大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2012年3月16日

180-衆-法務委員会-3号 平成24年03月16日

○大口委員 東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案の起草案につきまして、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の提案者を代表して、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。
昨年三月十一日の東日本大震災から一年が経過しました。しかし、その甚大な被害により、多くの被災者の方々はいまだ苦しい状況に置かれています。また、原子力損害賠償紛争解決センターが昨年九月に和解の仲介申し立ての受け付けを開始するなど、被災者の方々の法的サービスに対するニーズは高まっています。
このような状況の中、日本司法支援センター、いわゆる法テラスは被災地に出張所を設置し、被災者の方々が必要な法的サービスを受けることができるように努めておりますが、民事法律扶助制度には資力要件が設けられていることなどにより、一部の被災者の方々には必要な支援を円滑に行えないといった状況が生じています。
そこで、この起草案は、東日本大震災の被災者の方々が裁判その他の法による紛争の解決のための手続及び弁護士等のサービスを円滑に利用することができるよう、東日本大震災の被災者の方々に対する援助のための法テラスの業務の特例を定めるものであり、起草案の内容は、次のとおりであります。
まず、支援の対象とする被災者については、東日本大震災に際し災害救助法が適用された東京都以外の市町村の区域に平成二十三年三月十一日において住所、居所、営業所または事務所を有していた国民または我が国に住所を有し適法に在留する者をいうものとしております。
次に、東日本大震災法律援助事業として、被災者の方々の資力を問わず、民事裁判等手続のほか、裁判外紛争解決手続、行政不服申し立て手続であって、被災者を当事者とする東日本大震災に起因する紛争に係るものの準備及び追行を援助の対象とし、このために必要な費用の立てかえ、法律相談等を行うことができることとしております。
また、東日本大震災法律援助事業として実施した立てかえ金の償還等については、その手続の準備及び追行がされている間は、猶予するものとしております。
なお、この起草案は、公布の日から三カ月以内で政令で定める日から施行することとしております。施行の日から起算して三年の時限立法としておりますが、提案者としては、失効が予定されている時期における被災者の状況によっては、延長も当然検討されるべきものと考えているところです。
以上が、本起草案の趣旨及び概要であります。
何とぞ速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。
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東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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○小林委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
お諮りいたします。
東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案起草の件につきましては、お手元に配付しております起草案を委員会の成案とし、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕

○小林委員長 起立総員。よって、そのように決しました。
なお、ただいま決定いたしました法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○小林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○大口委員 公明党の大口善徳でございます。
きょうは、所信に対する質疑をさせていただきます。
東日本大震災、三・一一から一年が経過し、一周年の追悼式に私も参加させていただきました。本当に、二万人近い方々が犠牲になったわけでございますけれども、この復興に向けて全力を挙げてまいりたいと決意を新たにした次第でございます。
そういう点で、本日、東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案がこの委員会で全会一致で可決し、緊急上程される。本来からいえば、昨年の臨時国会でやるべきことだったと私は思っておりまして、速やかな成立を期すために全力を挙げてまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。
さて、政権が交代して、法務大臣は小川法務大臣で六人目でございまして、二年半で六人もかわっている。しかも、法務行政のトップ、治安また法秩序の一番かなめの重要な大臣、これが二年半で六人も交代している。これは本当に政権としての姿勢を問わなきゃならない、こう思うわけです。
ですから、所信も六回目の所信なんですね。そして、いろいろな、きょうお伺いしますけれども、基本的な施策についても、これだけ頻繁に大臣がかわると、結局、政治主導ではなくて、まさしく官僚主導の法務行政になってしまっているんじゃないかなと非常に私どもは危惧しているところでございます。そこら辺も含めて、本日、大臣には、とにかく、将来の展望も踏まえた積極的な答弁をお願いしたい、こういうふうに思っておるところでございます。
まず、取り調べの録音、録画の制度の導入に向けた件でございます。
これも毎回質問をさせていただいているわけでありますが、小川法務大臣は、ことしの一月十三日の法務大臣就任後の官邸記者会見で、取り調べの録音、録画について、基本的に可視化は導入が必要だと思っているが、ただ、どういう形で導入するかということについて議論をしなければならないと思っている、法制審議会に諮問しているので、その答申を待って、または答申を待つまで何もやらないというわけではなくて、可視化のあり方をどうするかということにしっかり取り組んでいきたい、こう前向きな答弁をされているわけです。この問題は、副大臣時代から大臣が取り組んでおられて、極めて詳しい分野である、こう思っております。
それでは、答申を待つまでもなくやるべきことがあるということでございまして、大臣がまたいつかわられるか私も心配しておりまして、そういう中で、今やるべきことをしっかりやらなきゃいけないという点で、その内容についてお伺いしたい。そして、法制化への道筋をどう考えているのかもあわせてお伺いしたいと思います。

