大口よしのりの政策・実績

大口よしのり国会質問

大口よしのり国会質問

2013年4月12日

183-衆-法務委員会-8号 平成25年04月12日

○大口委員 公明党の大口善徳でございます。
ハーグ条約の締結の必要性について、まずお伺いしたいと思います。
ハーグ条約を締結することの意義については、国際的なルールに基づいて子の不法な連れ去り問題を解決するとともに、親子の面会交流の機会を確保することにより、子を有害な影響から保護するとともに、子の利益に資することになると理解しているわけであります。
四月四日の本会議におきましても、外務大臣は、本条約を締結しない状態が継続することは、我が国国民にとって大きな不利益であるとともに、国際社会における我が国の姿勢も問われかねません、こう答弁をされています。
もちろん、国際社会の一員としての我が国の姿勢を示すことも大事でありますが、我が国国民にとって大きな不利益を解消することこそ非常に重要であると考えています。
そこで、外務大臣が答弁されました、我が国の国民にとっての大きな不利益ということにつきまして、もっと具体的に御答弁をいただければと思います。

○鈴木副大臣 ハーグ条約締結の意義、不利益な点についてということでございますが、ハーグ条約は何よりも子の利益を最重要視している条約でございます。我が国がハーグ条約を締結しない状態がこのまま継続をいたしますと、国際的なルールに従った問題の解決ができずに、子の不法な連れ去りの未然防止がなされない、また面会交流に関する支援も得られない状態が継続をすることとなります。これは、誰よりも、子にとっての不利益であると考えられます。
また、我が国からの子の不法な連れ去りも多数発生をいたしておることを考えますと、条約に基づく返還手続を利用できないことは、我が国の親にとっても不利益であります。
さらに、条約を締結しないことによって面会交流の機会の確保のための支援が得られないこと、我が国がハーグ条約を締結しないことによって外国に在住する日本人が直面しております一時帰国の制限といった状況が継続すること等も、我が国の親にとっての不利益であると考えております。

○大口委員 次に、中央当局の体制についてお伺いします。
先般の本会議において外務大臣は、発足当初は十名程度の体制で取り組むと答弁されました。条約実施法上の中央当局にさまざまな任務が課されています。特に面会交流については、条約発効後、申請が殺到する可能性もあります。
外務省として、具体的にどのような体制で臨むのか。また、十名程度の体制では不十分だと考えますが、いかがか。弁護士やソーシャルワーカーだけでなく、子の利益、子の心理、子のダメージに関する専門家も必要ではないかと思いますが、いかがでございましょうか。

○新美政府参考人 お答え申し上げます。
先生から御質問のありました件につきまして、条約はまだ発効しておりませんので、条約が発効した後の申請件数あるいは中央当局の事務量について推測の範囲を超えることはできないわけでございますけれども、特に、委員御指摘のように、面会交流申請につきましては、条約発効前の連れ去りや留置に起因する場合でも、条約発効後に面会交流が実現していなければ対象となることに鑑みれば、御指摘のとおり、条約発効直後から一定数の申請があると想定しております。
具体的には、他国における例、例えば各国の中央当局の体制でございますが、アメリカは七十五名と極めて多いんですけれども、イギリスは五名、フランスは十一名、ドイツは二十名、カナダは三名、豪州は七名、韓国は三名、イタリアは十一名といったような他国の例もございます。
そしてまた、各国から日本に連れ去られたとして返還を要請されている件数、あるいは、外務省や日弁連が実施してきた調査結果等も踏まえて検討した結果、外務省及び法務省から人材を適切に配置するとともに、ソーシャルワーカーあるいは弁護士といった各分野からの専門家を採用いたしまして、発足当時は十名程度の体制で対応できるだろうと考えておりますが、御指摘ございましたとおり、必要に応じ、体制の見直しについても検討してまいりたいと思っております。
また、子の利益を重視するという条約の趣旨も踏まえまして、御指摘のありました中央当局に子の心理に関する専門家を配置する必要性も認識しておりますところ、今後検討してまいりたいと思っております。

