども、満期で突然出てきて何のサポートもない状態に置かれるというのは、これは最悪だと思うんですよね。いろいろな統計データなどを見ますと、満期出所で出て直後に再犯をしている人は非常に多いわけです。そこの部分を何とか減らせないか。
期間の問題はあると思いますけれども、ある程度の期間は必ず、やはり仮釈放して保護観察をつける。仮釈放というと恩典のように聞こえますけれども、保護観察期間を置くんだ、社会に戻るときには、その中間のステップで必ず保護観察があるんだということを社会に向かって説明すれば、そのことによってマスとしての再犯は必ず減ります。
もちろん、どんなに頑張っても仮釈放期間中の再犯はなくならないと思うんですね。しかし、そこは、僕は、政治家なりマスコミの皆さんもそうですけれども、重大再犯というのは確かに避けなければいけませんけれども、一般的な再犯というのはやはりデータで見るべきで、今までの再犯率がここまで下がった、したがって、積極的に仮釈放することは成功したんだというふうにやはりプレゼンしていく、そういうプレゼンをすることによって社会の理解を得ていく。
これが非常にうまくいっているのが、フィンランドなんですけれども、フィンランドでは、そういう社会内処遇を活用する、そのことについて国民の大きな信頼も得られているという状況の中で、受刑者の数が減ってきている、再犯も減ってきている、そういうよい循環が起きているというような報告を聞いております。
ですから、ぜひとも、仮釈放をふやすときに、国民に対してどう説明をするかといったことも、政府も当然必要なんですが、政治家の皆さんも考えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

○大口委員 森本参考人にお伺いします。
森本参考人のお話を聞いておりまして、本当に感動いたしましたし、大変な御苦労をされているな、出所者の方あるいは保護観察の少年を自分の身内、家族、そういう思いでなければこの仕事はできないんだ、そういうお話を聞きまして、なかなかまねのできることではないな、それを二十八年もやられたことに対して、大変敬意を表したいと思っております。
そういう中で、有識者会議におきましても、過度の負担を保護司さんに負わせている、ここはやはり、保護観察所、保護観察官のバックアップ体制をきちっとして、この負担を軽減させなきゃいけない。そして、自宅に招き入れたり、家族の理解も得なきゃいけません。特に都市の場合は、マンション、そしてオートロックで、マンションの管理組合からクレームがつくというようなこともあるわけですね。
そういうことで、大変な困難の中でやられておるわけでありますけれども、この負担の軽減、そして、今、保護観察所、また保護観察官も、できるだけ保護観察官がバックアップできるようにということで改善はしておると思うんですが、まだまだではないかなと思っております。そのあたりについてお伺いしたいと思います。

○森本参考人 ありがとうございます。保護司の実態を正しく理解していただいたことをうれしく思っております。
本当に現場は、保護司も大変でございますが、観察所も大変でございまして、観察所の方はやはり観察官の人員が不足、本当に百件以上でございますから。私も七件ほど持って大変しんどい思いをしました。何件か保護司はみんな持っておりまして、観察官とコンタクトをとりながら、大体こういう方向でと思いましても、突発的なときにはやはり相談をしたいのですが、観察官は一人で、あっちへ出張し、またこっちへ行きで、つかまらないこともございます。やはりそこのところが一番知っていただきたいと思うこと。
それと、保護司は実働の中でいろいろ苦労しておりますが、彼らを自立更生させるためには、保護司であれば、それぐらいの精神的なことだとか、いろいろな時間的なことだとかいうのは、快く社会人として、先輩として、こちらが持っていく、ボランティアをしていくということは、私は当然であると思いますし、この気持ちを一般社会の方々も同じように理解をしていただけたら、本当に更生のしやすい地域になっていくと思っております。
技術的に保護司が大変困難というときには、観察所とも連絡をいたしまして即時対応するようにしておりますが、やはり今、保護司は四万六千人、五万人に足りておりません。何とか五万人の保護司が一生懸命そういう認識に立ちましてやれば、私はできることだと信じております。
ただ、これ以上に対象者がふえないことを私たちは願っておりますし、刑務所の方でもう少し教育をして、少年院でももう少し教育をして出してきていただけたら保護司はありがたいですけれども、本当に一からいろいろなことを教えていかなければならないというところがございますので、出口までをもうちょっと教育というところでしていただけたらうれしく思います。
以上でございます。

