大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2011年4月19日

177-衆-法務委員会-7号 平成23年04月19日

○大口委員 公明党の大口でございます。
民法の一部を改正する法律案につきまして、御質問させていただきたいと思います。
今回の法改正、これはやはり、児童虐待の防止を図り、児童の権利利益を擁護する観点から、親権制度に大きく切り込み、また未成年後見制度を強化する、こういう内容であって、私は評価をすべきことであると思いますし、もう十年前からこの親権の停止については叫ばれていたことでございますので、これにつきましては早期の成立ということを私どもも望みたい、こう思っております。
また、児童相談所における児童虐待相談対応件数が平成二十一年度で四万四千二百十一件と、十年前に比べて約四倍に増加している。
それから、最近の児童虐待の事件も非常に痛ましいものでございます。昨年の七月、大阪市で発生した、二十三歳の母親が一歳と三歳の幼児に食事を与えずマンションに置き去りにして、約一カ月にわたって遊び歩き二人を餓死させてしまった、この二人の幼児は、猛暑の中、水も食べ物もない部屋で寄り添うようにして亡くなっていたという報道がございました。そのほか、福岡県の久留米市の五歳の女の子が、母親に手足を縛られて洗濯機に入れられるなどの虐待を受けて命を奪われる、あるいは横浜市で、母親らによって一歳二カ月の女の子が木箱に閉じ込められて窒息死した例など、本当に痛ましい限りでございます。
児童虐待防止のために、本当に国を挙げて早急の対策が必要である、こういうふうに思っております。そういう点で、この法案につきましては早期の成立ということを求めてまいりたいと思います。
そこで、今、馳委員からもお話がございましたが、この親権についての規定、これは現行法八百二十条では、「親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」と定めてあったわけでございます。これは、未成年の子に対する親の権利義務の総称ということでありますけれども、今回の改正案で「子の利益のために」という文言が入った。これも極めて重要なことでございます。
この点につきまして、例えばイギリスでは、日本の親権に近い概念、親責任という概念があります。これは、親の立場にある者の責任を強調する概念と言われておりまして、我が国においても、親の意義については、親権は子の利益のために行うということを重視する観点から、親権の中核は義務である、条文上明確にすべきである、こういう意見もございます。親権の意義について検討するときに、この親権という名称そのものについても、より適切な名称に変更すべきという意見もあったわけでございます。
こういうことについて、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

○江田国務大臣 委員御指摘のとおり、現在の民法においても親権というものに義務の側面があることは、これはもう明らかで、子の利益のために行使をしなければならないというものでございます。
そして、本法律案は、それは明らかなんですが、やはり子の監護、教育は、子の利益のために行われるべきものである、こういうことを明確にして、児童虐待の、あるいは子供の利益を害する行為が強要されないことを明確にしようということで、中身においては全く同じなんですが、親権という言葉あるいは概念のとらえ方、これについてはやはりまださまざまな御意見があったと伺っておりまして、そうした動向を踏まえながら、今後とも適切に対応していきたいと思います。
今回は、用語としては、今まで成熟した親権という言葉をそのまま踏襲したということで、中身を明確にしたということです。

○大口委員 中身を明確にしたということは非常に大事なことでございますけれども、やはりここはさらにしっかり議論をしていかなきゃいけないと思います。
親権の制限事由についてでございますけれども、親権喪失の場合について、現行民法は、八百三十四条で、「親権を濫用し、又は著しく不行跡」と規定しているのに対し、改正案では、「虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するとき」とされたわけであります。
この現行法の規定は、親に対する非難可能性を要件としていると解釈できるわけでありますが、親権を制限する場面は必ずしも親を非難できる場合に限られない。例えば親が精神疾患や人格障害、宗教上または倫理上のこだわりがあるために、親権を適切に行使し得ない場合も考えられるわけであります。親権の制限事由が、親に対する非難や帰責性の要素を排除し、親権の制限事由は子供の福祉の観点から客観的なものとして再構成すべきだ、こういう考え方もあるわけでございます。
今回の改正案の親権制限事由、その点、どのように理解したらいいかということをお伺いしたいと思います。