○大口委員 次に、中央当局による子や子の同居する者の住所等に関する情報収集についてお伺いしたいと思います。
これらの所在地の情報収集に関して、先般の本会議におきまして、外務大臣は、まず、配偶者暴力相談支援センター、配暴センターに対して提供を求め、センターを通じて得られない場合には、民間シェルターのネットワーク団体から必要な協力が得られることを前提として、直接シェルターに対してではなく、当該ネットワーク団体を通じて情報提供を求めることを検討する、こう答弁されているわけです。さらに、このような協力が得られるよう当該ネットワーク団体に働きかける旨の答弁もされています。
今まで、どのような名称のネットワーク団体にどのような働きかけを行ってきたのか。やはり、中央当局とネットワーク団体との協力関係が重要です。この協力関係を構築する実現性の見込み等についてお伺いしたいと思います。

○新美政府参考人 お答え申し上げます。
今委員から御指摘ございましたとおり、民間シェルターに対し情報提供を求めることが必要になった場合でも、民間シェルターのネットワーク団体から必要な協力が得られるということを前提に、そのネットワーク団体を通じて情報提供を求めるということを検討したいと思っております。
このような考え方に基づきまして、過去に二回、一度目は平成二十四年五月、二回目は平成二十五年三月、民間シェルターのネットワーク団体でございますNPO法人全国女性シェルターネットの代表者との意見交換を行い、説明を行いました。この全国シェルターネットといいますのは、国内で百カ所近く活動しておる民間シェルターのうち、約六十数カ所がメンバーとなっているネットワークと伺っておりまして、私どもの考え方を御説明するとともに、意見交換を行った次第でございます。

○大口委員 次に、DV等によって身を隠しておられる親子の住所情報について、それが厳重に秘匿されることが当事者等にとって重要なことなわけでありますけれども、裁判所における記録の閲覧等の手続の運用面においても、子の返還事件においては、DV被害等を受けたと疑われる事案については、国内のいわゆるDV事案における記録の取り扱いと同様に、当事者や子の所在地の記載が外部に漏れることのないように配慮する必要があると思います。
最高裁に、具体的にどのような対応をやられるのか、お伺いします。

○豊澤最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
この法案におきましては、記録中、裁判所が外務大臣から提供を受けた相手方または子の住所または居所が記載され、または記録された部分につきまして、相手方の同意、あるいは強制執行するために必要があるときを除いては、閲覧等が許可されないというふうに定められております。
その趣旨は、個人情報の保護への配慮というふうに考えられますので、裁判官の許可がある場合を除き、裁判記録から個人情報が外部に明らかになることにならないよう徹底してまいりたいと思います。
また、これ以外につきましても、国内の家事事件における記録の閲覧制限等に関する規律と同様の規律が設けられております。したがいまして、DV被害等を受けたと疑われる事案につきましては、住所秘匿を希望する当事者の意向等を踏まえまして、DV被害等の事案で非開示希望が出された情報が不当に開示されることのないよう、適切な運用がされるように、立法の経緯等、周知を図ってまいりたいというふうに考えております。

○大口委員 本当に命に及ぶ危険性もあることでありますので、厳重によろしくお願いしたいと思います。
次に、子の返還拒否事由を規定する本法律案の第二十八条一項一号によりますと、返還申し立てが子の連れ去り等から一年経過した後になされたものであり、かつ、子が新たな環境に適応している場合には返還拒否できる、こうなっています。
子が新たな環境に適応しているか否かについて、家庭裁判所の審理において、どのような方法により、どのような状態を見きわめようとするのか、その結果、どのような状態が認められれば返還拒否事由に該当すると認定することになるのか、具体的に説明をお伺いしたいと思います。

○深山政府参考人 具体的にどのような状態が認められれば、子が新たな環境に適応していること、この要件に該当することになるかは、裁判所が個別の事案に応じて判断するというのは言うまでもないんですけれども、具体的な考慮事情を申し上げると、例えば、子の就学状況、それから課外活動の状況、子の友人関係といった子を取り巻く周囲の状況、そのほか、子の心身の状況、あるいは、日本語がちゃんとしゃべれてコミュニケーションがとれるかといった、子の言語能力といった子自身の生活状況、こういったものに照らして総合的に判断がされるものと思っております。