○大口委員 ありがとうございます。
最後に、ダルクの近藤恒夫理事長、我が党の勉強会にも来ていただいて、そのとき大変感動いたしました。本当に、一番救わなきゃいけない、家もない、仕事もない、そしてやはり人間の悩みがある限り薬物というものとかかわってしまう、そういう存在は残るわけですね。
そういう中で、国の援助が受けられていないという中で、あいまいな組織というおっしゃり方ですが、非常に柔軟性があって、現場に適したことをやっておる、そして、横浜刑務所だけでなくいろいろな、今四十八の刑務所にこのプログラムというものを活用されて、回復者が、要するに、薬物で受刑された方が、みずからがお互いに話し合いの中でいい点を見せていく、共感をしていく、これはもう薬物の受刑者でなければできない仕事を、その使命を果たすということで、本当にそれにかかわっている方々のためにもなる、そういうことで、すばらしいシステムだと思います。
矯正福祉の概念という新しい概念を打ち立てて、満期出所者についても、やはりそういう処遇というのを国としてきちっと考えるべきだ、我々民間も一生懸命やっているし、国には頼らないで頑張っていこうと思っているけれども、こういうものは本来国がやるべきなんだ、そういう思いを私は感じたわけでございます。
本当に、覚せい剤、薬物犯罪というのは、全受刑者の四分の一ですね。それから、五年以内に、満期出所者の六割が累犯、仮出所者の五割弱が累犯という形で、非常に再犯防止という観点からいっても、この薬物のプログラムをきちっとやはりやっていかなきゃならない。
そういうことで、ダルクの取り組みはすばらしいと思うんですが、今私が述べました感想について、こう考えているということがありましたら、お話ししていただければと思います。

○近藤参考人 ダルクのない社会ができればすばらしいことです。しかし現実には、二十年前から考えますと、増殖に増殖を重ねてほとんどの都道府県にダルクができてしまいました。つまり、ダルクがあるということは、その地域の中のニーズがあるんだろうというふうに思います。
ダルクは当事者活動です。つまり、ダルクには先生はいないんですよ。みんな仲間として、そういう治療共同体ですね。その穏やかな、緩やかな中で、では、そこの中で再発するのかというと、当たり前です、病気ですから再発します。そのとき、本人が正直になることをずっと待つことです。それはつらいことです。別に検査するわけでもないし。もう一つは、自分が問題を起こしたことを、それはあなたの責任ですと、ダルクの責任じゃないですよ、個人の責任ですから、責任を個人に帰していくようにしています。だから、かえって厳しいかもわかりません。何か規則があるわけでもないし。
そういう意味では、国家がこういうことをやるとどうなるかというと、学校じゃないですけれども、問題が起きるたびにどんどんとたくさん校則ができて、結局、刑務所と同じようなシステムがまたでき上がってしまうような気がします。つまり、民間がやることがとても大切だというふうに思います。まあ刑務所をどんどんつくっていくのもいいんですけれども。
もう一つは、犯罪者を減らすということをもうちょっと考えていく時代に来ているんだろうと思います。つまり、非犯罪化ですね。犯罪から治療にシフトしていくシステムがどうして考えられないのか。
刑務所へ入れて国家が潤うんだったら別ですよ。つまり、刑務所に入る人に月間三十七万ぐらいかかってしまうわけですね。それが十万人になればどのぐらいのお金になるか。そういうロス、社会的な損失を考えたときに、ただ単に刑務所をどんどんふやして刑務所に入れればいいということじゃなくて、保護観察も含めた社会内処遇のシステムをもうちょっと一ひねり考えるともっと有効かなというふうに思います。

○大口委員 時間をオーバーしまして、これで終わりたいと思います。本当にありがとうございました。

○七条委員長 次に、民主党・無所属クラブ及び社会民主党・市民連合所属委員の質疑に入ることとしておりましたが、出席が得られません。
これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の皆様方には、本当にきょうはありがとうございました。貴重な御意見をお述べいただき、また、現場の悩みやら、あるいは現場での御苦労のほどもよくお述べいただいたことに対し、委員会を代表して、厚く御礼を申し上げまして、ごあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十一時四十四分休憩
――――◇―――――
午後一時八分開議

