大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2011年4月20日

177-衆-法務委員会-8号 平成23年04月20日

○大口委員 公明党の大口でございます。
吉田参考人、大村参考人、磯谷参考人、きょうはありがとうございます。
それでは、まずお伺いをさせていただきたいと思うんですが、親権について子供の利益のために行使をしなければならないという点は八百二十条で明確にされた、大変意義のあることであるわけでございます。
そういう中で、吉田参考人、子供の権利の観点で、これをどう解するのか。今回も親責任のことですとか親権の概念についていろいろと議論があったと思うんです。その中で、子供の権利との関係で、この規定でいいのか、あるいはもう少しこう考えた方がいいという御意見がございましたら、お願いしたいと思います。

○吉田参考人 子供の権利の視点から条文をどう考えるかということでありますけれども、基本的に、先ほど申しました子どもの権利条約が一つ下敷きになるかと。例えば、親は、子を適切に監護し、教育する権利を有し、義務を負うという表現ではなくて、子供は親により適切に監護され、教育される権利を有するんだという形で、子供を中心に据えるということでもよろしいかと思います。
ただ、民法に入れるのが適切であるかどうかは別としても、親は、先ほど申しましたように、その権利、義務または責任というふうに言ってもよろしいかと思いますが、それを果たすためにさまざま支援を受けることができるんだというふうなことを同時に書いておかなければ条約の趣旨には反するだろう、これを民法に入れるか児童福祉法に入れるかというのは技術的な問題かと思いますが、そうしたところ。
例えば、子供の権利の視点を懲戒権に入れるとすれば、子供は親によって、暴力によらずにまた品位を傷つけられずに教育を受け、しつけを受ける権利があるんだというような規定ぶりもあるかと思います。そのあたりは外国の立法例などを参考にすることができるかと思っております。

○大口委員 次に、これは磯谷参考人にお伺いしたいんですが、今回、例えば、施設長と、あるいはいわゆる児童相談所長等と親権者の権限の対立、これを解消するために、三十三条の二の二項、三項、四項、それから四十七条の三項、四項、五項という規定ができたわけです。
磯谷参考人も、この四十七条の五項あるいは三十三条の二の四項の反対解釈をすると、生命身体の安全を確保するため緊急性がある場合は親の意に反してできるけれども、では、そういう緊急性がない場合については、反対解釈としてできないのかと。こういう点で、今回の三十三条の二の二項や三項との関係、四十七条の三項、四項との関係が非常に不明確である、こういうお話であったわけですね。
そして、パスポートの問題、それから予防接種の問題等々は、親の同意が必要だということで、では、児童相談所長あるいは施設長、里親等が、どういう場合にこれは子の福祉のために必要な措置だと判断してできるのかどうか。そこら辺は後で裁判、訴訟で訴えられるというような問題もございますので、非常に現場が混乱するのではないかと。厚労省はガイドラインを出すと言っていますけれども、先生は児童相談所等々からいろいろ相談を受けておられるとお伺いしていますので、そのガイドラインのあり方についてお伺いしたいと思います。

○磯谷参考人 御質問ありがとうございます。
まず、ガイドラインについては、一つは実体法といいますか、どういった場合が、少なくともこれは不当だとか、これはよく施設の方も受けとめなきゃいけないというようないわゆる実態面での区分けというのが、これは厳密にどこまでというのは難しいんですけれども、やはりなるべくそれがあった方が現場としてはありがたいというのが一つございます。
それからもう一つは、手続的な部分ですね。つまり、親と対立したときに、どういうふうにそれに対応するのか。例えば、先ほどちょっと申し上げた児童相談所の話を聞くとか、あるいは児童福祉審議会の話もありましたし、あるいは施設の方で何か苦情の委員会みたいなものがあることもございますので、そういったいわゆる手続を踏んで、なるほど、これはほかの人たちに聞いても、親の言っていることはこのケースについてはちょっと受け入れられないよねということがわかれば、恐らくそれは、その後、裁判になった場合にでも、裁判所も当然考慮をされるのではないかなと。
ですから、そういった実態の部分とあと手続の部分もなるべくガイドラインに定めてやっていただくと、現場としては助かるんじゃないかなというふうに思っております。
以上です。