○大口委員 次に、二十八条の第二項の各号についてお伺いしたいんですが、この二十八条の第一項の四号に関して、返還拒否事由の該当性を判断する指針として、同条第二項の各号に三つの考慮事情が例示されているわけであります。
そこで、先般の本会議でも、重要な考慮事情になり得る旨の答弁を法務大臣からいただいたんですが、考慮事情の何号に当たるのかということをお伺いしたいと思います。
まず、一で、子を連れ去った親がもとの居住国に入国できない場合。二として、子を連れ去った親がもとの居住国に戻ると逮捕、刑事訴追のおそれがある場合。三、子を連れ去った親がもとの居住国に戻れたとしても居住国での生計維持が困難な事情がある場合。四、子を連れ去った親が相手方親から受けた過去の暴力のために、元居住国に戻るとPTSDなどの精神症状が発症する場合。以上四つの事例で、どのような考慮事情に該当するのか、お伺いしたいと思います。

○谷垣国務大臣 今、四つのケースをお挙げになりましたが、子を連れ去った親がもとの居住国に入国できない場合、第一の例でございます。それから、子を連れ去った親がもとの居住国に戻ると逮捕、刑事訴追のおそれがある場合、これが二番目。それから、子を連れ去った親がもとの居住国に戻った後の生計維持が困難な事情がある場合、三番目。この一から三は、いずれも、第二十八条第二項の子の返還拒否事由の考慮事情のうち、第三号の「相手方が常居所地国において子を監護することが困難な事情」、これに該当し得ると考えられます。
それから四番目、子を連れ去った親が相手方から受けた過去の家庭内暴力のために、もとの居住国に戻ると、心的外傷後ストレス障害、いわゆるPTSD、こういった精神疾患が発症する場合、これについては次のように考えられると思います。
まず、過去に家庭内暴力があった場合は将来も同様の暴力が繰り返される可能性があると認められますので、子の返還拒否事由の考慮事情のうち、これは第二十八条第二項第二号の、相手方が「子に心理的外傷を与えることとなる暴力等を受けるおそれ」、これに該当し得ると考えられます。
それからまた、精神疾患が発症するおそれがあり、親が子とともにもとの居住国に戻ることが困難である場合や、もとの居住国に戻っても子を監護することができる精神状態にない場合は、子の返還拒否事由の考慮事情のうち、これは二十八条第二項第三号の「相手方が常居所地国において子を監護することが困難な事情」、これに該当し得ると考えられます。

○大口委員 外務省から、ハーグ国際私法会議事務局の判例データベース等で、各国の裁判所の返還拒否の判断をした裁判事案の概要、これを取りまとめたものが公表されているわけです。
この概要を見ますと、相手方の中央当局から母の入国について確約がなかったり、母に逮捕状が出ているために子供とともに戻れなかったりするような場合。これは、母と子を引き離すことが「子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること。」に該当するとして、返還拒否の判断がなされているわけであります。
こういうふうに、母子が離別することになる場合は重要な考慮事情に当たるということは確認していますけれども、さらに、この概要の裁判事例によりますと、母子の離別だけでなく、兄弟姉妹が離別することになる事態についても返還拒否事由に該当する例が示されています。
そこで、子の返還により兄弟姉妹と別離することになるような場合についても本法律案で重要な考慮事情に当たるものとして考慮されるのか、お伺いしたいと思います。これは該当条文もあわせて御答弁ください。

○深山政府参考人 今御指摘があったとおり、この法律案では、二十八条一項四号の返還拒否事由の有無を判断する上で重要な考慮要素を同条第二項の各号で掲げておりますけれども、子の返還により子が兄弟姉妹と離別するという事情は、その各号に掲げられた考慮要素に直接該当するものではございません。
ただ、子の返還により子が他の兄弟姉妹と離別することは、一般的にはその子の精神面に多大な影響を与え得るものでございますので、具体的な事案によることではありますけれども、二項の柱書きに規定する、三つの重要な考慮要素「その他の一切の事情」というのが柱書きにありますが、この「その他の一切の事情」として考慮されることになると思われます。