○七条委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
午前中に引き続き、内閣提出、更生保護法案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人の出席を求め、説明を聴取することとし、その人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――

○七条委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大口善徳君。

○大口委員 公明党の大口でございます。
一昨日も、この更生保護法案につきまして質問させていただきました。一昨日は、主に条文解釈ということでいろいろと質問させていただいたわけでございます。そして、本日は、やはりこういう法案をしっかり実効性のあるものにしていかなきゃいけない、そういう点では、更生保護法の実施体制についてお伺いをしたいと思っております。
午前中、四人の参考人から大変貴重な御意見を賜りました。この意見をこの委員席で聞くということは大事だなということを本当に実感したわけでございます。
森本孝子三重県保護司会連合会会長は、もう二十八年保護司さんをやっている、それで、どんな人が来ても、この人は我が身内である、家族であると思うことで親近感が生まれる、そして、うそをつかないこと、過去のことは問わないから二人三脚で行こう、こういう思いでやっておると。私は本当に感動したわけでございます。非常にいいお話を聞かせていただいて、欠席の方はもったいないな、こう思ったわけでございます。
そして、その中で、やはり夜中に電話がかかってくることもあると。(発言する者あり)

○七条委員長 御静粛にお願いをいたします。

○大口委員 いろいろな御苦労をされている。
そして、今回、一般遵守事項、特別遵守事項、こういうことが決まって、そしてペナルティーについても明確になったわけでございますけれども、これについても、遵守事項は当たり前のことで、それが守れない、特別遵守事項、私たちは何の権力も持っていないが、遵守事項だけは守ってほしい、こういうことで、話をして、守れなかったときにバックアップするよということを明記してくれたこの法案については非常にありがたい、こういう御意見もいただいたわけでございます。
そういう中で、きょうはまた、参考人の瀬川先生が有識者会議のメンバーということで、非常に貴重な御意見をいただいたわけであります。
その有識者会議で、保護司への過度の依存を解消し、保護観察官と保護司がそれぞれの特性を生かして充実した処遇を実施できるようにするため、保護観察官と保護司の役割を明確化すべき、こう提言しているわけですね。
保護司への過度の依存と言われている現状がどうして生じたのか、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

○長勢国務大臣 なぜ過度の依存が生じたのかという御質問でございます。
御案内のとおり、保護行政、観察官と保護司が協働体制で実施をしておるわけでありますが、そうやっている中で、観察官の方が、みずからがこの責任者、主宰者という意識が少し薄くなってきたのではないかとか、また、そういうこともあってか、処遇上特別の配慮を必要とする者に対する場合に、保護司任せになるというか、関与することが必ずしも十分ではないというようなことも起こったり、保護観察官と保護司の職務、役割分担について、法令上も必ずしも明確に具体的に規定をされていないというようなことが重なって、保護司の皆さんに対する負担が大きくなってきたという点があるというふうに考えております。

○大口委員 また有識者会議は、保護観察所が保護司に依存していることから生ずる保護司の負担を軽減するために、保護観察官による保護司への保護観察処遇に関する指導助言の充実、保護観察官の指導能力の向上、一人の保護観察官が平均七十五人の保護司を担当することになっている現在の地区担当官制度に対するよりきめ細かな指導助言を可能にする観点からの検討の必要性、休日、夜間等勤務時間外における保護司からの緊急連絡に対応できる体制を強化する必要性について提言をしている。
そこでお尋ねしますが、以上の提言を踏まえて、現在、過度の依存解消に向けた取り組みがなされているのか、また今後実施予定とされている施策があるか、御説明願いたいと思います。