○小川国務大臣 取り調べの可視化については非常に重要なことだと思っておりますが、今、法制審議会に諮問していますので、この答申を待たないで法制化しようというようなことではなくて、やはり諮問して、答申を受けて、法制化というのが基本の考え方だと思っております。ただ、諮問したから法務省は何もしないということではなくて、やはり法制審議会の審議に資するようなこと、あるいはさまざまな点について、法務省は法務省としてしっかり取り組むことは取り組んでいく、このような総論的なことを述べたわけでございます。
現実問題としましては、昨年から一年間の予定で取り調べの可視化の試行をしておりまして、その一年が参りますのがちょうどこの四月ぐらいだと思いますが、そこでその試行結果をまとめて検証することとなっておりますが、この試行を一年で終えるということではなくて、さらにこれを充実した形で試行も進めていきたい。そして、検証を行って、その取りまとめを受けて、その検証の状況によりまして、さらに必要なことがあればそれについても積極的に取り組んでいきたい、このような考え方でございます。

○大口委員 今大臣から、今の試行についてさらに拡充するというお考えをお伺いしました。これは新しい発言といいますかね。
例えば、被疑者の方が録音、録画をしてもらいたい、こういう要望があった場合。今は、特捜については特捜でやっておられるわけです、それから裁判員裁判の事件、これはやっている、あと、知的障害の方が被疑者である事件もやっておられる。そのほかに、裁判員裁判対象事件以外のものについても、例えば被疑者が要望したような場合、こういう場合にも拡充する、そういうふうなイメージでよろしいんでしょうか。

○小川国務大臣 率直に言いまして、ほぼ一年間の試行をしておりまして、その試行の状況が今どんどん集積しておるところでございまして、これも余り時間をかけずに、できる限り速やかに検証したいと思っております。そうした検証の中で、今委員が御指摘になられたさまざまな点が出てまいりますので、それを踏まえて、できることはどんどんやっていこう、このような気持ちでおります。

○大口委員 それで、今大臣からも、法制審議会の新時代の刑事司法制度特別部会において、法務大臣からの諮問ということで取り調べの可視化の問題などが審議されているわけであります。これはいつごろまでに答申を得たいと考えていらっしゃいますか。
そしてまた、検察の在り方検討会議の最終報告書では、取り調べの可視化の問題については「特に速やかに議論・検討が進められることを期待したい。」こう書いてあるわけですね。そういう点で、取り調べの可視化についてだけ先行的に答申を受けるような、こういうことも想定されているのか、お伺いしたいと思います。

○小川国務大臣 基本的には法制審議会の、いわば自主的といいますか、審議会の中での御意見に委ねることとなっておるわけでございますが、諮問をした私どもとしましては、早ければ早いにこしたことはない、早い段階でいただければその答申を受けて具体的な作業に入れるわけでございます。
しかし、あくまでもこれは法制審議会にいわば委ねている部分がございますし、法制審議会の自主的な審議ということを尊重しなければならないことでありますので、ちょっと私の口からいつまでというのを申し上げるのは差し控えさせていただきます。

○大口委員 早ければ早い方がいいということ。
ただ、取り調べの可視化について先行的に答申をしていただくというような考えはどうなんでしょうか。

○小川国務大臣 それも審議会の中での議論だと思います。
やはり具体的には、警察の方では、可視化の導入と新たな捜査手法、これが密接に関連しているというような御意見もございます。また、そうした意見が法制審議会の中でも取り上げられて議論しておるところでございましょうから、あくまでも法制審議会の方の議論した結果の答申を待ちたいと思っております。