○大口委員 次に、この二十八条の第二項の第三号に規定する考慮事情に関して海外の事例を挙げてみますと、裁判所の審理により子が返還されたところ、実際には、その返還を申し立てた監護権者が子の監護を行えずに、里親あるいは施設に子が預けられてしまう、こういう事例があります。
スイスの例でありますけれども、自国からオーストラリアに子を返還することとして、母親が刑事訴追のおそれがあることから同行できないで、子だけが返還された。ところが、父親に養育能力がなかったため、子は一年半にわたり三軒の里親のもとを転々とさせられ、結局、オーストラリアが母親に監護権を与える旨を決定して、スイスの母親のところに子が戻された、こういう事例があります。スイスにおいては、このような、返還先の国での監護環境が整わない場合にまでも子を返還することが適切なのか、こういう議論になりまして、それで、子の最善利益を考慮する事情として明示する立法がなされたわけであります。
今回の法案の二十八条の二項第三号、「申立人又は相手方が常居所地国において子を監護することが困難な事情の有無」ということは、まさにこういうスイスの事例のような場合に当てはまるということで、子をもとの居住国に返還した場合、里親や施設に預けられてしまうような可能性があれば、これは重要な考慮事情として返還拒否の事由に該当するということでよろしいのか、お伺いしたいと思います。

○深山政府参考人 今御指摘のような事情は、まさに「申立人又は相手方が常居所地国において子を監護することが困難な事情」に当たる典型的な場合だと思っております。

○大口委員 また、いわゆるノイリンガー判決というのがございます。これは、イスラエルに移住したスイス国籍の母親とイスラエル国籍の父親との間に子がいるわけですが、父親が関与していたある種の活動に子が引き込まれることを母親が恐れまして、結局は離婚をして、子が二歳のときにひそかに子を連れてスイスに帰国をしたということですが、父親がハーグ条約に基づいて子の返還の申し立てをした。
最終的にスイス連邦裁判所が子の返還を命じることになったわけでありますけれども、母親は、ヨーロッパ人権裁判所に、このスイス裁判所が命じた子のイスラエルへの返還は、ヨーロッパ人権条約の家族生活に関する人権の不当な侵害に当たるということを提起して、そして、一旦はこの人権条約に違反ではないとされたわけですけれども、子をイスラエルに返還するとトラウマの危険があるとして、専門家の鑑定などを主張して、最終的にはそれが認められて、ヨーロッパ人権裁判所の大法廷で、子の返還を執行することは家族生活が尊重される権利を定めたヨーロッパ人権条約第八条に違反する、こういうふうにされたわけであります。
このいわゆるノイリンガー判決は、ハーグ条約による子の原則返還主義が必ずしも子の最善の利益につながるものではないことを示しているのではないかという指摘、意見があるわけでございます。
ハーグ条約は三十年たっているわけでありますが、起草当初は、非監護親による監護親からの子の奪い去りという類型が多かったと思うんですね。共同親権等が世界に広がりまして、主たる監護親の何らかの事情で子を国外に連れ出す類型というものが広がってきているわけであります。そういうことでありますので、この二つの類型を一くくりにすることが適切ではないのではないか、こういう意見もあります。
こういう意見に対して、法務大臣からお考えをお伺いしたいと思います。

○谷垣国務大臣 今委員がお引きになったノイリンガー事件、これは、欧州人権裁判所で、ハーグ条約に基づいてされた子の返還命令の執行が具体的事情のもとでは欧州人権条約に違反すると判断された、そういう事例であるというふうに承知しております。
そこで、この判決は一体どういう評価をなすべきかということでございますが、ハーグ条約に基づく子の返還の判断の枠組みそのものに影響を与えるものであるという見方、それから、個別の事件における特殊事情を考慮した事例判断の一つにすぎず、判断の枠組みに影響を与えるものではないとの見方がある。そのほかにも、本来、常居所地国においてされるべき子の監護のあり方についての判断を、子の返還手続の中で判断することを許容することにつながるのではないかという懸念も示されている。その評価や受けとめ方が、いろいろな学説、学者の判断があるわけですが、識者によってもかなり異なっているようでございます。
そこで、個別の事件に対する欧州人権裁判所の判断でありますし、このように識者の評価も分かれておりますので、日本の法務大臣としてどうかと言われると、非常にお答えしにくい。ただ、こういう個別的ないろいろな事情のもとで欧州人権裁判所がこういう判断を下したということは、重要な参考になるのではないかと思っております。