○長勢国務大臣 今御説明いたしましたように、保護司の方々に過度に負担をかけ過ぎているんじゃないかという御指摘があるわけでございまして、こういう御指摘に対しまして、まず、性犯罪対象者、殺人等の重大事犯の少年などのように処遇に特段の配慮を要する、こういうことで保護司さんに大きな負担をかける者については、保護観察官がみずから直接処遇を行う、あるいは保護司さんと一緒にやる場合でも、保護観察官による面接指導を強化するということを今進めておるところでございます。
また、保護司さんからもいろいろ相談を受けることがあるわけでありますけれども、それが迅速に対応できるように休日、夜間の緊急連絡体制を整備するとか、担当の保護観察官が不在であっても代理の者がちゃんと対応できるようにするといったような相談支援体制も充実強化していかなければなりません。各保護観察所では、こういうような取り組みを今進めておるところでございます。
今度の法案でも保護観察官と保護司の適切な役割を置いているわけでありますが、この規定に基づいて、さらに観察官の意識改革、そしてまた実力の向上を図って、一層主体的、主導的に処遇に取り組む、また保護司さんにも、誠実で的確な助言や支援を行うことができるように努めることによって負担の軽減を図っていかなければならない、このように思っております。

○大口委員 森本参考人も、夜中に対象者から来てくれ、こう言われて行くと、非常に身の危険を感じることもある、そういうときに保護観察官がそばにいてくれたらなということもおっしゃっておりました。しっかりバックアップ体制を組んでいただきたい、こう思っておるわけです。
前回もこの保護観察官の抜本的な増員の必要性について大臣に所見をお伺いしたわけでございますけれども、保護観察官の数について、現在のところ千四十一人で、そのうち観察実務を担当する一般職が八百四人と承知しております。残り二百三十七人は管理職ということでございます。
一般的に、各保護区において保護観察官はどのように配置されているのか、配置の状況についてお伺いしたい。また、保護観察官を適正に配置するために現在どのような取り組みがなされているのか、お伺いしたいと思います。

○藤田政府参考人 全国の保護区におきます保護観察官の配置の現状でございますけれども、保護観察官に対する保護区の担当ということを決めております。
それで、保護区の事件数はまちまちでございますので、その規模に応じまして、一人の保護観察官で一つの保護区を担当する場合もあれば、一人の保護観察官で複数の保護区を担当させるということもございます。大きい保護区でありますと、一つの保護区を逆に複数の保護観察官が分けて担当するということもございます。
実例を挙げますと、大都市部を管轄する大規模な保護観察所におきましては、事件数の多い保護区が少なくございません。そういうような保護区につきましては、二、三人の保護観察官で分担するというようなことがございます。一方で、小規模な保護観察所におきましては、比較的事件数の少ない保護区が一般的ですので、一人の保護観察官に二つないし四つの保護区を担当させているというような現状でございます。

○大口委員 私は、倍増ぐらいに向かってやるべきだ、こう思っておりますが、量の問題も、質の問題もございます。
保護観察官は、現状では新任からベテランまで同じ保護観察官という職名のもとで仕事をしていると伺っております。有識者会議も、保護観察官が犯罪者処遇の専門家としての高い専門性を求められる職であることにかんがみて、保護観察官をその能力、経験年数等に応じて階層化するなどして、より高位の保護観察官にはより高い専門性と職責を求められることが明らかとなるような仕組みを検討すべきである、こういう提言もしております。
また、保護観察官の専門性の向上のための取り組みとして、統括保護観察官等の官職を新たに設置したと承知しております。このような官職の設置が個々の保護観察官の専門性向上にどの程度寄与するかということについても、お伺いしたいと思います。

○長勢国務大臣 有識者会議の報告書では、専門性及び意識が不十分であるという問題提起がされておるところでございます。
現在も、観察のプロとして自覚や実力を高める必要があるということで、研修を実施しておる、あるいは研究会等も実施しておるわけでございます。また、こういう保護観察官の観察処遇を強化するために、なるべく直接事件を担当するようにすることによって実力を蓄えさせておるということでございます。
また、本年度からは、観察所長が、統括保護観察官等の管理職に昇任する前のベテランの保護観察官を指名して、新任の者の指導育成に当たらせるとか、また、中堅の保護観察官に対する訓練を強化するという実力を高めるための施策を行ってきておるところでございます。

○大口委員 保護観察官の犯罪者処遇の専門家としての能力を高め、対象者の改善更生、再犯防止に一定の権限と責任を負う立場にふさわしい能力等を涵養するためには、保護観察官に対する研修が不可欠であります。
この研修のあり方について、やはりカリキュラムにおいて、他の刑事司法機関や犯罪被害者等の視点を取り入れるとともに、事例研究、体験型研修をさらに重視することが考えられるわけでございます。この研修についての見直し、そして今後どうしていくのか、お伺いしたいと思います。