○大口委員 そこで、本年の二月二十三日に国家公安委員長に対して、捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会の最終報告が出ました。ここで、公判における供述の任意性、信用性等の効果的、効率的な立証を可能とするという取り調べの録音、録画の効果については異論がなかったわけでありますが、結局、法制度としての取り調べの録音、録画のあり方については両論併記となって、結論が出なかったわけでございます。
私も、三月五日の予算委員会の分科会で、松原国家公安委員長に対して質問させていただきました。その中で、捜査の可視化と高度化というのはやはり一つのセットとして議論されるべきではないかと思っています、こういうふうに、今大臣がおっしゃったように、松原国家公安委員長は新たな捜査手法と可視化とのセット論、これを答弁されたわけですね。
しかし、これは歴代の法務大臣、私がその都度お伺いさせていただいたわけですが、千葉、柳田、江田、各歴代の法務大臣、それから、直近でいいますと、昨年十月二十五日の法務委員会で平岡法務大臣は、「新たな捜査手法の導入が必ずしも可視化実現の前提条件となるものではない」ということで、セット論を否定されているわけであります。
そういう点で食い違いが生じておりまして、このことは、松原国家公安委員長も、法務省と国家公安委員会または警察庁、新たな捜査手法の導入と可視化の実現との関係について見解を異にしている、食い違っているということはお認めになったわけでございます。
そういうことで、この松原国家公安委員長の答弁、それから歴代の法務大臣の答弁も踏まえて、取り調べの録音、録画の制度の導入と新たな捜査手法の導入の関係について、お伺いしたいと思います。

○小川国務大臣 やはり、可視化の導入そのものが別の捜査手法の導入とワンセット、別の捜査手法の導入がなければ可視化もないという関係にはないと思います。やはり、取り調べの可視化は可視化それ自体で取り組むべきことだなというふうには思っております。
ただ、実際に取り調べする現場であります警察の方で、それでは捜査の高度化といいますか捜査の機能が十分に発揮できないという声もあるようでございます。そうした声を全く無視して、いわば取り調べの可視化と捜査手法の問題が全く別だからそれは切り離してどんどん話を進めていいのかというと、やはりそうでもないと思いますので、法制審議会の中でそうしたさまざまな議論を踏まえて議論していただいて、答申をいただきたいと思っております。

○大口委員 そういう点では、やはり法務大臣と国家公安委員長がしっかりと協議をしていかなければならないと思います。民主党もマニフェストにこの可視化については位置づけていて、法案も出されていたわけであります。そういう点からいきますと、非常に何か消極的な感じがいたします。
そういう点で、二月二十七日に松原国家公安委員長と短時間、可視化あるいは冤罪がないようにということを協議されたようでありますが、今後どういうふうに協議をしていくのか。やはり、かなり私は溝があると思うんですよ。検察の取り調べと警察の取り調べは違うというようなことも言っておられますし、これは意見としてあるんですが、国家公安委員長がそういうようなことも言っておるわけです。こういう問題もある。
それから、やはり、新たな捜査手法といいましても、これを制度化するというのはかなり大変なことだと思うんですね。国民の権利の関係がありますよね。それから、国民感情ということもあって、これを導入するというのは相当私は時間もかかる。だから、それに引きずられて、民主党さんも積極的に推進しようとマニフェストでもおっしゃっていた可視化の導入がおくれてしまうということになると、これは大臣の今の答弁と違うわけですから、そういう点で、これから国家公安委員長とどう協議していくのか、お伺いしたいと思います。

○小川国務大臣 国家公安委員長との協議は非常に有意義で、重要でございますので、これからも繰り返して緊密な形で進めていきたいと思っております。
そして、二月二十七日にも公安委員長と協議をいたしました。また、その前提としまして、公安委員会の方で行った、あれは警察庁で行ったのかな、勉強会の結果もいただきました。
それで、私としまして、率直な感想を申し上げますと、警察の方も可視化についてもう何が何でも反対ということではなくて、可視化の有用性というものは理解いただいて、可視化そのものについては導入する方向に向いてきたのかなというふうに思っております。
ただ、そこについて、新たな捜査手法という点が指摘されてありますが、その中でも、例えばDNAの情報の有効活用など、特に可視化と関連しなくても、それ自体でかなり進んでいる部分があると同時に、国民の人権から見てそれほど難しくない分野もありましたし、あるいは一方で、司法取引とかおとり捜査とか、大きな議論をしなくてはいけない分野もありますので、警察の方で新たな捜査手法と言っている中で、列挙している中でも、比較的国民の理解を得やすいものと、やはり導入に当たっては深く議論しなければいけないものとがかなりあります。
警察の方も、決して列挙したものが全て認められなければ可視化を導入しないということでもないようでありますので、これから、今後も引き続いて協議して、どこかできちんとした意見がまとまれば、捜査という面では検察も警察もやはり密接な協力関係にあるわけですから、望ましいのかなというふうに思っております。