○大口委員 そういう点では、子の最善の利益を確保するということを第一として運用していくことが何よりも大事なことではないかな、こういうふうに私は考えますが、その点はいかがでございますか。

○谷垣国務大臣 ハーグ条約を日本が受け入れて実施していく上で、子の利益の確保というものが最重要事項であるということはもう御指摘のとおりでございます。ですから、今回のハーグ条約の実施法においても、その第一条で、「子の利益に資すること」、これがこの法律の目的である旨を規定しているところでございます。
ハーグ条約は、子の監護をめぐる紛争は子がもともと居住していた常居所地国で解決するのが望ましいという趣旨を基礎として、子の返還を原則としているものではございますけれども、個別具体的な事情によっては子の返還を拒否することが子の利益に資することがあり得るという理解のもとに、子の返還拒否事由を定めているわけでございまして、裁判所においても、このようなハーグ条約の趣旨にのっとった運用がされるものと考えております。

○大口委員 最高裁にお伺いします。
そういう点で、ハーグ条約に関連する事案というものは裁判例がたくさんあります。こういうものをしっかり収集して、それで東京家裁、大阪家裁でやるわけですが、その専門性の向上を図っていかなきゃいけないと思いますが、いかがでございましょうか。

○豊澤最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
ハーグ条約実施法に基づく事件の処理に当たりましては、条約の趣旨に沿った形での解釈、運用がされていくことが非常に重要である、この点は委員の御指摘のとおりだと考えております。
最高裁判所といたしましては、関係機関の協力を得つつ、委員御指摘の外国における裁判例を初め、有益と考えられる情報を東京、大阪の両家裁に提供するなどしているところでございまして、今後も、法案の審議状況を見ながら、必要な情報提供等を続けてまいりたいというふうに考えております。

○大口委員 次に、子の返還手続の裁判について、先般本会議で質問をさせていただいたときに、外務大臣は、裁判所が、子のもともと居住していた国におけるDVの実態についての調査をすることが必要と判断し、中央当局である外務大臣に、当該国におけるDV実態について調査を嘱託することが可能である、こういう答弁がありました。
日本の裁判所がDVの有無を判断するために必要な情報を、日本の中央当局が外国政府から十分得ることができるのか。外国のどのような機関等からどのような情報を得るのか、外国の病院の場合の診断書、あるいは外国の警察の相談記録など。また、既にハーグ条約を締結している各国間でどのような協力が行われているのか。可能な限り具体的にお伺いしたいと思います。

○鈴木副大臣 御指摘のような場合、つまり、裁判所が、子がもともと居住していた国におけるDVの実態について調査をすることが必要と判断した場合においては、我が国の中央当局は、子がもともと居住していた国の中央当局に対して調査を要請することになります。
具体的に、どのような情報がどのような機関から得られるかにつきましては、個別の事案によって異なりますので一概に申し上げることが難しいのでありますけれども、我が国のハーグ条約締結の準備段階において、主要締結国の中央当局との間で協議を行った結果、調査に対する協力について前向きの回答がおおむね得られているところでございます。
現在の条約締約国が他の締約国からの要請に応じて情報収集や情報提供を行っている例といたしましては、例えばドイツでは、他の締約国から中央当局に対して子の社会的背景に関する情報提供が要請された場合、中央当局は少年局に依頼を行い、依頼を受けた少年局は、ドイツの国内法により、子の社会的背景及びその生活環境について情報を提供する義務を負っているところであります。
また、フランスにおきましては、他の締約国から要請があれば、中央当局は検察官にその旨連絡することとなっておりまして、検察官は子の就学情報や社会福祉情報等の必要な情報を収集することになっております。