○長勢国務大臣 研修の実例について今若干申し上げたところでございますけれども、さらに平成十九年度からは、保護観察官の実力を計画的かつ系統的に向上させるために、研修、訓練体系の抜本的な見直しを行っております。
例えば、新任保護観察官の研修期間を一年から二年に延ばす、また、実践的な科目をふやすということにしております。また、刑事司法手続に関する理解を深めさせるため、その二年の間に、他の刑事司法機関における実務研修を実施するというようなことも検討しておるところでございます。それと並行して、中堅保護観察官に対する職場内訓練を強化する、あるいは処遇能力強化のための研修の機会をふやすことなど、育成面での改革に努めてまいりたいというふうに考えております。

○大口委員 これは、平成十七年三月、社団法人全国保護司連盟というところがアンケートをとって、保護司制度に関するアンケート結果報告書というものを出しております。これは、全九百六地区のうち八百十八地区の保護区からアンケートの回答が出ておりまして、切実な思いを公表した、こういうことだと思います。
その中で、保護司の適任者の確保、これが非常に大事になっておるわけです。保護司の定数充足率が平成十六年度から下降傾向にあって、今、定員が五万二千五百のうち四万八千五百、こういうふうに聞いておるわけであります。このアンケートによりますと、今後、こういう保護司適任者の確保の方策として望ましい方法は、保護司会に保護司の内申委員会を設置する、こういう意見が八割ということで多いんですが、これに次いで、民生委員等の関係団体から推薦を得る方法が六割、こういう回答が寄せられております。
保護司の適任者確保の現状について、それからこのアンケートの結果についての御所見をお伺いしたいと思います。

○長勢国務大臣 従来の方法ではなかなか保護司適任者の確保が困難になってきておるということから、今お話がありましたような全国保護司連盟の皆さんとも連携をして、一昨年から、保護司候補者内申委員会モデル地区事業というものを行ってまいりました。
この事業では、例えば町内会、自治会、民生児童委員、少年補導員、教育関係者などなど、地域事情に詳しい方々に委員になっていただいて適任者を推薦していただくという方法によって、幅広く候補者を確保していこうという試みでございますが、十七年六月から十八年十一月までの一年六カ月間、全国の六十八保護司会をモデル事業として内申委員会を設置いたしましたところ、十五年六月から十六年十一月までと比較いたしまして、委嘱者が百十八人増加をしたという成果を上げておるわけであります。
こういう成果も踏まえながら、今後ともこの事業の拡大に努めると同時に、さらに、保護司の適任者確保のために説明会を開催するなど、より積極的な広報活動の実施をして確保に努めていきたいと考えております。

○大口委員 保護司会に対する国の支援ということを本当にもっと充実させていかなきゃいけない、私はこう思っております。
保護区組織の運営、保護司会の運営でございますけれども、このアンケート結果によりますと、保護司会の事務局は、市区町村役場というのが二七・八%、次いで会長のお宅ですね、自宅が二五・九%、それから事務局長のお宅は二五・二%という形になっているんですね。設置場所として、やはり市区町村役場を希望するという意見が多いようでございます。
また、保護司会の事務を行っているのは、事務局長、会長の順に多いわけでありますけれども、今後の事務局体制としては、自治体職員を希望する意見、非常勤の事務局員、保護司の配置を希望する意見、常勤の事務局員、保護司の配置を希望する意見の順に多い結果になっています。
金銭的負担に関するアンケートの設問では、自治体の助成金の削減や組織活動の拡大による支出増大等により、予算上の問題が生じている保護司会が多い。保護司さんが中学校に行って子供たちのことを教育していく、そういうようなこともあるようですし、本当に、それこそ協力雇用主を探すことだとか、また、社会を明るくする運動だとか、どんどん保護司会の需要というのはふえているわけでして、そういうことで、自治体による助成金の義務化を求める意見も多いということでございます。
また、保護司会の運営費は国が予算措置をすべきであり、自治体の予算や住民の寄附に頼るようでは、保護司のなり手がいなくなるなどという厳しい意見もあります。保護司組織に対する国からの予算措置というものを求める声が圧倒的に多く、保護司組織運営費、保護司会会費等、また、保護司の個人の持ち出しによる金銭負担が相当額に上っておる、保護司みずからが会費を出して保護司会を組織しているという実態が浮き彫りになっております。
かようなことから、保護司組織に対する国からの予算措置、これについてはさらに拡充していただきたい、こう思いますが、大臣、いかがでございましょうか。