○江田国務大臣 現行法は、親権喪失原因を、「父又は母が、親権を濫用し、又は著しく不行跡であるとき」という規定になっていますから、これは、父または母が濫用などをしなければいけないということでございますが、しかし、これは子の利益ですから、親が悪い、親に責めるべき点があるという場合でなくても、子の利益が害される場合はこれはございます。残念ながら、例えば、親が子の、非難可能性はないけれども著しく親権行使が困難になる病気などもあるでしょうし、いろいろな場合がございます。
そうした場合に、「父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するとき」、こういう定めにして、最近、現行法でも帰責性を要件としなくていい、そういう考え方も強くなってきていますので、そうした有力説に沿って、必ずしも帰責性というものを要件にしないということにいたしました。

○大口委員 そういう点では、親権の喪失の事由というものを拡大した、より発動しやすいようにした、こういう理解でよろしいですか。

○江田国務大臣 「虐待又は悪意の遺棄」、これは帰責性がもちろんあるわけですけれども、そうでなくて、「著しく困難又は不適当」という場合に帰責性を要件としておりませんから、その部分では拡大したと言えると思います。

○大口委員 次に、親権喪失制度というのは重い効果があるということで非常に使いにくい、そういうこともありましたろうし、また、未成年後見人という受け皿をしっかりつくらなきゃいけない、それがなかなか手当てができないという点もあったと思うんですが、そこで、使いやすい親権停止制度の導入をした、これは評価するわけでございます。
ただ、今回、親権の一部制限という制度、これも議論されたわけでございます。やはり子供の利益の尊重の観点から、きめ細かな対応を可能にするために親権の一部に限って制限し、その一部の権限のみを第三者にゆだねることも可能にすべきではないかという親権の一部制限制度を導入する考え方が強く主張されたわけでございます。
実際の親子の関係というのは、日常生活の場面、教育に関する場面、医療に関する場面、宗教や倫理に関する場面、さまざまな場面において問題があるわけでありまして、日常生活の場面においては親として何ら適格性に問題がない場合でも、例えば、医療の面においては親が子供の福祉を害している場合も考えられるわけでございます。そういう点で、個別的な場面における親権行使に焦点を当てて検討することが望ましいのではないか、多様で複雑な親子関係という場面では、現場が事案に応じて活用できる柔軟性に富む制度、これを構築することが必要ではないか。
また、家裁においても、親権を全部停止するよりも、子の福祉を確保する上で必要な限度で制限を付することができれば迅速な審判を行うことが可能ではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、この親権の一部制限制度についてどうお考えなのか、見送られた理由は何なのか、お伺いしたいと思います。

○江田国務大臣 大口委員御指摘のような考え方というのは当然あると思います。親権に対する制限というのは最小限にすべきだ、そうすると、期間を区切るといっても、一律その期間についてはすべて親権を停止してしまうというのではなくて、親権の一部分を制限するというような考え方も検討されたと聞いております。
しかし、一部を制限しても、残った部分で子の利益に反するようなことを行われるということが繰り返されるというようなこともあり、やはり制度としてはそういう制度はちょっと不十分じゃないかとか、あるいは、国家による家庭への過度の介入を招くことになるんじゃないかとか、どの部分を制限するかということをめぐっていろいろ議論が紛糾して、かえって審理が長期化するというようなことがあるのではないかなどといういろいろな意見があって、答申では一部制限制度は設けないということになったと理解をしております。
そういう答申を受けた私どもとしては、答申の趣旨に従って今回の法律改正をまとめたということでございまして、一部の制限という考え方も魅力的な考え方ではあるということだと思っております。

○大口委員 要するに、一部というとそれ以外のところで心配な部分がある。それは、その部分に入れればいいだけのことですよね。家庭裁判所できちっとこの審理をしていただくわけで、これを国家の介入というのもおかしい話だと思いますし、また、二年間なら二年間丸々停止というよりも、部分的に制限するという方がむしろ出しやすいということからいくと、今大臣のおっしゃったことは、これは大臣も本気でそういうふうに思っておられない、非常に弱々しい答弁だったと思うんですが、いかがでございますか。