○大口委員 では、通信傍受の拡大は、大臣、どう考えていますか。

○小川国務大臣 通信傍受そのもの、それ自体を捜査の効率化という面から見れば、捜査の面にとっては有用かもしれませんが、しかしやはり、通信をいわば通信者の同意なしに捜査側が聞き取るということになりますと、これは憲法上の通信の秘密、憲法上保障された権利を制約するものでありますので、大きな議論が必要かなと思っております。
このまさに通信傍受法、法律の議論におきまして言えば、もう十年以上前ですか、大変に大きな議論がありまして、私の方はいわば大変に反対した立場であります。しかし、法案は成立しましても、やはり通信の秘密を制約するという憲法上の要請から、国会報告であるとか、さまざまな、国民の権利が侵害されないようないわば規定を設けておりまして、そうした中で、もう十数年、運用されておりますので、いわばその運用状況を見て、これから通信傍受のあり方を議論してもいい時期にあるのかなというふうに、私としてはそんな感想を持っておりますが。
やはり基本的には、憲法上保障された通信の秘密、それから新たな問題としましては、音声による会話でなくて、いわばインターネット社会になっております。もう十年前とは相当状況が変わったインターネット社会である中で、やはりそれに対応できる通信傍受法のあり方というものも検討してもいいのかなと個人的には思っております。

○大口委員 それで、昨年四月八日の「検察の再生に向けての取組」と題する、当時の江田法務大臣から検事総長への指示ということで、「全過程の録音・録画を行った場合に何らかの弊害が生じることとなるのかといった問題点についての検討に資するよう、取調べの全過程の録音・録画を含めて試行の対象とする。」こういうことになったわけであります。
それで、間もなく一年が経過しようとしているわけでございますけれども、東京、大阪、名古屋の三地検の特捜部、全国十地検の特別刑事部事件の実施状況について、その対象事件数、うち録音、録画の実施件数及びその割合、また、そのうちの全過程の録音、録画の実施件数及びその割合を明らかにしていただきたい。
また、これまでの裁判員裁判対象事件の実施状況についても、その対象事件数、うち録音、録画の実施件数及びその割合、うち全過程の録音、録画の実施件数及びその割合について明らかにしていただきたいと思います。

○小川国務大臣 まず、特捜部、特別刑事部の独自捜査事件における試行状況でございますが、実施事件数が五十九件、不実施が一件でございます。実施割合は九八・三%。実施事件数五十九件のうち、全過程の録音、録画を実施したものが二十四件でございます。
次に、裁判員裁判対象事件における試行状況でございますが、実施事件数としましては八百十九件、不実施事件数が三百六十四件でございます。実施割合としては六九・二%になっております。実施した事件の中で、全過程の録音、録画の実施をしたものは百一件でございます。

○大口委員 そこで、この取り調べの全過程の録音、録画のメリットについてお伺いしたいと思います。それからまた、全過程の録音、録画を実施したケースで、捜査に支障のあったケースというのはあるのかどうか。
それから、検証結果は、三月五日、笠間検事総長は、その公表の時期を夏ごろということをおっしゃっていますけれども、具体的にいつごろになりますか。

○小川国務大臣 支障があったか、あるいは非常に有用であったかということを今まさに収集中でございますので、ちょっと、今この段階で私がそれを言うのは逆に予断を与えてしまうのかなと思いますので、今まさにその状況を収集中であるということで、具体的なそれ以上のことは御容赦いただきたいと思います。
そして、その検証結果は、私としては、具体的にいつまでとは申し上げにくいんですが、やはりこれも早ければ早いほどいいということで、速やかに検証をまとめたいと思っております。

○大口委員 笠間検事総長は記者会見ではメリットについても話をされているわけでありますが、しっかり検証していただきたいというふうに思います。
また、知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者に対する録音、録画につきまして、この実績の数字を明らかにしていただきたいと思います。
それから、長崎県はかなり新しい取り組みをされていると聞いております。
昨年九月から、東京、大阪、名古屋、横浜の四地検では、知的障害がある被疑者の取り調べに福祉の専門家が立ち会うということをやっておられる、そしてそれが全国に広がっている、こういう状況でありますが、通常の場合は、立ち会う専門家は地検が選び、検事の質問の仕方や必要な配慮を助言しているわけであります。
報道によりますと、知的障害がある被疑者の取り調べにおいて、長崎方式というものがこれから試行されるということでございます。これは検察改革の一環で最高検に設置された知的障がい専門委員会の参与で、長崎県の社会福祉法人の南高愛隣会の理事長さんでいらっしゃいます田島良昭氏の提案によって行われるようでございますが、長崎地検で、知的障害の疑いのある被疑者の取り調べにおいて、刑務所出所者の支援を行う長崎県地域生活定着支援センターの推薦をする福祉関係者に立ち会わせる試行を行う、こういうふうに聞いております。
地検が直接専門家の立会人を選ぶのではなくて、長崎方式のように、地域生活定着支援センターが推薦した人を選ぶということによりまして、選任の公正性、透明性ということも図れますし、誤誘導や虚偽の自白を防止する上で非常に効果があると思われます。
こういう長崎方式というか、長崎に限らず、全国で試行を行えるようにされるべきではないか。これもあわせてお伺いしたいと思います。