○長勢国務大臣 保護司の皆さんには大変な御苦労をいただいておるわけで、今御指摘のような事務所の問題、専属職員の問題等々もあると思います。できるだけ、保護司の皆さん方が一生懸命活動できる基盤をつくるように、我々もさらに努力していかなければならないと思います。特に、今お話のありました保護司会の活動について、専ら個人負担に依存しているということでは十分な活動もできないということも考えていきたいと思っております。
そういうことから、十九年度予算においては、保護司会の組織活動の充実を図るために、保護司会活動援助費を新設して、約一億七千六百万を計上いたしたところでございます。この経費は、保護司会において自主的な研修会を開催したり、機関誌を発行して広報活動を行うなどの組織活動を実施した場合に、それに要した費用を支給するものでございますけれども、そう大きな額でもございません。
また、保護司の皆さん方がいろいろ活動される段階で、いわゆる持ち出しも少なくないというふうに聞いておりますので、実費弁償も含めて、一層拡充に努めていきたいものと考えております。

○大口委員 実費弁償について、平成十九年度の予算で、予算総額一三・一%増という形で、補導費の特別分、一般分のアップ、それから環境調整費の千六百三十円の増、それから保護司会活動援助費、これが一億七千六百万、新設、こういうことになったわけでございますけれども、さらに拡充をぜひともお願いしたい、こういうふうに思っております。
一昨日、赤池委員の方からも御紹介いただきました、更生保護の父、金原明善。これは静岡県の浜松出身の方でございまして、天竜川の治水に私財をなげうった。そのほかに、勧善会、出獄人保護会社、こういうものを設立して、無頼を感化せしめ生活の道を助けた、こういうことで更生保護の父と言われておるわけでございます。保護司会というものは本当に百年以上の伝統があるわけでございますけれども、しっかり対応していただきたい、こういうふうに思っております。
それから、今回、法案で、仮釈放等の審理において被害者等から意見を聴取する制度、そして、悔悟の情を深める指導監督を行うため、被害者等の心情等を保護観察中の加害者に伝達する制度、三十八条、四十二条、六十五条、これが導入されたわけでございますが、この制度が機能していくために、更生保護に責任を持つ保護観察官が犯罪被害者等に対し責任ある対応をすべきだ、こう思っております。
制度の運用のあり方、担い手である保護観察官と保護司との連携について、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

○長勢国務大臣 今回の法案により導入をされる被害者施策において、被害者の方々に対応する事務を行う者について、被害者の方々のお気持ちにも配慮して対処する必要があるということから、各保護観察所に被害者関係事務に専門的に対応する保護観察官を置いて、これらの者に行わせたいと考えております。
また、保護司の方につきましても、相手の心情を受けとめ、必要な支援を行うことについての素養と経験を有し、地域社会の実情や社会的資源について精通しているという特性を生かして被害者の方々への支援等を行っていただきたいと考えており、そのために、被害者への対応を専門にしていただく方を指名させていただきたいというふうに考えております。
こうして、被害者施策の分野においても、観察官と保護司が連携してその実施に当たっていくことになるわけですけれども、御指摘のように、まず、観察官が責任ある対応をすべきであるというふうに考えております。特に、困難な事情を抱える被害者の方々への対応をどうしていくかといったような方針を立てたり、そのような方々への対応はみずからが主導的に行ったりするということが観察官として必要なことだろうと思っております。
また、保護司の方々のそういうことに関する相談に対しても、十分に、誠実かつ丁寧に行わなければならない、そういうふうに努めていきたいと考えております。

○大口委員 また、この法案で、受刑者等の円滑な社会復帰を図るため、その者の住居、就業先その他の生活環境の調整、環境調整をより能動的かつ積極的に行うものとしています。仮釈放者の二三・三%が、これは平成十七年でございますが、民間の更生保護施設に帰住している、こういう現状があり、民間の更生保護施設の役割はこれまで以上に重要になると考えます。
この有識者会議においても、更生保護施設が優秀な人材を確保し育成できるよう、その経営基盤確立に必要な予算措置をすべきである、地方公共団体に対しても民間更生保護施設経営支援のための予算措置を講ずるよう必要な働きかけを行うべきである、こういう提言もあります。
民間の更生保護施設の重要性についてどう考えるか、そしてまた、更生保護施設をどのように充実させていくのか、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