○大口委員 そうすると、外国病院の診断書とか外国警察の相談記録、こういうものも当然入手できるということでよろしいですか。

○鈴木副大臣 裁判所からそのような調査の委託を受けた場合、当該国の中央当局に対して病院の診断書や警察の相談記録等につき調査を要請することになります。

○大口委員 次に、ハーグ条約の締結に伴う邦人の保護の観点から、在外公館の体制整備について。
これも、先般の本会議において外務大臣が、DVや虐待を受けた邦人や子の相談に適切に対応していくことが極めて重要である、これらの措置を拡充していくことが重要と考えると。そういう点で、今後外務省としてどのような措置を考えているのか、具体的に御答弁いただきたいと思います。
それから、特にこの相談は大事ですね。相談担当者の研修がまた極めて大事でございまして、いかなる人材あるいは組織が、どのような内容、教材を使ってこの相談担当者の研修を行うのか。そこについてもお伺いしたいと思います。

○鈴木副大臣 外務省として、在外公館の領事が家族法専門の法律家、弁護士等に迅速に相談できる体制を構築するとともに、現地で、家庭内暴力被害者支援緊急用シェルターの運営、カウンセリング、法律相談、裁判支援等を行っている関係団体、専門家等と連携をして、日本人向けの活動を強化する等の方策をとっております。
また、研修でございますが、外務省は、ハーグ条約締結国に所在する我が方の在外公館の領事担当者を対象といたしまして、ハーグ条約に関する研修を累次にわたって実施いたしております。
具体的には、領事初任者研修、領事中堅研修、赴任前個別研修等において、領事局及び総合外交政策局の担当者が講師になりまして、赴任予定者及び在外公館担当官に対し、ケーススタディー形式を取り入れつつ実施いたしているところでございます。
ハーグ条約を締結後、これらの支援措置が一層重要となりますので、さらなる体制強化に努めてまいりたいと思っております。

○大口委員 専門家による研修も大事だと思うんですね。ですから、どういう専門家、組織が研修をするのかということについて、やはりもう一回、このハーグ条約が発効されることを考えていただいて、充実したものにしていただきたいと思うんですが、そこら辺、もう一度答えてください。

○鈴木副大臣 先ほども申し上げましたけれども、やはり研修は大変重要なことだと思いますので、先生の御指摘も踏まえて、今後、さらに支援体制の強化に努めてまいりたいと思っております。

○大口委員 次に、これはハーグ条約にまだ入っていない現時点においてでありますけれども、DV、虐待にかかわる邦人からの相談に対して、やはり在外公館がきちんと対応することが重要であります。今からもう一回見直して対応する必要があります。
そこで、現在、どのような対応をして相談や支援措置を行っているのかの説明をお願いしたいと思います。そして、このような相談や支援措置について、過去の実績を、数字がわかれば数字を示して御説明いただきたいと思います。
それから、先般の本会議で、DV被害のケースにおいて、邦人の生命、身体に差し迫った危険が及ぶといった状況のもとで、緊急性があれば渡航証明を発行するとの外務大臣の答弁がありました。これは母親だけでなく子に対しても発給するのか。これもお伺いしたいと思います。

○鈴木副大臣 在外公館では、家庭内暴力被害や児童虐待の相談を受けた場合、任国の保護、救済制度を説明して、弁護士や福祉専門家、シェルターの紹介を行うなどの支援を行っているところでございます。また、生命に危害が及ぶ場合等、緊急の場合であると判断されたときには、在外公館が警察や裁判所に通報、救援要請を行っております。
それから、具体的な相談支援の過去の実績ということでございますけれども、二〇一一年三月から二〇一三年の三月までの二年間、在外公館別の子の連れ去りや家庭の問題等に関する相談件数は、主要公館でありますけれども、在フィリピン大使館で四十四件、在英国大使館二十五件、在ニューヨーク総領事館十九件、在ボストン総領事館十八件、在瀋陽総領事館十四件、在トロント総領事館十一件、在シアトル総領事館十一件などとなっているところでございます。
それから、現地事情に詳しい団体と在外公館が連携をして在留邦人の相談に対応している場合もございます。具体的には、在ニューヨーク総領事館とニューヨークアジア人女性センター、そして在ロサンゼルス総領事館とリトル東京サービスセンターとの連携が例として挙げられます。
それから、帰国のための渡航書について、子の生命や身体に差し迫った危険が及ぶ、または子の福祉が損なわれるおそれがあると認められ、緊急に帰国する必要があると判断される場合には、子に対しても帰国のための渡航書を発給することといたしております。