○小川国務大臣 まず、知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者等に関する取り調べの録音、録画の試行数でございますが、実施事件数は二百六十三件でございます。そのうち、全過程の録音、録画を実施したのは七十四件でございます。
そして、委員御指摘の長崎地検の試行例でございますが、私は非常に有意義な試行であるというふうに思っております。この試行をもとに積極的に議論をしまして、こういう形で知的障害者に対する不適正な取り調べが行われるということが防止されることは大変有意義なことだと思っておりますので、この試行についていわば注目しておるところでございます。

○大口委員 これからということですが、しっかり成果を見られた上で、これはできるだけ全国に広げていただきたい、こういうふうに思っております。
次に、少年事件の国選付添人制度の拡充についてお伺いしたいと思います。
これにつきましても、今の現行の国選付添人制度というのは、もう御案内のとおり、対象事件が、殺人、傷害致死、強盗罪等の重大事件であり、かつ、その選任は家庭裁判所の裁量による。さらに、検察官が関与する事件、それから被害者が傍聴する事件。こういうことで、非常に対象が限定されて狭いと考えているわけです。
それで、国選付添人の選任数が、二〇一〇年、三百四十二人、二〇一一年、三百七十八人。少年鑑別所収容少年の国選付添人の選任率が、二〇一〇年は三・二%、それから二〇一一年は三・七%というふうに報告を受けております。
二〇〇九年五月の二十一日に、被疑者国選弁護の制度の方は、対象事件が必要的弁護事件に拡大したわけであります。ところが、国選付添人制度の対象は拡大されなかった。被疑者段階では国選弁護人制度により弁護士の援助を受けている少年の大多数が、家庭裁判所送致後、国選付添人制度による援助を受けられず、弁護士費用が負担できなくて弁護士付添人を選任できない事態になっているわけであります。
成人の刑事事件の被告人はほぼ一〇〇%弁護士が選任されているのに比べまして、少年審判を受ける少年の弁護士付添人選任率は低いということでございますし、少年鑑別所に送致された少年については、弁護士付添人選任少年の割合は、二〇一〇年に六二%、二〇一一年は七二%という状況で、日弁連が、これは日弁連の負担で、少年保護事件付添援助の制度、少年当番弁護士制度でカバーをしている、こういう実情でございます。
あるいは、少年を冤罪から守り、少年の意見を伝え、少年の立ち直りを助けるために、国選付添人制度の対象事件を少年鑑別所送致の観護措置決定により身柄拘束を受けた全ての少年に拡大することについて、平岡前法務大臣は、昨年十月二十五日の法務委員会において、私の質問に対して、「これから法務省の中でしっかりと取り組んでいくように、リーダーシップというほどのことではないかもしれませんけれども、私なりの姿勢を示していきたい」「できる限り前広にというか、私なりにスピード感を持ってできるように努力してまいりたい」と前向きな答弁をされて、答弁されたと思うと辞任された、おやめになったということでございます。
本年一月四日の朝日新聞の朝刊では、法務省が国選付添人制度の対象を広げる方向で検討を始め、早ければ平成二十四年度中にも国会に少年法改正を提出すると報道も出ています。
小川法務大臣も、平岡前法務大臣と同様、全面的国選付添人制度の実現のため、少年法改正に前向きに取り組む意思があるのか、またいつまでに少年法改正案を国会に提出するのか、お伺いしたいと思います。

○小川国務大臣 この問題も、今委員御指摘のように、日弁連の方が強く訴えておるわけでございますし、私も関心を持っておるわけでございますが、少年の場合には成人の刑事裁判と若干違いまして、審判そのものが、家庭裁判所の裁判官あるいは審判官ですか、あるいは調査官、こうした、かなり少年の立場に立って後見的な視点からも審判を行うという構造部分がございます。そうした点を踏まえて、その範囲、あるいは予算が伴うものですから、国民に理解を得られる範囲でそれを導入しなければならないのかなと思うと、いわばそこら辺の議論がもう少し必要かなというふうにも思っております。
やらないという意味ではありませんが、ただ、新聞報道がなされたように、もう具体的にやると決まって動いているということでもございません。この点は、今申し上げた点を踏まえてしっかりと検討していきたいと思います。