○江田国務大臣 私どもだけでこの法案というものをまとめていくのではなくて、いろいろな皆さんの意見をいただきながらまとめることでございまして、法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会というところで議論をされたわけで、そこでの議論というのを今紹介させていただきましたが、結論として、こういう答申になっているので、その答申を踏まえた立法措置ということにしたということで、ぜひ御理解ください。

○大口委員 引き続き今後の検討課題になると思います。
次に、親権者の同意にかわる裁判所の許可制度というものも導入が見送りになったわけでございます。現行民法では、未成年者がみずから契約を締結する等の法律行為をするには、原則として、その法定代理人の同意を得なければならない、民法第五条ということでございますが、しかし、未成年者が法律行為をしようとしても、親がこれに協力しないケースがあることが指摘されていて、このようなケースにおいて、家庭裁判所が、未成年者の特定の法律行為について、法定代理人の同意にかわる許可を与えることができる制度を導入すべきだ、こういう意見でございます。
この制度については、親権の停止、喪失、未成年後見人の選任という一連の手続を、大げさなものをしなくても、こういう特定の法律行為について裁判所が親権者の同意にかわる許可をするという制度で、迅速かつ簡易に対応できるのではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、この点については、大臣の御所見はいかがでございますか。

○江田国務大臣 この点も、先ほどと同様でございますが、法制審議会の部会で検討は行われました。
しかし、この同意にかわる家庭裁判所の許可によって、親権者の意に反して何らかの法律行為が行われた場合でも、親権者が今度、法定代理人としての地位に基づいてその法律行為の趣旨に反するような行為をすることも考えられるので、同意にかわる許可だけでは、これは、未成年者を契約等に関して不安定な状態に置いて、子の利益を保護するための制度としてはどうも不十分ではないかとか、あるいは、契約の相手方も、家裁の同意は得たけれども、今度、親権者が法定代理人として別のアクションをとるというような場合に不都合を強いることもある、さらに、家庭裁判所も、ふだんから未成年者の状況等を把握しているわけではないので、個別の法律行為の当否についてまで適切に判断するのは困難というような問題が指摘をされて、答申では、この同意にかわる許可という制度は設けないということになったと承知をしております。

○大口委員 これも、法律行為を許可を得てやって、それをまた取り消すような事例がどれぐらいあるのか。そこまで行くと、今度はやはり親権の停止ですとかそういう手続に進んでいくということではないかな、いろいろなツールを用意しておくということが大事じゃないかな、こういうふうに思うわけでございます。
次に、親権停止の期間でございますけれども、今回の改正では、親権停止の制度が新設されることとなっているわけでありますが、この親権停止の期間を二年を上限とすると。親権停止の期間については、またその考え方として、原則二年とした上で、特別の事情があるときには、それを超えない程度で、ある一定の期間を決める、こういう考え方もあるわけです。
今回の規定は、二年を超えない範囲で親権を停止する期間を定める、こういうことで、それこそ、こういう規定ですと、三カ月なのか六カ月なのか、あるいは一年なのかということであるわけですね。そういう点で、原則というのを決めるということも一つあったと思うんですね。それをしなかった理由は何なのか。
そして、二年というのは、強制入所の期間等を参考にされて二年ということだと思いますけれども、一定の期間を区切らないで、停止の期間を家庭裁判所に個々の事案に即して判断をさせるという考え方も一方であったと思います。
この期間の考え方についてお伺いしたいと思います。

○江田国務大臣 このあたりも、本当に甲論乙駁、いろいろな議論があると思います。
どういう制度設計についても、それに対して、いや、こういうこともあるんじゃないかとかいろいろあると思うんですが、やはり事案ごとに、その親権者の親権の行使が適切でないという場合がさまざまでございますから、期間については、家庭裁判所が事案に応じて一番妥当な決め方ができるようにするということにして、最長はやはり二年ということで制度設計をいたしました。
こうすることによって、二年を超えるような過剰な親権の制限を避ける、あるいは、事案ごとに一番適切な期間で、それを超えて過剰な制限をすることを避ける、さらに、一定の期間をそれでも決めて、その期間こういうことを努力すればまた再統合の道が開けてくるという、ある程度両者にとっての将来の見込みも持つことができる、そのようなことを考えてこういう仕組みにしたわけでございます。