○長勢国務大臣 私も、就任いたしましてから幾つかの更生保護施設を視察させていただきましたが、犯罪や非行をした人たちの社会復帰のために大変重要な役割を果たしていただいているなというふうに思っております。高齢者など、出所後の行き場のない人たちあるいは職につけないために住居を確保して自立することが困難だという者がふえているわけでありますので、これからますます更生保護施設の役割は大きくなるものというふうに思っております。
法務省としましては、こういう施設に対する委託費について適切な予算の確保に努めてきたところでございますけれども、例えば立てかえがおくれているとか、なかなか十分なことが確保できていないという部分もないわけではございません。今後とも、その充実に向けて十分に努力をしてまいりたいというふうに考えております。

○大口委員 本日、参考人として出席された近藤理事長が運営しておりますダルクの関連についてお伺いします。
二〇〇四年版の犯罪白書によりますと、覚せい剤取締法違反の受刑者は、全受刑者の四分の一を占め、満期出所者の約六割、仮出所者の五割弱が五年以内に再び服役するなど、他の犯罪に比べて再犯率が高いことが指摘されています。
ダルクは薬物依存者の再犯を断ち切るために大変意義のある活動をしていると思いますが、現状において、刑務所、保護観察所はダルクとはどのような連携または協力をしているのか。また、法務省として、ダルクの意義を積極的に評価し、さらに連携の強化を図り、薬物依存者の再犯防止に努めるべきではないか。この点については法務大臣。
また、ダルクのこのような活動について、厚生労働省として、連携の状況、今後の取り組みについてお伺いしたいと思います。

○長勢国務大臣 ダルクについては、先生よく御存じのとおりでございまして、薬物依存者にとって大変意義の高い活動をなさっておられるものと考えております。法務省、刑事施設、保護観察所、それぞれにおいて薬物事犯の受刑者あるいは仮釈放者、保護観察つき執行猶予者の処遇を担当しておりますけれども、それぞれ、刑事施設、観察施設とも、ダルクのスタッフの方々にも協力をいただくことがあるという状況でございます。
刑事施設においては、平成十六年度には薬物事犯の受刑者に対する指導を充実させるための外部の専門家を招いた研究会を開催しておりますが、そこにおいて、いろいろな話を聞かせていただくことが重要であるということから、ダルク等の民間団体の協力を得た指導を開始することにいたしまして、十八年度は三十四庁の刑事施設において実施をいたしました。また、本年度は五十七庁に拡大をして、ダルク等と連携して指導を行っておるわけでございます。
また、保護観察所の仮釈放者や保護観察つき執行猶予者に対しても、みずからの意思でダルクに入寮することもありますし、その場合にはダルクのスタッフから保護観察所に連絡をしていただくなど、連携をとっておりますし、また保護観察官や保護司が、薬物依存の問題がある対象者に対しては、ダルクで行っているミーティングに参加をするように助言するということもやっております。
さらに、保護観察所で実施しておる薬物事犯者の家族に対する講習会あるいは保護司や保護観察官に対する研修にダルクのスタッフの方に講師としておいでいただく、さまざまな面で御協力いただいておるところであります。

○黒川政府参考人 御説明申し上げます。
ダルクについては、各地で薬物依存症からの離脱のため、グループミーティングや生活訓練等各種のプログラムに取り組んでおられるものと聞いております。それぞれのダルクで活動内容はさまざまでございまして、全体を評価することは困難な面もあるとは思いますが、薬物の再乱用の防止の観点からも意義のある取り組みが行われていると認識しております。
厚生労働省が薬物の再乱用防止に係る事業を実施するに当たっても、ダルクにおいて蓄積されているノウハウを参考とさせていただくため、御助言をいただいているところでございます。
厚生労働省においては、再犯の連鎖を断ち切るという観点から、ダルクとの連携について、そのあり方も含め、引き続き検討を行ってまいりたいと考えております。

○大口委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

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