○大口委員 ですから、法務大臣がころころかわると、この姿勢が変わるんですよ。あれだけ平岡大臣が前向きな答弁をしているんですよ。何ですか、今の答弁は。法務省の見解そのものじゃないですか。ですから、政治主導ではないというんですよ。だから、法務委員会でこうやって質疑をしていても、そういうふうに姿勢ががらっと変わるんです。おかしいと思いませんか。法務委員会の質疑を何だと思っているんですか、大臣。

○小川国務大臣 確かに、委員の御指摘を受けて、私もしっかり取り組んでいきたいと思います。
ただ、やらないと言っているわけではもちろんなくて、私も強い関心を持っておりますので、そうした点、ただ、もう少し議論する点があるなということでございますので、議論をさらに詰めていきたいと思っております。

○大口委員 全然トーンが違うんです、私も現実に答弁を聞いておりますから。どうも後ろ向きなんですよ。
では、いつまでにやられるんですか、十分検討した上で。どうぞ。いつまでに少年法改正案を出されるんですか。

○小川国務大臣 申しわけございません。いつまでというのは、今、いつまでという具体的な時期の予定は持っておりません。

○大口委員 これも平岡法務大臣の場合は、できるだけ早くというような答弁だったんですよ、その答弁のニュアンスからですよ。ところが、今のはちょっとそういう点でも大きな開きがあるんですよ。どうなんですか。そのスピード感についてお伺いします。

○小川国務大臣 今、ちょうどたまたま平岡大臣の答弁を持っているんですけれども、平岡大臣の答弁で、「実はこれは予算を伴う話でございますので、そして法律改正を伴う話でございますので、ちょっと時間的にはすぐというわけにはいきませんけれども、そういう問題意識を持ってこれから法務省の中でしっかりと取り組んでいくように、」こういうふうに述べておるようでございます。
私も、先ほどお話ししましたように、予算が伴うことでもありますので、大変関心を持っておるけれどもしっかりと検討していきたいということでありますので、決して後ろ向きではない。ただ、予算措置とかそうした問題をクリアして、それをいわば国民の理解が得られるような方向で議論していきたいというふうに言っておるわけでございますので、そんなに平岡大臣の答弁と私の今考えていることとが異なるとはちょっと思わないんですが。

○大口委員 全然違いますね、私は答弁を実際に聞いていたわけですから。その議事録をしっかり本当に直接読んでいるのかどうかもわかりませんけれども……(発言する者あり)ちょっと、今、とめてください、もしあれされるのであれば。

○小林委員長 まず大口君、質問を続けてください。(発言する者あり)今、速記録と答えているんじゃなくて、大臣の答弁はこのようであったと。

○大口委員 ですから、会議録の一部を引用されていると思うんですが、私が受けている印象は、できるだけ早くやるということで、多分、辻先生も大きく首を振っておられるけれども、できるだけ早くやる、こういうトーンだったんですよ。だから、二十四年度中に、来年の通常国会には出すぐらいの、あるいは、その前の秋の臨時国会には出すぐらいの、そういう意欲を我々は感じたわけですよ。そこからかなりトーンが落ちているということで質問しているわけです。

○小川国務大臣 平岡国務大臣の、私は部分しか今ちょっと持っていないんですけれども、「できる限り前広にというか、私なりにスピード感を持ってできるように努力してまいりたいというふうに思います。」と平岡大臣は述べております。その前段階で「来年」、つまり、昨年のことで来年ですから、今の通常国会ですけれども、「通常国会は難しいなと思った」、これは法案提出のことだと思いますが、一つは予算を伴うものであるということと、それから、弁護士会の方である程度カバーできている、このような趣旨を述べておられました。
私も、今の通常国会にそれを出せる状態ではない、出す予定も今、現実としてはないわけでございますが、しかし、先ほど申しましたような予算の面とか、そうした部分の議論を踏まえて、これをしっかり検討していきたいというふうに思っております。その検討は、それはなるべく早い方がいいわけでございますから、そうした面ではしっかりと取り組んでいきたいというふうに思っております。