○大口委員 今回、親権喪失等の申し立て権者が、子本人、未成年後見人、未成年後見監督人、これが加えられたわけでございます。
子本人による申し立てということについては、子に申し立て権の行使を期待するのは酷であるとか、親権をめぐる係争に子が巻き込まれるとか、子の申し立てにより親権が制限された場合にその後の親子の再統合が事実上不可能になってしまうとか、あるいは、一定の年齢制限を設けるべきだ、こういういろいろな議論があったわけでございます。
子本人の申し立て権を認める、これも、とにかく、例えば性的虐待等があってなかなか相談できない、しかし、SOSを出されて、こういう申し立てを認める。そのときは、やはり、多分代理人は、弁護士が代理人になるんでしょう。ですからそういう申し立て権を認めたわけでありますが、それが実効的に、本当に希望すれば申し立てできるような環境整備が必要だろうと思いますし、また、むしろ、児童相談所長が適切にこの申し立てをする。これまでの親権喪失制度の場合は、必ずしも積極的ではなかったわけでございますけれども、やはり、タイムリーに、そして子供の状況を見てやっていくということで、こういう環境整備、バックアップ体制、これについてどのように考えておられるのか、お伺いしたいと思います。

○小宮山副大臣 今回の改正案では、委員がおっしゃいますように、親権停止申し立ての請求権者に子供が加えられておりますけれども、法制審議会の議論でも、子供をそのような状況に追い込むことにならないようにすることが重要だ、基本的には子の親族や児童相談所長等が親権停止の申し立てを行うべきという考え方で一致をしていました。
しかしながら、今、性的虐待の問題をおっしゃいましたけれども、例えば年長の未成年者を弁護士がサポートしているようなケースでは、児童相談所に改めて相談をして申し立てをするよりも子供自身が申し立てる道を開いておいた方がよいということで、制度上、申し立て権者に子供を加えることになりました。したがいまして、このような場合を除きましては、可能な限り児童相談所がかかわるべきだと考えています。
この法律が成立いたしました際には、改めて児童相談所の機能についての周知を図ることによりまして、審判の対応を含め、子供のサポート、親子関係の調整など、適切に対応していきたいと考えています。

○大口委員 現行法では、児童福祉法の二十八条の六項で、家庭裁判所が都道府県に対して親への指導措置をとるべき旨を勧告できる、こういうふうになっているわけでございますけれども、本来指導を受けるべきは親なのに、勧告の名あて人が都道府県であるというのはいかにも迂遠だと思います。
平成二十二年五月に行われた全国児童相談所長会の親権制度に関するアンケート調査によれば、保護者指導への司法関与の方法について、家裁が保護者に児童相談所の指導を受けるよう命ずるという意見が五五・一%であったわけでございます。この親に対する指導に司法が直接関与する制度の創設、これについてはどう考えておられますか。

○小宮山副大臣 御指摘のとおり、家庭裁判所から保護者に児童相談所の指導を受けるように命ずる制度などを望む意見が児童福祉の現場からありまして、親権の在り方に関する専門委員会でも御議論をいただいたところです。
専門委員会でも制度を求める意見があった一方で、裁判所が行政の指導に従うように保護者に命令や勧告をするということは、行政作用を裁判所が行うことになりまして、司法と行政の役割分担の中で、法律的に難しいということもありました。
しかし、そのニーズがあるものですから、家庭裁判所が入所措置の承認にあわせて都道府県に出す保護者指導を行う旨の勧告書を、都道府県の上申を受けて家庭裁判所から親権者に送付して勧告内容を事実上伝える運用が専門委員会から提言されていまして、こうしたことをしているところも一部ございます。そのような運用が各種の会議や研修などを通じましてしっかり全国の家庭裁判所に周知されるよう、最高裁判所にもお願いをしていきたいと考えています。