○大口委員 次に、大村参考人にお伺いをしたいと思います。
今回、親権の停止の制度を設けたりという点では、家庭裁判所がかかわる場面が非常に大きくなってくる。また、そういう点では、もう一つは、児童相談所の所長等が申立人になっているわけですから、この親権停止等の制度が機能するためには、児童相談所等の所長さんがやはり子の福祉のために、利益のために相当働かなきゃいけないと思うんですね。それが機能するかどうかということが、今まで親権喪失の場合は確かに使いにくい制度であった、しかし、親権停止の場合は使いやすくなったとはいうものの、本当にそれが子供の利益のために使われるようになるのかどうか、そこら辺の環境整備が必要だと思うんですね。この点について大村参考人にお伺いしたいと思います。

○大村参考人 御質問をありがとうございます。
御指摘のとおりだろうというふうに思っております。
実は、従前の親権喪失の制度が本当に使いにくかったかどうかというのは検証を要するところでございまして、私の発言の中でも申し上げましたけれども、申し立てをしたのに家庭裁判所がそれを認めなかったというケースはほとんどないんですね。ですから、申し立てがされれば認められるだろうと。ただ、親権が喪失されるというふうになっておりますので、児童相談所長としても、これを申し立てていいものかどうかというのがなかなか決心がつかないということでございました。
その意味で、今回、敷居を下げましたので、一時的な親権の停止というのが必要であるというふうに御判断になれば、ぜひ積極的にこれを使っていただくということでそのような制度ができたのだということを周知徹底していただくということが必要だというふうに考えております。

○大口委員 それに関連いたしまして、磯谷参考人は、児童相談所等の御相談を受けておられるという立場から、条件整備という観点で、やはり、政府に対してこうあってもらいたい、特に厚労省に対してこういうふうにしてもらいたい、あるいは家庭裁判所に対してこうあってもらいたいということがあれば、お伺いしたいと思います。

○磯谷参考人 御質問ありがとうございます。
先ほど、親権停止の申し立て制度、今回もし法案が成立すればこれは非常に画期的だと申し上げましたが、これはやはり児童相談所に使ってもらわないと何の意味もないということになってしまうと思うんです。
そういう意味で、まず第一に、やはり児童相談所長さんたちへの研修というのはとても重要なことだと思っております。この点はやはり厚労省の方には十分お願いをしたいというふうに思っています。
先生方御承知かもしれませんが、子どもの虹情報研修センターという厚生労働省の方で音頭をとってつくられているところがございますけれども、そこでも早速こういったことについて研修をするということも伺っておりますので、なお一層充実させていただきたい。
それから、先ほど大村参考人がおっしゃった、本当は、裁判所は申し立てをしてくれれば認めたかもしれない、むしろ児童相談所がちゅうちょをしていたという面があるのではないかというお話だったと思いますけれども、そういった面は確かにあると思います。
行政機関というのは、ちょっと私が余り申し上げるのはあれですけれども、やはり、うまくいかない、間違いということに非常にこだわられるといいますか、慎重になってしまうんですね。もうまず違いなく認められるものしか申し立てをしない。
しかし、実際は、裁判所は話が来てみなきゃわかりませんし、実際に子供と会って裁判官がどう判断するかというのは、我々からすればそれはわからないことなわけですよね。ですから、そのあたりは、決して何か失敗を恐れるといいますか、余り過度に慎重になることなく、必要だと思うケースがあれば、もちろん関係者の意見も聞いた上で、やはり果敢にやっていただきたいというふうに思います。そういう意味でも、厚労省の方で、ぜひ、児童相談所の方にお話をしていただければなというふうに思っております。