○大口委員 大臣がころころかわると、本当に私どもが法務委員会で確認したことがだんだんそのニュアンスが変わってくるということで、これについては大変遺憾に思っております。大臣として、この点についてはしっかりスピード感を持って取り組んでいただきたい、こういうふうに思います。
さて、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律は、平成十五年の七月に公布され、平成十七年七月十五日から施行されているわけです。一昨年七月で施行から五年を経過しています。この法律の附則四条には、「政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の規定の施行の状況について国会に報告するとともに、その状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その検討の結果に基づいて法制の整備その他の所要の措置を講ずるものとする。」と規定があるわけです。国会報告は、平成二十二年の十一月二十六日になされたということでございます。
昨年七月以降、法務省において、関係者、実務者や関係団体からヒアリングを実施していると聞いておるわけでございますが、五年後の見直しについての現状がどうなっているのか。そして、これは厚労省との共管の法律でもありますし、いろいろ難しい点もあると思うんですが、五年後の見直しで何らかの法改正は検討されているのか、お伺いしたいと思います。

○小川国務大臣 今まさに法務省の担当部局と厚生労働省の担当部局で合同でヒアリングを行っておるところでございます。ヒアリングの実施中でございますので、結論的なことはまだ出ていないということで、その具体的、結論的なことについての答弁は、今の段階では御容赦ください。

○大口委員 では、法改正もあり得るんですか、あるいは運用の見直しの程度になるんですか。

○小川国務大臣 これは、今の段階で法改正も運用の見直しもないと言い切ることもなかなかできないわけですが、しかし、やるともまだ結論的に申し上げられない状況でございますので、また、一般論としてやるともやらないとも言うのも、ちょっと誤解を招いてもいけませんので、今はまさにヒアリング中で、そのヒアリングを受けてこれから検討するところだということでございます。

○大口委員 北海道新聞のことしの二月二十四日の朝刊に、傷害容疑で逮捕されたが、責任能力がないとして不起訴になり、医療観察法の申し立てがなされて、札幌地裁では同法四十二条一項一号により入院決定になったんですが、対象者がこれを抗告しまして、札幌高裁で、完全責任能力があるとして入院命令を取り消されたという事案が紹介されています。
この対象者は二カ月間入院させられたようでありますが、その入院命令が取り消されても、医療観察法に基づく入院命令は刑事処分ではないことから刑事補償法の適用はなく、また、少年の保護事件に係る補償に関する法律のような補償法の特別規定がないわけであります。二カ月間の入院が取り消されても、何の補償も受けられないという状況であります。
これは、私も、知人の弁護士から、こういう事例があるということで聞いたんですが、過去にも、福岡地裁で医療観察法に基づく入院命令が出て、名古屋の病院に入院していた対象者について、福岡高裁がその入院命令を取り消したために、名古屋の病院から福岡に帰る費用も出なかったので、この病院で任意入院を継続し、生活保護を受けて、そのお金をためて福岡に戻った、こういう事例があるわけであります。余りにも理不尽な事態だと思います。大臣として、どのように対処しようと考えておられますか。

○小川国務大臣 確かに、補償の規定がないので補償しないというのは事実でございます。
被疑者の場合と比べてどうかという点でございますが、被疑者の場合でも、嫌疑なしという場合には被疑者の補償があるようでございますが、それ以外の場合には補償するわけではないという状況でございます。
そして、医療観察法による場合には、心神の状態に関しましてはそうした判断が覆ったといたしましても、その前提であります他害行為といいますか、他人を害する行為そのものは存在したわけでございますので、そうしたいわば犯罪行為があったことによって医療観察法の措置が進むわけでございます。
ですから、そうした面も考えますと、やはり、どうするかということは慎重な検討が必要なのかなというふうに思っております。