○大口委員 次に、今回の児童福祉法の改正で、児童を一時保護中の児童相談所長や児童等の施設入所中または受託中の施設長や里親は、児童の生命または身体の安全を保全するため緊急の必要があると認められる措置については、その親権者や未成年後見人の意に反しても行うことができることとされた。これは児童福祉法三十三条の二第四項、同四十七条第五項であります。
他方、児童相談所長、施設長等は、その保護する児童について、監護、教育及び懲戒に関し、その児童の福祉のために必要な措置をとることができると。これが同三十三条の二の二項、同四十七条の第三項でございます。それについて、親権者や未成年後見人は不当な妨げをしてはならないとされている。これが同三十三条の二第三項、同四十七条第四項ということでございます。
これらの条文の解釈についてのお伺いをしたいと思います。
すなわち、児童相談所長、施設長、里親が、この三十三条の二の第四項、四十七条第五項の措置、これの反対解釈をしますと、生命身体の安全確保のために緊急性がない場合については親権者の意に反してこういう必要な措置ができないのか、反対解釈からするとこういうふうに読めるんですね。それについてどうなのか。そしてまた、こういう緊急性がない場合であっても、この三十三条の二の第二項、四十七条三項の監護、教育、懲戒に関し、その児童の福祉のために必要な措置として、親権者等の意に反しても行うことができる場合があるのか。
そして、今回、不当な妨げをしてはならないという規定も加わったわけでありますから、それによって従来よりさらに親権者等の意に反してもできることになるのか。
ここら辺の法解釈、条文解釈をお願いしたいと思います。

○小宮山副大臣 児童相談所長などが児童等の福祉のために監護等の措置をとることができるとされますけれども、親権者の意向に配慮すべき場合もあると考えられるので、親権者が明確に異を唱えている場合に、児童相談所長等の判断を優先させてよいかどうか、これは個別の事案によって判断されるべきものだと考えています。
その中でも、児童等の生命または身体の安全を確保するため緊急の必要がある場合については、確実に親権者の意に反して措置をとることができるということが必要であり、必要性も高いことから、今回の改正法案の中で、法文上、明確にいたしました。
したがいまして、これ以外の事案がすべて親権者の意に反して措置をとることができないというのではなくて、やはり個別の事案によりましてそれぞれ判断されるべきものと考えています。

○大口委員 ただ、生命、身体の安全を確保するため緊急性のある場合ということは明確になったわけですけれども、それ以外の場合が非常に不明確ということが言えると思うんですね。
例えば、予防接種法の、児童の予防接種について親権者や後見人の同意を必要とするわけでございます。例えばインフルエンザとかはしか等の予防接種を受けることについて親権者が強く反対しているような場合でも、緊急性がない場合でも、今回の必要な措置として、そしてまた不当な妨げはできないというようなことによって、本当にできるということになれば、これは非常に現場も助かるわけであります。
あるいは、旅券法で、児童がパスポートを取得するような場合、これも法定代理人の同意が必要だと。例えば、今、海外旅行も安くなっています。児童が海外に修学旅行で行く、こういう場合に、親が反対しているような場合、どうなのか。
こういう点について今回の改正でできるようになったということになると非常にわかりやすいわけですけれども、そこら辺をお伺いしたいと思います。

○小宮山副大臣 児童の監護、教育及び懲戒に関しまして、親権者の親権に優先してとることができる必要な措置かどうか。これは、一義的には施設長等が判断することになりますけれども、御指摘のとおり、あらゆる問題について個別に施設で判断するというのは混乱や負担を生じさせるおそれもございます。
このため、施設等で児童の処遇や親権者との調整が円滑に行われるよう、厚生労働省といたしましては、児童福祉や法律等の専門家や現場の御意見も伺いながら、具体的な事案を取り上げまして、どのような主張が不当と考えられ、また優先してとることが必要な措置と考えられるか、こうしたことを示すガイドラインを作成いたしまして、周知をしっかりと図っていきたいと考えています。

○大口委員 本当に現場が混乱しますので、ぜひともこれが施行されるときにはきめ細かなガイドラインをやっていただかなきゃいけませんし、できるだけ、施設長ですとか児童相談所長が実務的にやりやすいように権限を拡大する方向で、各省庁に、国交省なら国交省とか、あるいは厚労省は厚労省、まあ副大臣でございますから、拡大をしていただく形で交渉していただきたいと思うんですが、いかがでございましょうか。