○大口委員 次に、子の返還事件の審理に当たって、弁護士を依頼する、それから外国の書面について翻訳をする、それから外国の病院とか警察の相談記録の翻訳も必要になるということであるわけですけれども、民事法律扶助制度を利用する場合に、法テラスにおいて援助の対象となる案件の内容ごとに立てかえの基準が設定されていまして、翻訳に係る立てかえの限度額は十万円と定められているわけですね。これは、十万円ではとてもとても、ハーグ事案の特殊性からいきまして足りません。
そこで、これにつきましては、少なくともやはり百万円程度に引き上げなければならない、こういうふうに私ども考えておりまして、ぜひとも、これは財務当局と協議をされているとお伺いしておりますけれども、法務省として、大臣、この件につきましては、十分、やはりこのハーグ事案について審理の充実と、そしてまたDV被害者等の方の主張が正当に審理に活用されるよう対応していただきたい、こういうふうに思いますが、いかがでございましょうか。

○谷垣国務大臣 今、大口委員が御指摘されましたように、民事法律扶助では上限は十万ということになっております。しかし、ハーグ関連の案件では大量の法律的文書の翻訳が必要になってくるだろうと、これは当然想定されるわけです。したがいまして、こういう特殊性を踏まえた検討がもちろん必要でございまして、今後も引き続き、こういう点を踏まえまして、関係機関との協議を行うこととしております。
当事者が経済的な事情を理由に不十分な準備状態で審理に臨まなければいけないというような事態が生ずることは避けなきゃならない、私もそういう思いでございます。
翻訳費用の立てかえ基準については、現在、関係機関と協議中でございまして、また、今後とも引き続き協議をしていかなきゃならない現時点でございますので、確定的な金額については今ちょっとお答えすることは難しゅうございますが、きょうの委員が示されました点を踏まえて、我々、きちっと協議をしていきたい、このように考えております。

○大口委員 元財務大臣でもあったわけでございますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。
次に、本法律案第百五十一条で、子の返還申し立てから六週間が経過したときは、申立人等が裁判所に対し審理の状況説明を求めることができるとしているわけでありますが、ハーグ国際私法会議が作成した二〇一一年のハーグ条約統計分析書によりますと、条約締約国における子の返還に関する審理期間について、返還命令が出されるまでの平均日数が百六十六日、それから、返還拒否の判断が出されるまでの平均日数は二百八十六日とされているわけでございます。
そういうことで、確認をしたいんですけれども、子の返還事件の審理において、第百五十一条に規定する六週間経過による説明というのがどういう意味を持つのか、お伺いしたいと思います。子の返還事件の審理において、当事者や子に対する意見の聴取など、慎重かつ丁寧な審理が求められるわけであります。このような時間的な制約と捉えるべきではないと考えますが、いかがでございましょうか。

○谷垣国務大臣 ハーグ条約は、申し立てから六週間以内に子の返還についての判断がされない場合には、申請者が遅延の理由を明らかにするように求めることができる、こう規定されておりまして、今度の法律案の百五十一条はこのハーグ条約の規定に則した規定であるわけですが、その趣旨は、こういった規定により子の返還事件の迅速な処理を促すということであります。
そして、子の返還事件の審理が申し立てから六週間以内に終了しないからといって、何らかの法律的効果が生ずるものではありません。現に、ハーグ条約の締約国におきましても、全ての事件を申し立てから六週間以内で審理を終えているわけではありませんで、特に返還拒否事由が主張された事案においては、相当程度の時間をかけて審理がされているものと承知しております。
こういうふうに、この百五十一条に基づく審理の状況の説明は、子の返還事件の迅速処理を求めるものではありますけれども、事案に応じて必要かつ適切な期間をかけて審理するということに矛盾するものではないということでございます。