○大口委員 ただ、実際、この福岡の事例等を今紹介させていただいたんですが、どうお考えですか。

○小川国務大臣 結局、そうした他人を害する行為があった、しかし、心神、いわば責任能力がない状態だという判定で医療観察ということになったわけでございます。しかし、心神の喪失ではないという判定で覆って、その入院の期間中、いわば心神喪失等の、そうした理由がないのに拘束されたということは、確かにそういう状況でございます。
それについて補償がないという点の指摘がございますが、先行する犯罪行為があったという状況の中で、それを補償するということについてやはり議論があるのではないか。被疑者の場合でも、嫌疑なしならともかくも、逮捕されるような嫌疑があれば必ずしも補償の対象となっていないという今の法制上のバランスとの問題もございます。
これも、例えば、全く理由がなくて、すなわち、心神喪失の状態あるいはそうした精神状態というものについて疑わせしむるような状況が全くないのにいわば法が適用されて強制入院させられたというのではなくて、やはりある程度のそうした精神状態を疑わせしめる状況はあってのことだと思うわけでございます。
そうすると、被疑者の逮捕、勾留の場合も、嫌疑なしの場合には補償があるけれども、いわば嫌疑が不十分で起訴には至らなかったという場合、しかし合理的な嫌疑があったのだからということで、補償はされておらないわけでございます。
そうしたバランスを考えると、確かに委員の御意見も十分理解できるんですが、そうした被疑者の場合の扱いというのを、バランスを考えますと、今すぐ、補償しなければならないという結論が出るかどうかは、やはりちょっと議論してみなければならないなというふうに思っております。

○大口委員 この点については、さらに法務省の方で検討していただきたいと思います。
次に、成人年齢の引き下げの問題でございます。
民主党は、マニフェストで従来より、二〇〇三年、二〇〇四年、二〇〇五年、繰り返し、「成人年齢を十八歳に引き下げ、選挙権も十八歳以上とします。」と明言しています。ところが、二〇〇九年や二〇一〇年のマニフェストではこの記載がないわけで、インデックス二〇〇九に、政治改革の項目で、「選挙権を十八歳から付与する法律を国民投票法に合わせて施行します。」とし、また別の、法務のカテゴリーで、「民法の成年年齢、少年法の成人年齢を二十歳から十八歳に引き下げる」、こういうふうになっているわけであります。
この選挙年齢、それから民法の成年年齢、少年法の成年年齢との関係は、民主党、与党としてはどう考えているのか、一点お伺いしたいと思います。
二点目に、憲法審査会で二月二十三日、この件が議論されたわけでございます。法務省の原民事局長は、選挙権年齢と成年年齢は必ずしも一致する必要はない、選挙権年齢の引き下げを先行させ、その後で成年年齢の引き下げをすることが一つの有力な選択肢であると主張して、総務省と見解を異にしたわけであります。
ところで、平成十二年十一月二十二日に、民主党・新緑風会は、施行の日からおおむね二年を目途として、民法の成年年齢、公職選挙法の選挙権年齢、少年法における少年の年齢をいずれも同時に十八歳に引き下げるという、成年年齢の引下げ等に関する法律案を国会に提出されておりまして、小川法務大臣も発議者になっておられる。三人のうちの一人だということですね。
法務省の見解と小川大臣、それと民主党の政策との食い違いといいますかについても説明をしていただきたいと思いますし、政府・与党として、民法の成年年齢、少年法の少年の年齢を十八歳に引き下げることについて、どのように実現していくのか、お伺いしたいと思います。

○小川国務大臣 民主党あるいは参議院の民主党・新緑風会の中で、いわば民法の成年、成人年齢、十八歳という方向性は示しておるわけでございます。この方向性そのものが公職選挙法と必ず一体でなければならないのか、そこまでは言っていないんじゃないかと。ただ、公職選挙法も少年法も民法の成年年齢も、引き下げる方向というものを示したわけでございまして、この三つが特に公職選挙法との関係で一体でなければならないということまでは、私としても、言ってはいないと思うんですね。
今の、公職選挙法、憲法審査会における議論の中では、私どもも、民法の十八歳にすること、これを否定しているわけではないわけでございまして、ただ、憲法審査会の、国民投票が実施できるためにはいわば選挙権も民法の成年も同時でなければならないという、その同時でなければならない、一緒でなければならないという議論について、いや、一緒でなければならないという議論ではないんじゃないかと言っておるわけでございます。
そして、その趣旨としましては、民法の成年年齢を引き下げるという場合、今の状況の中で、十八歳といいますと高校生、卒業したばかりでありますけれども、契約自由の原則の中で、自分の判断で契約できるというような教育がそもそも十八歳までになされているのかどうか、そうした環境整備ができていないまま、いきなり十八歳を成人として認めて、そのことによって、十八歳の者が著しく不利益な取引によって損害をこうむるとか、悪徳商法にひっかかるとかいう場合の救済ができないことの弊害もあるということをしっかりと検討して、環境整備をつくる必要があるのではないかということでございます。

○大口委員 時間も参りましたが、これも、平成十二年は、二年間でこれをやると。だから、ほぼ同時というふうに法律を読めるんですよ。ですから、本当にかなり、今の大臣のスタンスと大きく違うなというような感じがいたします。それを指摘して、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。

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