○小宮山副大臣 それはやはり子供の利益のために今回こういう法改正をしますので、委員がおっしゃるとおりにできるように努力をしたいと思っております。

○大口委員 次に、接近禁止命令の拡大についてお伺いをさせていただきたいと思います。
現行では、接近禁止命令というのは、これは児童福祉法第二十八条の承認を得て施設入所等の措置、強制入所措置をとっており、かつ、面会、通信を全部制限する行政処分がなされている場合に限定されているわけであります。
しかしながら、同意入所等のように、この二十八条の承認を得ない場合でありますとか、あるいは子が一時保護されているような場合、民間シェルターに入っている子供たち、ひとり暮らしをしている人、また親族等々第三者とともに生活しているような場合、実際に深刻な虐待のケースもあるわけでございます。親の不当な干渉を避けるため、強制入所の場合と同様にやはり接近禁止命令が必要ではないか、こういうふうに思うわけでございます。
ストーカー規制法とかDV法で保護命令を認められるような場合の対処もあるわけでございますけれども、そういうことの対象とならないケースについては、やはり接近禁止命令というものを可能な範囲を拡大すべきである、こう考えますが、いかがでございましょうか。

○小宮山副大臣 先日も同様な御質問をいただいたかと思うんですけれども、接近禁止命令の適用範囲の拡大につきましては、同意入所等、一時保護の場合ですとか、それらの措置がとられていない場合で、例えば自立している年長のひとり暮らしの未成年者が自分で稼いだ収入を親が無心に来るような場合、こうしたものにも対象を拡大すべきとの御意見が社会保障審議会でございました。
現在、接近禁止命令は児童福祉法第二十八条の強制入所等の場合のみが対象ですけれども、この接近禁止命令は罰則を伴うために慎重に検討すべきとの御意見もある中で、最も接近禁止命令を発出する必要性が高いと考えられる強制入所等の場合でも命令が発出された実例が今ないわけなので、同意入所等や一時保護の場合については、まずは面会、通信制限を適切に活用することとされました。
その上で、親が面会、通信制限に従わない場合には、強制入所等の措置に切りかえた上でさらに接近禁止命令を発出することが可能であることにつきまして、周知徹底を図るべきとされました。
また、自立している年長のひとり暮らしの未成年者のケースにつきましては、児童虐待防止法で対応することは難しいのではないか。民法など現行の制度の枠内で、妨害排除請求権または妨害予防請求権として、面談強要禁止を求める訴え、その仮処分等で対応することが可能で、その適切な利用が可能となるよう周知徹底を図るべきである。
このようにケースを分けて、段階を踏んでやることと、ひとり暮らしの年長者の場合と、考えていきたいというふうに思っております。

○大口委員 次に、親権制限をちゅうちょする大きな理由が、受け皿となるべき未成年後見人のなり手の確保が困難であるということでございます。
今回、未成年後見人のなり手の確保ということで、法人や複数の後見人選任が認められることとされたわけであります。その背景には、やはりこういう引き受け手不足の実態があったのでこういうふうにしたということなわけでございます。法人や複数の後見人の選任を認める改正は評価できるわけでありますけれども、この未成年後見人になりやすくするような環境整備、これをしていくことが大事であるわけでございます。
未成年後見人の報酬については子供の財産からということですが、子供の財産がないケースもたくさんあるわけですね。それから、例えば子供がけんかをして友達を傷つけたという場合に、未成年後見人の責任という問題もございます。ですから、これは社会養護事業という観点からも、このあたりについての手当てといいますか、これを考えるべきではないかと思いますが、いかがでございましょうか。

○小宮山副大臣 子供たちが退所をした後に自立していくためには、やはり身上監護と財産管理を行う未成年後見人の存在というのは大変重要だと考えております。
今委員がおっしゃいましたようなこと、そして、あとは報酬ですとか、子供が第三者にけがを負わせたり他人のものを壊してしまい未成年後見人に損害賠償責任が生じた場合の賠償責任保険の保険料負担が必要というような意見もございます。
今回の制度改正で、法人や複数人が未成年後見人になれることになることから、子供の権利擁護の観点から、法人等が未成年後見人となる場合にどのような支援が可能なのか、これからしっかりと、急いで検討をしてまいりたいと思っております。

