大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2011年5月31日

177-衆-法務委員会-15号 平成23年05月31日

○大口委員 公明党の大口善徳でございます。
本日は、安冨先生、今井先生、指宿先生、ありがとうございます。
それでは、まず今井先生に、実体法の立場から、この不正指令電磁的記録作成罪の構成要件の解釈についてお伺いをさせていただきたいと思います。
実は前回、大臣に対して、私は、フリーソフトウエアを公開したところ、重大なバグがあるとユーザーからそういう声があって、それを無視してプログラムを公開し続けた場合、それを知った時点で少なくとも未必の故意があって、提供罪が成立するという可能性があるか、こう質問いたしましたところ、大臣から、ある、こういう回答を得たわけでございます。
そこで、そのバグというものが、これが、「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令」にそもそも該当するのかということが一点でございます。
そして、インターネットにおいて、フリーソフトを公開し、それに対して、バグについての報告を踏まえて何度も改訂し、徐々によりよいソフトウエアの完成を目指していくという文化があると言われておりまして、すべて利用者の責任で使うことを条件に、自由なソフトウエア開発と自由な流通を促進するということによってソフトウエアが発展してきた歴史的経緯があるわけでございます。
そういうことで、その途中の段階でバグがあるソフトを公開していくことが提供罪として罰せられると、このような文化を阻害して、だれもフリーソフトを公開しなくなってしまうおそれがあるのではないか、こういうふうにも危惧されているわけです。この点についてお伺いしたいと思います。

○今井参考人 お答えいたします。
バグというものが、フリーソフトに限らず、ソフトに不可避的に起因しています望まない動きだというふうに考えますと、そのようなものがここで挙がっている百六十八条の二第一項の一号に当たることは否定できませんが、しかしながら、その不正な動作がどの程度のものであるかということが問題でありまして、重大なバグと先生はおっしゃったかと思いますが、そういったときには、可罰的違法性を超える程度の違法性があるということですので、これに当たることは十分考えられると思います。
二番目の御質問で、特にフリーソフトウエアの場合に、アップロードしてよりよいものに変えていくという文化を阻害するおそれがないかということでありますけれども、私の知っている限りでは、通常、そのようなソフトをアップロードしたときにはバグもあり得るということを潜在的なユーザーの方にもお示しをして、その方々の承諾を得て使っていっているのではないかと思いますので、個々の利用者が一定の危険を認識し、あり得る不都合を承諾して行っている限りにおいては、やはり違法性がないという理解も十分可能であろうと思っております。したがいまして、現在のようなアップロードの仕方、ソフトウエアの展開、提供について御懸念の点はないのかなと思っております。

○大口委員 もう一点、今井先生にお伺いいたしますけれども、今回、電子計算機損壊等業務妨害罪で未遂規定を新設した。これと、この不正指令電磁的記録の提供罪が重なる場合があると思うんですが、この場合の関係性についてお伺いしたいと思います。

○今井参考人 確認させていただきますが、電子計算機損壊等業務妨害罪の未遂とウイルス作成罪の提供の関係でございますね。(大口委員「はい。そうです」と呼ぶ)はい。
まず、提供といいますのは、百六十八条の二で想定されていますウイルスと呼ばれるソフトをつくり、これをそれとして相手方に与えるということでありますので、まだその段階では、もちろん所要の二つの主観的要件を満たしている必要がありますけれども、個別の電子計算機の中にそれを入れて、動作可能な状況にするまでには至っていないわけでございます。
他方で、電子計算機損壊等業務妨害罪というのは、コンピューターの中で不正なプログラムを走らせ、そして業務が妨害される、その未遂というのはその直前行為でありますから、私の理解では、業務妨害の未遂の方がより実害発生に近い段階を捕捉するものとして想定されていると思います。

○大口委員 次に、指宿先生、安冨先生にお伺いしたいと思います。
まず一つは、今回、リモートアクセスが認められたわけでございますけれども、このリモートアクセスの場合の場所的な特定というものは、捜索・差し押さえ許可状もこれは特定できないということで、安冨先生がお示しになっていますように、刑訴法百七条の二項で複写すべきものの範囲を特定しているのでこれは憲法三十五条一項に違反しない、こういうことでございますが、その点につきまして、この複写すべきものの範囲の記載というのは具体的にはどういうことが書かれていればいいのかということについて、指宿先生、安冨先生にお伺いしたいと思います。

○指宿参考人 御質問の趣旨は、百七条二項の「電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなければならない。」の文言の解釈ですか。(大口委員「はい。そうです」と呼ぶ)
これは恐らく、当該被疑事実に関連するデータの、例えばこれこれの犯罪に関する日記であるとか計画であるとかを記載した電磁的な記録というような形で列挙されるのではないかというふうに考えます。また、例えば不正な取引を明記した記録であるとか、そういうことで範囲が特定されていくのではないかと想像いたします。