○大口委員 次に、子の返還の代替執行についてお伺いしますけれども、やはり、法律でも子の心情に配慮した規定が設けられているわけであります。そういう点で、やはり今回、先般の本会議におきましても、代替執行においては、ソーシャルワーカー等の子の福祉に関する専門的知見を有する職員を立ち会わせる、これは法務大臣からそういう御答弁があったわけであります。
そこで、最高裁にお伺いしたいんですけれども、やはり、子の心情に配慮した権限の行使が適切に行われるようにするためにまたソーシャルワーカー等が立ち会いをするということでありますと、執行官とソーシャルワーカーの連携ということも必要であります。そういう点で、子の返還の代替執行に対しての執行マニュアル、執行官提要というのを作成する必要があると思いますが、いかがでございましょうか。
それが一点と、あと、法務大臣に対してお伺いしたいんですけれども、こういうふうに、ハーグ事案においての子の返還の代替執行についてはこういう規定があるわけであります。しかし、国内における子の引き渡し事案についてはこのような規定がない。民事執行法の動産執行の規定を類推適用して、執行官による子の引き渡しが実施、運用されているわけであります。
そういう点で、国内事案についてはより適切な対応ができるよう、やはり立法も含めて検討していく必要があると思いますが、この点は法務大臣にお伺いしたいと思います。
以上、二点お願いします。

○永野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
ただいま委員から御指摘のあったとおり、今回の法案における子の返還の執行手続においては、子の心情、福祉に十分に配慮するとの観点から、執行官の権限につきましても細やかな規定が設けられているところであります。
したがいまして、法が成立した場合に、具体的な執行場面において法の趣旨、目的に沿った適切な運用が確保されるように、マニュアルを作成するなどして現場の執行官に周知徹底をしてまいりたいというふうに考えております。

○谷垣国務大臣 今、最高裁からも御答弁がありましたけれども、国内の子の引き渡しの強制執行は、現行の実務では、まず間接強制の方法による。そのほかに、一定の場合には直接強制の方法によっているもの、こういう場合もあると承知しております。しかし、直接強制については、これを許容する執行実務においても、子供の人格の尊重等々の観点から、可能な限り子の利益に配慮して執行するということが行われているというふうに承知をしております。
国内における子の引き渡しの強制執行については、明文の規定は今特別なものはないんですが、このハーグ条約の実施を契機として、必要か必要でないか、要否ですね、それからあり方、今後検討が必要となってくるというふうに考えております。

○大口委員 最後に、この条約発効前に生じた子の連れ去り事案については適用されないということなのでありますけれども、面会交流については適用されているわけであります。ただ、外国の方が、あるいは日本の方でもそうですが、今連れ去られている方についても適用があると思い込んでおられる方もいらっしゃいます。そこら辺の広報と、条約発効前に生じた子の連れ去り事案についてどう対応していかれるのか、お伺いしたいと思います。

○鈴木副大臣 周知についてでございますけれども、本条約を適切に実施していく上で、御指摘のような広報、これをしっかりやっていくということが大切であると思っております。
そのような認識のもとで、本年一月には、外務省主催でハーグ条約公開シンポジウムを開催したところでございます。また、既に在外公館においてハーグ条約に関するパンフレットを配布いたしております。
今後は、本省及び在外公館の外務省ホームページを通じた広報や説明会の開催などを初めといたしまして、関係省庁、地方公共団体、各種団体等とも協力しつつ、幅広く広報を行って周知を図ってまいりたいと思っております。

○大口委員 あと、面会交流における子の連れ去りの防止についてもお伺いしたいと思います。

○石田委員長 時間が参っておりますので、簡潔にお願いいたします。

○鈴木副大臣 例えば、現在、具体的には、子が連れ去られた国の現行制度の活用の推奨、それから、在外公館の領事が連れ去られた子と親にかわって面会する領事面会を外務省として支援すること、それから、情報を共有することを目的とする二国間の連絡協議会を通じた対応等を行っているところであります。

○大口委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。

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