○大口委員 今回、後見人については複数人でできるようになったということは、大きな前進であろうと思います。そして、未成年後見監督人は、従来から複数であったということであります。
本改正案では、未成年後見人が数人ある場合に、各後見人の権限行使は共同であることを原則としているということでございますが、一方、現行の成年後見制度では、後見人が複数あるときは各自単独行使が原則とされているということでございまして、未成年後見制度と成年後見制度で権限行使について異なっているわけであります。これについてはどういうお考えなのかということと、未成年後見監督人については、複数選任された場合、これまで各自単独行使を原則としていたものを、今回の改正案で共同行使を原則とするという形に変えました。この理由についてお伺いしたいと思います。

○江田国務大臣 成年後見人の権限というのは、主として財産管理権が多いと思われるので、これは単独で行使できるとした方が法的安定性にも資するということでございまして、例外的に家庭裁判所が共同行使または分掌の定めをする。これに対して、未成年後見人の後見事務の主要な内容というのは身上監護ということで、単独でということになりますと、それぞれが違った行使をしては困るので、安定的な監護を害するおそれがある。そこで、複数の未成年後見人がいる場合には、これが協議をして慎重に行うのを原則とするということにしたわけでございまして、成年後見人と未成年後見人とは、片方は財産管理権、片方は身上監護が中心というところで権限の大きな違いがあって、その違いによって原則と例外が異なるということになったわけでございます。(大口委員「後見監督人」と呼ぶ)
後見監督人は、未成年後見の後見監督人の重要な職務、これも、未成年後見人の身上監護に関する後見事務の監督ということでございまして、単独で行使されますと、方針が異なるという事情で、やはり監護を害するおそれがあるので、数人後見監督人がいる場合には統一を図って慎重に監督するということにいたしました。
未成年後見監督人は一定の場合にみずから未成年後見人の後見事務を行うという場合がございまして、この場合にも子供の安定的な監護の観点から共同行使ということにいたしました。

○大口委員 それでは、今回、震災孤児のことについて、最後に確認させていただきたいと思います。
三月十一日の東日本大震災で親を失った子が、いわゆる震災孤児として、四月十八日現在、百三名の方と伺っております。震災孤児に対してこれまでどのような対応をしてこられたのか、また、今後の対応についてお伺いしたいということが一点。
それと、震災孤児に対しては、祖父母など三親等内の親族が養育する親族里親制度を積極的に活用することによって、身近な親族に育ててもらう、心に深い傷を負った孤児のケアにつなげてもらうことが大事だと考えています。
厚生労働省が被災自治体などを通じて把握した震災孤児のほとんどが、現在、親族のもとに預けられているということでございます。親族が里親になる場合、里親手当七万二千円、これは支給されませんけれども、孤児の一般生活費、これは月四万七千六百八十円、それから入学支度費、年四万六千円、学用品費、月四千円、学習塾費や部活動の実費支給等もあります。国や都道府県から支払われているほか、震災孤児は両親の遺族年金も受けられることになっておりまして、この親族里親制度というものを積極的に活用し、周知徹底を図っていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

○小宮山副大臣 おっしゃいますように、震災孤児の問題につきましては、震災後すぐに、現地の児童相談所の相談員と、それから全国から来た人たちが力を合わせまして、その把握に努め、おっしゃったように、現在百三人ということです。
やはり、心に傷を負っているので、なるべく近い人がということで、その親族里親の制度をしっかりと活用できますように、今その周知徹底を図っておりまして、親族が現在は見ているけれども、それでもやはりどうしても無理だという場合には、なるべく複数の人数で里親とかファミリーホームで受け入れてもらえるようにというふうに今しようと思っております。
こうした親族里親につきましては、児童相談所から親族の方に説明をしっかりとすると同時に、厚生労働省が今壁新聞で生活支援ニュースというものを各避難所などに配付をしているんですが、そのようないろいろな方法をとって広報に努め、子供たちにとってより身近な人に見てもらえるように、最大限努力をしてまいりたいと思っております。

○大口委員 この親族里親制度は非常に有効だ、こういうふうに思っておりまして、ぜひとも周知徹底を図っていただきたい。百三名ということでございますけれども、個別にいろいろと対応していただきたいな、こういうように思います。
それでは、時間が来ましたので、以上で質問とさせていただきます。ありがとうございました。

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