○大口委員 大村参考人にお伺いして、その後、磯谷参考人にもお伺いしたいんですが、磯谷参考人の方から接近禁止命令の拡大というお話がございました。
確かに、今、二十八条の場合で、しかも面会、通信の禁止というものが出されている場合に限って接近禁止命令が出されているが、しかし、それこそ、民間のシェルターにいる子供たちとか、親族や知人方に身を寄せている子供、ひとり暮らしをしている子供に対しても、利用する必要があるのではないかということが磯谷参考人からございました。
これについては、いろいろ慎重な議論、例えば司法のチェック等がどうなのかとか等々あるわけでございます。実際、例えば仮処分等もできるのではないかという議論もあるわけでございますが、この辺について大村参考人にお伺いして、その上で磯谷参考人からさらにお話しいただければと思います。

○大村参考人 ありがとうございます。
接近禁止命令につきましては、法制審でも大分議論がされまして、その議論の内容については、磯谷参考人が意見陳述の中でお触れになったとおりかと思います。
繰り返して申しますと、接近禁止命令は今余り使われていないではないかというような指摘がなされるとともに、先生の御指摘があった仮処分を使えるということもあるのではないかという指摘がされました。
接近禁止命令については、現在の状況と、それから今回磯谷参考人が求められている状況と違うのではないかという御指摘が磯谷参考人の方からございましたけれども、仮処分の方につきまして、まずはそれを使ってみていただく、その実績を積み重ねていただいて、仮処分に対する需要があるけれども、しかし、使い勝手の悪さがあるというような事実が積み重なった段階で、接近禁止命令の拡大というものを検討するということになるのではないかというふうに認識しております。

○磯谷参考人 御質問ありがとうございます。
この接近禁止命令というのは、親と子の面会、通信の制限を徹底するものというふうに理解をしております。その関係で、特に児童虐待の現場における親と子供の面会についてちょっとお話ししたいと思うんです。
というのは、親は子供が保護されますと、とにかく会わせろ、会いたいというふうなことを言ってくるわけですけれども、実際は、例えば、その子供が、お父さんが怖い、家に帰りたくないというふうなことを児童相談所に言っていても、親が、会わせろ、いいから会わせろと言って、会わせる。そうすると、子供の方は、それまで嫌だ、怖いと言っていたのが、まるで蛇ににらまれたカエルのように、おうちに帰るというふうに言い始めるんですね。
この虐待ケースの支配関係の強さというところは非常に顕著なものがあって、児童相談所は、率直に申し上げて、ある意味、こういった失敗をずっと積み重ねてきた。ですから、面会の怖さというものをとてもよくわかっているわけです。一方、確かに面会交流というのは親にとっても重要な権利だと思いますけれども、子供の福祉を害するような面会というのはやはり望ましくないんだろうと思っているわけです。
特に、児童相談所の現場を知る者として申し上げると、まず最初に、虐待の疑いがあって通告されて、そして一時保護をした、まだどういう事情、どういう事実関係なのかわからない、それから、子供の方も一体どういう心理なのかわからない、その間に面会をさせるというのはやはり非常にリスクが高いと思っております。ですから、一時保護をして、少なくとも、その子供の心理面接も結果も出て、そしてその事案もよくわかりというところまでは、まず面会もとめる必要があるし、それに対して応じられないんだったら、接近禁止もする必要があるというふうに思っています。
そして次は、今度は、事案もよくわかった段階で、性的虐待なんかは典型ではありますけれども、やはり面会が子供にとってふさわしくないということがある。この場合には、これまた、場合によっては親権もとめるのとセットでも構わないと思うんですけれども、やはり面会、通信を制限する必要がある、ひいては接近禁止をする必要があるというふうに思っております。今のはちょっと御質問の趣旨から若干ずれるかもしれませんが、児童相談所の現場で考える問題です。あとは、先ほど申し上げたひとり暮らしだとか、そういったようなところでもニーズがあるというふうに思っています。
裁判所、そもそも司法が絡むのか、行政判断でできるのかというところも実は議論がございまして、私は個人的には、やはり権利の制限が強いので裁判所が絡むべきではないかというふうに思っていますけれども、少なくともそのあたり、必要性、それからどういう制度設計にするかということも引き続きよく議論をさせていただきたいなというふうに思っております。
以上でございます。

○大口委員 では、時間も来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。

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