○安冨参考人 お答えいたします。
関連性との関係につきまして、具体的に当該被疑事実との関連性があるというふうに考えられるものといいますか記録媒体について、個々具体的にそのケースごとに記載していくということになるのだろうというふうに考えられますので、ある被疑事実に関する何々を記載した電磁的記録というような形で書いていくものだというふうに想像されるところでございます。

○大口委員 次に、指宿先生にお伺いをいたします。
クラウドコンピューティングの技術がこれだけ進展して、データの保存先が国内でないことが少なくない。そこで、リモートアクセスとクラウド技術の衝突ということを先生おっしゃっているわけでございますけれども、こういう場合に、サイバー条約が十周年を迎えて、域外、越境的捜索の許容の議論が今行われているというふうに論文に書いておられますけれども、この議論が今どういう状況なのか、お伺いしたいと思います。

○指宿参考人 私、水曜日にここに出頭するよう依頼されまして、急遽ヨーロッパにコンタクトをとりまして確認をさせていただきました。
現在、資料提供いただいているのは、欧州評議会でサイバー犯罪条約の改定の主任を務めておられるアレクサンダー・シーガー氏から情報提供をいただきまして、現在の欧州での議論状況をまとめたペーパーをいただきました。
現在、欧州評議会で最新の議論をまとめたものといたしましては、昨年の八月に、クラウドコンピューティングとサイバー犯罪の捜査、こういうディスカッションペーパーが出ております。
現時点では、今日のこのクラウドコンピューティングの技術にとって何が克服しなければならないことかという課題整理と、それを解決するための技術的あるいは国際協調の枠組みの可能性を列挙するということ、そして、それを行うにしても、どのような条件をクリアしなければならないかということを洗い出す作業が行われております。
学問の世界でありますが、学説の方ではさまざまな研究ないし発表がございますが、これについてはきょうは省略させていただきますけれども、現実に私どもが、例えば先生方でも、グーグル社の提供していますGメールをお使いの先生もおられるかと思うんですが、ブラウザー上でメールを読み書きするサービスですけれども、これはいわゆるクラウドコンピューティングで運用されているところですので、利用者の添付ファイルがどの国のサーバーに保存されているかは特定ができない。しかも、それはだれも制御できないわけですね。時々刻々、その保存場所は変更されていくわけです。それがまさにクラウドコンピューティング技術でございます。
それから、ストレージサービスでも、例えば、最近非常にユーザーのふえていますドロップボックスというストレージサービスがございます。これは、コンピューターのスクリーン上でドラッグすることによって自分のデータを簡単にストレージにほうり込むことができるサービスですけれども、このドロップボックスも、データが保存されるサーバーは各国に散らばっていまして、それを特定することはできません。
このような、クラウドプロバイダーと申しますけれども、クラウドプロバイダーの今のビジネスの進展を妨げるような形で越境的な捜索を優先させるということがあってはならないというようなやはり産業界の要請とのバランスをとりながら、現在、その仕様の確定が進行中でございます。ことしがサイバー犯罪条約十周年なので、十周年に間に合うかどうかは私は承知しておりませんけれども、急ピッチで作業が進んでいるというふうに仄聞しているところでございます。

○大口委員 指宿参考人にもう一つお伺いしたいんですが、保全要請とそれからその後の差し押さえの時間的な幅ということについて、先生はアメリカの連邦法を引用されて、法執行機関からの要請について、裁判所による令状発付手続またはその他の手続が進行している間という制約がつけられているということで、そういう担保が置かれるべきだ、こういう御主張でございます。アメリカだけじゃなくてカナダも、緊急の状況、令状が間に合わない期間、こういう制限をつけていると。
海外からの保全要請の場合は、これは三十日とか六十日、時間がかかるわけですけれども、国内においては、これはやはり差し押さえとの近接性というのが大事だと思うんですが、この点についてお伺いしたいと思います。

○指宿参考人 私の主張は論文に書いてあるとおりでございますけれども、法案の中でも、必要がなくなったときには保全要請を取り消すということが捜査機関に義務づけられておりますので、我が国におきましてもそうした配慮が一定なされているとは思います。
しかしながら、諸外国でなぜそうした近接性が要求されているかというと、捜査機関に努力義務を課す、それは、必要性がなくなった場合に取り消すのではなくて、常に相手方に負担をかける処分であるということを捜査機関に認識させ、できるだけ負担が軽減されるような方向で諸外国では規制をかけているのではないかというふうに思料いたします。

○大口委員 ありがとうございました。以上で終わります。

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